2005年 10月 10日
「正直、加茂と五条がいつまでも威張り散らしてんの、おかしい思てんねん。加茂は術式がパッとせえへんし、五条だって悟くんだけやろ?」
憎々しげに語る禪院直哉の前には、老若問わず、数十人の男女が強制的に跪かされていた。九十近い老婆から六歳の少年まで実に多様だが、共通なのはみな恐怖で顔を歪めていることだ。
その周りをぐるりととり囲むのは、禪院家に所属する戦闘員だ。
ここは千葉県南部の山村。呪詛師集団「Q」の本拠地である。
集団の先頭で額を地にこすりつけ、脂汗をダラダラ流している中年の男は、非戦闘員にして「Q」のリーダー。
踏み込んできた禪院家の戦闘団に、最高戦力バイエルの不在もあり、「Q」は大した抵抗も行わないうちに壊滅してしまった。
「術師の五割が禪院家、二割ちょいが高専、残りが加茂と五条。今の日本の呪術界はほとんど禪院が仕切っとるようなもんや。なんであいつらがでかい顔できるんかわからんわ」
呪術界最強勢力を自負する禪院家の戦闘員とよその術師の関係は最悪である。彼等にとっては非術師はおろか、高専・加茂・五条の術師さえも侮蔑の対象だからだ。
呪術師と言えば、多くの人が呪術高専を思い浮かべるかもしれないが、高専の術師と御三家の術師との間には、平均的な能力において顕著な差が存在する。
これは、警官と軍人を比べることに似ている。
高専の術師は学生時代にカリキュラムとして呪術を学ぶが、御三家では幼少から引退するまで独自の過酷な訓練が課されるのである。結果として体格や戦闘スキルは段違いである。
ただし、その努力をあざ笑うように一足飛びに飛び越えていくのが呪術の才というものなのだが。
そして、禪院が御三家の中で優れているのは戦闘員数である。
呪術総監部の下で働く呪術師は全国に約600人ほど、その半分が禪院家の傘下にある。細かく分けると芦屋や
しかし、その突出した戦力にも関わらず、禪院家は御三家の中で冷遇されている。
加茂と五条は、大和王権の成立以前から天皇家に仕えていたという歴史の古さを以て、朝廷、現代の宮内庁に絶大な信頼を寄せられている。
要はブランド力の違いである。ヨーロッパの文化で例えるなら古代から続く名門貴族家に対する新興の野蛮な傭兵集団とでも思われているのである。それでも既に1000年近い歴史があるのだが。
故に、彼らは総監部の役職や皇室の儀式での祈祷師などの要職、霊山や太宰府や出雲や天皇陵などの要所の守護を任され、ほとんど独占状態にある。
これが1000年続く御三家の確執の由来である。だから禪院は、高専術師を見下し、加茂と五条を憎むのだ。
故に、彼らは叫ぶ。
「禪院家に非ずんば」
「「「「呪術師に非ず!!」」」」
「呪術師に非ずんば」
「「「「人に非ず!!」」」」
よく訓練された戦闘員の応答に、直哉は満足気に微笑む。
「Q」の構成員達はより一層震え身を小さくした。
「さてオッサン。今な、非戦闘員が全然足りてへんねん。猫の手も借りたいくらいやで。普通なら死刑になるとこ、今やったら死ぬまで栄えある禪院家で馬車馬みたいに働けるで?」
直哉はニタァと嗤いながら、顔を上げた男の目を覗き込んだ。
「アテンションプリーズ、禪院 or Not 禪院?」
「ぜ、禪院で」
敵対勢力の吸収。
これは、平安の世からありふれた禪院家の光景。
この日、「Q」は消滅した。
* * *
禪院直哉は苦悩していた。
確かに投射呪法は「最速」に至れるかなり強力な術式であるし、呪力量も呪力出力も上の中と言っていいほど恵まれている。
しかし、こんな様ではいつまでも「向こう側」にたどり着けるとは思えない。
4月末にイラクに現れた特級呪霊の処理の任務では激闘を繰り広げ、ついに正の呪力の生成と反転術式に成功した。だが、術式反転には成功していないし、領域は手がかりすらない。
禪院直毘人の9割ほどの速度は出せるようになったが、そんなことで禪院甚爾や五条悟、そしてなにより現当主と渡り合えるとは思えない。
直哉は苦悩した。
試行錯誤し、鍛錬を積み、縛りを増やしては破棄し、わざわざ過酷な任務に出向いては死の淵をさまよい、そして。
考えるのをやめた。
よく思い直してみれば、考えても分からないことは考えるのが趣味のやつに考えさせればいいのだ。
直哉は反省した。
「というわけで明日香ちゃん、なんか考えてほしいんやけど」
「他力本願もいよいよ極まってきたねぇ……。
イラクの任務に介入した現地勢力の追加調査はほぼ成果無しと。喜愛ちゃんにはもう引き上げてもらうとしてブルーのタグを。発見された原エラム語の資料は翻訳が終わるまではイエローのタグで保管」
ここはAHT京都本社の地下。広大な"自律式"空性結界の内部。
禪院家の最奥にある扉からエレベータで数十秒降りた先に広がる、機械とディスプレイと呪具の、科学空間である。
空性結界は、呪力を用いた非電子式演算装置*2が組み込まれた内部の制御装置によって維持され、5月に訪れた五条が結界と気付かなかったほどの緻密さと安定性を誇る。
入口は薨星宮と同じくエレベーターだ。
その中心で、とある呪術の自称博士枠な女は、近未来的な空間に不自然に置かれた猫足ソファーに寝っ転がりながらタブレットを操作していた。
「推定『十種影法術』持ちの禪院恵にはイエローのタグを。五行機関の噂は眉唾すぎるけど安倍と土御門の痕跡が見つかるまでは一応ゴールドのタグを。
それでなんだっけ、投射呪法の拡張?」
「せや」
直哉は手頃なサイズの精密機械に腰掛けた。明日香がそれを咎めるような目で見るが、その意図を汲み取る機能は直哉には搭載されていない。
明日香は寝っ転がったままタブレットを無線で手近なディスプレイに接続し、
ディスプレイに履歴書のような画面が表示された。
「呪力と術式の理解は今どんな感じだっけ?」
「呪力は反転術式までや。半年前にイラクで。術式はそこに書いてあるとおりやな」
「ふうん」
直哉が提出した術式の詳細説明には『投射呪法 触れた"物体"に"任意の位置"への運動を強制する. 指定は24回毎秒で行う. 失敗すると1秒のフリーズ. 無茶な指定は禁則』と記入されている。
「無茶な指定って何?」
「物理法則を無視する動きとかやな」
「例えばここからあらゆる障害物を壊さずに突き抜けて1秒後にアンドロメダ銀河に行く動きも、物理的には可能だと思うけど」
「……はぁ?」
「なるほど。詳しいことは認識しておらず、と」
「バカにしてるん?」
「でも亜音速で走ってるじゃん」
「あれは重ねがけしてんのや」
「へー」
明日香はタブレットを閉じると足元に置いてあった黒いノートパソコンを開きディスプレイに接続し直した。
「とりあえず前頭葉の術式データを展開してみようか。あなたが座ってるそれの電源入れてからくっついてるヘッドギア被って」
直哉がスイッチらしきものを押し込むと緑のランプが光り、ブォン、と稼働音がした。
一方通行が術式と生得領域の情報を翠と喜愛に埋め込んだ方法*4を参考にした、電気信号から推定したニューロネットワークを離散値に変換する装置である。
直哉がギアを被ると、ディスプレイに解析結果がゆっくりと表示されていく。
「まずさ、術式とは何でしょう」
その答えに直哉は覚えがあった。遥か前に研究会で議題になっていた。
「生得領域の法則を現実に引き出すツール、とかやったっけ」
「そう、そんな感じ。一応一通り確認しておこうか」
「まずは生得領域から。幼児期に魂に刻まれていた記憶、つまりは前世の記憶、胎内の記憶、先祖の記憶、生まれた直後数ヶ月の記憶の場合もあるけど、そんな記憶から生後すぐに呪力によって生得領域が形成される。
これが一種の異界であって、現実世界とは別の法則が働いている」
例えば両面宿儺は飢餓から胎内で双子を食べたことから、「飢え」の領域と「斬って焼いて喰らう」という術式を得たと考察されている。
投射呪法などの相伝術式は、「先祖の記憶」に該当するだろう。ただし領域は不明だ。
なお、「前世の記憶」と「先祖の記憶」の識別は不可能なので、ざっくり「他人の記憶」とでも考えておこう。
「領域展開はこの異界を呪力で構築し再現すること。領域が抽象的で非現実的な空間なのはこのせいだね。
もし生得領域が物心ついたあとに形成された術師がいるなら、住んでる街とか、現実的な世界が構成されるかもしれないけど、聞いたことはないな。
そもそも領域展開ができる人なんて時代に数えるほどだけど。生得領域に流し込んだ呪力を暴発させて空間を構築するなんて、高度な呪術への理解、十分な呪力量と出力、結界術の練度、と、求められるハードルが高すぎる」
「そして生得術式は、異界の環境を現実に正常に引き出すための設定群のようなもの。生得領域の法則に則り、大体は4から6歳までに形成される、異界の法則の操作のためのUI」
UI。ユーザーインターフェース。コンピューターを操作するためのツールの総称だったか。
例えば、投射呪法は「アニメ」に関する知識、被写体を呪う術式は「カメラ」の知識によって形成されている。異なる時代、異なる文明に生まれていれば、また違った形で発現していただろう。
「さて、前提知識はこんなとこかな。ここからわかるのは術式とは後付けのものであって、抜本的に変えることはできないけど"解釈"による多少の変更の余地はあるということ。それを踏まえて、直哉くんの現在の術式構成は…… あ、もうそれ外していいよ」
明日香が身を起こし、ディスプレイの方を向く。
「基本情報、タイプは接触型、効果は位置の指定からの運動の補完。うん、特に変哲もない物体操作のインターフェースだね。運動を直接指定しない分、使い回しが楽かな」
「百合華ちゃんの向量操術に似た感じか?」
「あれは特殊だから、どちらかといえば付喪操術とかの系統かな。私達の分類で言うなら典型的なim系。まあここまではいいよね」
「イムケイってなんやっけ」
「術式の系譜を議論した回って来てなかったっけ。
kam系・im系・FR系・分類不能の4つにざっくり分けたんだけどさ、まずkam系が霊魂の操作に関するやつで、代表は赤血操術とか傀儡操術とか。加茂派の旧家が得意なやつ。
im系は物理法則に関するやつで、無下限呪術とか構築術式とか、五条派の旧家が得意なやつだね。
FR系は民間信仰、鄒霊呪法とか式神とか、日本の伝承のザ・呪い、みたいなやつ。呪力飛ばして遠隔で攻撃するのが多いな。
分類不能なのは、例えば海外の術師とか向量操術とかの、系統不明の突然変異的なやつだね」
聞いてはみたが、術式の強化にあまり関係なさそうだったので、直哉は聞き流した。
「詳しいことは分からんけど、これ見て何か思いつかん?」
「うーん、えー、……、どんなふうになりたいの?」
「術式反転と領域展開の修得、あとはもっと速く複雑な軌道で動けるようにしたい、あとは何か威力の高い技があるとええなあ」
「欲張りだねえ」
明日香はスクロールして、わけのわからない文字列を読み下していく。計測データには体系的でアルゴリズムで分析可能な情報から術式になりきらなかったゴミ情報までゴチャゴチャと含まれているので、その解析結果はかなり読みにくい。
直哉には理解できないし、する必要も無いだろうと思っているので詳しく聞く気もない。
「えー投射呪法で"呪われた"対象は術者指定の周期で位置変化を指定しなければならない。これには術者自身も含まれる。指定法は自身の視界上における瞬間的なイメージング。精度は粗くて良いが無茶な指定はできない。位置変化の無茶な指定が弾かれるのはフレーム間の運動の補完でエラーが出てるからかな。そうすると既に指定した1秒後の位置に至れずフリーズする、と。重ねがけが可能とすると24*24で、576fps? いや"呪い直す"たびに条件がリセットされるってだけか。1フレーム毎に呪い直せば1秒で24回ダッシュ加速できる的な。ただし加速するたびに周辺物質の抵抗は増大し、操作に必要な精密度と必要処理速度が上がり難易度は加速度的上昇、結果演算能力が不足する、と。必要最小限な指定を行うセンスが上達すれば少しずつ早くなる。前当主と直哉くんの違いは年季の差かな……」
その後しばらく経ち、一通り読み終えた明日香は手近に散らばっていたメモの一枚を裏返すとペンを走らせた。
「まずは基本的な運用方針かぁ、とりあえず常時重ねがけはやめるべきかなあ、演算能力と呪力消費がもったいない。正攻法で考えよう。24fpsの速度感には対応できているわけだから……」
ここで一つ付け加えておくなら、明日香のモットーは「理論上できることは理論上できる。できなかったら理論が間違ってる」である。
「『・フレーム補間処理による48fpsへの対応』、要はきちんと間を挿入すればバグは起こらない。補完処理の方法はいくつか思い浮かぶけど呪術師なら自分で考えて。最悪何か縛れ。理論的には240fpsまでは行けると思うけど、まずは48、次に60くらいを目指せばいいんじゃない。そうすると問題は空気抵抗か。
『・基礎的な工学物理の修得(数値の大きさの感覚も掴む)』『・抵抗の研究と対策』、と。流体とか量子とか、基本的な振る舞いを知っとけば、呪術師お得意のこじつけでなんとかできるでしょ。向量操術じゃあるまいし。必要な書籍リストは送っとくから上に戻ったら資料室を漁って。このあたりで演算継続能力が限界になるかな。
多分前頭葉にダメージいくから『・反転術式を常時展開』。
これで呪力はすっからかんになるから、『・人体構造と呪術生理学の修得』『・呪力の理論物理と物性の修得(最新研究まで)』『・呪力の精密操作の修得』。人体系は書籍でもいいけど、医療班で
このあたりでイメージ力に限界が来るかもしれないから、その場合は『・暗示による瞬間イメージ力の強化』。これは医療班に言えばなんとかしてくれるよ、最近そういうのやってるから。
後は、空中機動だと『・空中の面を捉える』とか? 気体は湿度差によって屈折率が違うから視界を呪力強化して頑張れば見えるんじゃない?」
そうして出来上がったメモは
・フレーム補間処理による48fpsへの対応(->その後はとりあえず60fpsを目指す)
・基礎的な工学物理の修得(数値の大きさの感覚も掴む)
・抵抗の研究と対策
・反転術式を常時展開
・人体構造と呪術生理学の修得
・呪力の理論物理と物性の修得(最新研究まで)(->それか生死の境を彷徨う)
・呪力の精密操作の修得
・暗示による瞬間イメージ力の強化
・空中の面を捉える
難易度の高さに、直哉に半年ぶりの緊張が走る。
引き攣る表情を抑えつつも、当主と甚爾くんの姿を脳裏に浮かべ、直哉は己の心を奮い立たせた。
オレは必ず向こう側に立つんや!
「えーっと、後なんだっけ」
まだあった。自分で聞いたことだが。
「領域展開? ごめんできない理由がわかんない。術式関係ないし。理論上できるはずなのになんでできないの? 精神論? 術式反転かあ。そもそもがバグみたいなものだから必ずしも修得できるとは限らないけど、多分コマの逆回しとかそんなんじゃない? 高威力の技? 黒閃か構築術式の逆でも研究してみたら」
幸いにも鬼畜な項目が追加されることはなかった。微妙に貶された感じはしたが。
メモを受け取ると直哉は立ち上がった。
「ほ、ほな、ありがとうな」
「あーうん。そういえば研究員候補の人員は捕まえてきてくれた?」
これは直哉たち戦闘団が呪詛師討伐に行くと必ず聞いてくることだ。
この数年間、当主百合華より戦闘団に下されている命令は全国の呪詛師の捕縛*5と在野の術師の登録。迫る呪術界の改革のための下準備である。
この機会にと、戦闘団は戦力の増強、明日香はまともな研究員の育成を図っている。
明日香は憤慨していた。
なにしろ禪院家の人員ときたら、一部の一般家庭出身者以外は義務教育レベルの常識すら怪しいのである。*6
必要とされる知識が異文明レベルで違うのだから仕方ないといえば仕方ないが、しかしこれでは開発の手伝いどころか事務作業すらままならない。
現在は単純な組み立て作業をさせつつ教育しようとしているが、本人たちの学習意欲が皆無のためちっとも成長が見られない。*7
呪術規定のせいで一般人をスカウトして研究員とするのは憚られるため、残された道は術師の親類や被呪者を説得するか呪詛師の関係者を捕まえてきて縛りと教育で育て上げることだけである。
もちろん彼らもやる気が十分とは言えないが、『無理のない範囲で全力を尽くす』という縛りを結び、何とか及第点となっている。*8
だが既に何年もこの方針で動いているが人手も才能も足りないままだ。
改革に成功したら絶対に優秀な一般研究者を引き込んでやろうと、明日香は決意した。
「Qの戦闘員以外なら、いつもの縛り結んで上に集めといたで。戦闘員はこっちで回収した」
「そ。後で契約書持ってくからどっかの部屋に集めといて。じゃあまあ、あとはがんばれー
……発掘されたウガヤ朝由来の祭具にはブルーのタグを。真衣ちゃん真希ちゃんの実験経過は良好、そのままイエローのタグを。あ、黒鳥操術の術式データが送られてきてる。これはレッドのタグで保管して、とりあえず展開してみるか……」
明日香は元通りソファーに寝転ぶと、タブレットを開き直した。
直哉はそのまま振り返らずに、禪院家につながるエレベータに乗り込み地上へと戻っていった。
* * *
2006年 3月 28日
とある平日の昼下がり、一人の男が当主の座を狙い、禪院家に討ち入った。
男の名は禪院甚爾、天与呪縛のフィジカルギフテッドである。
暗殺稼業、ギャンブル、育児放棄。端的に言ってクズである。
しかし彼にも、人の心と言うものが残っていたのだろう。
『恵をお願いね』
妻を
そして思い出す。息子を禪院に売ろうとしていたことを。
しかし、彼が売らなかったとしても、恵は禪院から逃れられない運命なのだ。
これで呪力や術式を持たないならば、改姓するだけで済むだろう。
だが、先日恵は最悪なことに、十種影法術を発現させた。
あの地獄の禪院から恵を守れるだろうか。残念なことに、彼には戦闘力はあっても権力はない。
その時、彼に、天啓のように、一つの答えが舞い降りた。
「
すなわち殴り込みである。
「甚爾くんやないか! 久しぶりやなあ!」
禪院家の結界を誰にも気づかれずにすり抜けた、かと思えば、一分も経ないうちにザワッっと春風が吹き。
緑の着流しを着た金髪の男が、笑顔でそこに立っていた。
「里帰りなん? 10年ぶりくらいやないか?」
「あぁ。ちょっと当主になりになァ」
甚爾は二ヤリと不敵に笑う。
グゲェ、と甚爾の武器庫呪霊が、万里の鎖と天逆鉾を吐き出した。
と、金髪男は目を見開き一瞬、硬直したかと思えば、
「ふ、ふふ……、ふは」
人相の悪い金髪がふふふと堪えるように笑っている。
薄気味悪い。と言うか普通に気持ち悪い。
次の瞬間、歓喜に塗りつぶされたような表情の男から、莫大な呪力があふれ出した。
「いい顔するようになったやないか! 甚爾くん!!!」
コンマ数秒後。
暴君と新たな「最速」が激突した。
* * *
夕方
二人は屋根の一つに降り立つ。
一人は着物こそボロボロなものの無傷、もうひとりはフィジカルギフテッドにも関わらず全身傷だらけで息切れしている、という異常事態。
「はぁ、はぁ、化け物め」
「甚爾くんに言われるのは光栄なんやけど」
直哉はガシャンガシャンと金属音が響く方向を見た。
「時間切れやな」
遠方から六本足の銀色の戦車が接近していた。
砲身には"SpecialGrade_Over_Limitless-β"のとの文字が見える。
ドローンが直哉の近くに浮かぶ
『ねー、決着つける気ないでしょ』
「ばれた?」
『何時間たったと思ってんの?』
「おい、あれはなんだ?」
「悟くんの無下限を工学的に再現しようとした失敗作らしいで」
砲身の先では黒い火花がパチパチと飛び散っている。心做しか、一部、薄っすら紫に光ってすら見える。
甚爾はそれを見ると、東京高専にいる白髮の怪物が頭をよぎり、冷や汗が吹き出した。
「じゃあまたな甚爾くん。一つだけアドバイスなんやけど」
次の瞬間、眼前に直哉が踏み込む。
みぞおちに大砲のような拳が入り、黒い火花を散らす。
宙を舞う甚爾を追って、冷たい科学の砲塔が瞬時に調整される。
「死なんといてや」
直後、
赤黒い光線が空間をこじ開けるように瞬き、
禪院甚爾は禪院家の結界をぶち抜いて大気圏外まで吹き飛んでいった。
その日、京都市内では黒い雷が観測され、禪院家は京都府警察本部から強い抗議のお手紙を受け取った。
十二年ぶり、二度目となる。
〇ゴリラ廻戦の申し子
特級『人間戦闘機』禪院直哉くん
自分の権限の限界まで『開発』し最高フレームは60fps。
学園都市の戦闘機『HsF-00』と同じことができるようになったりもしている。
三人目の特級術師。五条以下九十九以上。*9
本日の黒閃記録は四。生まれてからの総計は六。
挙動と燃費だけで国家転覆級判定された人。まあ核爆弾と潜水艦以外なら素手で何とかなるし。
今はまだ大技がないがそのうちビーム打ち始める。
テーマソングは :)阿修羅(:(King Gnu)とか?
〇呪術で科学な博士枠
世界一の企業のCEOにして、羂索や真人を制して世界で最も術式データを渡してはいけない人物ランキング5年連続不動の一位を獲得。
最近は八咫烏伝説の香りがする『黒鳥操術』のデータを3億円で購入した。
去年のクリスマスごろに喜愛に何か欲しいものがあるかと聞かれたので「『無下限呪術』『赤血操術』『十種影法術』」と答えたが返事がなかった。何とか彼らに恩を売ろうとしてるがまだチャンスが無い。まだ幼児である加茂憲紀と禪院恵がねらい目。五条は無理げ。
お気に入りはやはり構築術式。美しさが違う。神の御業。稀少物質の生成が可能で工学的な価値も高い。呪力理論における"情報量"のジュール換算にも役立つ。空間、呪力、物質粒子の構造データも提供しているため物理学の究極目標であるM-theoryの手がかりにもなった。そして何より”呪っ”た対象物体の存在レベルでの完全記録機能つき。もはや構築術式様である。なお戦闘の役にはまるで立たない。
〇領域と術式
〇SpecialGrade_Over_Limitless-β
「特級越え」「無下限呪術」「未完成」の意。
東京高専で撃ちまくられている『茈』の再現を目指して作られたものだが、今のところはただの黒閃ビームである。明日香が飽きたためこれ以上の改良は予定されていない。
〇原作真希√を目指した甚爾くんのその後
本作一章11話より、太平洋に着水したのち、泳いで東京校に帰還したことが知られている。
数日後に最近髪に白い花を挿し始めた当主の白髪少女よりちょっと落ち着けとのお手紙が届く。
〇呪術界の裏で暗躍する禪院家現当主
最近どこかの少年にどこかの高校で髪に白い花を挿される夢を見た。なぜか転校して同クラの隣席だった。※少年の行動に恋愛感情は一切ない。
〇五行機関
明治初期に閉鎖された陰陽寮の後継と噂される組織。
南の孤島にあるという噂や、陰陽寮の専門教育機関として既に千年以上存在するという噂もあるが、実在は確認されていない。
この噂を元に陰陽寮の後継を自称するダークウェブ界隈『五行寮』が誕生したが、開発者は五行機関の存在を信じていない。
◯付録・工業的価値ランキング(明日香調べ)
第一位 構築術式
第二位
第三位 赤血操術
第四位 無下限呪術
第五位
第六位 空を操る術式
第七位 降霊術
〇付録・もしも学園都市が呪術の街だったら(アレイスたんのメモ付き)
第一位
第二位 五条悟『無下限呪術』->本質は無限のinformation。サブプラン。
第三位 脹相『赤血操術』->魂魄操作の術式を持つ呪霊の構築に必要だった。用済み
第四位 万『構築術式』->本質は変換装置。サブプランとして未元物質の生成が期待される
第五位 九十九由基『
第六位 両面宿儺『伏魔御廚子』->単に本人が強いだけ。術式に価値がないので研究費が全く出なかった
第七位 髙羽史彦『
「八人目の超能力者?」的なエピで乙骨憂太『模倣術式』
一般構成員「言われた言葉を繰り返すことですよね」
•とあるの最新刊が神すぎるなので是非どうぞ。突然の上一萌えも一行混入していた。
https://www.kadokawa.co.jp/product/322404000456/
•舞台「呪術廻戦」のミゲルがクオリティ高すぎるのでご覧ください。
https://x.com/joelshohei/status/1835868293586194705