一方通行六歳転生(呪術廻戦)   作:木原レイリ

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付け足した設定:
 先代当主(死亡済み)
 禪院扇(「炳」筆頭かつ直毘人によりわからせ済み)
 禪院甚壱(23)
 禪院甚爾(14)(来年に出奔、直毘人と甚壱のみ関係良好)
 禪院直哉(5)(術式判明済み)

高評価入れてくださった方ありがとうございます


第4話 天与呪縛と向こう側

「直毘人ォ! これはどういうことだ!」

 

 出来損ないと見下していた兄の娘が当主の席でふんぞり返るのを見て。

 そこから笑いながら見下されて。

 強者である兄へのコンプレックスと、その裏返しである弱者への強烈な差別心の、ど真ん中をぶち抜かれた禪院扇はワナワナと震えていた。

 

「あー儂を倒せるようになったら次期当主にしてやるって言ったら負けちまってな」

「……っくっ、……っかっ……」

 

 叫ぶ扇に、苦虫を嚙み潰したような顔で返事をする直毘人。

 扇は怒りのあまり頭に血が上り次の言葉が出てこない。

 なんの冗談だか分からないがこの大嫌いな男は、扇がそこにいる出来損ないの幼女より弱いと言っているのだ。

 思わず理性を吹き飛ばし斬りかかりそうになった。

 何ならすでに、右手が腰に差した刀の前で彷徨っている。

 

 すると、「俺からいいか」と甚壱が手を挙げた。

 

「そのガキが現当主より強いと言いたいのは分かった。血筋も不足なく、移籍の手続きの必要もない。問題は本当にその強さがあるかだ。というかその証明のためにここに集めたんだろう」

「うむ。口で言っても納得はできんだろうから、こいつの強さに疑義のあるやつはこいつと一斉に模擬戦をしてもらう」

 

 思わぬ展開にざわざわと騒ぐ禪院家の術師たち。

 

「ただ、言っとくが、やるなら殺す気でやれ」

 

 直毘人がニヤリと笑って、死ぬぞ、と続けようとしたところでもう動き出した者がいた。

 怒髪天を衝かんばかりになっていた扇だ。

 

「術式解放『焦眉之赳』ッッ!!!」

 

 刀を抜くと術式を発動し、その刀に飛び散るような爆炎を纏わせる。

 

「灰に還れ出来損ないがあッ!!!!!!」

 

 禪院扇は「炳」筆頭。

 腐っても特別一級術師。

 並の術師なら目にも止まらぬ速さで観覧席に飛び上がり斬り掛かった。

 

 対する白髪の怪物は余裕の表情を崩さない。

 というか見向きもしない。

 

「グぁッ……」

 

 扇は、次の瞬間には、まるでコマを逆回しにしたように、もといた場所に叩きつけられ動かなくなった。

 

 ざわめきが収まらない。

 

「さて」

 

 白髪の怪物は、気にする素振りもなく。

 とんっ、と。

 いかなる術式を使っているのか観覧席の手すりに気軽に飛び上がると、ニタリと、並み居る術師たちを見渡し悪魔のような笑みを浮かべて宣言した。

 

「お片付けだ。三分で終わらせてやる」

 

 * * *

 

「囲め囲めぇ!!」

「掛かれぇ!!」

 

 術式を持つ者、持たない者、合わせて数十人の術師が取り囲み間断なく攻め掛けるが、中心にいる白髪の怪物はほとんど動かない。

 

 刀剣で斬り掛かったものは刀身を吹き飛ばされ。

 殴りかかったものは腕をぐちゃぐちゃに骨折し。

 灯の一員が躯倶留隊を巻き込んで数多のクナイを飛ばすも跳ね返ってきた同数のクナイの持ち手に吹き飛ばされ。

 少年が術式で足止めしようとするも身じろぎだけで解除され両目から血涙を流し崩れ落ち。

 炳の一員が巨大な土の腕で押しつぶそうとするもすぐに吹き飛ばされ瓦礫で味方が負傷し。

 躊躇したものから瓦礫の散弾のようなもので吹き飛ばされ意識を失う。

 

 マシンガンのような轟音が響き続けるがその猛攻を受ける当の怪物の余裕の表情を崩すことはできず、逆に凄まじい勢いで壊れていく修練場には死屍累々の惨状が広がっていく。

 

 そうして、あっという間に最後の数人。

 特別一級術師・禪院甚壱はこの広い修練場を埋めるほどの巨大な拳を発現させ殴りかかりながら叫んだ。

 

「甚爾!!」

 

 それは援護を頼む声だったろうが、援護は間に合わず、甚壱の腕に凄まじい衝撃が返ってきて右腕の骨がズタズタに砕けた。

 

 そして。

 

「仕方ねえなあ」

 

 一拍遅れて。

 甚壱の言葉に、やる気も無さげに佇んでいた身長190cm弱の大男が、音よりも速く殴りかかった。

 一方通行(アクセラレータ)は、笑みを崩さず、これで馬鹿は最後か、と終わった気になったところで。

 

 ガン!! 、と。

 天与の暴君の拳が、一方通行(アクセラレータ)の頭蓋骨を揺さぶった。

 

 何故かベクトル反射が通じず衝撃を食らった。

 

 とある少年に敗れる前なら情けなく吹っ飛んで行っただろうが、主観ではこの数ヶ月の間何度も死にかけた歴戦の精神である。

 今までの戦闘経験から、瞬時に体内を伝わるベクトルを相殺し致命傷を避けつつ、呪力で体を守る。

 

 一瞬、脳裏にツンツン頭の少年の顔がよぎるが。

 

──いや、そっちじゃねェ

 

 思い出すのはもっと苦い記憶。

 自分を学園都市第一位にした、嫌な男の顔。

 

 甚爾の攻撃は終わらない。

 雨のように降り注ぐ目にも止まらぬ有効な拳の連打を受けつつ、時折『反射』を切ったりするが、しかし有効打なのは変わらず。

 

 ついには。

 

「ぐッ」

 

 ドガアァァン、と。

 

 大砲のような蹴りを受けて、一方通行(アクセラレータ)は修練場の木の壁を突き破って吹き飛んだ。

 

「お前に触れたあらゆる物体が逆回しに飛ばされるのは見えていた。それに雑魚どもにも散々見せていたからな。いい加減察しもする」

 

 天与の暴君は薄く笑いながら続ける。

 

「お前の術式は『反射』だ」

 

 愉快そうに。

 

「俺の体は特別製でな、術師どもと違って多少は器用なことができる。例えば拳が皮膚に触れる寸前に逆に拳を引き寄せるとか、な」

 

 気取っていた術師が、自分のような猿にボコボコにされる嬉しさを隠しきれない笑み。

 

「つまりお前は自分から殴られたってことだ」

 

 新しく思いついた手品の仕組みを語るような楽しげな声。

 未だ怪物は壁の向こうで動く気配はない。

 

「後はお前が術式を切るタイミングだけ気をつければいい。そしてタイミングならお前の筋肉の動きや視線から読める」

 

 ニヤリと笑って、甚爾は言う。

 

「楽勝だ、自称次期当主」

 

 

 そこまで言って、甚爾は自分を巻き込んだ兄の方を振り返った。

 

「兄貴、立てるか、多分だがアイツまだ動けるぞ」

「すまん、応えてくれたとこ悪いが俺はリタイヤだ」

 

 そう言って甚壱は仰向けにひっくり返った。

 右手は赤紫に痛々しく腫れている。

 

「はー、特別一級術師様ともあろう方が情けねえなあ」

 

 と、嬉々として無様な兄を煽ろうとしたところで。

 

 背後から凄まじいプレッシャーが解き放たれた。

 

 

 

 

 

「デフォの設定は確かに『反射』だが本質じゃねェ」

 

 フラフラ、と。

 顔の表面に多少の血は滲んでいるが、しかし幼女にすら致命傷ではなく。

 今までの呪力量の少なさは、感情の起伏が少なかったせいだと、確かに感じさせるような圧倒的な呪力の圧を見せ。

 

「俺の向量操術は、運動量、熱量、電気量、あらゆる『向き(ベクトル)』を俺の皮膚に触れただけで変えちまう」

 

 ダンッ、と。

 

 靴の裏のベクトルを操り弾丸のような速度で突っ込んでくる。

 甚爾はとっさに右手を構え、踏み込まれると同時に拳を突き出すが。

 

 ぱしっ、と。

 対する白髪の怪物は、右の拳を右手で受け止める。

 

「お前見てエな奴は掴んじまえば何も出来ねェ」

 

 甚爾は掴まれた腕ごと振り回そうとするがまるで何の力も入っていないみたいにびくとも動かない。

 瞬時に切り替え左足で回し下蹴りを放とうとする。

 

 だが。

 

 それよりも疾く。

 

「安心しろ」

 

 禪院甚爾、生まれて初めての力負け。

 真っ白な怪物の口がニタリと裂ける。

 学園都市第一位の演算能力を遺憾なく発揮し、全身のベクトルを操りグィと高速で右腕を自分の下まで引きずり下げ。

 飛び上がれば致死の左手が引き攣った甚爾の顔面を横薙ぎに鷲掴みにし。

 

「今回は手加減してやっからよォォォァア!!!」

 

 風速一二〇メートル。

 彼女の手元から吹き出した自動車や家屋の屋根すら引き剥がす猛烈な烈風によって、禪院甚爾は修練場の屋根を突き抜けて吹き飛んでいった。

 

 

 その日京都市内に急な突風が発生。

 最大瞬間風速は府内の史上観測記録を上回る。

 瓦や洗濯物が飛ばされたりしたものの幸いにも人的被害はなく。

 

 禪院家当主・禪院直毘人は府庁と総監部からお叱りのお手紙を賜った。

 

 * * *

 

 冗談やろ??!! と、禪院直哉5歳は目の前の戦いに愕然としていた。

 

 うちには出来損ないのアルビノの姉と呪力が全くない落ちこぼれの猿がいると聞いていた。

 どんなしょぼくれた顔しとんのやろ、と思っとった。

 

 真っ白な姿の子が、パパに連れられて入ってきたのを見たとき愕然とした。

 アレは紛れもない強者や。

 叔父さんはどの口で出来損ないとか言うとるんやろか。

 両目が腐ってんのとちゃうか。

 目の前にいる相手の強さも分からんとか、術師向いてなさすぎや。

 やめたらええねん。

 

 そうして始まった模擬戦で、でかい顔してた叔父さんも兄さま方もバタバタと一撃で倒されていく中で。

 唯一拮抗していた男は呪力が全くあらへんかった。

 

 もしかしてアレが甚爾くんか?

 聞いてたのと違いすぎるやん。

 叔父さんも兄さん方も雑魚のくせして揃いも揃って頭も弱いんか。

 

 あれで猿なら兄さん方はアメフラシや。

 

 大人たちの言葉への信用と培われた価値観が、一瞬で吹き飛ぶ感覚がした。

 眼の前で起きとる眩い戦闘に、視界がスッキリと、輝いていくように感じた。

 

 御託も。

 性別も。

 呪力も術式も。

 地位も肩書も。

 なんの価値もあらへん。

 

 価値あるものは強さだけや。

 

 そしてこの二人だけが、向こう側なんや!

 

 程なくして、甚爾くんは百合華ちゃんに吹き飛ばされて見えなくなった。

 修練場で立っているのは百合華ちゃんと俺とパパだけになった

 

「直哉、お前はいいのか?」

 

「パパそれ分かってて言っとるん?」

 

 そう返すとパパは頷き

 

「勝者、百合華!」

 

 と叫んだ。

 

「これで百合華の実力に疑義のある者はいないな。では今日をもって、禪院百合華を次期当主とする!」

 

 俺の術式が投射呪法と判明してから、俺は次期当主として扱われてきた。

 それが、いともあっさりと覆った。

 昨日までなら地団駄踏んで殺しにかかったはずや。

 

 でも今はそないなことはどうでもいい!

 

 俺は走り出した。

 情けなく転がる術師の山の向こうで、『油断して一発貰ってガチギレする大人げないご主人様も素敵ですう!』と叫ぶ異形の式神(?)にアイアンクローをかましている白髪の怪物のもとに駆け寄って行き。

 

「百合華ちゃん!!」

「あァ?」

 

 振り返る百合華ちゃんに、嬉しさで顔面を綻ばせながら言った。

 

「めっちゃ強いんやねえ」

 

 なんか奇妙な物を見る目で見られてる気がするがかまへん。

 

 俺はアメフラシ方なんかより強者に近づきたいんや。

 

 そしていつか。

 

 俺も絶対あっち側に行くんや!




十キロ近く飛んで琵琶湖周辺に着弾したほぼ無傷の甚爾「術師は嫌いだ」

>>囲め囲めぇ!!
愛すべき躯倶留隊の皆様

>>少年が術式で足止めしようとするも
視力が下がった程度だが、術式の練度が高ければ失明していた。

>>嫌な男の顔
木ィィィ原くゥゥゥゥゥゥゥゥン(木原神拳を使うよ☆)
とあるに詳しくない方は木原数多で検索をどうぞ。
きっと素晴らしいMADの数々に巡り会えることでしょう。

>>拳が皮膚に触れる瞬間に逆方向に引き寄せる
木原神拳とも言う

>>楽勝だ、自称次期当主
旧約の浜面より、「楽勝だ、レベル5」

>>今回は手加減
前回木原神拳を使ってきた数多おじさんは流れ星にされた。


このルートの直哉くんのイメージソングなんですかね。
):阿修羅:((King Gnu)とか?
King Gnuが呪術に合いすぎるだけかもしれない
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