半分くらいとあるか呪術のどっちかをを知らない人のための理論回。
高評価、すごくありがとうございます。
1995年 11月 8日
修練場を半壊させた次期当主内定の争いから半月が経過した。
その一件の影響で、禪院家と総監部、他の御三家、高専の仲は険悪である。
現代医療と丈夫な呪術師の体質のおかげで、幸いにも後遺症の残る者はいなかった。
だが、甚爾を除くほとんどの者が任務を受けられないほどの怪我をし、その穴を埋めるために禪院家以外の術師の労働時間が3割ほど増えることになった。
普段はほとんど雑用しか任されない甚爾すら忌庫にあった呪具を持たされ西日本一帯を駆けずりまわらせられている。
問題が各地で起こって腹に据えかねた総監部は時季外れの唐突な繁忙期が現れた元凶である禪院家の総責任者、直毘人に、分散していた過酷な業務を集中して回し始めたため、この二週間直毘人の目の下から隈が消えない。
そうして当然の流れとして、直毘人は実地訓練と称して百合華にそれらの業務を回し始め、怪物は史上最年少にして、6歳にして単独任務を行うこととなった。
* * *
昼下がり、午後2時半を過ぎたといったところ。
和歌山の山奥の薄暗い神社で、目の前でグゲェェェと汚い奇声を発しながら消滅していく一級相当の呪霊を見ながら、
先日の戦いは学園都市で得た本来の能力と同様の感覚で術式を使い勝つことができた。
しかし、
雑魚を潰すだけなら十分だろうが、経験から言って必ず未知の、限界が訪れるのだ。
かつて一度敗北したエイワスや魔神ネフティス、つい最近学園都市で猛威を振るったアンナ・シュプレンゲルの姿が脳裏をよぎる。
あそこまでの埒外はそうそう現れないだろうが、だがいない訳ではないだろう。
そう考えて、
学園都市の能力者は脳を変化させることでまともな現実認識を失い、
そして能力とはそのズレた世界を観測することでミクロな世界を操る技だ。
魔術サイドの魔力は体内をもとから流れる
そして魔術とは、魔力を消費することで
どちらも「現実ではない何か」から「超常現象」を引き出すという方式は変わらない。
そもそも能力は前統括理事長たる魔術師アレイスターの
そこまで整理して、いよいよ呪術だ。
生まれてから教わったことと、この二週間禪院家の書物を読み漁った知識から呪力の特徴を纏めると。
1. 日本人は誰でも呪力を持っている。
2. 海外の人間も死ぬ間際には僅かに呪力を放出する。
3. 呪力は負の感情から生まれる。
4. 呪力は物体に流すことができる。
5. 術式は呪力によって動いている。
6. 呪霊は負の感情から生まれる存在であり体が呪力でできている。
7. 禪院甚爾は呪力を持たない。縛りは適用対象であるがそれ以外では無機物として扱われる。
こんなところだろう。
負の感情のスペシャリストの血を何百年も煮詰めた御三家があの有様というのは納得できる話だ。
これらから導かれる呪力の起源に関する仮説は次の三つだ。
1) 呪力とは魔力の一種である。
この解釈を当てはめた場合、術式と生得領域は
生まれながらに超常現象を起こせることから原石と呼んでもいい。
術師は呪力というガソリンを用いて術式から超常現象を引きずりだすという原理だ。
この仮説の弱点は二つだ。
一つ目は呪力以外の精製法の魔力が全く知られていないこと。
二つ目は魔術サイドに呪霊に相当する存在が天使と悪魔くらいしか見当たらないことだ。
元の宇宙でこの呪霊と同じ頻度で天使と悪魔が現れていたなら、その世界はとっくの昔に滅んでいることだろう。
解釈自体は可能であるだけに、断定するのは危険すぎる。
2) この世界の人間は元の世界とは別の生き物であり既存の知識はあまり役立たない。
この解釈を当てはめるなら、元の世界の人間が魔力を精製できるところを、こちらの人間は呪力を精製できる生物であるというわけだ。
この説が一番有力だ。
3) この宇宙は既存の宇宙とは無関係に法則の異なる宇宙であり既存の知識は全てあてにならない。
いままでのベクトルの感覚と、魔力の塊であるクリファパズル545が普通に存在していることから、この説が当てはまるとしても知覚できている範囲ではほとんど同じだと断定していいので、結局あまり影響がない。
というか、少なくともここは未確認木原が自由に干渉できる場所であるため完全に無関係とは考えにくい。
以上より、仮設1を脳の片隅に置きつつ仮説2を基本に考えた方がいいだろう。
つまり、術師の子として5年間生きてきた経験と、もとの宇宙の魔術を解析してきた経験から、呪力という魔力と似たエネルギーを「超常現象を引き起こすエネルギー」と感覚的に一緒くたに扱ってきたが、「この世界を呪力を含むエネルギーで構成されている」と再定義して精度を上げていくべきである。
また、もとの自分の能力との差異も発見すべきである。
そのように考えて研究を進めていたところ、目の下に隈を作ったフラフラな直毘人が現れ任務の束を押し付け補助監督の車に乗せると去っていった。
ちょうど実際に自分以外の呪霊や呪術で検証したいと考えていた
ザザザザザザ!、と、不快な音ととも
クリファパズル545だ。
『にひひ。また失敗ですかあ』
「表面上はいけそうだったんだがなァ、いざ精密挙動を取らせると拡散して狙いが定まらねェ」
『高度なのか言い訳なのか微妙に判断に困る大変ありがたいお言葉ですう』
「うるせェよ。とにかく実践できるのは当分先だな。こんな精度で魂なんかいじったら異形のバケモンが生まれかねねェ」
今
呪力の細かい振る舞いに関する仮定を作り、それに基づき情報を書き換える操作をしたところ、寸前まで痛めつけられていた一級呪霊は存在が崩れ消滅した。
先は長そうである。
『にひひ。負の感情のエネルギーなんざ、
かく言う彼女は、龍脈から魔力を精製することには成功しているが呪力は全く扱えていない。
クリリファパズル545の設計者たるコロンゾンが呪力なんて力を想定していなかったからだろうが、応用性がない。
「仕方ねェ。
* * *
自身の術式を希望者に植え付ける施術の検討において、現在最大の障害は魂への書き込みである。
一般には知られていないことだが、そもそも魂と肉体は表裏一体であり相互補完関係であり、それでいて互いに干渉し合う別存在にもなりうるという、極めて不確定性の高い存在である。
例えるなら量子論の粒と波。
禅仏教における有と無。
一体の存在でありながら人間の主観では別の存在にしか見えない。
何ならある時は本当に別物としてふるまう。
肉体は肉体で、魂は魂で、同時に肉体は魂であり魂は肉体なのだ。
さて、本題はそこではない。
術式の情報は肉体、具体的に右脳の前頭野のあたり、それに加えて魂にも保存されている。
だが、そもそも魂を観測するために呪力のパラメータに関して限りなく本物に近い推察を組み立てなくてはいけない。
そしてどうやら、呪力の精製に大きな影響を持つ因子となっているものは魂らしい。
魂を観測するためには呪力の、呪力をとらえるためには魂の、それぞれ理解を深めなければ一方も満たされないという行き詰まり。
例えば、魂に干渉する術式を持った存在がいたとして、魂をいじったときに肉体も変化するのか。
例えば、肉体がけがをする、あるいは腕や足などを欠損したとき魂の形も変わるのか。
施術が必要なのは片方どちらかか、それとも両方か。
それらによって取るべき施術の方法は全く異なる。
しかし、割り切ってしまえば話は簡単になる。
呪力と魂の研究は続けるとして、まずは脳だけに施す。
魂の正体が分かったとき、必要に応じて魂にも処置を施せばいい。
そして、ただ術式を用いてデータの一部を編集するという
故に、
* * *
1995年 11月 12日
禪院家呪術学研究会
そう題打って広間に集められたのは現在動ける禪院家の面々。
集めるにあたっては、自由参加にした。
扇のような香ばしい術師を集めても話が進まないのは明白だからだ。
戦闘部隊に属している面々は、予想通り殆ど来なかった。
直哉だけは満面の笑みで参加を表明し、1時間も前から怪物の周りでウロチョロニコニコ話しかけている。
何が楽しいのだろうか。
そしてやってきたのは術式もなく呪力量も少ない非戦闘員の、子供を含めた男女数十人。
告知の時間になったので悪魔を侍らせた白髪の童は会の趣旨を述べ始める。
この会は研究が目的であって戦闘技能は必要ないということ。
そして主に三つの研究題材を中心に呪術に関する事柄を幅広く研究していきたいということ。
まずは一つ術式と結界術、式神の研究。
世にある術式の構造と効果の研究だ。
現在は相伝術式のみ資料が充実しているが、これからは広く
次に応用呪術の研究。
今ある呪術の応用技を研究していきたい。
そして、もっとも重要なのは術式の
まずは被験者として、今すぐにでも現状から脱却したいという二三人の協力者を募る。
彼らが成功すれば他の尻込みしている人も受けやすくなるし、術式という生まれながらの才能主義の空気も変わっていくだろう。
施術の対象となる術式は『向量操術』であり、使い手によっては最強の術式になりうる。
そう語ると彼らは顔を見合わせ何やら相談の末に、青い顔で震える5歳の女児を二人差し出してきた。
才能がなくとも彼らの性根はまごうことなく禪院家の一員である。
* * *
術式と生得領域の情報を他者に植え付ける。
本人は
その実験は学園都市第一位の能力者の
その名を暗闇の五月計画という。
* * *
今回の被験者、禪院
「一応の確認だ。感覚・色覚・味覚・嗅覚・聴覚、どれも違和感ねェか?」
と
「「はい」」
と二人。
簡単に指示してみれば、動かすことなく手のひらの物体がポンっと跳ね上げられたことで、施術が成功したことを示していた。
二人を差し出した大人たちはほっとして、興奮した様子で術を施してもらう順を相談しだす。
すると。
ギョロリ、と。
二人の目玉が大人たちを睨みつける。
「オイ、何勝手にハシャイでんだよクソ野郎どもが」
知らない、翠の地を這うような声が響く。
「こっちが黙ってりゃ超、超ふざけた真似してくれんじゃないですか。エ?図体がでかいだけで調子に乗ってんじゃねェぞ三下がァ」
グラグラと。
震えるような喜愛の声が部屋を揺らしたような錯覚を受ける。
気弱にただ震えるだけだった二人は、内心自分たちを差し出した大人たちを恨んでいたらしい。
よく考えなくとも当たり前である。
禪院家の過酷な環境で、普段からため込み続けていたストレスが、埋め込まれた怪物の生得領域によって解放され、莫大な
「「スクラップの時間だぜェ!クッソ野郎どもがァァア!!!」」
阿鼻叫喚の地獄が現出した。
助けを求めるように元凶の怪物に目を向けるも、怪物は二人の様子から三下にハシャいでトンじまった黒歴史を思い出し意識を別宇宙に飛ばしている。
主観ではたった数か月の昔だが、過去の自分の言動はかなり落ち着いた今になって振り返ってみればキツイものがあった。
悪魔と直哉は、ドン引きしながらも
一切の手加減はされなかった。
華々しく散らせてやッから感謝しろォ!!、と。
襖を突き破り。
血が飛び散り骨が折れ髪が千切れ歯が転がり。
黒い火花すら瞬いて。
数分後に復活した怪物によって鎮圧されるまで、禪院家の一室にハリケーンもかくやという暴風が吹き荒れ続けた。
こうして第一回呪術学研究会はまったく会員が増えないまま幕を閉じ、虐げられていた幼女二名は解放してくれた怪物に深く感謝し、怪物は生得領域の安易な付与を反省し、直哉はちょうどいい修行の相手を二人も手に入れ、家の雑用を担う者たちが軒並み瀕死の大けがをしたため回復しつつあった禪院家は再び機能不全に陥った。
「念のため聞いとくンだが、お前ら違う世界の記憶とか無いよなァ?」
「超何言ってやがんですか?」
ショタ直哉がINしたアクセラファミリーに絹旗と黒夜もINしたかった。
それはそうと禪院家壊れちゃう。
追記―――
上条さんと喧嘩したころのアクセラさんってかなり精神年齢が低く友達を能力のせいで失った10歳くらいのままだと思ってます。それが精神年齢が同じくらいの番外個体と生活してるうちに保護者ムーブが板についてきて、旧約ラストで番外個体を救った後まで来るとだいぶ年相応になってきますね。健康的です。ここまでおおよそ2か月。ここから平和に保護者ムーブしてましたが11月の終わりになると様子がおかしくなってきます。具体的には上条さんの後方保護者面し始めます。そうして12月10日ごろからイギリスでの決戦10日間で、後方支援枠で上条に対し後方理解者面したり統括理事長になってからは生徒(上条)を守る熱血教師面して外交と称し女王を殴ったり。そうして統括理事長として作戦を遂行して爆死したり妹達を世界に認知させたりして、今作のモデルである12月29日の一方通行にたどり着きます。8月21日からわずか4か月で精神年齢が20歳以上爆上がりしたアクセラ様です。どちらかというと精神年齢爆高なナナミン系な保護者に近づいていきます。(対して記憶を失ったり数億年オティヌスと過ごしたりしたのにほぼ何も変わらないおじいちゃん少年な上条さん)
何が言いたいかというと、アクセラ様にはハーレムじゃなくてファミリーを築いてほしいです。原作だと結局近い場所にいる人は番外個体とクリファパズルだけなので。
(でも、なぜかハーレム感出てるになって欲しいという欲求もある)
異論は認める。
それがこの場所、ハーメルン。