因幡の月兎 不思議な靴を使った架空スポーツで、俺だけ空を跳んでいます。   作:新月

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第1話リメイクしました。


第一章 空を飛びたい白兎編
第1話 親方、空から女の子が!!


 みんなは無いだろうか? 空を飛びたいと思った経験は。

 今まさに青空を横切っているツバメのように。

 もしくは、マントを付けて飛び立つスーパーマンのように。

 

 とある公園を歩いていた中学生、因幡白兎(イナバハクト)と言う15歳の少年。

 彼もまた、空を自由に飛びたいと思っている人間だった。

 

 ……しかし、“人は空を飛べない”。その事を彼は深く理解している。

 しかし、どうしてもハクト少年は諦め切れなかったのだ。

 空への憧れは止められないのだ。

 

 

 ──そんな事は、この世界では不可能なのに。

 

 

 少し、ネタバラシをしよう。

 そもそもこの世界には、“空を飛ぶ道具や乗り物”などが存在していないのだ。

 

 この世界から見て、とある異世界には“飛行機”と呼ばれる物があった。

 あるいは“ヘリコプター”。あるいは、“ロケット”。

 生身の人間というわけでは無いが、どれも人が空を自由に飛び回れる乗り物だと言えるだろう。

 

 しかし、そんなものは綺麗さっぱり、この世界には存在していないのだ。

 ──まるで、誰かがその存在を消したように。

 

 だから、ハクト少年の夢は、叶えられない物。

 夢のまま終わる、空想の話でしか無かったのだ。

 

 

 

「──跳べるわよ? 空に」

 

 

 ──その常識を、覆すような少女がいた。

 

 たった今、ハクト少年の前に現れた少女は、“空から降って来て”そう言ったのだ。

 驚きの表情をするハクト少年の前に、少女は履いている“”からメダルのような物を取り外す。

 

「“マテリアルブーツ”。人が魔法を使えるようにする道具よ。そしてこのメダルは、“ギア”と呼ばれる物。この中には、魔法のデータが詰まっている」

 

 魔法。否科学的な発言をした少女。

 しかしその表情は大真面目で、嘘を言っているようには見えない。

 

「あなたも見たでしょ? “私が空から降ってきたのを”。私はこのギア……【インパクト】の力を利用して、跳び上がっていたの」

 

 そうして少女は、少年によく見えるように、メダルを裏表をよく見せた。

 少年の夢に、もっとも近づくための方法。

 

「流石に鳥のように……とまではいかないわ。けどね、断言する。“あなたは空中を自在に動けるようになる”。私が保証する」

 

 その言葉は、麻薬だった。

 夢を見てはいても、現実という壁を乗り越える方法が見つけられなかった少年にとっては、何よりも甘い毒の言葉だった。

 

 だから……と、少女は言葉を続ける。

 ハクト少年に向かって。

 

「──私と一緒に、マテリアルブーツ、やってみない?」

 

 その言葉に、ハクト少年は……

 

 

 ☆★☆

 

 

 ──少し、時間を巻き戻す。

 

 それは、ハクト少年が公園を歩いている時の話だった。

 お気に入りの白ウサギパーカーを着て、少年は歩いている。

 このパーカーは、今は家にいない彼の母が編んでくれた物だった。

 と言っても、物心つく前に母の行方は分からなかったが。

 それでもこのウサギパーカーは大事にして、少年のトレードマークになる程、毎日着ていたのだった。

 

 ……話が逸れた。

 

 ハクト少年が公園を歩いている際、スマホでとある動画を見ていた。

 それは、部活の後輩の少女が是非見てくれとオススメしていた動画。

 

 <マテリアル・ブーツ ソロトーナメント日本大会 ウィンターカップ>

 

 そう、ハクト少年は丁度、マテリアルブーツに関して知ろうとしていた所だった。

 画面の向こうでは、二人のプレイヤーが氷やら風やらを互いに放っている様子が見える。

 まるで魔法の撃ち合いだ。ハクトはその非現実的な光景に夢中になってしまい……

 

 つい、空への警戒を忘れていた。

 そう、冒頭で出会った、不思議な少女が今まさに空から──

 

 

「きゃああああああああああッ!!? ちょっとごめんそこの兎どいて避けてええええええええぇぇぇ!!!」

 

 

 ──そう叫びながら、落ちて来ていた。

 

 ミステリアスの欠片も無かった。

 

 しかし、それでも空は空。

 周りにビルや、丁度木も無い。跳ね上がる為の、トランポリンなども無い。

 “落ちるための高台が無い”筈なのに、10m程の高さから少女が落ちて来たのだ。

 

 これにはハクトもビックリ。衝撃的だった。色んな意味で。

 女の子が空にいる、という事実に驚き、つい見つめてしまい……

 

 ズガンッ!! と、頭に響く音が。

 

 次の瞬間、ハクト少年の意識は一瞬途絶えていた。

 落ちてきていた少女がものの見事に、少年の頭を踏みつけたのだ。

 対して少女は驚異的な身体能力で、踏みつけた反動で回転しながらズシャーッと着地。全くの無傷。

 逆にハクトは、全ての衝撃を受け止めたせいで気絶して倒れていた。死んではいないのが救いか。

 

「きゃあああ!? ホントごめんなさい大丈夫!? 病院、救急車ぁー!!」

 

 そうして、一人の少年を犠牲に華麗な着地を決めた少女は、大慌てしながらも少年を介抱したのだった。

 幸い、ハクト少年は比較的早めに意識を取り戻し──

 

 ☆★☆

 

「────で、それが俺に向かって空から落ちて来た言い訳でいい?」

 

「大変すみませんでした」

 

 

 そのハクト少年の返事を聞いて、少女は流れるような動作で土下座の体制に移っていた。

 冷や汗を垂らしながら、少女は地面の上で小さくなっている。

 土下座の良し悪しは少年には分からなかったが、プロが見たらそれはもう美しい土下座と称されるほどの見事な形だった。

 

 ちなみにハクト少年は、少女に空から踏みつけられた後、既に病院に行って診察を受けている。

 実を言うと、時系列的にはこの衝撃的な出会いから、数日時が経っていた。

 検査の結果、「ふぅ〜はっはっはぁ! 特に異常なしだな!! 帰ってよし!」 とやたらハイテンションな医者にそう言われ、若干の不安を感じたものの、二人は一旦解散して、後日改めて謝罪の場を設けることにしたのだ。

 

 その後日が、今日なのだ。

 そして再会がてら軽く話をし、少女が説明したのが冒頭の言葉だったのだ。

 

 少女の謝罪に、ハクト少年は軽くハア……とため息を吐き。

 

「うん、まあ。確かにちょっとこっちもビックリして見惚れていた所もあったから、こっちも悪かったけど……」

「え? スカートの中はスパッツ履いてたから見えなかったと思うけど?」

そっちじゃない。そっちの意味は断固否定する」

 

 少年は、密かに頭にイラッとした怒りマークが浮かんでいた。

 この少女、本当に謝る気あるのかコイツ、と思ったが、少女は大真面目に答えていたようだ。

 それを見て一先ず怒りを押さえ、とりあえず土下座のままの少女に対して、少年も蹲み込んで声を掛ける。

 

「……ねえ。さっき言ってた言葉、空を跳べるって……本当?」

「──本当よ。嘘は言ってないわ」

 

 土下座の体制のまま、少女はそう断言する。

 その言葉は力強く、真実を言っている説得力があった。

 

 ハクト少年はひとまず少女の土下座をもう止めていいと言い、ありがとうと少女は立ち上がる。

 そうして再度、少年に見せた“ギア”をよく見えるように見せつける。

 

「────【インパクト】。靴の裏からエアバックみたいな衝撃波が出て、相手を吹っ飛ばして距離を稼ぐギアよ」

 

 少女はそう言って、安物で誰でも手に入りやすい物だけどね、と軽く付け足した。

 

「普通に使えば、ただ相手が吹っ飛ぶだけなんだけど……“悪用方法”があるの。それは、ちゃんと片足で地面を支えて打たないと、()()()()()()()()()()()()()っていう欠点があるのよ」

「あー、つまり反動が大きすぎると。て事は、君が空から降ってきた時って……」

「うん。反動を逆利用して、【インパクト】の発動に合わせてジャンプしながら移動していたのが真相なの」

 

 それが、少女が降ってきた理由。

 本来仕様外の危険な動作を悪用して、実行したのが先ほどの結果だった。

 

「話を戻すと、さっき言った“空を跳べる”と言う真相は……“空中でこのギアを再発動し続ければ、実質空を自由に移動出来る”と言う事よ」

「────ッ!?」

「流石に初心者には無理だろうけどね。連続発動も実はかなり難しい技術だし。けれど、練習さえすれば“誰でも出来るようになる”、その筈よ」

 

 だから……と、少女は言う。

 

「──改めて聞くわ。空を飛ぶと言う夢を叶えるために、マテリアルブーツ、やってみない?

 

 それを言った少女の顔は、まるで悪巧みをするような、とても楽しそうな物を見るような、入り混じった表情をしていた。

 

 それを見てハクト少年は、ふうー……、と深い呼吸をした後……覚悟を決めるように。

 

 

「──ああ。その話、受けるよ」

 

 

 少女の提案を、受け入れた。

 

「やった♪ じゃああなた、今週の日曜日予定空いてる?」

「日曜日? 特に用事は入ってないけど」

「それじゃあ、マテリアルブーツの初心者に丁度良い施設があるの。現地集合で、そこでまた会わない? 私がレクチャーして上げる!」

 

 そう言った少女の顔は、とても嬉しそうだった。

 まるで自分の事のように喜んでいる。

 その提案を否定する理由もなく、ハクトは受け入れた。

 

「決まりね! 後は、ぶつかっちゃったお詫びも兼ねて、この【インパクト】のギアもそのまま上げる!」

 

 そう言って少女は、【インパクト】と呼ばれたそのメダルをハクトに手渡した。

 それを受け取ったハクトは、大いに驚く。

 

「いいの? そこまでしてくれなくても……」

「いいのいいの。元々安物だし、いくつかまだストックはあるしね。現地集合の際だけど、ブーツとか、他に必要なものはレンタル出来る筈だから基本的にそのギアだけ持ってきてくれたらいいわ」

 

 後は現地集合の場所と時間を共有して、と……

 そう言いながら少女はスマホを操作して、場所の情報をハクトの端末に送信した。

 

「これでOKっと……あ、そうだ」

 

 少女はそう前置きして、

 

「……改めて、あなたの名前を教えてくれないかしら。病院で慌ただしかったら、はっきり自己紹介してなかったじゃない?」

「ん? ああ、そういえばそうだったね」

 

 そうして、少年は自信満々に自分の名を名乗る。

 少女も、そこで初めて自身の名を名乗り返した。

 

「オレは因幡白兎(イナバハクト)。みんなからは、ハクトってよく呼ばれてる」

「それじゃあ、私は卯月輝夜(ウヅキカグヤ)。カグヤって呼んでくれると嬉しいかな?」

 

 卯月輝夜(ウヅキカグヤ)、つまりはかぐや姫。それが少女の名前だった。

 空を飛びたいと願った兎を誘ったのは、かぐや姫だったのだ。

 と言っても、本当のかぐや姫ではなく、名前がたまたま一致しただけだろうが。

 

 そう二人は自己紹介して、握手を交わす。

 互いの大事な名前を、心に刻み付けるように。

 

「はくと……うん、ハクト。ハクト君! それじゃあ、また日曜日よろしくね!」

「ああ、またね。カグヤ!」

 

 そうして二人は、互いに手を離して別れていった。

 

 ──これが空から落ちて来た少女、輝夜(カグヤ)”との出会いだった。

 この出来事をきっかけに、白兎(ハクト)”の人生、そして夢が大幅に変わっていく事になるとは、まだ誰も気付かなかった……

 




 ★因幡白兎(イナバハクト)
 
 15歳
 158cm
 黒髪
 中立・善

 主人公。
 白兎パーカーを着た、空を飛びたい夢を持った少年。
 親方、空から女の子が! は、言えなかった模様。
 自分の願いを叶える為に、マテリアルブーツに関わっていく事を決意した。


★卯月輝夜(ウヅキカグヤ)
 
 15歳
 156cm
 長い明るい赤髪
 中立・善

 ヒロイン。
 空から降ってきた系女子。
 ただし、受け止められるのではなく踏みつけたタイプ。事故なんです!
 ハクトに空を跳ぶ手段を授けて、マテリアルブーツに誘った張本人。
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