因幡の月兎 不思議な靴を使った架空スポーツで、俺だけ空を跳んでいます。   作:新月

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第14話 勝負をしよう

 ドゴシャアアアアアッ!!!! 

 

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 プレイヤー1:ハクト

 HP:352 → 153/1000

 

 プレイヤー3:アリス

 HP:808 → 602/1000

 

 プレイヤー4:キテツ

 HP:801 → 603/1000

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 落下ダメージに加え、巨大な質量による押し潰し。

 ギア自体の自壊効果により、ブロック自体は消滅してギアブレイクしてくれたが、それでも3人に与えたダメージは大きかった。

 

「ハクト君?! 3人とも、大丈夫!?」

「っ! くっそ!」

 

 駆け寄ってくれたカグヤに返事をする余裕もなく、ハクトは悪態を付く。

 後もう少しで、屋上に到達するところだったのに! いいタイミングで邪魔をされた! 

 

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 プレイヤー1:ハクト

 スロット2:インパクト  (残りE:7 → 0/10 残りCT:3/3)

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 インパクトも今ので使い切ってしまった。

 CTが完了する1分半後まで、ムーンラビットにビルを登る術は無くなった。

 

「っ!? みんな、また上だ!?」

「追撃!? またあの雷が来るわ!?」

「くっそお!! 装着1、【メタルボディ】!! 装着3、【フォートレス】!!」

 

「マジック、【落雷】ッ!!」

「マジック、【落雷】ッ!!」

「マジック、【落雷】ッ!!」

 

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 プレイヤー4:キテツ

 HP:603 → 448 → 303 → 151/1000

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 全員を庇う状態になったキテツに対して、単発の雷が3回。

【メタルボディ】は、あくまで鉄のように変わるだけで、鉄そのものになるわけでは無いから防御力アップ効果は、雷に対しても有効。

 しかし、それでも150越えのダメージ3回は大きく、キテツもほぼ瀕死に近い状態になってしまっていた。

 

「なんだよ、これ……」

 

 ハクトは愕然としていた。

 多少贔屓の目はあったかもしれないが、ムーンラビットのメンバーは全員並のプレイヤーより強いと思っていた。

 現に、準決勝まで、チームの勝利という意味では順調に進んでいた。ヒメノのあれは、あくまでエクストラステージだったから除外するにしても。

 

 ……それが、いざ決勝に来てみたらどうだ。

 既に、アリス以外の3人が瀕死状態だ。

 ここまで、圧倒的な差が出るものなのか……

 

「……いいえ。元々強いギアって強いからね。回避も出来ずクリーンヒットを何度も食らってたら、一気にHPが削られるのは珍しい話じゃ無いわ」

 

 準決勝で捕まえたヒメノさんに、あっさりとどめをさせたようにね。

 カグヤはそう言った。

 

「それに、今ので相手の攻撃ギアのエネルギーも尽きた筈。相手のシークレット枠は一つを除いて、全部公開されたわ。手札はほとんど割れた」

 

 カグヤの言う通り、キャット・タワーズのギアは殆ど公開された。

 全員が共通で付けている【落雷】も、全てCTに入っている。

 回避用の《R》ギアも使い切ってる。攻めるなら今だ。

 

「じゃあ……」

「“けれど、この攻めに行くチャンスを活かせない”。唯一移動できるハクト君の【インパクト】が尽きてる。これも計算に含まれてるわね、あれ」

「っく……!!」

 

 分かってはいたことだったが、【インパクト】が尽きているという意味が、この状況だと限りなく重い。

 たとえリチャージが完了したとしても、それは同時に、相手の攻撃ギアも再使用可能を意味している。

 

「……みんな、気付いてる? “実は私達、勝負の土俵自体に上がらせてもらえないのよ?” 全部、屋上から落とされて、一方的な上からの攻撃。これで殆どHPが削られている。戦闘行為自体、私達はまだ出来ていない──

 

 カグヤのその言葉に、全員ハッとなる。

 そうだ、まだ攻撃の応酬らしきことを、自分たちは何一つ出来ていない……

 

「くっそ! 正面戦闘なら、勝つ自信あるってのに……! あいつら、準決勝の姫乃に比べたら多分マシだぞ!?」

「彼らのギア構成は、リーダーを除いて全員同じ……脚力強化、雷の長剣、一回限りの回避。【落雷】にだけ気をつければ、一対一ずつなら僕達なら十分勝てる筈だね」

「けれど、その状況に持っていけない。必ず4体1で一気に対処される。もしくは、ビルを上がっていく最中に迎撃される。根本的に何か考えないと、本気でこのまま終わるわよ……」

 

【インパクト】を含め、ここまで使われたギアが全員回復するまで、後1分弱。

 それまでに、なんらかの対策を思いつかなければ、ムーンラビットの一方的な敗北だ。

 

 全員、なんらかの手段を一斉に考え始める……

 

 当初の予定通り、ムーンラビットのメンバーを一人一人上げていく方法は使えない。

 ……もしかしたら、体重を増加できてかつ防御力の高いキテツが最初なら、一人の時でも耐え切れるかもしれなかったが……今のHPが削られているキテツでは、心許ないだろう。

 

 アリスとキテツを、再度持ち上げる方法を使う? 

 今度は【インパクト】を10発フルに使えるだろう。それを使って今度は強引に突破……

 

いや、ダメだ。Mr.パルクールの【落雷】がある

 先ほどは彼は丁度エネルギー切れだったから来なかったが、彼の雷だけ攻撃範囲が広過ぎる。

 あれでは、2人抱えた状態の機動力では逃げ切れない可能性が高い。

 そうなれば、一気にハクトのHPにとどめが刺されて実質リタイアだ。

 

 どうする……!? 

 

 

 ──チームの負け? それでワタクシも降参すると? まっぴらゴメンですわ!! ワタクシはまだこうして立っている!! ええ、これはただのワタクシの意地! 最後まで立ち続けていると言うワタクシの誓いですわ!! 

 

「……?」

 

 ふと。ハクトの脳内に、準決勝の時のヒメノの宣言が思い返される。

 たった一人になったとしても、個人の意地で輝きを見せたあの少女……

 なぜ今思い返してしまうのだろう? チームとしての勝利を諦め、あの少女のように最後に輝けと? 

 

 ……いや、違う筈だ。ハクトはそう直感した。

 何か参考になるようなものがある筈だ。チームとしての勝利の為に。

 

 あの少女のことを思い出せ。

 ムーンラビット4人相手に、“たった一人で立ち回った少女を”──

 

 

「──あ」

 

 ハクトは気づいた。思いついてしまった。

 

「……ねえ、キテツ。アリス」

「ん、どうした白兎!?」

「何か思いついたのかい?」

「……二人とも、さっき言ってたよね。一対一なら、十分戦えるって……」

「ああ、自信はあるぜ!!」

「そうだね。多分ほぼ8割方勝てると思う」

「……カグヤもそう思う?」

「ええ、行けると思うわ。少なくとも、ギア構成が完全に割れてる3人に対しては」

「……じゃあ、さ」

 

 

「──それなら、1対3で、“こっちが3人なら確実に勝てる”って事でいいよね?」

 

 

 ☆★☆

 

 

「──もうすぐギアのリチャージッショ。全員、準備はいいか?」

「了解。問題ないぜ」

「下の方で、ムーンラビットのやつら何か相談してそうだぞ?」

「別にいいんじゃねーの? そもそも屋上に上がらせないのは変わらないし」

 

 キャット・タワーズの面々は、屋上に構えてそう会話していた。

 大ダメージを既に与えていると言っても、油断はしない。

 ムーンラビットから目を離さず、全員がビルの下にいる彼らのことを目視している。

 

「次、ハクト選手が誰か一人抱えて来たら、迷わず【落雷】を連発しろッショ。一番俺たちが警戒しなきゃいけないのは、ハクト選手と“もう一人”が屋上に残り続けることッショ」

「「「了解」」」

 

 キャット・タワーズが警戒しているのは、ハクト選手含めたムーンラビットメンバーが二人屋上に残ること。

 つまり、一人抱えたハクト選手が戻らず、そのまま戦闘に加わって、四対二の状況に持ち込まれることだった。

 

 これが一番想定できる可能性で、相手がやってくる唯一の勝ち筋だと思う。

 勝つ可能性は限りなく低くとも、一番勝率が高そうな手段はそれだった。

 

 だから、キャット・タワーズはハクト選手から目を離さない。

 誰かを一人抱えた瞬間、そこから第二ラウンドのスタートだ。

 もしくは、二人以上抱えてこられたのなら、逆に格好の餌食だ。Mr.パルクールの広範囲【落雷】が、今度は襲いかかってとどめを刺すだろう。

 

「さあ、ハクト選手。早く上がってこいッショ。こんなところで、諦める選手じゃないだろう……?」

 

 Mr.パルクールは、そう思っていた。

 彼は、ハクトのファンだ。あの空中軌道を見せてくれた、ソロトーナメントの映像を見て以来。

 そんな彼が、この程度の逆境で諦めるような少年とは到底思えなかった。

 

 その期待は、大きく裏切られる事になる。無論、良い意味で。

 

 

 キャット・タワーズは、だからこそハクトの行動を警戒していた。

 誰かを抱えようとする瞬間を。持ち上げる瞬間を。だから……

 

 

──ハクト選手単独で、跳び上がって来る可能性を無意識に排除してしまっていた

 

 

「──は?」

 

 気づいた時には、もう遅い。

 ビルの高さは15m。そして、ハクト選手のRank2状態の【インパクト】は、一人だけなら15mは跳べる。

 

 誰かを抱えた状態での移動速度しか見ていなかった彼らは、単独でのハクトの選手の高速移動を一瞬見逃し、追いつけなかったのだ。

 

「──っ?! なっ!?」

「“スカイ・ラビット”!! 【インパクト】!!」

「ぐはあっ?!」

「パルワっ?!」

 

 動揺しているキャット・タワーズの隙を逃さず、空中で衝撃移動でビルに伸び映るハクト。

 下を見る為にビルの縁に陣取っていた彼らの背後をとると、その内の一人を【インパクト】で蹴り飛ばす!! 

 パルワと呼ばれた彼は、空中に投げ出されてしまった! 

 

「く、くっそ! 《R》【エマージェンシー・エスケープ】!!」

 

 パルワは、とっさに《R》ギアを発動。

《R》【エマージェンシー・エスケープ】、効果はハクトの【インパクト】と同様、衝撃移動を行える。

 一見下位互換に見えるが、【バランサー】内臓の【インパクト】と思ってもらえたら良い。

 ハクトの技術を、誰でも一回は再現出来ると思って欲しい。

 

 そのギアで、吹っ飛ばされた空中からビルの屋上に戻ろうとすると……

 

 目の前に、蹴りが

 

「“クイック・ラビット”ぉッ!!」

「ぐはあっ?!」

 

 いつの間にか空中に飛び出ていたハクトによって、ギアの発動を失敗させられる。

 そのまま真下に蹴り落とされて、パルワはビルから落下していった。

 

「落とされた!?」

「心配すんな、脚力強化でさっさと戻ってくる!」

「……それは、無理そうッショ」

「「へっ?」」

 

 

 ☆★☆

 

 

「くっそ、落とされた……!」

 

 パルワは落下中、悪態をついていた。

 流石にハクト選手が単独で襲いかかってくるとは予想外だった。

 うまくやり返されてしまった形だろう。

 

「けど、一回落ちたくらいなら、もう一回上がれば……」

 

「“火球・赤虹!!” 《R》【アクセル・アクション】!!」

 

「はっ……!?」

 

 ボゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!! ←(10発の強化ファイアボール)

 

「グゴおおおおおおおおおっ?!!」

 

 落下途中に、カグヤのファイアボール。

 

「全力! ”鉄拳”!!」

「切り裂け! ”ロング・エッジ”!!」

 

「「完全同期!! “クロス・コンビネーション”!!」」

 

「ぐがあああっ?!!」

 

 落下位置に、合体奥義。

 

「ガシッとな! おら、やれアリス!!」

「新技! “五連斬”!!」

「ぐがアアアアアあッ!?!」

 

 固定されて、何度も斬り付けられ。

 

「迸れッ!! 【ヒートライン】ッ!!」

「がああああああああぁああああああぁああッッッ??!!!」

 

 最後に、炎の火柱による延焼。

 攻撃技のフルコースだった。当然……

 

 ==============

 プレイヤー6:パルワ

 残HP:1000 →→→ 0/1000

 ==============

 

 流石にここまでやられたら、HP MAXと言っても一瞬で消え去り。

 会場中の予想に反し、最初の脱落者となったのはキャット・タワーズの一人となったのだった……

 

 ☆★☆

 

「やってくれたッショ、ハクト選手……」

「当然。今の決まらなかったら、逆にこっちが終わってたよ」

 

 Mr.パルクールとハクトが対峙する。

 他のメンバーも、全員ある程度距離を取るようにハクトと向き合っていた。

 もう今のような不意打ちは効かないだろう。

 

「……キャット・タワーズ。あなた達は凄い。この短時間でそれがはっきり実感出来た」

「それは光栄ッショ……」

「さっきまでのように、悠長に行ったり来たりとかしてたらあっという間にやられる。だから俺たちは諦めた。屋上で戦うのは止めようって……」

「……つまり?」

 

「だから根本的に戦法を変えた。発想を変えた。キャット・タワーズ、あなた達のいる場所で戦うんじゃない、俺たちのいる場所まで“落ちて来てもらうって”」

「っ!!」

「そして、今のではっきりと分かった! 一対四だと、そっちが圧倒的! でも、逆に“三対一”ならこっちが! みんななら封殺出来るって!! だから俺が、“突き落とし役だけをやる!!”」

 

 キャット・タワーズ!! そう言って、ビシッとハクトは指を指した。

 準決勝の時の、ヒメノを再現するように。

 

「これは勝負だ!! 俺1人対、残りキャット・タワーズ3人と!! “俺がビルの上から3人を落としたら勝ち!!” 逆に“その前に俺を倒せたら実質そっちの勝ち!!” これはそういう勝負だ!!」

 

「ッショお!?」

 

 

 ☆★☆

 

「──ワタクシの言葉を借りるなんて、良い性格してますのね。ハクト選手」

「ッチ! 姉さんの真似なんて、生意気な……」

 

 観客席で決勝を見ていた、レディ・オブ・シャークマンズ。

 さっさと帰らずに、自分たちを倒した彼らの活躍を見ていこうと、ヒメノが申し出た事だったが……予想外に、楽しいものを見れた。

 

 そして、この準決勝の時の再現に興奮しているのは、観客席だけではない。

 当然、こう言うのが大好きな“彼女”も盛り上がる。

 

『こ、これは盛り上がって来ましたー!! ハクト選手個人からキャット・タワーズへの挑戦上ーっ!! うわー!! もう一回見られるなんてすっごい嬉しいー!! 二番煎じとは思えない盛り上がりねー!!』

『褒めてんのか、それ!?』

『さあ! あの時と違うのは、チームの勝敗が決まったわけではないと言うこと! ハクト選手の言葉は、状況を分かりやすく整理しただけ! しかし、試合中のこの勝負を制した方が、事実上の勝利と言えるでしょう!!』

 

 実況のカラーの言うとおり。ハクトが脱落したら、それだけでムーンラビットの事実上の敗北は変わらない。

 ハクト一人で落とすだけとは言え、3人を相手するのはかなりの骨だろう。

 

 そもそもハクト選手のHPが既に限りなく低い。それだけでも十分不利だ。

 ……だからこそ、準決勝の時のようなヒメノ選手の動きをハクトは求められる事になる。

あのノーダメージで、長時間粘り続けた彼女を

 

「あなたに出来ますの、ハクト選手? ワタクシ並みの動き、そう簡単に真似できますか?」

 

 そう言ったヒメノの表情は、とても楽しそうなものを見るような目をしていた──

 

 

 ☆★☆

 

「──いいしょ、いいしょ、いいッショ!! ハクト選手、最高ーッショ!! 当然、その勝負受けてやる!!」

「ありがとう! あなたならそう言ってくれると思っていた!!」

 

『さあ! 突如始まったリアルスマッシュ・プレイヤーズ!! 略してスマプレ!! この勝負を制するのは一体どちらなのでしょうーか!?』

『いや、確かに国民的ゲームの状況に似てるけど?! 屋上から叩き落とした方の勝ちだけども?!』 

『さあ! ここから目の離せない十数分間!! みんな、注目よ〜!!』

 

「いくぞ! キャット・タワーズ!!」

「いくッショ!! ハクト選手!!」

 

 その掛け声とともに、両者共にその場から走り出した……

 

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