因幡の月兎 不思議な靴を使った架空スポーツで、俺だけ空を跳んでいます。   作:新月

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第三章 異界の来訪者編
1話 パルクール特訓


「──どう、カグヤ?」

「……ダメね。私も繋がらない。アリス君、最近あんまり連絡取れないわね……」

 

 いつものファミレス。そこでハクト、カグヤ、キテツの3人は一緒に集まっていた。

 最後のメンバーであるアリスだけが、この場にいない状態だ。

 テーブルに突っ伏してだらけながら、キテツも手を上げて発言する。

 

「俺もー。たまに連絡取れたかと思ったら、“ちょっと忙しくなっちゃって”。とか、“私用が終わったら連絡するよ”とか、そんなんばっかだぜ。その割に、詳細聞こうとすると“説明するほど大した内容じゃないよ”とか言って、誤魔化すんだよなあ……」

「うーん、困ったわね……次の大会の相談をしようと思ってたのに」

 

 悩むように顔に手を当てて、唸り出すカグヤ。

 このままでは、今後の予定が合わせづらい。

 ひとまずハクトが、現状を確認するように声を出した。

 

「とりあえず、直近で参加したいっていう大会は、今のところ無いんだっけ? 少なくとも、今月は」

「まあ、そうね。あるにはあるんだけど、直近で参加出来るのは本当に初心者大会ばっかだから、もうちょっとレベルの高い大会に出てもいいと思ってるのよね」

「この間、チーム大会優勝しちゃったからなあ。ソロトーナメントの時もハクトが優勝しちゃったし、これ以上初心者狩りって思われるのもよくねえよな」

 

 ズズっ……とメロンソーダを飲みながら、キテツがそう呟いた。

 ある意味自信過剰な発言のように聞こえるが、それほどこのチームの力は強いと感じ取っている証拠だろう。

 

「それじゃあ、とりあえずは特訓期間みたいな感じになる? 個々の戦力アップみたいな感じで」

「そうね……連携の強化や、仮にもスポンサーが付いたから、遠くの地方の大会も参加出来そうになったから、詳細を調べたいわね」

「悪い、オレ調査関連全然力になれねえかも。かなり苦手だぜ……」

「まあ、その辺は私が調べて上げるわよ。けど、ちゃんとあとで調べた内容は聞いてもらうからね」

 

 カグヤの言葉に、へーいとキテツは頷いていた。

 とりあえず、ムーンラビットとしての行動方針は出来た。

 

「アリス君にも、一応メッセージは送っておこうかしら。返事はないかもしれないけど、一応ね」

「……しっかし、何やってるんだろうね、アリス」

 

 改めて、アリスが一体どうしているかに焦点が当たる。

 うーん、と全員が悩んで……

 

「──まさか、彼女が出来やがったのか!? クソッ、羨ましいぜ!!」

 

 ガバッ! と、大きく立ち上がって叫び出したキテツ。

 ファミレス内だから騒がないでよ、とハクトに注意されて、謝りながらゆっくりと座り直していた。

 それでも、キテツは爪を噛みながら歯噛みした様子でボヤいていく。

 

「いや、だってあのアリスだぞ? ぜってえモテてるってあいつ。彼女選び放題だろ。きっとそれに夢中になって、こっちを疎かにしてんだよ。ッチ、妬ましい……!!」

「そう決まったわけじゃないでしょ。というかキテツ、そう言えばそんな性格だったね君」

「私とハクト君に絡んだ時も、最初そんな理由だったわねー」

 

 そんな事を懐かしんでいたが、話が逸れている。

 改めて、アリスの事について考えていたが……

 

「……一応聞くけど、あいつこのままチームを自然離脱するつもりじゃねえよな?」

「っ?!」

 

 そんな言葉を、キテツは漏らした。

 今度はガタンッと立ち上がったのはカグヤだった。

 その表情は、考えてもいなかったと言いたいように、驚愕の表情になっている。

 

「そ、そんな!? まだチーム出来たばっかりなのに!? こんな早く解散の危機!? 何、何が不満なのかしら!? 待遇、待遇かしら!? 私、そんな自由に出来るお金持ってないわよ!?」

「落ち着いてカグヤ!? そんな学生チームでお金で組むような関係健全じゃないでしょ!」

 

 ハクトはどうどう、とカグヤの肩を掴んで、ゆっくりと座らせた。

 それでも、カグヤはう〜……と、心配そうに唸っている。

 

「まあ、今はアリスの事を信じよう。しばらくは放っておいて、続くようだったら改めて本人に聞きに行こう。まだチーム組んだばっかりなのは確かなんだから」

「うう……分かったわ……」

「しゃーねえなあ……まあ、とりあえず今はそうしとくか」

 

 それで、とキテツは促す。

 アリスの事は置いておいても、今度のチームとしての行動についてだ。

 

「行動方針はさっき決まったけど、具体的にどうするんだ? どっかのトレーニング施設にでもいくのか?」

「うーん、ちょっと待ってね。今調べたいから……」

「あ。それなんだけどさ……」

 

 スマホを操作し始めたカグヤを遮って、ハクトが声を掛けた。

 ん? とカグヤとキテツは疑問の声を上げる。

 ハクトは軽く手をあげて、ある事を伝え始めた。

 

「俺、それならちょっと用事あるから、暫く単独行動したいんだけどいいかな?」

「はあ? お前もか?」

「ハクト君も用事? ちなみに一体何?」

 

 うん、とハクトはうなづいて……

 

「俺、しばらく“パルクール”習う事にしたから。その特訓をしてこようかと」

 

 その言葉を聞いて、カグヤはポロッと手からスマホを取り落としていた……

 

 

 ☆★☆

 

「──歓迎するッショ!! ハクト選手!」

 

 ハクトは、とある公園にいた。

 指定されたその場所に向かうと、以前戦った“キャット・タワーズ”のリーダー、Mr.パルクールが待っていた。

 両手を広げて、本当に嬉しそうに立って待っていたらしい。

 

「まさか早速、初心者講習のあのチラシを見て来てくれるなんて嬉しいッショ! 今日は是非楽しんでいってくれ!」

「はい。今日はよろしくお願いします」

「……っと、そう言えば“カグヤ選手もいる”ッショ?」

 

 ハクトがぺこりとお辞儀する中、カグヤも隣に立っていた。

 どうやらハクトについて来ていたらしい。

 

「ええ。ただ私はハクト君の様子を見たくて、見学だけするつもりなのだけど。それでもいいかしら?」

「問題ないっショ! 是非見ていってくれ」

「ありがとう、楽しませてもらうわね」

 

 髪を掻き上げてふふん、と余裕のある表情をしているカグヤ。

 

 ……しかしハクトは知っている。

 ハクトがパルクール講習を受けると聞いた時、まさかハクトもチーム離脱をしようと恐れて、「捨てないでーっ!!!」っと、大泣きしながらしがみ付いていた事を。

 あまりにも大きな泣き声に、ファミレス内の視線を一時的に独占していた事を思い返し、ハクトは遠い目をしていた。

 

 とりあえずちゃんと目的を話して一応納得してもらったが、心配だから付いていく、と言ってきてカグヤはこの場にいるのだ。

 ちなみにキテツは来ていない。キテツもそれならと、別の用事をやりたいからしばらく別行動していた。

 

 それは置いておいて、ハクトは気持ちを切り替えて、Mr.パルクールと向き合った。

 

「とりあえず、改めてよろしくお願いします。Mr.パルクール」

「ああ。確か、マテリアルブーツの試合に活かしたいって話だったッショな?」

「はい。以前試合で戦った時、真似したらかなり動きやすくて便利に感じたので」

 

 そう、ハクトの目的は、マテリアルブーツの試合に活かす為にパルクール技術を習う事。

 話した通り、あの時真似した動きはハクトにとってかなりしっくり来ていた。

 機動力が何より必要なハクトにとって、ギアを使わない移動時にも障害物をスムーズに乗り越えられるようになったのなら、かなり力になってくれるだろう。そう考えての今回の講習受講だった。

 それを聞いて、Mr.パルクールはうんうん、と頷いている。

 

「いいッショいいッショ! マテリアルブーツの為とは言え、パルクール技術を習ってくれるのは素直に嬉しいッショ! 是非覚えていってくれ!」

「はい。ところで、こんな公園でやるんですね? パルクールの特訓って。もっとこう、建物の上でやるかと思ってました」

「まあ、初心者講習だし。いきなりそんな所連れていっても、普通の素人は無理ッショ。危険だし。この公園にはちょうどいい遊具やオブジェがあるから、まずはそれを使って練習していくつもりッショ」

 

 そう言って、Mr.パルクールはこの場から見えるその遊具やオブジェなどを、ちょんちょんと分かりやすいように指を差していた。

 なるほど、確かに様々な大小色とりどりな物体が満載だ。人が乗り降りするにはちょうど良いサイズや物体が大量にある。

 

「ふーん。でもそこまで気にしなくても、映像見返したらあの試合でハクト君結構上手くマネ出来ていたから、そこまで気にしなくても良いと思うのだけど……」

「まあ、そこら辺は“ちょっと気になる事”があるからな。っと、ハクト選手。事前の要望通り、マテリアルブーツ一式持って来てくれてるッショ?」

「はい。ちゃんと持って来てます」

 

 そう言って、ハクトはリュックをおろして、中に装備一式が入っている事をよく見せた。

 ここは外だったので、Rank2以下のハクトは使用権限がない為、リュックに入れて持って来ていたのだ。

 

「結構ッショ! この公園は特別な場所で、管理人に事前申請すれば、Rank3未満でもギアの使用の許可が降りるっショ!」

「へえ! それは凄いですね!」

「まあ、ちゃんと監視要員はいるけどッショ。ほら、あそこにいる」

 

 そう言ってMr.パルクールが教えてくれた方角に、公園のスタッフらしき人が立っていた。

 そちらを見ると、ぺこりと軽くお辞儀してくれている。どうやら、あの人が監視要員らしい。

 

「なるほどねえ……私、Rank2以下の時はいっつも専用施設に行ってたから、公園でその制度あんまり使った事なかったわ」

「まあ、結構ギアの使用制限はキツイけど。大抵の攻撃ギアは監視があっても使用禁止ッショ。けど、メインはHPグローブ。それさえあれば、パルクールは安全に特訓出来て十分ありがたいッショ!」

 

 Mr.パルクールは笑顔でそう言って、改めてハクトに向き直る。

 ハクトに確認したいことがあったからだ。

 

「ところでハクト選手、事前に連絡した時に伝えたものは……」

「はい。ちゃんと【バランサー】のギアも持ってきてますよ」

 

 ほら、とハクトは【バランサー】のギアを手に取って見えるように見せていた。

 ハクトの父親からもらった、今では戦術の格を担う大事なギアだ。普段から大切に持ち歩いていた。

 それを聞いてMr.パルクールは満足そうに頷いていた。

 

「結構ッショ! ちょっと確認したいことがあるからな! それも使うッショ! そのギアなら使用制限外になるからな!」

「はい、了解です」

「それじゃあ、早速始めるッショ!」

 

 そう言って、Mr.パルクールはハクト達に付いてくるように指示していた。

 これから、ハクトのパルクール特訓が始まる──

 

 

 

 

 

 ★因幡白兎(イナバハクト)

 

 15歳

 158cm

 黒髪

 中立・善

 

 主人公。

 白兎パーカーを着た、空を飛びたい夢を持った少年。

 ムーンラビットメンバー。

 

 今回はせっかくの機会なので、パルクール技術を学びに来た。

 Mr.パルクールの事は、試合を通してとても気に入っている。

 

 

 ★卯月輝夜(ウヅキカグヤ)

 

 15歳

 156cm

 長い明るい赤髪

 中立・善

 

 ヒロイン。炎系マジック使い。

 ハクトをマテリアルブーツに誘った張本人。

 ムーンラビットリーダー。

 

 今回はハクトの見学に回る事にしていた。

 チーム解散の危機かと真面目に冷や冷や中だった。

 

 

 

 ★浦島亀鉄(ウラシマキテツ)

 

 16歳《事情により、実は一年留年している》

 160cm

 緑髪の短髪

 秩序・善

 

 ムーンラビットメンバー。

 目立ちたがり屋のパワータイプ。

 

 今回は暫く別行動。

 家族関係で親孝行でもするつもりらしい。

 

 

 ★Mr.パルクール

 

 24歳

 186cm

 染めた金髪、オールバック

 秩序・善

 

 本名、猫山飛尾(ねこやまとびお)

 パルクールの天才。

 キャットタワーズのチームリーダー。

 

 今回ハクトに頼まれて、パルクール技術を教える事になってとても張り切っている。

 とても世話焼き体質な大人。

 




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