因幡の月兎 不思議な靴を使った架空スポーツで、俺だけ空を跳んでいます。 作:新月
別小説で契約連載し始めたので、リズムが整っていませんでした。
1話もリメイクしてきました。良かったらどうぞ。
<忘れた人用のあらすじ>。
一章。ハクトがカグヤに誘われて、ソロトーナメントに参加。
二章。ハクトがカグヤ達と共にチームを組んで、チーム大会優勝。
三章現在。ハクトが佐々木武蔵という少女に試合を挑まれて、フリーバトルで対戦直前。
──公園付属、バトルルーム。
初めてカグヤと模擬戦した場所と似たようなその部屋で、ハクト達は準備をしていた。
離れた位置にいるのは、ハクトに試合を挑んできた佐々木武蔵(ささきむさし)だ。
木刀を持って、軽く素振りをしている様子が見える。
「って、あれ? 木刀置いてこないの?」
「ん? ああ、そうか。先に相談していなかったか。すまない、バトルルールなのだが、“持ち込みアイテムあり”でいいだろうか? 私は、この木刀を指定したい」
“持ち込みアイテムあり”?
それを聞いて、ハクトはバトルフィールド外の端っこにいるカグヤに視線を向けた。
カグヤはあー、と声を漏らし。
「確かにそう言うレギュレーションがあるわね。マテリアルブーツのブーツ、ギア、HPグローブ以外に、“そられに関係無い道具”を指定数持ち込めるルール。そのルールだったら、以前不良達のチームがやってたスタングレネードの持ち込み、アレもありになるわよ」
「へー」
その言葉を聞いて、以前の鮫島達に試合外で絡まれた時のことをハクトは思い出す。
あの時は、本当にめちゃくちゃやってくれたからな……スタングレネード複数に、ナイフやら何まで。
「こちらも木刀を使う以上、そちらも何か好きな持ち込みアイテムを選んでくれ。無しでもいいが、それだと不公平だろう?」
「と言っても、そんな急に言われても、バトルに使いそうな道具なんて……」
それこそ思いつくのはさっき考えたスタングレネードだが、そんなもの持ってきてる訳もなく。
下手な道具は逆に動くの邪魔になるだろうし。ハクトがそう悩んでいると……
「あ、じゃあこれはどうっしょ? “プロテクター”。HPグローブが無かった頃にパルクールの特訓に付けていた装備ッショ。一応持ってきてたんだ」
「Mr.パルクール! ありがとう! ムサシさん、だっけ? こっちはこれを使っていい? 部位たくさんあるから、一個とは言えないけど」
「ああ、構わぬ! 全部装備してくれ! それでこそ戦いがいがある!」
じゃあこれッショ、とMr.パルクールがカバンの中に入っていたプロテクターをありたっけハクトに渡していく。
膝、肘の関節はもちろん、脛当て、腕の部分までカバーするパーツも含まれていた。
これなら簡易的な鎧として機能するだろう。
それらを手渡した後、Mr.パルクールはカグヤと同じフィールド外まで離れていった。
「さて、と……装備するギアのセットだけど」
ハクトは一瞬悩み……チームトーナメントの決勝の時の構成をそのまま使う事にした。
現状、手持ちのギアだとあの構成が一番バランスが良さそうだったからだ。
接近戦メインのハクトにとっては、敵に距離を取られたとしても、【クイック・アトラクト】で引き寄せられるのは大きい。
また、天井が今回高さ15m位しかないので、“ラビット・スタンプ”の威力はそこまで期待できそうに無いだろう。
そもそも、初見殺しの面が大きかったカグヤ戦の時の相手を抱えて持ち運ぶパターンは、運んでいる際に反撃を喰らう恐れがあり、ネタバレした状態だとあまり狙えない。
多少のジャンプはあっても、比較的地上戦メインの戦いになりそうだな、とハクトは予想した。
「ハクト君! ムサシさん、準備はいいー?」
「大丈夫ー!」
「うむ、いつでもいいぞ!!」
「それじゃあ、バトルスタートッ!!」
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バトル・スタート!
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バトルルール:フリーバトル
残りタイム:──
プレイヤー1:ハクト
HP:1000/1000
Rank:2
スロット1:バランサー (★常時適応中★)
スロット2:インパクト (残りE:10/10) (■非公開)
スロット3:インラインスケート (残りE: 5/5) (■非公開)
スロット4:《R》クイック・アトラクト (残りE: 2/2)(■非公開)
持ち込み:プロテクター
VS
プレイヤー2:ムサシ
残HP:1000/1000
Rank:2
スロット1:────
スロット2:────
スロット3:────
スロット4:────
持ち込み:木刀
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「さて、と……まずはどう出てくるかな」
ハクトは直ぐには動かず、まずはムサシの出方を観察しようと考えた。
対複数人でも戦える自信があると言うプレイヤー、そう豪語する彼女がどのように戦ってくるのか興味があったからだ。
見ると、ムサシの方もその場から動かず、木刀をまるで“居合切り”のような構えの体勢になっていた。
パッと見た感じ、おそらくカウンター系の体制。
ハクトの攻撃に対して、反応するつもりなんだろうと推測する。
「向こうも“待ち”? 互いに様子見を選んじゃったかな……?」
これでは試合が動かない。
今回はフリーバトルなので制限時間などは無いが、このままずっと膠着状態なのもつまらないだろう。
しょうがない、自分から動こうか……そう思ったハクトだったが。
「──【電光石火】」
「え──?」
そのような呟きの声が微かに聞こえて……
次の瞬間、“ムサシは目の前にいた”
「はあッ!!」
「なあッ?!」
居合斬りの体勢のまま、一気に距離を無くされた。
目の前のハクトに対して大きく木刀を振り払い、それをハクトはとっさの上体逸らしでギリギリ回避した。
一体何が起こった!?
「く、“クイック・ラビットッ!! ”」
状況を理解出来ないままだったが、ハクトはそのままとっさに反撃を行った。
【インパクト】で距離をとっても良かったが、その距離を一気に詰められる能力を持った相手だ。
その選択は無意味だと無意識に判断し、反撃を選択したのだった。
「ふっ──」
「っ!? 消えた!?」
しかし、ハクトの蹴りが当たる直前、ムサシは目の前から消失してしまう。
何処に行ったかと思えば──最初の位置に戻っていた!!
「いつの間に──!? うあっ!?」
そう思っていると、急に“突風”がハクトに向かって襲いかかってくる。
まるで新幹線が、自分の横を通り過ぎて行ったかのような風の塊だ。
ムサシのギアか!? そう思ってみたが、今度はムサシは何かやったようには見えない。
「ハクト君!? ギア、ギアのリスト!! 相手の使用ギア見て!?」
「っ!?」
フィールド外のカグヤの声に、ハクトは咄嗟に従い直ぐにHPグローブを操作する。
ムサシの使用ギア欄に、とあるギアが表示されていた。
その情報を急いで開示する。
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プレイヤー2:ムサシ
残HP:1000/1000
Rank:2
スロット1:電光石火 (残りE: 8/10)
スロット2:────
スロット3:────
スロット4:────
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プレイヤー2:ムサシ
<スロット1>
ギア名:電光石火
GP:2 最大E:10 最大 CT:3
ギア種類:リピート
効果分類:範囲攻撃
系統分類:-
効果:約15m程の直線方向に衝撃移動。すれ違い様30ダメージ程与える
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「【電光石火】!? これがさっきの瞬間移動の正体か!?」
効果の説明を見た限り、このギアを使用して一気に距離を詰めたのは間違い無いだろう。
ハクトの【インパクト】のように、自身を強制移動させる技と見える。
しかし……
「移動速度が桁違いすぎる……!? 本当に一瞬でこの距離を詰められた!?」
おそらくさっきの突風は、ムサシが衝撃移動した際に発生した衝撃波なのだろう。
しかし、ムサシが移動した後遅れて発生していた。
衝撃波が遅れてくるほどの高速移動を、ムサシはやっていた事になる!
ハクトの【インパクト】もかなり移動速度は速いが、確実にそれより速い!?
「うむ! 驚いているようだな!! これが私の技、【電光石火】だ!! どうだ、凄いであろう!?」
「これがギア種類リピートギア……!? 俺の“ラビットシリーズ”みたいに、【インパクト】を併用して使ってる訳じゃないのに、この速度!?」
確か以前、カグヤにリピートギアは“人体の動きを再現”するギアだと聞いた事がある。
しかし、ハクトはリピートギアは自身のラビットシリーズか、アリスの“二連斬”程度の技しか見たこと無かった。
単純な蹴り技以外で、ここまで大幅に距離を移動するリピートギアなど、考えた事も無かった。
「おいおい、あのギア確か最近流行り出したレアなギアじゃ無かったッショか!?」
「そうよ! 【電光石火】! 比較的最近、それこそここ1,2ヶ月で出回り始めたばかりの最新リピートギア!! それを持っているなんて!」
フィールド外から、カグヤ達の驚きの声が聞こえてくる。
なるほど、最新のリピートギア。その謳い文句が確かなら、確かに性能が高い。
さっきの行動を見るに、攻撃にも、回避にも使える両等ギア。
対複数人に戦えると豪語するのも頷ける。
「けど、ただ直線移動してくるだけならまだなんとかなる!!」
ハクトはギアの説明を見て、正体は把握したつもりだった。
先ほどのように直線移動してきて目の前で居合切りなら、その瞬間その場から少し移動すれば良い。
それなら自身の反射神経で、ギリ……いや待て、説明文に“すれ違い様30ダメージ程与える”と無かったか?
さっきは直前で停止していたからギリ反応出来たけど、そもそも目の前で止まらずに──
「うむ、確かにそうだな。ただの直線移動。しかし……」
そう言って、ムサシはスタスタと歩いてくる。
移動した距離は、6,7m程。その程度の距離でしかない、が……
「──もう少しだけ、私の【電光石火】の本領を味わってもらおうか」
その言葉とともに、再度居合切りの構え。
それを見て、ハクトは猛烈に嫌な予感がして──!?
「【電光──」
「跳ね上げろ! 【インパクト】!!」
「──石火】ッ!!」
ムサシのギア発動直前に、ハクトは得意の緊急回避を行った。
真上に逃げたハクトは、無事にムサシの攻撃を回避出来た。
──だが、その真下の光景を見て驚く事になる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゥッ!!!
「──はあッ!?」
「んな!?」
「何ですって!?」
何度も、何度も突風の発生する音が聞こえてくる。
その正確の数を数えられたのは、カグヤだけだった。
“8回”。
その数の片道【電光石火】、つまり“4往復連続発動”を、ムサシは実行していたのだ。
「──むう、外してしまったか。やるな!」
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プレイヤー2:ムサシ
スロット1:電光石火 (残りE: 0/10 残りCT:3/3)
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攻撃を終えたムサシは、少し残念そうな顔だが元気な声でそう言い放った。
ハクトがとっさに相手のギア残量を確認すると、残り【電光石火】のエネルギーが0になっている。
つまり、先ほどの一瞬で使い切ったのだ。ムサシは。
着地したハクトは、より一層ムサシの事を警戒し出していた。
「同一ギアの連続発動……!! やっぱりあなたも使えるんだね!?」
「む? それはまあ、【電光石火】は私の代表ギアと言っても過言ではないからな。それくらいの練習は積んでいるさ」
ハクトの言葉に、ムサシはなんて事もないような反応で返している。
ギアの高速連続発動。しかも先ほどの様子を見た限り、スムーズに連続発動をしている。
本人自身が高速移動していることを考えると、難易度はさらに高くなっている筈。
下手すると、連続発動の精度だけならカグヤ並みか……!? ハクトはそう戦慄していた。
「けど、これで【電光石火】は一旦尽きたはず……!」
さっきの攻撃には驚いたが、エネルギーが尽きたなら少しは余裕が……
「ふむ、期待している所悪いが……誰が一つだけしか装備していないと言ったか?」
「──ッ!?」
「──【電光石火】!!」
「跳ね上げろ! 【インパクト】!!」
ハクトは先ほどと同じように、真上に飛び上がって回避する。
そうしてハクトのいた場所に、ムサシが瞬間移動のごとく衝撃移動してくる。
ギリギリ回避出来た──
「──逃さぬ!!」
そう叫んで、ムサシは──“真上に跳んだ”
『ッはあ!?』
それは、ムサシ以外の全員の叫びだった。
まるでハクトを追いかけるように、ムサシは真上に直線移動してきたのだ!
「があっ!?」
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プレイヤー1:ハクト
HP:1000 → 960/1000
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すれ違い様、ハクトは木刀で叩っ斬られる。
一回切られたダメージ。大したほどじゃない。が……
「ここは天井があっていいな」
「──ッ!?」
「【電光石火】!!」
「がああああああッ?!!」
「ハクト君!?」「ハクト選手!?」
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プレイヤー1:ハクト
HP:960 →→→ 640/1000
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プレイヤー2:ムサシ
スロット1:電光石火 (残りE: 0/10 残りCT:3/3)
スロット2:電光石火 (残りE: 0/10 残りCT:3/3)
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天井と、地上の往復。
その高速移動のダメージを、残り4往復喰らい、そのまま地上に落下したハクト。
まるでいつかのカグヤとの模擬戦でやったような事を、その上位版を繰り返されたような気分だった。
しかし、これで二つ目の電光石火も尽きた。
天井付近で技が終わったムサシは、落下する──
「──【電光石火】!!」
と、思ったら。再度天井を蹴って、地上のハクトに向かって急速落下!!
まるで“ラビット・スタンプ”のように降ってきたそれに、油断したハクトは回避出来ない!!
「ぐはあ!?」
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プレイヤー1:ハクト
HP:640 → 513/1000
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ハクトを踏みつけた後、ムサシはズシャーっと離れた位置に着地する。
「ふうっ……ふうっ……追撃をしたいが、流石に疲れたな……」
そう言って、荒い呼吸をムサシはしていた。
しかし、現在ステータス表示には……
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プレイヤー2:ムサシ
残HP:1000/1000
Rank:2
スロット1:電光石火 (残りE: 0/10 残りCT:3/3)
スロット2:電光石火 (残りE: 0/10 残りCT:3/3)
スロット3:電光石火 (残りE: 9/10)
スロット4:────
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全くの無傷。それにスロット3まで、全て【電光石火】。
「ま、まさかあなたのスロットのギアって、全部──っ」
「む、察しがいいな? その通り!! “全て【電光石火】だ!! ”」
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プレイヤー2:ムサシ
スロット4:電光石火 (残りE: 10/10)(■非公開)
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「嘘だろッショ?!」
「最新ギアでまだ流通がそれほど多くないのに、もう4積み!? どうやって手に入れたの!?」
「はっはっは!! うむ、まあちょっとな!」
カグヤ達の驚きの声を、それとなく受け流し、ムサシはハクトに向き合った。
「さて。この程度で終わるわけではないだろう? まだまだ試合は始まったばかりだ」
そうして、ムサシは木刀を再度居合の形に構える。
「さあ──お互い、まだまだ楽しもうではないか!!」
そう言ったムサシの表情は、とてもワクワクした笑顔を浮かべていた──