お日様色の髪で空色の瞳を持つ少女との逢瀬……からのお持ち帰り
"カガミ・アオイの指導を受けていましたね?"
俺と、葵さんたちの関係まで……!?
『……一体、どこまで』
知っているんだ?と問おうとして、食い気味に返された言葉が。声色が、視線が。全てを物語っていた。
「――我がアヴァロングループは、世界で戦える選手を探しています」
「世界を獲るために、必要な人材を集めています」
「各務 葵に教えを受け、かのジュニア日本代表の日向 晶也さえ打ち破ったことのある、十六夜 翼さん」
「あなたがもう一度、『FCをしたい』と思っていることも知っています。私たちならそれが叶えられます」
「十六夜 翼さん――私たちと、"世界"を獲りましょう?」
(……強い目だ。FCが楽しいとか、飛びたいって思ってるわけじゃない。憎しみや痛々しささえ感じる目)
(とりあえず高藤学園とか、誘拐絡みではなさそうなのはわかった。あと、アヴァロン社のグラシュは確か、何年か前に……)
(彼女が何を考えているかは分からない。けど多分、俺に対して求めていることはひとつしかなくて……なら)
10秒ほど考えていただろうか?こちらをジッと見つめるイリーナを見つめ返し、出した答えを口に出す。
『……世界、なんてのはどうでもいいかな』
「!!……そう、ですか」
俺は世界大会とか、有名になるとか、そんなことはどうでも良い。
『でも、また飛ばせてくれるってんなら』
ただ、空を楽しく飛びたいだけだから。
「え……?」
息を吞むイリーナの、強い意志のこもった眼差しを受け止めて、
『――手伝うよ。何でも』
俺は、ありったけの空への想いを込めて、返事を投げ返した。
『君が何をやりたいかはわからない。でも、俺はただ空が飛びたいだけなんだ』
「……あなたは」
『だから、それさえやらせてくれるってんなら、君がやりたいことも手伝うよ』
「…………そう、ですか。察しのいい方は嫌いではアリマセン」
(真剣な時と事務的……というか対外的?に対応しようとする時でイントネーションが微妙に変わるのは仕様なんだろうか……気になる)
『でも、どこまで知ってるかは知らないけど俺はそんなに頻繁に練習に参加したりは出来ないよ?』
「あぁ、高藤学園元関係者集団のことデスネ」
『……まぁ、知ってるだろうなとは思ってたけど』
あまりに当たり前のように言い出されると、証拠不十分で警察に言えなかったりしたこともある今までの未遂事件の数々は何だったんだろうかと言いたくなってくる。口には出さないけど。
「その辺りも問題ありマセン。警護はこちらで行えますし、元より練習のためにアヴァロングループの寮へ移ってもらうつもりでいますから」
『…………え?引越しってこと?』
「ハイ!」
(いやそんな笑いながら軽くで返事されても……第一、父さんと母さんがそんなこと許可するわけ――)
「「危険は無さそうだし、翼が楽しそうだと思ったんなら行ってくればいいんじゃない?」」
「ご理解、ありがとうございマス!」
イリーナさんは数日後に改めて自宅へ訪問してきて、両親に対して俺をスカウトしたいという話を持ち掛け、見事説得に成功していた。
(それでいいのか良いのか、父さんと母さんよ……)
『というかイリーナさんも準備良すぎない?めっちゃ資料とか作ってあったじゃん』
「選手を獲得しに動いているんですよ?当たり前だと思いマス」
『そういうもんか……』
両親は、アヴァロン社の選手になるにあたって引越しするということに関しても、
「そもそも父さんたちはテスターではなくなったとは言えMIZUKIの社員だし、翼がアヴァロン社の選手になるんだとしたら何かしらの区切りは必要になると思うからね。生活や警備の事まで含めてきっちりと考えられているなら反対する理由はないよ」
「確かに、一人立ちには少し早いかもしれないけど……何事も経験よ!母さんたちだって、翼くらいの年の頃にはそれはもう色々とやんちゃしてたもの!」
と、大賛成とまではいかないものの反対意見は何も出なかった。
そうして6月の末頃、アヴァロン社が近くに保有している寮への引っ越しも完了して。
中学1年生の梅雨が明ける頃、俺は、3年ぶりの空へと飛び出した――。
<次回 夜空の彼方 第二話「運命の子猫」>
イリーナさんがFCをここまで憎んでる理由も肉付けしてます。
青羽さんと優月さんは、自身の育ちのせいか巣立ちに寛容。
……というわけでもなく、実はアヴァロンが翼の事を嗅ぎまわってる時点で動きに気づいて、元S特メンバーの裏ネットワーク&ショッケンOBメンバーに情報収集とか依頼して安全の裏付けは既に終わってるらしいです。