Rimworld入植者(脱出済)のキヴォトス日記 作:運輸省
初っ端からアレだが、俺の嫁の話をしよう。
ナダヤ・古戦ヶ原。元ヘイラ貴族で現在32歳。
元いたコロニーでは動植物関連の事について担当していたらしい。外面を見るとすごい知的な顔に見えるが、決して『研究していた』ではないのがミソである。*1
性格は、一言で言うと『エキセントリック』、根は善良なのだが頭のネジが何本か外れている感じだ。
そのあまりのエキセントリックさに、元いたコロニーから「もう付き合いきれない」という、なんとも言い難い理由で追い出される程。
それは外見にも現れている。
ナダヤは好んで髪型をポニーテールに似た髪型にしているのだが、これはヘイラ族と長年敵対関係にあるロン族の戦士伝統の髪型らしいのだ。本人的にはヘイラ族でよく見られる髪型よりもこちらの方がしっくり来る、とか何とか。
でもまあ可愛いからヨシ!
で、そんなナダヤだが、俺がいたコロニーでは農場の管理と動物の各種調教、そして料理を担当していた。
そういうわけで。
畑
「ああ、違う違う。鎌を入れるのはここだ、土上5cm。それで、姿勢はこう。こうすればあまり力をかけずに刈れる。ほら、やってみるんだ」
「え、えっと……ここを、こうして、あっ、すごい楽…!」*2
「だろう? ほら、君らも実践だ実践!実践あるのみ!」
「ひえ〜っ!!」*3
「ひえーっ、じゃない!早くやる!」*4
調理場
「ナダヤの姉御、俺思うんだよ。米の食事だけじゃ栄養バランスが保ててないんじゃないかって」*5
「ふむ、それはいい心がけだが……そうだな、これを見てみるといい」
「ん? うぇ、俺細かい書類とか苦手なんだけど」
「おっと、すまないねぇ、まず説明をしようか。その書類、要はこのRimworld産陸稲に含まれる各種栄養素を記録した物なんだ。それを踏まえて見てみたまえ。───ああ、最初から全体を見ようとするんじゃなく、視野を絞って確実に読んでいくんだ。指でなぞって読むといい」
「ん〜〜? ……おかしいな、普通のコメには絶対含まれてないような栄養素が見えるんだけど。なんで“鉄”“カリウム”“食物繊維”が入ってんの?」
「よく気付いたねぇ、それこそこの陸稲の根幹、名も知らぬ宇宙の先人達の研究の賜物さ。痩せた土地でも、これさえ栽培できれば最低限生活はできる、というレベルまで遺伝子改良を繰り返したそうだ、私も人伝てに聞いただけだがねぇ」*6
「すげー……」
「だが、いくら万能食材とはいえ食事に彩りが無いのは士気に関わる。哲郎はそのあたり無頓着だからねえ、君なりに献立を考えて、哲郎に伝えてみるといい。要望が出ているのならば、別食材を栽培するなり購入するなり腰を上げるだろうさ」
───と、まあこんな感じに畑と食事について色々とアドバイスを貰ったりしている。俺としても、栽培と料理はバックアップ要員としての最低限度の知識しかなかったのでとても助かる。
そして、その間に俺は俺の仕事をする。
「それでは、ここに古戦ヶ原さんと奥様の戸籍に載せる情報の記入をお願いします」
「はいはい」
場所は俺の小屋の前。目の前に座っているのは、真っ白な制服に身を包んだ生徒。連邦生徒会から来た役人みたいなポジションの子だ。*7
先日発生した、PnL工業の宇宙商船がキヴォトスに初来航した事による騒ぎ。その情報統制というか火消しに回ったのがシャーレと連邦生徒会なのだが、向こうでも一体なんの火消しをしてるのかと疑問に思った者がいたのだろう。すぐにシャーレ部隊がデザートエッジ駐屯地にすっ飛んできたのだ。
ただ、シャーレを指揮していたのはやはり先生だったので話はすぐつき、代わりに連邦生徒会の生徒がやって来たのだ。
「キヴォトスに移住されるのであれば、連邦生徒会で戸籍登録をして欲しい」
という目的で。先ほどの会話の中で『戸籍』という単語が出たのはそういうわけだ。
ただまあ、地球以上に多様性あふれる(文字通り)Rim人の基本原則は『郷に入っては郷に従え』。別にそこでウダウダと抵抗する気は俺もナダヤもさらさらなかった。
……実は、後日この戸籍に関連する問題が発生したのだが、それは後で然るべき時に話そう。
次に話すのは、しばらく放ったらかしにしていただらだらヘルメット団の武装刷新と、こたつ号の後継選定の話だ。
まず武装であるが、いつだったかも話した通り、現在のだらだらヘルメット団の武装はこたつ号乗員も含めて全員アサルトライフルのSG551である。
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『だらだらヘルメット団』団員名簿(役職もしくは一言)
名残ユキコ(リーダー)
SG551
渡辺アスカ(古戦ヶ原に最初に拾われた奴)
SG551
林マナミ(料理担当)
SG551
山田ナオ(田んぼ三姉妹その1)
SG551
藤田アヤカ(田んぼ三姉妹その2)
SG551
石田ナオコ(田んぼ三姉妹その3)
SG551
宮崎キョウコ(建築担当)
SG551
志津カオリ(建築担当)
SG551
永末ミキ(採掘担当)
SG551
立道マイ(会計担当)
SG551
讃岐マリコ(元ミレニアム生。鍛治担当)
SG551
西潟ミユキ(元ミレニアム生。裁縫担当)
SG551
大宮寺キョウ(医療担当)
SG551
中司カナン(こたつ号車長)
SG551
国定キリコ(こたつ号砲手)
SG551
三雲ヒカル(こたつ号装填手)
SG551
我部モユル(こたつ号操縦手)
SG551
陸奥ムツリ(こたつ号無線手。(^q^)ワァー)
SG551
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これが相談の結果こうなった。
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『だらだらヘルメット団』団員名簿(役職もしくは一言)
名残ユキコ(リーダー)
SG551
渡辺アスカ(古戦ヶ原に最初に拾われた奴)
SG551
林マナミ(料理担当)
SG551
山田ナオ(田んぼ三姉妹その1)
SG551
藤田アヤカ(田んぼ三姉妹その2)
SG551
石田ナオコ(田んぼ三姉妹その3)
バレット M95
宮崎キョウコ(建築担当)
SG551
志津カオリ(建築担当)
SG551
永末ミキ(採掘担当)
SG551
立道マイ(会計担当)
ラインメタル MG3
讃岐マリコ(元ミレニアム生。鍛治担当)
SG551
西潟ミユキ(元ミレニアム生。裁縫担当)
SG551
大宮寺キョウ(医療担当)
ラインメタル MG3
中司カナン(こたつ号車長)
SG551
国定キリコ(こたつ号砲手)
SG551
三雲ヒカル(こたつ号装填手)
SG551
我部モユル(こたつ号操縦手)
SG551
陸奥ムツリ(こたつ号無線手。(^q^)ワァー)
SG551
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大体の奴らは「やっぱり使い慣れた
まずドイツ製汎用機関銃であるMG3を選択した会計担当の立道と、医療担当の大宮寺。
立道曰く、
「くじら号のミニガンを撃った時、こう、なんて言うんでしょう。自分の血が沸き立つような感覚があって、えっと、でもミニガンを持てるほど力持ちじゃないので、なるべく近い物を」
そして大宮寺曰く、
「前から好きなだけ弾幕張りたかったんだよね」
「弾幕、いいですよね……」
「いい……」
との事。2人とも弾幕教に魅せられてて草。
そして、対物ライフルであるバレット M95を選択した田んぼ三姉妹の一角、石田。
「前から、撃たれて痛がる人を見るのが怖くて、それなら、痛がる姿を目にしないように“1発で無力化できる銃”を、と」
発想が怖いぞ石田。
続いてこたつ号の後継である。
リーダーから聞いた話だと、これの話し合いがまあ紛糾したらしい。
実はリーダーに見せたカタログには、こたつ号で見慣れたM4系からソ連のT-34シリーズ、果てはキヴォトスでもほぼ見られないと言う現代戦車まで幅広いジャンルの装甲車両が載っていたのだが、今思うとこれがいけなかったのだろう。
やれ「使い慣れたM4系がいい」や「いっそ超高性能な物に乗りたい」、「(^q^)チハ!」などなど意見がなかなか纏まらず、最終的にはヘルメット団全員でじゃんけんに。
この前もちらっと言ったように、まず車長が1人負けし、その後何やかんやあって、
ムツリ(九七式中戦車)
vs
リーダー(M1A1 エイブラムス)
vs
会計担当立道(90式戦車)
の3人の対戦に。
その結果───
「お、大きいですねぇ…」
「車体もこたつ号よりひとまわり大きくなってるからな」
立道が渾身のパーで勝利。
製造した『2輌』の名前は、それぞれ『みかん号』と『おもち号』である。
───そう、こたつ号が5人乗りだったのに対して90式は3人乗り。こたつ号乗員をそのままスライドさせるにしても2人余るのだ。というか余った。
具体的には装填手の三雲と、無線手のムツリが。
「ならば、もう1輌作ってしまえばいいのではないかい? 足りないところには言い出しっぺを入れたらいい」
「えっ?」(一般通過立道)
とのナダヤの助言により、車長立道、砲手ムツリ、操縦手三雲の『おもち号』が誕生。現在絶賛訓練中である。
──────
───
アビドス郊外の砂漠地帯
90式戦車『おもち号』
西陽に照らされ輝く砂塵を巻き上げながら、特徴的な茶色と濃緑色の迷彩の戦車が砂漠地帯を突っ走る。
車長用ハッチから身を乗り出すのは立道。いつもの黒ヘルメットやくじら号の時に被った航空用ヘルメットではなく、戦車兵用のヘルメット、いわゆるタンカースヘルメットを被っての搭乗だ。
「目標10時方向、距離3,000!弾種徹甲!」
立道の車内無線に合わせて、砲塔が左に回る。
砲手用スコープの先に見えるのは、砂の斜面に建てられた合板製の的。
照準が定まった。
「(^q^)イイレス!」
「撃てッ!」
轟音と共に放たれたJM33 APFSDS弾が、乾燥した空気を切り裂いて、的を粉々に破壊する。
目標に命中。十分な戦果だ。
それを双眼鏡で確認した俺は、無線を取った。
「よーしおもち号。ひとまずはこれで十分だろう。戻ってこい。飯と補給を済ませてから帰ろう」
《了解しました。今から戻ります》
みかん号、おもち号の配備から1週間。
集中訓練も相まって、だいぶ操作もマシになってきたように見える。特に、立道の戦車長、三雲の操縦手としての成長が著しい。元々適性があったのだろうか。
この分だったら、戦力としてもだいぶ期待できるだろう。
……ただの不良集団が第3世代MBT2輌も持ってどうするんだ、というツッコミは受け付けない物とする。俺も最近になってやっと気づいた。
なんて思考を巡らせていると、おもち号が戻ってきた。
降りて来た汗だらけの3名にタオルと飲み物、あといつものおにぎりを渡す。
立道が音頭をとって反省会をしているのを目にしながら、俺は俺で燃料と弾薬の補給、あとは軽い整備に勤しむ。ここから90式の自走でデザートエッジ駐屯地に戻らなければいけないためだ。トランスポーターなんて物はない。
そのうち反省会も終わり、夕暮れの住宅街の中を帰路につく。ちなみに、俺は乗る場所がないため砲塔上にしがみついている。
「それにしても……」
「ん?」
車長用ハッチから身を乗り出していた立道が、流れゆく住宅街を見渡しながら呟いた。
「あんな住宅街の側で砲撃訓練なんてやってたのに……本当にこの周辺って誰も住んでいないんですね」
そう、今回の訓練を実施するのにあたり、一応この辺りの管理者であるアビドス高校、ひいては小鳥遊ホシノに許可を取りに行ったのだが、その際実はこんな事を言われた。
『あの駐屯地だっけ? そっちの方面はもう誰も住んでないからねぇ、物を壊さない限りは好きにやっていいよぉ』
……初めてアビドスに降下して来た時も思ったが、マジでゴーストタウンだったらしい。過疎化なんて可愛い物じゃない、数年内に消滅するんじゃないかというレベルだ。
せっかく世話になってるし、何か恩返しでもできたらと考えてはいるが……いかんせん俺はアビドスの詳しい事情を知らない。
なんか二次創作だと借金がどうのこうのとかそういう話だったような気もするが……はたして借金で街が消える物なのだろうか。……待てよ? 地球時代にニュースで見たな。財政難って話で言えば北海道の夕張市もそうなるのか。じゃあ割とありそうだな。
???「くっ…どうして分からない…! 借りた金をなぜ返す必要がある…!?」
誰だお前⁉︎(困惑)
脳内に突然侵入して来た謎電波(?)に困惑していると、今度はちゃんとした電波…というか無線が入った。駐屯地からだ。
「はい古戦ヶ原」
《ああ哲郎。今大丈夫かい?》
「おう。訓練終えて帰宅中だ。何かあったか?」
無線に出たのはナダヤだ。ここ1週間は、訓練につきっきりの俺の代わりに駐屯地の管理を任せている。
《いや、実は見回りの子がアビドスとは別の学校の子を保護してねぇ。なぁ君、どこの学校って言ったかな。───えーと、ミレニアムサイエンススクール?って名前の高校の子だ》
「ミレニアムの? なんでまたアビドスなんかに」
《それがねぇ、これが連絡した理由なんだが……彼女ら、どうも私を乗せてきたPnLの宇宙船を解析したくて来たとか言ってるんだよ》
「あー……」
ミレニアム“サイエンス”スクールなんて名前がつくぐらいだ。恒星間航行が可能な宇宙船なんて涎が出るほど調べ倒したいのだろう。しかし、宇宙商船はナダヤを乗せて来てその日のうちに帰ってしまっている。呼べるかどうかすらも怪しいだろう。
「分かった。急ぎ目で戻るから何とか対応しててくれ」
《頼むよ。早くしないとこの子達駐屯地内のRim製機器をとことん解析しそうだ。通信終わり》
「ヒェッ。た、立道!」
立道の方を見ると、事態を察したのかこちらにサムズアップをして来た。
「三雲ちゃん、ちょっと急ぎ目で帰らなきゃいけなくなりました。次の交差点で曲がって幹線道路に出ましょう。道が入り組んだこの辺りよりは速度を出せる筈です」
『分かった。かっ飛ばしちゃっていいんだね?』
「はい、このあたりで一般車両なんて随分走ってないそうですから。最高速度を試す気で走りましょう」
『合点承知!』
V型10気筒ターボチャージド・ディーゼルが唸りを上げ、体が後ろに持っていかれそうになる。
「うおおおおおおおおおおおおお⁉︎」
90式戦車の最高速度は時速70km。
その風を身一つで受けているのだからさもありなん、だ。誰かのせいにしたいが自分の顔しか浮かばない()
『うわはははは!!!ヤバいこれすっっっっごい楽しい!!!!あはははは!!!!』
「うばばばばば」
ところで、90式戦車にはある特徴がある。
それは『制動能力』だ。
ある記録では、時速50kmの速度から2m以内での停止が可能、という記述があるほど。『殺人ブレーキ』なんて呼ばれていたとか。
普通自動車が時速50kmから制動を開始した場合、ブレーキが効き始めてから停止するまでの距離*8が18mである事を鑑みると、その制動能力の高さが分かるだろう。
『───あ゛っ⁉︎ やっば⁉︎』
そして、先の見えづらい緩いカーブの先に、道路を横断中の大量の歩行者が見えたら操縦手はどうするか。
当然、ブレーキを思い切り踏み込むだろう。
ふわり。
「おっ?」
砲塔上で体の固定されていなかった俺の体は、慣性の法則によって前方に吹っ飛ばされた。
そして、そのままえんじ色のコートを羽織った赤髪の子に向かってまっすぐ飛んでいき、
「へ?」
彼女の顔が視界いっぱいに広がったところで、意識が途切れた。
実はこたつ号の後継は最後に残った3つから実際に1d3(1、2、3の数字が出るサイコロみたいな決め方)を振って決めました。九七式にならなくて良かったなって。
古戦ヶ原くんにぶつけられた生徒、一体何八魔アルなんだ……