Rimworld入植者(脱出済)のキヴォトス日記 作:運輸省
《前回の誤字報告者兄貴姉貴》(敬称略)
Basalt_Cave(8話)、
ありがとナス!
ちょっと前に制服の話をしたのを覚えているだろうか。
ホシノから「他のヘルメット団と見分けがつかないからどうにかしてほしい」と言われた件だ。
それについてようやく決着がついた。
「おーすっげ、軍隊みたい」
「この柄、迷彩ってやつでしょ、アタシは詳しいんだ」
「(^q^)Operation Enduring Freedom Camouflage Pattern」
「⁉︎」
「どうしたのムツリ⁉︎」
「ムツリが英語喋った!」
「さてはなんか悪い物食べたな⁉︎」
「大宮寺*1に見せよう!」
「そうしよそうしよ!」
「(^q^)ワァー!」(運ばれるムツリ)
OEFCP迷彩、2010年から米陸軍で実戦投入されているいわゆる
このFASTヘルメットについては少し揉めた。
「ヘルメット団って言ってるのにこんなの被ってたら詐欺では?」なんて意見が出たのである。
詐欺ってなんだよ詐欺って。
全員で色々と相談した結果、『FASTヘルメットに防弾バイザーを付ける』という結果に落ち着いた。
まあ、本人達がそれで納得してるならこちらが止める理由もない。喜んで製作させてもらった。
やっぱ凄えわ、スキルトレイナーって。*2
ちなみに、みかん号、おもち号の面々はちゃんと専用のタンカースヘルメット*3を着用している。
ついでに、だらだらヘルメット団のワッペンも作った。
ヘルメット団共通のシンボルマークに、こたつとみかんと鏡餅が追加された意匠の物だ。シンボルマークの方も、本来の吊り目ではなくタレ目になっているのもポイントらしい。
デザイン・製作は西潟。
普段は銃火器や弾薬を作ってもらっているが、本来得意なのはデザイン・裁縫関係との事。元いた学校もそういう系のとこだったそうだ。
その内服飾関係も製作・販売できたらいいななんて考えてたりする。
今回の新制服もそれを踏まえ彼女にデザインしてもらった。なかなか良さげ。
一つ、全体を踏まえての懸念点を挙げるとすれば、
俺も乗れるっちゃぁ乗れるのだが、戦闘の指揮をするのも俺だ。ヘリ操縦しながら指揮を取るのは流石に無理がある。
まあ人員は嘆いていても増えないので、後々手を考えておこう。*4
──────
───
ブラックマーケット
『B&W アンドレ』
志津カオリ
宮崎キョウコ
「毎度〜、デザートエッジのモンです〜。商品お届けにあがりました〜」
「お、来たな。コンテナはそこに置いてくれ。今代金を持ってくる」
だらだらヘルメット団の建築担当、志津カオリ言います。向こうでコンテナ運んで行ったり来たりしてんのが宮崎キョウコちゃん。ウチと同じ建築担当。
もう駐屯地の建物関係が揃っちゃったモンで、暇になった建築担当のウチら2人がアンドレへの商品の配達を任されとるんですわ。
コールサインは『トランスポーター』。なんかSRTみたいでカッコええよな? な?
「中身ここで確認されます?」
「いや、こっちでやっとく」
「あい。じゃあえっと、目録だけ置いときますわ。なんぞ違う事あったらウチに連絡下さい」
「おう。じゃ、これが代金な。ちょっと色付けといたから、帰りにたい焼きでも買って帰んな」
「おっ、良いんですか? ひぃふぅみぃ……へへ、確かに。ほんなら、これからもデザートエッジをよろしう頼んます」
アンドレのおっちゃん気が良い人でな、たまにこうやってお菓子代金くれたりすんねん。駐屯地の食事も、最近ようやっと米以外の彩りが生まれたけど、甘味はマジでここ数ヶ月ご無沙汰やったから、みんなもようけ喜んでくれとる。
「カオリちゃん、今日も貰ったの?」
「へへ、貰ったわ。どこで買ってく?」
「あそこが良いんじゃない? ほら、近くの屋台街にあるたい焼き屋」
「お、ええな。そこにしよか」
てなわけで、荷台にあるのは空のコンテナだけ。最初より随分と身軽になったピックアップトラック*5で、目的の屋台街まで向かった。
近くのパーキングにピックアップを停めて、誰が買いに行くかのじゃんけん。ここブラックマーケットやし、誰かしらは車に残ってないと危ないんよな。
「よし、行くで。じゃーんけーん」
「何がポンやねんホンマ……」
ものの見事に1発負けした志津は、若干不貞腐れながら屋台街へと向かっていた。本日の負けも合わせて通算0勝3敗、文句の付けようのない全敗である。
「あーあ、オモロないなぁ。ロシアンルーレットたい焼きとかあらへんかな……」
なんて末恐ろしい事を考えながら屋台へ到着。
「えーっと、クリーム9個とあんこ9個、あと袋もちょーだい」
「あいよ。2,700円な」
「ほい」
ぶっきらぼうな店主がトングでたい焼きを紙袋に入れているのを眺めていると、何やら向こうのほうが騒がしくなってきた。
「なぁおっちゃん、今日この辺りで大捕物でもあるん? やたら騒がしいけど」
釣り銭の受け皿に追加で500円を置きながら、店主に聞いた。500円を受け取った店主は、ふむ、と顎に手を置きながら、騒ぎの方向を指差す。
「ああ、今朝なんかチンピラ連中が金がねえからあーだこーだとか騒いでたな、それじゃねえか? 嬢ちゃんも巻き込まれねえ内に帰んな。ほらよ」
「おお怖、そーするわ。あんがとなおっちゃん」
店主は志津の方を見ずに、手をひらひらと振ってさっさと店じまいを始めた。銃撃戦に巻き込まれて屋台をやられるぐらいならさっさと撤退する腹づもりなのだろう。
志津もそれに倣って、早歩きでその場を後にしようと歩き出し───
「うわわわっ⁉︎ ど、どいてくださーーい!!!!!」
「あ?」
声の方向に振り返った瞬間、突然走ってきた奴に思い切りぶつかった。
志津が持っていたのは、手提げが無いタイプの紙袋。
それを両手で抱えるように身体の前で持っていたのだが、振り返った瞬間に正面衝突した物だからもう大惨事だ。
ろくに身構えもできなかった志津はすっ転び、両者に押し潰されたたい焼き18個はもれなくアウト。
紙袋の中は、たい焼きの生地とあんことクリームが合わさって大変なことになっているだろう。見なくても分かる、というか見たくない。シュレディンガーのたい焼き。
「あだぁっ⁉︎ 何すんねんダァホォ⁉︎」
「す、すすすすいません!!!」
「ごめんで済むならKivotos Student Police Department*6は要らんのやバカタレ!!あーあーあーもうたい焼きが台無しや!どうしてくれんねんオドレァ!?」
「ほんっとうにごめんなさい!また後でちゃんと埋め合わせはしますので───」
「見つけたぞトリニティ!!!」
「ひぇっ」
口論の場に突然の乱入者。見ると、いかにもという格好のチンピラが2人そこに立っていた。随分と長い距離を走ったのか、若干肩で息をしている。
そのうちの片方が口を開いた。
「なんだお前、どけ!あたし達はそこのトリニティの生徒に用がある」
「あ゛? なんやアホ、先にこっちがこのクソッタレおてんば娘と話してたんや。順番ぐらい守れやこのドチンピラ」
「く、クソッタレ……あ、あうう……わ、私の方は特に用は無いのですけど……」
元より機嫌も悪く、たった今たい焼きがダメになった志津は既に喧嘩腰。
対して、チンピラ呼ばわりされた不良生徒はこめかみの血管をピクピクさせている。こっちも爆発寸前だ。
「なんだァ? てめぇ……*7もうキレたぞオイ。ソイツをこっちに渡すんなら分け前も考えてたが、もうやってやらねえ。へへへ、よく見たらてめぇもいい装備してんじゃねえかよ。痛い目に遭いたくなかったら持ってるモン全部置いて───」
そう言いながら、チンピラは右手に持っていたUZI 短機関銃を構えようとした。
話は変わるが、デザートエッジ駐屯地では最近射撃訓練と合わせて流行っている事がある。
『早撃ち』だ。
拳銃をホルスターにしまった状態で的に向かい、ブザーが鳴らされた瞬間拳銃を抜いて的を撃つというシンプルな物。
ただし、西部劇で見るような物ではなく、ホルスターから拳銃を抜いて、しっかりと構えて、的を見据えて撃つといった物だ。
最初は西部劇みたいな撃ち方をしていた者*8もいたのだが、古戦ヶ原に「銃で遊ぶなバカ」と叱られた為、先ほどのやり方が主流になった。
そして、だらだらヘルメット団最速は───志津カオリ。
その早さは、実に0.027秒。
実在のガンマン、ボブ・マ○デンの0.02秒に次ぐ早さだ。
チンピラがUZIを構えようとした瞬間、志津は反射でセカンダリのコルト ガバメントを抜いた。
まず右手に向けてワンタップ、.45ACP弾がチンピラの右手に命中し、UZIを取り落とす。
そして、発砲による上向きの反動のまま、頭目掛けてツータップ。
そのストッピング・パワーの高さから、米軍兵士の間で「ハンドキャノン」とまで呼ばれた威力により、撃たれた片方のチンピラの意識は一瞬で暗転した。
「て、てめぇ!」
もう1人のチンピラが突然倒れた相方を見て驚き、慌ててUZIを正面に向ける。が、視界内に迷彩柄の奴がいない。
一瞬の硬直。
次の瞬間、身体の正面に複数の強い衝撃を感じて───
「やっっっっっべ〜〜……撃っちゃった。どないしよこれ」
その場に倒れ込んだ状態でホールドオープンしたガバメントを構えていた志津が起き上がった。
1人を撃ったところで、次が間に合わないと悟った志津。
以前、「人は銃を構えた時、下方向への警戒が疎かになる」みたいな事をナダヤが言っていたのを思い出し、咄嗟にその場に倒れ込んだのだ。
「あ、あの……お怪我はありませんか?」
「あん? ああ、大丈夫や。怪我ならあらへん」
たい焼きを潰しやがった(私怨)トリニティの生徒が手を差し出してきたので、それを手に取って立ち上がる。
「あ、ありがとうございました。あなたがいなかったら、学園に迷惑をかけちゃうところでした……それに、こっそり抜け出してきたので、何か問題を起こしたら……あうう……想像しただけでも……」
「お嬢様学園にも色んなのがいるんやなぁ。とりあえずここ離れよか」
トリニティ生徒の手を引いて現場から小走りで離れる。
「で? アンタ名前なんて言うん?」
「阿慈谷ヒフミ、です」
「ほなヒフミンって呼ぶわ。ウチは志津カオリ。よろしゅうな」
「ひ、ひふみん…?」
謎のあだ名に首を傾げるヒフミの手を引きながら、駐屯地に無線を入れる。
「デザートエッジ、こちらトランスポーター1-1、感度あるか?」
《はいデザートエッジ、オペレーターは立道です。感度良好。トランスポーター、どうしましたか》
「ブラックマーケット北側屋台街にて自衛の為発砲。敵2名を無力化。現在はトリニティの生徒を1名保護して現場から離脱中。対応指示求む」
《了解。あっ、お兄さん、はい、志津さんが───》
数秒後、無線の向こうで人が変わったらしい。
《古戦ヶ原だ。状況は把握した。トリニティの生徒はなんて言ってる?》
「ちょっと待ってな、なあヒフミン、アンタこれからどないする?」
「どうと言われますと……ああ、えっとですね。実は、探し物がありまして……もう販売されていないので買うこともできないものなのですが、ブラックマーケットでは密かに取引されているらしくて……」
「って言ってる」
《あー……ヒフミンって言ったか?》
「ヒフミです!阿慈谷ヒフミ!」
《おっとすまん。阿慈谷さん、悪いことは言わない。その探し物とやらはまた後日、ほとぼりが冷めてからちゃんと護衛を雇うか変装した上でやったほうがいいと俺は思うがね》
「うぅ……やっぱりそうですよね……今日のところは諦めます……」
《賢明な判断に感謝する。ブラックマーケットへは何で来た?》
「電車です。○○駅から徒歩で」
《よし、トランスポーターにそこまで送らせよう。志津、宮崎とトラックは?》
「屋台街から南に200mのコインパーキングに停まっとる。たい焼き買いに行っててん」
《なるほど、それで屋台街か、了解した。宮崎へはこちらから連絡しておく。ランデブーポイントは現在地点から西に2ブロックのとこのコンビニ跡地。なるべく早めに来い。デザートエッジ、アウト》
「……よし、ほな行こか。ここからやったら200mぽっちや」
「えっと、志津さん、でしたっけ。その、あなた達何者なんですか……?」
「ん? ただのヘルメット団やけど」
「あはは……SRT顔負けの装備しててただのヘルメット団は無いと思います」
「そういうモンやそういうモン」
《トランスポーター、トランスポーター、こちらデザートエッジ。緊急事態だ》
突然、さきほど無線を切ったばかりの古戦ヶ原がまた無線を繋げてきた。その声は少し緊張に固まっているように聞こえる。
「どないしたん?」
《いいか、落ち着いて聞け。───志津、お前既に包囲されてる》
「は?」
《装備は恐らくチンピラレベルだが、数は20以上、四方八方から近づいてきてる。さっきのやつが応援を呼んだと推測している》
「……対応は?」
《ランデブーポイントは放棄、逃走経路はこちらからオペレートする。もし包囲網に穴が開けば宮崎が回収を試みるが、そもそもピックアップトラックは防弾仕様じゃない。逃げ切るにはお前の脚と持久力が頼りだ》
「無茶言うなぁ!?」
《こちらでもくじら号を派遣する。ただ、距離が距離だ。どれだけすっ飛ばしてもETAは15分から20分はかかるぞ。いいか、気張れ。俺は根性論が大っ嫌いだが、根性張らなきゃならん時もある。それが今だ。そら走れ!》
「ヒフミン走るで!お前さんかて痛い目に遭いとう無いやろ!ほらほらほら!」
「えっ、えぇっ⁉︎」
志津がヒフミの手を握って走り出す。
ここに、ブラックマーケット大鬼ごっこ大会が開幕したのだ。
Tips:だらだらヘルメット団団員のセカンダリは個人の自由になっているぞ!