Rimworld入植者(脱出済)のキヴォトス日記 作:運輸省
ブラックマーケット
「グレネードォ!!」
志津がヒフミの身体を引っ掴み、路地裏へと跳んだ。瞬間、チンピラの投げた破片手榴弾が炸裂。飛び散った破片やらがビルの壁に当たる。
現在、ブラックマーケット大鬼ごっこ大会開始から8分が経過。参加者チンピラは最初の20人から倍の40人近くにまで増加していた。全くもって嬉しくない右肩上がりである。
「あ゛ぁ゛もう!!!多いねん!なんぼおるんやアイツらァ⁉︎」
《12時方向、正面!数3!》
「多い言うとるやろがい!!」
立ち上がらず、うつ伏せ状態のままSG551を発砲。突発的な発砲だった為急所には当たらなかったが、怯みはした。立ち上がって、チンピラが怯んでいる間に急所にしっかり叩き込む。
「う、後ろからも来てます!!」
ヒフミも仰向けの体勢になり、角から現れたチンピラに向けて愛銃の『マイ・ネセシティ』、SA80の5.56mm弾を放つ。
「ああもう!バカ!アホ!Fire in the hole!」
志津が、腰につけていた手榴弾を路地裏の入り口へ投擲、数秒後炸裂した。チンピラの攻勢が少し弱まる。
「兄貴ぃ!次どないしたらいい⁉︎」
《そのまま路地裏を抜けて左に曲がれ。道路挟んで向こう側にも何人かいるから、放棄車両に身を隠しながらな》
「ひぃー!!!」
やっと起き上がったヒフミの手を握り、ひぃひぃ言いながら路地裏を走り抜ける。最近は多少の訓練をしていたとはいえ、元より志津は前線要員ではない。体力の差は如何ともし難いものがある。
ちなみにだらだらヘルメット団で一番体力があるのはムツリ(ry
《阿慈谷さん、少し聞きたいんだが》
「な、なんですかぁ?!」
《いや、周辺にやたら装備の整った武装集団がいるんだが、どうもこちらに介入するような動きをしている。何か知ってるか?》
「武装の、整った……あっ!ま、マーケットガードです!」
「嘘ォ⁉︎ マーケットガードおんの⁉︎」
《マーケットガード?》
少なくとも古戦ヶ原にとっては聞き覚えのない単語だが、今の反応を見るに、ヒフミや志津にとっては聞き覚えがあるどころか恐ろしい存在らしい。
「ブラックマーケットの治安機関というか、警察みたいな集団です!もちろん認可された物じゃ無いですけど……と、とにかく!マーケットガードとやり合うのはマズイです!」
《承知した。志津、プラン変更だ。鬼ごっこは中止、さっさとここから逃げるぞ》
「逃げるったってどこにぃ⁉︎」
《そこから20m先、トラックの陰にマンホールがある。どこに出口があるかは知らんが、少なくともチンピラ連中は撒けはする筈だ》
「マンホール…あれか!」
「行きましょう!」
乗り捨てられたらしい4tトラックの陰にあったマンホールの蓋を取っ払い*1、錆だらけの梯子を降りていく。ちゃんと蓋を閉めるのも忘れずに。
2人は眼にする事は無かったが、その30秒後、ブラックマーケット大鬼ごっこ大会が開催されていたエリアにマーケットガードの一団が突入。装備や練度の差もあり、あっという間にチンピラは制圧されたのであった。
仮にも治安機関がアパッチ持ってるってどういうことなの?
──────
───
ブラックマーケット下水道
志津カオリ
阿慈谷ヒフミ
「ひーっ、ひーっ、ゔぉぇっ、くっっさ」
「ひ、酷い、臭いで
志津が顔を顰め、ヒフミに至っては鼻と口をペロロ柄のハンカチで覆っている。
ブラックマーケットの下水道はなんとも言い難い臭いに包まれていた。
「てか暗くて何も見えへんし……あぁ、そういやライト持ってたわ」
腰に差していたフラッシュライトをつけ、前方を照らす。向かって右側に下水が流れており、左側が通行スペースとなっているようだ。
ライトで片手が塞がった為、SG551をスリングで背中に回し、セカンダリのガバメントを構える。今やっている構え方も、古戦ヶ原に教わった『ハリス・テクニック』とかいう構え方だ。
《そっちは無事か?》
古戦ヶ原が通信を繋げてきた。
「うわびっくりしたぁ⁉︎ え、何この無線地下でも繋がるん⁉︎」
《Rimworldじゃ地下とか洞窟で行動する事もあるからな。主に虫の駆除で……いや、この話はやめておこう》
「あ、あの、そこで区切られると逆に気になるんですが……?」
《逆に聞くが、自分の背丈ぐらいある虫とか足のサイズぐらいの虫がうじゃうじゃ湧いてくる話とか聞きたいか? しかも自分の部屋の床から》*3
「……兄貴、たぶん全部言うてる」
《あっ、やべ》
「あはは……」
《と、とにかく女子高生にはキツいだろうからなアレは……まあいい、下水の構造はこちらでも把握した。かなり歩く事にはなるが、ひとまず戦闘地域からは出られそうだ。足元に気をつけろ、滑って落ちたら洒落にならんぞ》
「把握した、って……え、どうやってですか?」
《あっ……あー、企業秘密って事にしておいてくれ》
「あっ、はい」
それから、暗闇の中をゆっくりと歩いていく。
途中、変な虫に驚きながらも、何とか、着実に。
ガチャリ
「あら? あちゃぁ……鍵かかっとるわこれ」
《何だと?》
20分ほど歩いたあたりで、金網扉で道が封鎖されてしまっていた。見ると、かなり頑丈そうな鍵なのが分かる。
「うーん、簡単には壊れそうに無いですね」
ヒフミもライトに照らされたそれを見ながら呟く。
「もう撃ってまうか?」
《やめとけ。発砲音でマーケットガードとかチンピラを引き寄せたら本末転倒だし、下水から変なガスが出てたらブラックマーケットごと大爆破だ》
「おっとっと……そんなん言うてもどないする? 下水側からも回れそうにないで、これ」
金網は下水側にも広がっており、流れてきたのであろう草やら材木やら自転車やらが引っかかっている。
《そうだな……20mほど後方の左手にドアがあっただろ。あそこから抜けられるか試してみよう》
「20m……あ、そういえばありましたね」
「行ってみるかぁ。ライトの電池切れないとええけど」
少し戻りドアの前へ。下水管理用の部屋だろうか? 何かプレートがかかっていたようだが、文字は潰れたのか消えたのか、とにかく判別できそうに無い。
鍵は、かかっていなかった。
「邪魔すんで〜……」
キィッ、と軋む音に反して、意外にも扉はすんなりと開いた。
「んお? 意外と軽い───」
《ッ、志津ッ!!!かわせっ!!!》
「へ? ───うぉおっ⁉︎」
ライトとガバメントを持って交差させていた両手が突然何者かに掴まれ、身体ごと壁に押し付けられた。
両手は強く掴まれたまま壁に押し付けられ、動かすことができない。
顎下に、冷たく固い感触。
「動くな」
それ以上に冷たい声。
ライトは付けっぱなしのまま天井に向けられた為、間接照明のような感じで周囲が淡く照らされている。
その淡い光に照らされ、『白い制服と片目のガラスが割れた濃紺色のガスマスク』があらわになった。
「か、カオリさんを離して下さい!」
ヒフミが声を震わせながらSA80の銃口をガスマスクの生徒に向けた。
ガスマスクの生徒が、ギロリとヒフミの方を向く。
「……トリニティの制服か」
「…え?」
ガスマスクの生徒はそうとだけ呟くと、再び視線を志津へ戻した。
「一度だけ聞くぞ、侵入者。なぜここへ来た。貴様はトリニティの手の者か?」
「と、トリニティ? 何を言うて───」
《すまないが、その質問にはこちらから答えさせてもらおう》
無線機から音声が響く。古戦ヶ原だ。
「ほう? コイツの指揮官とでもいったところか」
《そういう認識で構わない。それで、質問の答えだが、ここへ来たのは全くの偶然だ。そして、こっちはトリニティとは一切関係を持っていない。そこのトリニティの生徒は、たまたま一緒になっただけの奴だ》
「ひ、ひどい言われようです…」
「口では何とでも言えるだろう。証拠がない」
《そう言うと思ったよクソ……そうだな、有効な証拠は提示できないが、取引をしないか? えっと、『アリウス分校浸透強襲大隊E分隊長、
「ッ!」
「えっそれ誰───あいたたたたたたたた!!!???」
古戦ヶ原がその所属と名を告げると、志津に突きつけられた銃口がさらに強く押し付けられた。割と痛い。
「貴様ら…!やはりトリニティか⁉︎ それともアリウスに雇われた追手か⁉︎」
「痛いわボケェ!!!」
《落ち着けよ隊長さん、何もアンタ“ら”を害そうってわけじゃないんだ》
「……え? 『ら』?」
ヒフミの疑問の声に答えるつもりは無かったのだろうが、今の発言を聞いた生徒───三ヶ島が固まった。
《上手く隠してあるな。部屋の奥のデスクの陰、3人転がってる。安富、上辻、奈良山。ウチの志津と阿慈谷さんは全く気づいてないだろうさ》
「な、なぜだ。どこから見ている…? ここには監視カメラなんて物は……」
《全部だよ。俺には全てが見えている。三ヶ島分隊長》
「……!」
《そうだな、まず、これから言う事は決して脅しではないと思ってくれ》
「な、何を───」
《右腕上腕、治療済の銃創》
「⁉︎」
《胸、打撲。腹、刺し傷2ヶ所。あと右眼も殆ど見えてないだろ》
「なっ、えっ」
《んで? 機銃手の安富さんが───多いなァ⁉︎ 何だよこれ、蜂の巣(文字通り)じゃねえか、何にどう撃たれたらこうなるんだ……アリウス・スクワッド? 酷いな、同士討ちかよ。止血こそされてるが……他2人も同じ感じか?》
「……」
もはや三ヶ島は口が開きっぱだ。志津とヒフミも同じような物だが。
「あー……あの、離してもらってもええ?」
「あ、ああ、すまない……」
もう普通に志津の拘束も解いてしまった。心ここに在らずといった感じである。
《三ヶ島分隊長、先ほどの取引の話だが…》
「…なんだ」
《 無しにしてくれ 》
「は?」
突然の取り消しに三ヶ島の頭が真っ白になる。
《いや、最初は医薬品とか弾薬とか物資を提供するから出口教えてくれって言おうとしたんだが……状況が変わった。奈良山さんの『アレ』、命に関わるぞ》
「……!」
「兄貴ぃ、話についていけてへんのがここに2人ほどおるんやけど……?」
《ああ、すまん。奥で転がってる怪我人の怪我が酷くてな、傷由来の感染症を患ってる。一応治療はされてるようだが、そんな不潔な場所じゃ治るものも治らないぞ。下手すりゃ『切る』しかなくなる》
「えっ」
「き、切るって……」
「……はは、アンタは、一体何なんだ…? 全てを見通して……まるで───」
神みたいじゃないか。
──────
───
デザートエッジ駐屯地 通信室
「神、ね。俺はただの人殺しさ。両手の届く範囲しか救うことのできない、ただの、どこにでもいる愚かな人間だよ」
《……》
「なあ、三ヶ島分隊長。アンタが一言素直になってくれりゃあ、俺らはアンタらを助けられる。アンタらに何があったのかは知らんが、怪我人を放っておくほど俺は愚かじゃない」
《……助けて、くれるのか?》
「ああ」
《……頼む……彼女らを、仲間を……助けてくれ》
「よし───よく言った。志津、聞こえてるな。怪我人の搬送準備に移る。さっきのマンホールのあたりまでそいつらを担いで行け。悪いが、阿慈谷さんも手伝ってくれるか? くじら号のETAは5分後、急げよ」
《分かった!》
《わ、分かりました!》
「こちらも急ぐ。デザートエッジ、アウト」
無線を切り、倉庫の在庫を確認。宇宙商船の問題(来るたびにキヴォトス中から注目される恐れがある)が解決していない為補充できていない医薬品関係の在庫に顔を顰めながら、一度倉庫を出る。
「大宮寺ィ!!!大宮寺はいるかぁ⁉︎」
次にだらだらヘルメット団の宿舎に行き、医療担当の大宮寺キョウを呼ぶ。
「はいはいはい!!!何どうしたの⁉︎」
「急患だ!一応手術の準備をしておいてくれ!」
「しゅ、手術ゥ⁉︎ 医師免許も何も持ってないよアタシ⁉︎」
「あっ、そっかぁ……じゃあ倉庫から医薬品やら何やらを医務室に持ってっておいてくれ!万が一手術をするてなったら俺が執刀する!」*4
「分かった!」
そして通信室にとんぼ返りして、ブラックマーケットに急行中のくじら号に通信を繋げる。
「デザートエッジよりくじら号、デザートエッジよりくじら号───」
すっかりブラックマーケット大運動会の余韻も無くなってしまったが、デザートエッジ駐屯地は、人の命を救うために一つとなって行動を始めた。
Rimworldで一番チートなのは、『Mines 2.0』MODによる資源生成でも、古戦ヶ原とナダヤだけが建造できるRim産オーパーツ群でもなく、我々の視点───遥か上空から何でも見通せる事だと思っています。いわゆる上から見下ろすゲーム画面ですね。
そして、キャラ(Rim的にはポーンという)をクリックすれば、敵味方問わず、そのポーンの能力、健康状態、出自とかが見られるわけです。とんでもないチートだと思うんですよねこれ、色々な分野において。
あと、くじら号によるヘリボーン作戦とか志津の奮戦とかをいっぱい書いちゃうぞ^〜とか思いながら書いてて気づいたらアリウス生(オリジナルモブ)を救助してました。なんでですか???(疑問)