Rimworld入植者(脱出済)のキヴォトス日記 作:運輸省
《前回の誤字報告者兄貴姉貴》(敬称略)
貧弱な自分、荒魂マサカド(3話)
ありがとナス!
それからの話をしよう(8話ぶり2回目)
まず、阿慈谷ヒフミとはその場で別れた。本当なら駅まで送る約束だったのだが、アリウス生を保護したせいで状況が変わった為である。
聞いた話では、後日またブラックマーケットに来て再アタックをかけるらしい。結局聞く機会はなかったが、一体何を探しているのだか。*1
そして、本題。
アリウス分校。
阿慈谷ヒフミの通うトリニティ総合学園、その領内にかつて自治区を有していた数ある分派の一つ。
そもそもトリニティ『総合』学園というのが数多くの分派が統合した上で成り立っているのだが、その統合に向けた『第一回公会議』において唯一統合に反対の立場を取っていたのがアリウス分校。
結果、連合を果たしたトリニティ総合学園から激しい弾圧を受け、自治区からも追放されキヴォトスの表舞台から姿を消した。
そして、血で血を洗う壮絶な内戦を経て、現在は『マダム』と呼ばれる大人に支配されているらしい。
[vanitas vanitatum. et omnia vanitas. ]
彼女らの唱えていた合言葉というか警句のような物で、『全ては虚しい。どこまで行こうとも、全てはただ虚しいものだ』とかそういう意味らしい。
「私は、それがバカらしかった」
医務室のベッドの上で、分隊長、三ヶ島ユイは言う。
「歴史としては理解できる。トリニティから弾圧を受けたのだって憎らしいさ。だが、それを数十年、数百年引きずって何になる?」
「何にもならないだろうな」
「ああ、そうだ。私は第一回公会議を知らない。生まれてすらいなかったからな。というか、知ってる奴なんて今のアリウスにはいない。じゃあ、何で未だにトリニティへの復讐を誓っているんだ。───マダムだよ、今のアリウス生徒はみんな、あの化け物に『恨み』を植え付けられてるんだ。私は、ある時それがバカらしくなった」
「それで、脱走を図ったと」
「アリウス・スクワッドの連中に追撃を喰らってこんなザマだけどな。……本当に、あなたには感謝している」
結果から言うと、アリウス分校浸透強襲大隊E分隊の面々は助かった。
分隊長の三ヶ島ユイ以下3名、安富マナツ、上辻ミキ、奈良山ナホ、全員がだ。
奈良山ナホは右脚の銃創由来の感染症が深刻化していたが、とっておきの最先端医薬品を投入し、どうにか切断はせずに持ち堪える事ができた。あと少し遅かったら手遅れだっただろう。
そして、E分隊はデザートエッジ駐屯地に加わる事が決定した。
三ヶ島が、意識を取り戻した安富、上辻、奈良山の3名とよく話し合った結果だそうだ。
そもそも行く当てもない事、食料や現金もない事、そして、デザートエッジに助けられた恩を返さなければならないという理由から。
人手不足なのは前言った通りだし、喜んで承諾したのは言うまでもない。
──────
───
E分隊のリハビリに数日ほど費やした後のある日。
「おーい、三ヶ島、ちょっと付き合ってくれ」
「どうした隊長」
新しく製作した迷彩服やライフル*2の慣熟訓練に励んでいる三ヶ島を呼び出した。
「ちょっとアビドス高校まで行くんだが、E分隊でついてきてくれないか。くじら号の操縦にも慣れてもらいたいし、俺の護衛も兼ねてる」
「そういう事なら是非もない。E分隊!総員集合!」
E分隊の残り3名が駆け足で集まってきた。こうして動きを見てるとマジで軍隊だな。どんな教育されてたんだか。
「これよりE分隊は古戦ヶ原隊長の護衛任務、加えてくじら号操縦の慣熟訓練に移る。隊長」
「あ、ああ。フライトヘルメットとか必要な装備は、立道かムツリ、あと田んぼ三姉妹から借りてくれ。アイツらが暫定的なくじら号クルーだからな。多分持ってるはずだ」
「質問はないな? 以上!解散!」
E分隊が解散したのち、隣でまだ立ってる三ヶ島に話しかける。
「なぁ三ヶ島、その隊長ってのやめないか。むず痒いんだが」
「……申し訳ありません、上官と部下の関係というのがどうしても身体から抜けませんで」
「俺はあくまで『保護者』だよ、決して上官なんかじゃない」
「そうだよォ? 柔軟にいこうじゃないか、三ヶ島くん」
畑の方からナダヤもやってきた。
「ご夫人」
「お、ナダヤ。90式の塗装はどうだ」
「順調さ、夕方までには終わりそうかな。いやぁ、確かに砂漠であの森林迷彩は目立つね。気にしてなかったよ」
「Rimじゃあ車両の迷彩なんてほぼ意味なかったからな…」
「えぇ…?」
実は現在、『みかん号』と『おもち号』の再塗装を行なっている。乗員から「砂漠地帯だとこの迷彩が目立って仕方ない」というクレームが出た為だ。……確かに砂漠の砂に自衛隊の車両迷彩は目立つなと思い反省。
米軍のエイブラムスを参考に、デザートイエローというか、タンカラーというか、とにかく砂漠に合ったそれっぽい色に塗装し直したというわけだ。
「んじゃ、ちょっとアビドスに行ってくるから留守は頼んだ」
「分かった、気をつけたまえよ。どうも見回りの子から、つい先日妙なオートマタを見たって報告があったからねぇ」
「オートマタ? まさかメカノイド*4じゃないだろうな」
「そこは大丈夫だ。キヴォトスでよく見る二足歩行のオートマタだったらしい。もっとも、所属は不明だが」
「OK分かった、注意しとく」
今までになかった報告に不安を覚えながら、とりあえずくじら号の操縦席に乗り込む。副操縦士には奈良山ナホが付くらしい。
「よろしくお願いします、隊長」
「あー……うん、いいや。呼びやすいように呼んでくれ」
「?」
古戦ヶ原は諦めた。
──────
───
アビドス高校周辺空域
「そういえば隊長さん、その、アビドス高校?には何しに行くんだい?」
右側ドアガンに付いていた上辻ミキが聞いてきた。
「メインはお前らの顔合わせな。あと、以前ヘルメット団とドンパチした事があったんだが、その時にシロコ、えっと、アビドスの生徒がヘルメット団の車両の部品を回収してたんだよ。それで何か分かったのか気になってな」
「何か気になる事があったんだ?」
「まあそういう事だ。もうそろそろ着くぞ」
アビドス高校に通信を入れると、「プール跡に簡易ヘリポートを作ってもらったので、そこに着陸してください」と言われた。
首を傾げながらプール側に回ると、プールに蓋をするように鉄板が敷かれ、その上にデカデカと白ペンキでHのマークが書かれているのが見えた。下に鉄骨でも設置してるのか、かなりしっかりした作りに見える。
「ほー、よく作ったなあんなの。相当金かかったろうに」
「逆に今までどこに降ろしてたんですか?」
副操縦席の奈良山が聞いてきた。
「校庭のバリケードが見えるだろ? あれを退かしてもらってたんだよ」
「なるほど…それは大変ですね」
「(゜゜)(。。)(゜゜)(。。)」
「マナツちゃんもそうだそうだって言ってるよ」
……今無言で頷いたのが、左側のドアガン担当の安富マナツだ。こいつがまあ一切喋らない。ムツリとはまた別ベクトルで濃いのが来やがった。
とまあ、頭痛の種は置いておいて、とりあえずくじら号を簡易ヘリポートに着陸させる。
「この位置だったら警備もいらないだろ。全員ついてきてくれ」
「(*`・ω・)ゞ」
……今のは「了解」でいいのだろうか。
「(`・ω・)b」
いいらしい。
──────
───
アビドス高校
対策委員会部室
「こんちわーっす、デザートエッジでーす」
「失礼します」
E分隊を伴って部室に入ると、意外にも人がかなりいた。
まず基本の対策委員会5名、何やら机の上に広げた書類を見てわなわなしている。
そしてシャーレの先生。今日はテッパチと防弾チョッキ3型は着けて来ていないようだ。こちらも対策委員会ほどではないが、険しい顔をしている。
そして、黄色いリボンのセーラー服にクリーム色のカーディガンを着た生徒。
「あ、あなたはあの時の…!」
「ああ、あの時のトリニティの君か。その節は世話になった。E分隊一同礼を言う」
「(* .ˬ.)"」
「わ、あの、頭を上げてください!」
阿慈谷ヒフミだ。
“古戦ヶ原さん。今日はどうされたんですか?”
「いえね、ウチに新入りが加わったんで、そのご紹介に。でも、なぜに阿慈谷さんがここに?」
“あれ、ヒフミとお知り合いなんですか?”
「少し前にブラックマーケットで」
「……お兄さん? ブラックマーケットってどういう事かなぁ〜? おじさん初めて聞いたけど〜?」
「あっやべ」
古戦ヶ原は その場から 逃げ出した!
しかし シロコに 回り込まれてしまった!
「ん、ブラックマーケットで何をしたのかキリキリ吐くべき」
「待て待て待て!何も悪い事はしてないぞ⁉︎」
「悪いことしてない奴はわざわざそんな事言わないわよ…」
くっ、黒見め、言うようになったじゃねえか……
「とりあえず皆さんはこちらにどうぞ〜。私は2年の十六夜ノノミと言います〜」
「1年の奥空アヤネです。あっ、すいません、今椅子出しますね」
「あ、ああ……ありがとう。分隊長の三ヶ島だ」
「奈良山ナホと申します」
「上辻ミキだよ〜。こっちは安富マナツ」
「ヨロ(`・ω・´)スク」
“また凄い子が来たね…”
向こうは向こうで自己紹介できててお兄さん嬉しいよ!
あっちょっと待てシロコもホシノもジリジリ寄ってくるな!ヒフミも「あはは……」してないで助けてウワーッ!
〜 ( ^q^) vs ( ˇωˇ ) 〜
先ほどはふざけてみたりもしたが、どうもアビドスの状況は芳しくないらしい。全然ふざけてる場合じゃなかったわ、何してんだ俺。
「ハハァ、アビドスから借金の利子を回収したカイザーローンのトラックが、その足でカタカタに資金提供、と」
“カイザーローンの公式な書類です。間違いはないでしょう”
その書類を見せてもらったが、アビドスで七百八十八万円を集金したのち、カタカタヘルメット団に“任務補助金”として五百万円を提供したと確かに記されていた。
「マッチポンプここに極まれりって感じだね」
「( ゚ー゚)( 。_。)」
上辻が眉を顰めながら言った。マナツもそうだそうだと言っている…と思う。言葉を発しろ言葉を。
「カイザーローン単体で行ったとは考えにくいな。動機が見えない。共犯者か、指示役がいると見るべきだろ」
「私もそう思う。カイザーコーポレーション本社の息がかかってるとしか思えない……」
「……はい。そう見るのが妥当ですね」
「待った、カイザーコーポレーション? カイザーローンで一つの会社じゃないのか?」
「えっ」
「え?」
“……あー、古戦ヶ原さん?”
「……なんだよォ、皆して俺のこと見て。しょうがないだろ今初めて聞いたんだから」
呆れ顔のホシノに教えてもらった。
カイザーコーポレーション。
キヴォトス全域で事業を展開する巨大企業で、かなり多種多様な分野に手を出しているとか。アビドスが借金をしている相手というのもそのうちの一つ、カイザーローンというわけだ。
……今思えば、以前カタカタヘルメット団の拠点を偵察しに行った時にチラッと見たショベルカーも、カイザーインダストリー製だとか山田が言ってたな。あれもか。
「OK、カイザーが何なのかってのはよーく分かった。分かりやすい説明ありがとう」
「よく考えたらお兄さん宇宙人みたいな物だもんね…そりゃ知らないか」
「『みたいな』っていうかまんま宇宙人だけどな」
まあ、仮にカイザーコーポレーションが指示役で、カイザーローンがマッチポンプを働いていたとしよう。
だとしてもだ。なんでそんな事をする? 動機が見えてこない。
今聞いた話だと、アビドスのカイザーローンに対する借金総額は9億円以上。毎月の利子ですら700万円を超えている。
…いや多いな? 学生5人で返す金額じゃないだろ。
ただ返済するだけでも大変なところに、わざわざヘルメット団を雇って、多額の支援をしてまで妨害工作を加える? 全くもって筋が通ってない。まるで自分らから9億を捨てに行ってるような物だ。
そこまで考えて、ふと気になる事ができた。
「……なあ、カタカタヘルメット団ってなんで襲って来たんだ?」
「なんでって、そりゃあ、カイザーローンから雇われてでしょ?」
「ああいや、そういう事じゃなくてだな黒見、カタカタヘルメット団自体の目的だよ。なんか目的みたいな事は言ってなかったのか?」
“確か、この校舎は頂くぜ、とかだったと思いますけど”
意外にも、その問いに答えたのは先生だった。
「校舎を?」
“私も、それを聞いたのは古戦ヶ原さんがヘリで来た時の襲撃の際ですけどね”
「……いえ、言われてみれば、確かに毎回同じような事を言ってました」
アヤネからもそれを肯定する発言が出る。
「───じゃあ、校舎を占拠する事が目的だったわけだ。少なくともカタカタヘルメット団にとっては」
「(-ω-?)」
「なんか含みのある言い方だね? おじさんにも分かるように教えてくれないかな〜?」
「あー……あくまで俺のガバ推理だから話半分で聞いてくれよ?」
カイザーローンの最終的な目的は今の段階だとカケラも分からんから、ひとまず『目標A』だとしよう。
この『目標A』を達成する為にカイザーローンは大枚叩いてカタカタヘルメット団を雇った。まさかただの不良集団に計画の一から十まで全部喋るはずはないから、「○○してくれ」みたいな感じで話したと仮定する。
で、それを聞いたカタカタは依頼を達成する為に「アビドス高校校舎の占拠」という目標を立てた。
ここからさらに仮定を重ねるが、この目標を立てる段階で、依頼内容から脱線したような事を目標にはしないと思うんだよ。
要は、かなりこじつけにはなるが、「アビドス高校校舎の占拠」は、カイザーローンの『目標A』への途中目標と言える。
アビドス高校校舎の占拠から繋がる何かが、カイザーローンの目的になるんじゃねえかな。
ん? はい奥空さん何でしょうか。
「その理屈で行くと、カイザーローンの『目標A』も、カイザーコーポレーションの最終目標への途中目標という事になりませんか」だって?
…………あっ、確かにそうだな⁉︎
推理シーン書ける人って頭の構造違うよね絶対
Tips:E分隊員の役割はこんな感じだ!
三ヶ島ユイ
分隊長。ライフルマン。
奈良山ナホ
選抜射手。
上辻ミキ
ライフルマン兼メディック。
安富マナツ
機関銃手。