Rimworld入植者(脱出済)のキヴォトス日記   作:運輸省

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(投稿者の)忘れ物その2。
前回に引き続き番外編です。


投稿者も前回投稿後しばらくしてから気づいたのですが、だらだらヘルメット団医療担当の大宮寺キョウについて言及していなかったので最初に言及しておきます。投稿者のおバカ!

あと、番外編に関して時系列が本編と比べてだいぶ乱れているものがあります。それらの物を見つけた場合は、「あっ、投稿者のガバだな…」と心の中にしまっておいてください。


《前回の誤字報告者兄貴姉貴》(敬称略)
不死身の機動歩兵隊
(やさしいせかい→やさいせいかつ っていうネタがあってだね…)

ありがとナス!


20.75話 忘れ物その2

・大宮寺キョウの場合

 

「分かんない」

 

「『分かんない』?!」

 

「記憶がないんだよね。気づいたらこのボロボロの学生証だけ持ってブラックマーケットにいてさ、そこでリーダーに拾われて今は衛生兵なんてやってる」

 

「あの時は本当にビックリしたぞ。こたつ号買ったしさあ帰ろうと思ったら車内に潜り込んでんだ」

 

「寒かったんだよあの時」

 

「だいぶ謎だねぇ……ふむ、学生証から学校の名前を判別するのは厳しいか」

 

 

 

・メンタルケア ゲヘナ風紀委員会

 

 

 

ゲヘナ風紀委員会重迫撃砲小隊は戦闘不能状態にあった。もちろん、怪我とか弾薬の問題とかそういう事ではない。

アビドス地域での作戦後、「砲撃をするのが怖い」と訴える隊員が続出したのである。

 

実は作戦後、重迫撃砲小隊を含めたゲヘナ風紀委員会幹部がDE駐屯地へ謝罪に来たのだが、このタイミングがいけなかった。

 

 

「やあ、遠路はるばるよく来たね」

 

 

出迎えたのが、まだ車椅子が用意できていなかったためひとまず松葉杖で生活していたナダヤだったのである。

まず重迫小隊の何人かが卒倒、イオリや横乳が顔を青くし、残りは罪悪感と後悔に顔を歪めた。

 

その後なんとか謝罪だけはやったものの、それがとどめとなり、重迫撃砲小隊を中心にメンタルに支障をきたす者が続出したのだ。

 

 

 

ゲヘナ学園 生徒寮

 

カーテンの閉め切られた暗い部屋の中、1人の生徒が部屋の隅で体育座りをしている。

ゲヘナ風紀委員会、重迫撃砲小隊の『元』小隊長である。

 

あの日、重迫撃砲小隊を指揮し、渡辺アスカから「兄貴から言われてなけりゃ、身包み剥いだ上で砂漠のど真ん中に放り出すか、塩水ぶっかけて業務用冷凍庫に閉じ込めてるとこっスよ、真面目に」と真顔で言われた小隊長は、事件後、責任を果たすように───又は逃げるように。

風紀委員長が不在の隙に、デスクに退職願を置いてきた。

 

そして、それから数日。彼女は一切部屋から出ていない。

 

カーテンの外側からは、ゲヘナ仕込みの銃撃戦の喧騒が聞こえてくるが、彼女はぴくりとも動かない。

 

生きてはいる。生きてはいるが、ただそれだけ。

 

彼女はここ数日そんな状態であった。

 

 

 

ピンポーン

 

 

 

部屋のチャイムが鳴った。

 

 

『…ねえ、いる? よければ少し、話がしたいのだけど』

 

 

ドアから聞こえるのは、低音めの落ち着いた声。

今まで何度も聞いた声。ヒナ委員長の声だ。

被っていた毛布を床に置き、のそのそと扉に向かう。

 

 

「……ご足労おかけしてすみません、委員長。ですが、私は……」

 

『どうしても?』

 

「はい……申し訳ありませんが、私なんかに構わず、お帰りになってください」

 

『そう……』

 

『仕方のない娘だねぇ、ほら、先生』

 

『“本当にやるんですか……? ごめん、扉から離れててね”』

 

「はい?」

 

 

何やら委員長以外の声が聞こえ、いーち、にーいとカウントダウンをする声まで聞こえてきた。何やら嫌な予感がして、扉から離れる。

 

 

『“さーんっ!!!!!”』

 

 

バガンッと、おおよそ扉から聞こえてはいけないような轟音が響き、金属製の扉が部屋の側に思い切り吹き飛んできた。

 

ガラン。

金属製の重い物を床に置く音がして、今度は部屋に誰かが入ってきた。

 

 

まずヒナ委員長。

 

そして、事件後に何度か顔を合わせたシャーレの巨人、先生。

 

そして───

 

 

「やあ、数日ぶりだね」

 

 

両の脚でしっかりと立つ、古戦ヶ原ナダヤであった。

 

 

──────

───

 

 

「どうしても、ダメ?」

 

「はい……もう、私にはあの制服の袖に腕を通す資格がありません。怖いんです、砲撃が」

 

「人に、怪我をさせてしまいそうで?」

 

「……はい」

 

 

テーブルの反対にヒナ委員長が座り、話が始まった。

…台所からはトントントンと包丁がまな板を叩く音や、電子レンジの音、湯が沸く音が聞こえてくる。

「なんだいその頬のこけようは⁉︎ 何日食べてないんだい⁉︎」と驚いたナダヤが先生を引き連れて台所に入って行ったのが10分ほど前。

 

「田中女史⁈ 『中火で1分』は『強火で10秒』と同義ではないんだよ⁉︎」とか「待て待て待て待つんだ、君は自分の指を切り落とす気かい⁉︎ どうして包丁を振りかぶる⁉︎」とか聞こえてくるあたり、シャーレの先生は料理ができないらしい。包丁振りかぶるって何?

 

 

「はあ……はあ……と、とりあえずできたよ。腹ごしらえをしないと気分も上がらないからね。おかずは用意できなかったが勘弁してくれ」

 

 

肩で息をしたナダヤがお盆に載せた料理を運んできた。

茶碗によそられた白ご飯と、味噌汁。

ご飯はパックごはんの物だろう。米は一切準備していなかった筈だから。

味噌汁はインスタントだろうが……ちくわが入っている。きっと冷蔵庫に残っていた物だ。

……先生、ちくわを切るのに包丁を振りかぶったのか?

 

まあいい。

何はともあれ、数日ぶりのちゃんとした食事。

安いインスタント味噌汁のなんとも言えない風味が体に染み渡る。文明の味だ。

 

 

“じゃあ、私は出てますね”

 

 

先生が部屋から出て行き、ナダヤがヒナ委員長の隣に座り、

 

 

「まず勘違いを正しておきたいんだがね」

 

 

そう切り出した。

 

 

「…勘違い?」

 

「結論、君らは『私が君らの攻撃が原因で脚を失った』事に後悔や罪悪感を覚えているんだろう?」

 

「まあ…そう、なりますね…」

 

全くの見当違いだよ

 

「は、はぁ…?」

 

「おそらく哲郎も言っていたと思うが、Rimworld───私のいた星では、手足の欠損はよくある事なんだ。キヴォトスでいう『銃撃戦』と同じぐらい身近と言ってもいい」

 

 

ナダヤはそう言って身につけていたガーゼスカートをたくし上げ、濃いストッキングを履いた左脚を動かした。

───微かに、とても微かに、モーターらしい音がする。義足か。

 

 

「まあこのように、欠損が身近な分義肢も豊富に存在する。性能も生の物に比べて数段階良いぐらいだからね、別に脚を失った事に対して怒っている訳じゃない」

 

「じゃ、じゃあ、何に対して…?」

 

「……Rimworldにいた頃ね、色々と襲撃を受けた。蛮族や山賊、宇宙からやってくる宙族もいた。理由は様々、『金目のものを全部よこせ』『コロニーの女を全て差し出せ』『近くの街道の通行料を払え』『おまえどくしんか?』『楽しく戦争しようよ!』『あなた方のコロニー汚いので掃除(物理)しますね』、まあとにかくマトモな理由は一つもなかった」

 

 

まるで昔を懐かしむような目で、天井を見上げている。───いや、この場合見上げているのは空と言うべきか。

 

 

「……ここに来る前、天雨行政官や銀鏡隊長から聞いたよ。今回の作戦の真の目的はシャーレの先生の確保だったらしいじゃないか。そのカバーケースとして、あの、なんだっけ、便()()()6()9()だかを狙ったと」

 

「ナダヤさん、68よ」

 

「おっと失礼……まあ、この辺りを君に責めても仕方ない事は重々分かっているから、これについては天雨行政官を責めに責めまくった分で勘弁しておこう。だがね、これだけは言っておきたい。『倫理をもって命令に疑問を持て』」

 

「……」

 

「君が治安組織の人間で、上からの命令を拒否できない立場ということは重々承知している。だがね、いくら指名手配犯を捕まえるためとはいえ、営業中の民間の店舗に砲撃を加えるのはおかしいんじゃないかい。まるでRimworldの蛮族や山賊と同レベルだ。そこに私は怒っているんだよ」

 

 

ナダヤは続ける。

 

 

「銀鏡隊長にも言ったが、君、倫理観を大事にしてくれ。武器を扱う者が倫理観を失ったら、それではただの『()()()()()()()()()()()()』だ。頼むから君は、これからも人であってくれよ。……じゃあ、言いたい事は言ったから。あとは任せたよ、空崎委員長」

 

「ええ、外で待っていて」

 

 

彼女が部屋から出て行ったのを見届けたヒナ委員長は、懐からある封筒と一枚の書類をテーブルの上に出した。

封筒には、『退職届』とある。数日前に委員長のデスクにひっそりと出した物だ。封も切られていない。

 

書類の方には『辞令』とあり、

 

『風紀委員長付秘書官を命ず』

 

と記されていた。

 

 

「あなたには選択肢があるわ。退職届を再度私に提出するか、この辞令にサインをして現場から事務方に移るか、もしくは重迫小隊に戻るか。ゆっくり考えてちょうだい」

 

 

ヒナ委員長が立ち上がり、外へと向かう。

 

 

「……あと、その、ごめんなさい。ドアの修理費は風紀委員会で持つから」

 

 

 

 

 

 

 

ヒナ委員長が出て行った後も、彼女はテーブルに向かったまま考え込んでいた。

 

 

悩み、考え、苦しみ───

 

 

頼むから君は、これからも人であってくれよ

 

 

ボールペンを手に取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

・みかん号とおもち号を見た先生の反応

 

 

事件後しばらくして(調停のしばらくあと)、DE駐屯地に先生がやってきた。

 

 

“これですよこれ。驚いたんですからね、急にデザートタン塗装のキュウマル(90式戦車)が現場に突入してきた時“

 

 

そう、何気に先生に伝えていなかったみかん号とおもち号が、柴関での一件でついにバレたのである。別に悪いことをしている気はさらさら無いので『バレた』と言うのもおかしな話ではあるが。

 

 

"これも鹵獲ですか?“

 

「いえ、ハンドメイドです。くじら号(UH-1Y)と同じ感じで」

 

"ハンドメイドって意味を一度調べて頂きたいですね……“

 

「意味的には合ってますよ」*1

 

“そういう事じゃないんですよそういう事じゃ”

 

*1
「handmade」とは、直訳すると「手作り」を意味する英語の単語である。製品や物品が人の手によって作られたこと、または工場や機械ではなく、個人や小規模なグループによって生産されたことを示す。weblio辞書より引用




ちょっと短めなのは前回の番外編と合わせて投稿するつもりだったから。
「あれ? アレはどないしたんやろ」みたいな要素があるかもしれませんが、そういうのは今後の本編で載せる可能性が高い奴です。きっと。恐らく。頑張れ未来の投稿者(丸投げ)
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