Rimworld入植者(脱出済)のキヴォトス日記 作:運輸省
《前回の誤字報告者兄貴姉貴》(敬称略)
krr(20.25話)、
ありがとナス!
DE駐屯地
古戦ヶ原・黒服が会談している頃。
DE駐屯地ではナダヤが頭を抱えていた。
すっかり身体に馴染んだ左脚の強化義肢、その力の原動力である静音ミニサーボモーターが、よく耳をすまさなければ聞こえないような小さな音を立てている。
彼女の目の前には、2枚の書類。
今朝方、連邦生徒会とシャーレから届いた物だ。
シャーレからの書類は、『アビドス自治区の殆どの土地が、カイザーコーポレーションの手に渡っていた事が判明した』と伝える物。
そして連邦生徒会からの書類は、『君らが届け出た住所、土地の所有者がカイザーコーポレーションになってるけど大丈夫? 住所間違ってない?』という確認の文書である。
そう、デザートエッジ駐屯地、というか古戦ヶ原が最初にテントを張ったこの空き地も、他の土地と同じようにカイザーの手に渡っていたのである。
言葉を選ばず言うなら『不法占拠』とも言えるだろう。もちろんそれをやらかしているのはこちら側だ。
以前、ナダヤが古戦ヶ原から聞いた話では、この土地の使用許可はアビドスの実質的リーダーである小鳥遊ホシノから取っていたらしい。
しかし、そのホシノですら把握しきれていないほど、広大な土地が売り渡されていたというわけだ。
「これはちょっと……どうするべきかねぇ」
考えを巡らせる。
この書類が届いて、先生に無線で確認した際に彼女が言っていたのは、「カイザーはアビドスの砂漠で何かをやってるらしい。その為に土地を買い漁っていたのでは」という内容。
『土地』自体が目的となると、鉱山*1で取れる金塊で買う、という手段も現実的ではなさそうだ。カイザーグループの目的がなんであれ、その目的の為に土地を購入したのだから、手放すとは考えにくい。
「(最悪引越しも考えるべきかなぁ、これは)」
『
Rimworldでも無い話ではない。
幸運な事にナダヤや古戦ヶ原は経験した事はないが、メカノイドや大量の敵に対処しきれず、コロニーの一切合切を捨ててキャラバンを組みコロニーを脱出、新天地を目指す、というケースがあるらしい。と、人づてに聞いた事がある。
まあ、今回は敵襲ではなく権利関係という平和な原因だ。一切合切を捨てる、とまでは行かずとも、ある程度落ち着いた準備ができるだろう。
それはそれとして、だ。
「あの子たちにそんな経験はさせたくないねぇ」
だらだらも、E分隊も、全員が住処を追われた、あるいは住処を捨ててきた出自をもっている。
そんな娘達に、もう一度『住処を捨てる』という経験はさせたくない。
どうにか解決策を考えなければ。ナダヤはそう決心した。
DE駐屯地 駐車場
田んぼ三姉妹 藤田アヤカ
料理担当 林マナミ
「…マナちゃん、何これ?」
「分かんね。今朝は無かったと思うけど。あと『マナちゃん』呼びやめろっつってんだろ。クソボケって呼ぶぞ」
「唐突な悪口」*2
ナダヤが1人でそんな事を考えているのと同じ頃、駐車場では田んぼ三姉妹長女 藤田アヤカと、料理担当 林マナミが駐車場に停まった謎の車両を眺めていた。
隣に停まった
タイルのような物が大量に貼り付けられた車体と、その上に乗っかる砲塔。主砲はやたら細いので機関砲に見える。あと、砲塔の左側面に何か発射機のような物。
「説明しよう!」
「⁉︎」
「うわびっくりした」
突然砲塔のハッチから顔を出したのは、鍛治担当の讃岐マリコである。
「前からおもち号みかん号だけじゃ足りないって嘆いてた兄貴が設計図だけ引いてて、今朝から作る予定だったのがなんか用事ができたらしくてそのままになってたのを製造組2人で勝手に作ったこの車両!」
「名を『M2 ブラッドレー』という!…らしい」
操縦手ハッチをパカッと開けて西潟ミユキも顔を出した。
「勝手にって…大丈夫なのかよ。バレて大目玉喰らっても知らねえぞ」
「あ、そこは大丈夫。資材まで集められて放置されてたからナダヤさんに確認したら、『そこまで準備されてるなら作ってしまっても大丈夫だと思うよ』(イケボ)ってさ」
「モノマネ下手すぎだろ、自分で(イケボ)って言うなよ。確かに姐御の声カッコいいけどさ」
「でもさ、人いないよね。これの乗員。どうするんだろ」
藤田の疑問も最もである。
現在、DE駐屯地全体で24名。
その内、古戦ヶ原は全体の指揮、ナダヤは内政担当で除外。
みかん号(中司カナン、国定キリコ、我部モユル)、おもち号(立道マイ、陸奥ムツリ、三雲ヒカル)の乗員6名と、
この時点で全体の半分に昇る12名が直接の銃撃戦に参加できないのである。なんなら状況によっては臨時軽迫撃砲班として引き抜かれるメンバーもいるのでここからさらに減る。
なんだかんだ言って、最後に戦争を制するのは装甲兵器ではなく歩兵などの白兵戦力なのだ。これが目減りするのは痛い。
「まあ、そこはどうにかして兄貴に人員を補充してもらうしかないけど、最悪アタシら2人で動かせはするよ。アタシが操縦で、マリコが車長で」
「ただちょーっと砲手が欲しいなぁって。チラッ」
「チラッ」
「?」
「だってさ、マナちゃん」
「…は? アタシ? アタシに言ってんのかそれ」
「わーっせ、わーっせ」
「わーっせ、わーっせ」
「うおっ、お前らいつの間に降りて…あっコラ何すんだオイ!やめろ担ぐな!うわっぷなんだこのヘルメット⁉︎」
「じゃあアヤカさん!あたしらちょっと試験走行とか色々しに行ってくるので!」
「はーい、気をつけてねー」
「試験って…お、おい!アタシは砲手やるなんて一言も「発進〜」うわーっ...」
「……Xboxでもやろっと」
1分にも満たない拉致劇であった。
──────
───
アビドス
砂漠化地域
仮称『おせち号』
車長 讃岐マリコ
砲手 林マナミ
操縦手 西潟ミユキ
砂漠化が進み放棄された地域を、M2ブラッドレー、仮称『おせち号』がV型8気筒の液冷ターボチャージド・ディーゼルの爆音を響かせながら走っている。
ちなみにおせち号の名付けは林である。
砲手用のハッチから上半身を出した林が、同じように車長用ハッチから上半身を出した讃岐に話しかける。
「なあおいマリ助よぉ、随分と走ってっけどどこまで行くんだ?」
「アビドスからもらった地図だとこの先に建物がなんもない空白地帯があるみたいなんだよね。そこで機関砲とか対戦車ミサイルの射撃試験できないかなぁって」
「ねえマリコ、このまま真っ直ぐでいいの?」
「あ、ごめん。50mぐらい向こうの横転してるトラックのあたりで右折だって」
「はーい」
手前で減速し、ゆっくりと曲がる。
どこぞの90式戦車みたいに全速出したりドリフトしたりなんてしないのだ。お前らの事だぞみかん号とおもち号、整備する側の気持ちにもなれ。(工芸組並感)
「あ? 前の方砂の山しかねえぞ」
「大丈夫大丈夫、あれ超えれば空白地帯だから」
讃岐の宣言通り、キャタピラが砂を蹴って斜面を駆け上っていく。
途中危ない場面はあったものの、どうにか砂の山を越えた。頂上からは、地平線の果てまで広がる砂漠地帯が見渡せる。
「ん?」
「うおー…すっげ」
「壮大だねぇ…じゃあ降りるよ、掴まっててね」
「ごめんガッちゃん、ちょっと待って」
讃岐がそう言って西潟を止め、双眼鏡を取り出しどこかを覗き始めた。
「どしたの?」
「マナちゃん、砲手用の望遠スコープあるからちょっと見てくんない? えっと、1時の方向、距離は……4,000とかかな、もうちょっとあるかも」
「あー、ちょっと待ってろ……これか?」
言われた方向に砲塔を回し、スコープを覗いた林の視界に映ったのは、防壁に囲まれた厳つい施設。
「なんだありゃ。随分アビドスらしくない建物だな」
「アビドスらしくない?」
「なんかこう…なんだろうな、アレだよ、なんか軍とかそういうトコの施設っぽいっていうか…お?」
砲塔をゆっくりと旋回させて謎の施設の様子を伺っていた林が声を上げた。
「こりゃあ…軍っぽいっつーか」
「軍隊そのものだねあれ。うじゃうじゃいる」
「えーと、戦闘ヘリに戦車にオートマタが多数……すげえいるぞ。50はくだらねえな。どこの奴だ?」
「カタカタじゃないのは確かだと思う」
施設の手前、その周囲に大量の戦力が集結していたのだ。
林が言った通り、戦闘ヘリが2機、戦車が数輌、歩兵としてのオートマタや、警備ロボットが多数。
いくらカタカタがカイザーローンから資金提供を受けていたとはいえ、そうそう用意できる量ではない。
そんな中、讃岐はあるマークに目をつけた。施設の外壁にデカデカと記されていたものだ。見ると、集結している兵器やオートマタにも同じようなマークが付いている。
「……ねえガッちゃん、あのマークなんだっけ」
「“あの”って何さ。あたし双眼鏡ないんだからね」
「あ、ごめんごめん。えっと、三角形の中にタコみたいな図柄があるマーク。どっかで見た覚えあるんだけど…」
「三角形…タコ…カイザー系列じゃないのそれ。タコって言ったらさ」
「ああそうそれ!カイザーPMCだ!あースッキリした!」
「……カイザー? またかよ」
カイザー、カイザー、カイザー。
アビドスもそうだが、だらだらにとってもここ最近何回も名前を聞く会社である。
曰く、カタカタヘルメット団に資金を提供していた相手だとか、アビドスにアホみたいな額の借金を負わせてる会社だとか。とにかくいい噂は聞かない。
そんな企業の軍隊がアビドスの空白地帯に大部隊を?
「……一応兄貴に連絡する。これマズイかも」
スッキリした顔をしていた讃岐も状況の深刻さが分かってきたのか、無線を開いた。
話では古戦ヶ原は人に会いに行っているらしいが……
《……どうも、はいDEリーダー、どうした讃岐》
無事に出た。
「あ、用事のとこごめんね兄貴。今駐屯地から北に27kmの地点にいるんだけどさ、そこでカイザーPMCの大部隊が集結してるっぽい」
《待て待て待て、どういう状況だ。……あ?
話していないはずのブラッドレーや、西潟と林の事も把握したあたり、いつものタブレットを見たらしい。実際あるのかは分からないが、遥か上空にあるであろう“目”に手を振る。
「資材だけ集められてたから作った。ガッちゃんは操縦手で、あとマナちゃんにご協力いただいて試験中だったの」
「協力するなんて一言も言ってねえけどな」
《人集めてから作る予定だったんだけどなぁ、まあいいや。んで、カイザーPMCの集団ってのは……ああコレか? うおっすげえ数、脱出間際の時のメカノイド襲撃みてえだ滅んじまえ*3。 ……ん?》
「どうしたの?」
《なんだこの反応、友軍? ……なあオイオイオイちょっと待て。どういうわけだ、なんでアビドス組がいる? しかも先生までいやがらぁ。ガッツリ包囲されてる。そっちでなんか聞いてるか?》
「えっ、いやいや知らない。2人ともなんか知ってる?」
「知らないけど⁉︎」
「あー……関係あるかは知らねえけど、今朝方兄貴が出てった後シャーレから書類届いてたな。ナダヤの姐御が受け取ってたと思うけど」
《シャーレから? よし分かった、ナダヤに確認してみる》
一旦無線が切れた。
その間もカイザーPMCの集団を監視するが、大きな動きはない。対話でもしているのだろうか。
…アレだけ包囲しといて対話もクソもないか。
《確認取った。先生は『カイザーがアビドスの砂漠で何かやってるらしい』と言っていたそうだ。それ関係の可能性が高い》
「……って言ったって、ど、どうする?」
「流石にアレには突っ込みたくねえぞぉ…?」
それもそうだ。
いくら古戦ヶ原が持っている技術がキヴォトスのそれを凌駕していようが、いまこの場にあるのは87口径25mm機関砲と対戦車ミサイル2発を持っているだけの『歩兵戦闘車』である。決してあの中に積極的に突っ込んでいける武装と装甲ではない。断言してもいい。
《……よし、先生とコンタクトを取った。俺らで“向こうの気を逸らす”ぞ》
「気を逸らすって……ど、どうやって?」
《それを説明する前に確認するが、ブラッドレーの武装は? 何を持ってきてる?》
「えっと、『ブッシュマスター』って名前の87口径25mmチェーンガンで弾数が900発、同軸で
《何、ジャベリンを? 上出来、上出来だ。いいぞ、コレでだいぶ楽になる》
「でも2発しかないよ?」
《何、“聖ジャベリン”を信じろ。“信ずる者は救われる”
ってな》
「絶対信じてない言い方じゃん」
《失礼だな、これでも信じてる方だぞ》
「じゃあ何の神様信じてんのさ」
《決まってんだろ、
Tips:次回はM2ブラッドレー改め、おせち号が大暴れするぞ!(予定)
活動報告更新したので、お暇があればぜひ妄想を流しに来て下しあ