Rimworld入植者(脱出済)のキヴォトス日記 作:運輸省
カイザーPMC情報部。
その名の通り社内での情報を司る部署である。
電波情報、画像情報、地理情報などを自ら収集・解析するとともに、社内の各部、グループ内企業などから提供される各種情報を集約・整理し、カイザーPMCの安全保障に関わる動向分析を行うことを任務としている。
中でもトリニティ・ゲヘナ・ミレニアムのキヴォトス三大校を担当する課や、D.U.のカイザーグループ本社周辺を担当する課は、カイザーPMC情報部の中でもエリートが集められる人気の部署だ。
ではアビドス方面はどうか。
アビドス高校はグループ会社のカイザーローンが借金によって雁字搦めにしている為重要度は低い。
周辺の土地も過去の取引によってカイザー所有になっている為重要度は低い。
近隣にブラックマーケットがあるが、あそこはそもそも別の課の管轄。
一言で言ってしまえば、アビドス方面課は窓際部署なのだ。
アビドス方面課から
そもそも人員も回って来ず、たった5名で上記の業務を行なっている。比較的仕事は少ないはずなのに連日残業だ。ちなみに残業代は降りない。カイザーPMCは残業のないホワイトな企業なのである。
カタカタヘルメット団への資金提供も、理事からの命令を受けてカイザーローンと協力しつつ行なっていた案件だが、これも資金提供だけで済ませておけば良かったのだ。
それをカイザーPMCで使用されている装備を提供したり、あろうことかカイザーインダストリー製の最新重機まで提供したり。
自分から痕跡を残しに行っているような物だ。
ちなみに、止めようとした課長は怒鳴られて減給くらってオフィスから追い出された。
あの、『アビドス東駅から西に500mの住宅街で、空き地を不法占拠している武装集団』だってそうだ。
アホみたいな初速の巨大砲を持つ化け物戦車に、どこから仕入れてきたのか全く痕跡の掴めない装備類。
傍受もままならない謎の通信方式。
全くもって不気味な集団だ。
実は、アビドス方面課はこの集団についてまあまあの期間情報収集を行なっていたのだが、それについての報告書を上層部に上げてもなぜか反応がない。
「まあ報告書は一応受理されてるみたいだし、引き続き情報収集と報告は続けとこうか」
と課長も判断していたのだが、これについて先日とんでもない事実が発覚した。
この武装集団についての正しい情報が理事まで伝わっていなかったのである。
流石におかしいと思った情報部員が上層部に探りを入れたところ、上層部に入った報告書が、理事に伝わるまでの過程で、PMCにとって都合の悪い情報がどんどん削り落とされていき、最終的に理事に伝わっていたのは
『カイザーコンストラクションが所有する空き地を不法占拠しているヘルメット団がいる』
という情報だけ。
色々違うが!!??
確かにあの武装集団はヘルメット団由来だがアレは決してヘルメット団などではない!対物ライフルに汎用機関銃、重機関銃や見たことのない対戦車ミサイル、ヘリに化け物戦車2輌を持つヘルメット団なんていてたまるか!!
そもそもそれを率いてるやたら指揮能力の高いヘイローのない男性の話は⁉︎
その妻と思われる謎の種族の女性は⁉︎
その女性を運んできた謎の宇宙船の話は⁉︎
まさか何も伝わってないのか⁉︎ 嘘だろお前⁉︎
と、上層部に絶望したのが、例のカイザーPMC基地襲撃の数時間前。
「課長、例の武装集団を監視していたジョナサンから報告です」
「なんだ」
「どうやら、
「……主武装は機関砲か? ギガントに比べると随分非力に見えるな」
「解析はこれからですが、私見では25mmか30mm口径かと。恐らくですがIFV、もしくはそれに準ずる装甲車じゃないでしょうか」
「なるほど、歩兵戦闘車か……確かに、戦車に直接随伴歩兵がくっついて行くよりは安全で合理的だ。ただの武装集団が持つような代物じゃない事を除けばな……出来上がる過程は?」
「映像で捉えてます」
「……あークソ、またコレだよ。
「あの、上への報告はどうします? 一応上げるだけ上げてみますか」
「ん〜〜〜やめだやめ!どうせ上げたって理事に届くまでに俺の給料みたいに削られるんだ、無駄だよ無駄。いらねえ仕事を増やす必要もねえだろうよ」
「そう、ですね……一応記録だけは残しておきます」
「そうしといてくれ。……んで? この装甲車は今どうしてるって?」
「出来上がった直後に走って行ったそうです。ガンマイクでは試験に行くらしいと」
「試験ねぇ。あーあ、予算がありゃUAVで観察もできたろうに……よし、お前ら!市場調査と称して柴関ラーメン行こうぜ!今日から屋台で営業再開するらしい!」
「マジすか課長!」
「Foo↑ タダ飯だぁ!運がねえなぁジョナサンの奴!」
「それ本当ですか?」
「本当本当。病院に大将の見舞いに行った時話してた」
「い、いつの間に……」
そして、情報部員4名がラーメンに舌鼓を打っている間に、その装甲車───おせち号によって基地が壊滅状態に陥ったというわけである。
ちなみに、情報部の入るプレハブ小屋は研究棟寄りだっため被害は受けなかったそうな。
──────
───
襲撃から6時間後
カイザーPMC基地
情報部
「…どうする?」
「どうしましょうね……」
課長と主任は途方に暮れていた。
ラーメン食って帰ってきたら基地が半壊していて、怒り心頭の理事から『何がなんでも今回の下手人を探し出せ。そして何がなんでも潰せ。成功報告以外を持ってきた場合は部署ごと取り潰す』と仰せつかったからである。
最初はいい。
下手人は既に判明している。
監視カメラの映像ですぐに分かったが、柴関に行く前に話していた例の新型装甲車だ。まさか出来上がってすぐの試験段階で直接基地を叩きに来るとは全く想定していなかったが。
問題はその後だ。
つ、潰せ? あの集団を⁉︎
カイザーが持つどの戦車でも太刀打ちできなさそうな化け物戦車と、たった1輌で大規模基地を半壊に陥れる謎の新型装甲車を有する謎の武装集団を⁉︎
しかも確認したら、今回の襲撃でアビドス方面のPMC戦力は大打撃を受けており、武装集団への報復攻撃は情報部単体で行わなければならないらしい。
一応外部に協力を要請する分の特別予算は出たが……
「あれヘルメット団とか傭兵だけでどうにかなると思うか?」
「勝負にならないと思います」
「だよなぁ……いやマジでどうすっかな……」
課長の苦労は続く───
──────
───
襲撃後
おせち号
車長 讃岐マリコ
砲手 林マナミ
操縦手 西潟ミユキ
少し時間を戻して、襲撃から少し経った後のおせち号である。多少被弾こそしたが、
「ん? 前の方に誰かいない?」
交差点を曲がった直後、西潟がそんな事を言った。
讃岐が双眼鏡を取り出して前方を見やる。
「……ああ、あれアビドスの子らじゃない? 追いついちゃったんだ」
「そういやあいつら歩きだったもんな……どうする? コレで乗っけてくか」
「あ、それいいねえマナちゃん。ちょっと兄貴に連絡してから乗せてこうか」
古戦ヶ原にそう連絡したところ、
《あー……それだったらおせち号で一回駐屯地まで戻ってこい。そこからくじら号で高校まで送ろう。流石にそこから高校までブラッドレーの兵員席はキツいんじゃないか》
との回答が返ってきたので、ゆっくりと近づく。
アビドス側は既にこちらの事を捕捉していたらしく、全員がこちらの方を向いている。
……なんだか様子がおかしい。顔が暗い。
“…君らは確か、古戦ヶ原さんのとこの”
「ハァイそこの少女達と先生。一緒に駐屯地までドライブしない?」
「アビドス高校まで送るよ。乗っていきな」
「……うへ、じゃあお言葉に甘えようかな」
「はあ、もうくたくたよ……」
「ん……」
「すいません、お世話になります〜…」
“ごめんね、迷惑かけちゃって”
暗い顔のままのアビドス組が兵員室へと乗り込んだのを確認して、再びおせち号を発進させる。
走り始めてから、はて、と讃岐は首を傾げた。
おせち号はカイザーに包囲されたアビドス組の離脱を支援するために基地をドンパチ賑やかにしてきたわけだが、要は離脱するアビドス側も見えていたはずなのだ。大爆発やら燃え上がるカイザーPMCの基地が。
色々とアビドスに仕掛けてきたカイザーが痛い目を見たのだから、少しはスッキリした顔をしてもいいような気がするが、そんな様子は微塵もない。
「よいしょ、よいしょ。後ろ失礼するよ」
そんな事を考えていたら、いつのまにか背後にホシノがやってきていた。見ると、砲塔の後ろから足を投げ出すような体勢でふうと一息ついている。
「うわ、どうしたの?」
「いやあ、先生の身体があまりにも大きくて後ろが狭かったからさ、出てきちゃった」
「出てきちゃった、って…一応走行中なんだけど」
「まあまあ、そう固いこと言わずに」
実は、讃岐とホシノはそこそこ交流がある。
片方はアビドスの実質的なリーダーで、もう片方はDE駐屯地の技術屋。
友達、と言えるほど交流が深いわけではないが、以前ホシノが駐屯地に来ていた時なんかは、何度か話した事があった。具体的には、アビドスに届けている弾薬の事とかの仕事上の話だが。
「それで、この装甲車は何? なんであそこで助けにこれたの?」
ホシノがそう聞いてきた。まあそこは気になるだろう。
「新しく作ったのを試験中でね。そっちから貰った地図だとあの基地があったあたりが無人地帯だって書いてたから、あそこで機関砲とかミサイルの発射試験をするつもりだったってわけ。とんだ実地試験になったけど」
「ああ、そういう。だからって普通単騎で基地襲う〜?」
「まあ殆どの主要戦力はそっちが引きつけてくれてたし。あと、発案はあたしらじゃなくて兄貴だからね、一応言っとくと。お礼なら兄貴に言ってね」
「ッ!……そ、そうなんだ。また借りが増えちゃったねぇ」
「……ねえホシノちゃん。兄貴となんかあったの? 最近駐屯地にも来てないし。兄貴もナダヤさんも寂しそうにしてたよ?」
「う、うへ、ちょっと予定が合わなくてね……」
「予定がねぇ……」
「き、気まず……」
砲手用ハッチを開けっぱにしていて閉め損ねた林は、そう思いながら駐屯地に着くまでじっとしていた。
──────
───
それから走る事30分ほど。
おせち号は偶発的な襲撃を受ける事も、カイザーPMCからの追撃を受ける事もなく、無事にDE駐屯地へと到着した。
既にヘリポートではくじら号が待機中で、駐車場には薬草(Rim由来)の入った箱を抱えた大宮寺と、両の脚でしっかりと立つナダヤの姿があった。
おせち号から降りたセリカとシロコに薬草を引っ掴んだ大宮寺が近づく。
「さ、怪我したとこ出して。軽く治療するから」
「ち、治療って……まさかその草で?」
「最初は驚くかもだけど大丈夫大丈夫!全然怖くないから!ね?」
「怖いわよ!両手に草持ってじりじり近づいてこられたら怖いに決まってるでしょ⁉︎」
「セリカ、ここはあっち向いてホイで決めるべき」
「シロコ先輩がやりたいだけでしょうが⁉︎」
「(^q^)ワァー!」
「うわっまた出た⁉︎」
「ん、ムツリ、私とあっち向いてホイ、する?」
「(^q^)ハイ!」
「み、見てくださいっスリーダー。ムツリの奴、ウチら以外の子にあんなに懐いて…」
「ムツリも成長したんだなぁ……グスッ」
「…これ使って下さいっス」つ ハンカチ
「ありがと…チーン!」
「⁉︎」
そんな生徒たちのわちゃわちゃを横目に、大人は大人で会話をしている。
“お世話様です。今回はありがとうございました”
「哲郎からある程度話は聞いてるよ、災難だったねぇ」
“ええ、まあ。……少し相談したい事があるのですが、この後よろしいですか?”
「ん、構わないよ。哲郎ももうすぐ戻ってくるだろうし、お茶でも飲みながら3人で話をしようじゃないか」
“ありがとうございます。私も少し整理がついてなくて…”
そして、そんな明るい空間を避けるように。おせち号の陰で1人座り込むホシノの姿。
「…………」
「……なあ奈良山、あれ、小鳥遊ホシノの様子がおかしいと思わないか? ずっと1人でなにか考え込んでるんだ」
「さあ…? でも、そうですね、強いて言えば……何か思い詰めてるような。そんな顔に見えます。自治区にいた時、あんな顔をしてる子達は何回か見ました」
「思い詰めてる、か」
Tips:カイザーPMC情報部アビドス方面課
総員5名
課長
主任
ジョージ
ジョナサン
ジョセフ