Rimworld入植者(脱出済)のキヴォトス日記   作:運輸省

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とんでもないガバ計算をしでかしたので初投稿です。

-訂正-
20.25話で4兆7000億円をシルバー換算する計算の際、1シルバー1gと考えて計算していたのですが、実際は1シルバー=8g=1320円である為、正しい計算結果は『35億6060万6060シルバー』になります。
ご指摘いただいたR.H.N兄貴姉貴、大変ありがとうございました。
ガバガバどころかスカスカ、アホ投稿者の末路。


24話 女2人、ガバガバ説得、選抜射手の憂慮

デザートエッジ駐屯地 第一棟

 

古戦ヶ原とナダヤの寝室や、工作室、倉庫などが備えられている第一棟。その中の、応接室と通信室を合わせたような部屋で、ナダヤと先生が向かい合って座っていた。

先生の隣の椅子の背もたれには砂まみれの防弾チョッキ3型がかけられ、テーブルの上には同じく砂まみれの88式鉄帽が置かれている。

 

 

「……借金相手の銀行からの信用の低下、金利の一方的かつ暴力的な上昇、そして1週間以内に9億の借金に対する補償金3億の預託、と。私は金融関係はさっぱりだが、これはあまりにも酷すぎやしないかい」

 

 

ナダヤが天を仰ぎながらそう口を開いた。

 

 

“全くです。私も詳しい方じゃありませんが……はらわたが煮えくりかえりそうだ”

 

「ふむ……その、なんだ。こういう金融関係のトラブルを通報する機関はキヴォトスにあるのかな」

 

“うーん、どうでしょう……連邦生徒会内ではあまり聞きませんね。一番役割が近そうなのは財務室でしょうけど、果たして聞いてくれるかどうか”

 

「そうか。よし、分からないことは後回しにしよう。アビドスの子達の様子はどうなんだい?」

 

“かなり参ってるようです。ここに来る途中もセリカとシロコで口論になりかけましたし。その、ここに来たあと、2人ともムツリと遊んでて少しホッとしました”

 

「あの子は普段こそあんな風だが、案外他人をよく見てるからねぇ。気になったんだろう。……ああ、そうだ。ついでなんだが、そちらのホシノ委員長の様子はどうだい? 最近こちらにも顔を出してなくてね」

 

“……実は、あの柴関の一件から様子がおかしくて。私としてもなんとかしてあげたいんですが”

 

「まさか先生も避けられてるのかい?」

 

“避けられてるというか、距離があるというか…”

 

「うーむ……これは、『私や先生じゃない』のかもねぇ」

 

“───と、言いますと?”

 

「彼女の心を開く人物が、さ。そうだねぇ、彼女の心になにが引っ掛かっているのかは知らないが、それを解けるとしたら───」

 

 

 

 

DE駐屯地 外

 

 

古戦ヶ原 哲郎

志津カオリ

宮崎キョウコ

 

 

「あー疲れた…」

 

 

廃ビルでの黒服との会談、突発的な戦術指揮をこなし、やっと古戦ヶ原も駐屯地に帰ってこれた。

 

 

「お疲れさん。ほな、ウチらはコレ(トヨタ ハイラックス)駐車場に停めて給油とかしてくるわ」

 

「おう、お前らもお疲れ。ゆっくり休めよ」

 

「お兄さんも休んでくださいね?」

 

「はは、今日ばかりはそうするよ」

 

 

古戦ヶ原を降ろしたハイラックスは駐車場の方へとゆっくり走って行った。

 

……古戦ヶ原としても休みたいところだが、先生から相談したい事があると言われてしまっている為まだ休めそうにない。

とほほ…と思いながら歩いていると、ヘリポートの方が目に留まった。

 

くじら号はいない。

アビドス組を乗せて飛んで行ってまだ帰ってきていないのだろう。ただまあ、タブレットを見る限り、もう帰りの行程の半分ほどなのであと1時間もしないうちに帰ってきそうだ。

 

 

「……ん?」

 

 

そんな時である。

DE駐屯地のヘリポートには、夜間の離着陸の為にヘリポートの四隅に小さな投光器を設置しているのだが、その投光器に誰かが座っているのが見えた。

ちょうど逆光になっていてシルエットしか見えない。

 

が、シルエットだけで誰かはなんとなく判別できた。

 

 

「ホシノ? なにやってんだお前、帰ったんじゃなかったのか」

 

「……うへ、ちょっと、お兄さんとお話したくてね」

 

 

それは、くじら号に乗って帰ったはずの小鳥遊ホシノであった。

 

 

 

 

──────

───

 

 

 

 

《哲郎? 何かあったのかい?》

 

「あー…その、なんだ、ホシノと散歩してくるわ」

 

《ホシノ委員長と? ほら、言ったろう先生。やっぱり哲郎だよ、哲郎も隅におけないね

 

「ん、なんか言ったか?」

 

《いや? まあ、ゆっくり話してきなよ。こちらはこちらでガールズトークでもしてるさ。あ、先生も私もガールズって歳じゃないか!HAHAHA!!!》

 

「自分から言うなよ自分から」

 

 

無線が切れた。

 

DE駐屯地から少し離れた住宅街。

文明の灯りもほぼなく、砂漠の星空がはっきりと頭上に見えるような夜。

 

ホシノと古戦ヶ原は2人並んで道を歩いていた。

 

 

「ごめんね? 無理言っちゃって」

 

「なに、相当急ぎの案件ならすぐに呼び戻すだろうさ。んで、話ってのは?」

 

「……その、ごめんなさい」

 

 

ホシノが立ち止まり、こちらに頭を下げてきた。

 

 

「え、何、どしたん急に」

 

「……この前の柴関の一件。おじさん別の用事でいなくてさ、その、えっと……」

 

 

ホシノが口籠る。相当言葉を選んでいるようだ。

しゃがみ込み、ホシノと視線を合わせる。

 

 

「落ち着け、ゆっくり」

 

「……その、ナダヤさんを守ってあげられなくて、ごめんなさい!脚を切るような事態にさせてしまって…その場にいる事ができなくて…!」

 

 

ついに言った。

あの柴関の一件の際、ホシノは黒服の方を優先してアヤネからの呼び出しに気づいていなかったのだ。

その結果、色々とアビドスの恩人である古戦ヶ原の妻が四肢欠損レベルの重傷を負う事態が発生していたにも関わらず全くの蚊帳の外。事態に気づいたのは全てが終わった後だった。

 

すぐに謝れば一番良かったのだろうが……まあホシノにも色々あるのである。

 

 

 

そして肝心の古戦ヶ原であるが。

 

 

「あー……ん? えーと………」

 

 

どうもピンと来ていない様子。

 

 

「……あー、ホシノ。ちょっと確認したいんだが、いいか?」

 

「な、何?」

 

「その、なんだ。ホシノは『柴関ラーメンにいなかった事』を謝りたいのか? それとも『ナダヤを守れなかった事』を謝りたいのか? すまんな、どうにも昔から理解力が低いんだ」

 

「えーと……両方、かな? 『別の用事』があってアヤネちゃんの呼び出しに気づけなくて」

 

「ほーん、ふーん、そうかそうか」

 

 

何かを理解した風の古戦ヶ原が、両手をホシノの顔の横にスッと持ってきた。

 

 

「えーと、あの、おじさん何かまずい事言っちゃったふみゅぇっ

 

 

ステップ1

 両手でホシノの両頬をガッとします。

 

ステップ2

 思い切りわしゃわしゃします。ムツゴ○ウさんが犬を可愛がる時ぐらいの勢いでやりましょう。

 

 

ふゅぇゅぇゅふぇゅゅぇゅぇゅふぇゅぇふゅぇゅぇゅふぇゅゅぇゅぇゅふぇゅぇ

 

 

30秒ほど十分にホシノの顔をもみくちゃにやったところでわしゃわしゃを止めた。

 

 

「ホシノ、その考え方はいかんよ」

 

「ふゅぇ…?」

 

 

ホシノの両頬に手を当てたまま、古戦ヶ原は慈愛の面持ちでそう言った。

 

 

「確かにお前は強い。俺がRimで見てきた中でも10本の指に余裕で入るぐらいにはな。そこは俺とナダヤが保証しよう。だが、ホシノ」

 

「…?」

 

「お前のさっきの考えはな、言い換えるとこうだ。『私があの場にいさえすればナダヤさんは守れた』」

 

「っ!そ、そんな事は…」

 

「いいや違わないぞホシノォ。ちょっと例え話をするが、両腕を広げてみろ」

 

 

わけがわからないような顔のまま、渋々とホシノが両腕を広げる。

 

 

「こ、こう…?」

 

「そう。お前のがそれぐらい。で、俺のがこれぐらい」

 

 

ホシノの身長145cmに対し、古戦ヶ原の身長は175cm。当然だが、両手を広げた長さも古戦ヶ原の方が広い。

 

 

「これが、人間が身一つで救うことのできる範囲だ」

 

「えっ、あっ、いやそうだろうけど……」

 

「そう、身一つじゃ『たったこれっぽっち』だ。無論、道具を使うとか頭を使うとかすれば範囲は広がるが、それでも人1人が救える範囲なんてたかが知れてる」

 

 

そして広げていた腕を閉じた古戦ヶ原は、さも当然の流れのようにホシノの両脇に手を入れ、スッと持ち上げた。

 

 

「…………えっ⁉︎

 

「ホシノ、いくら強かろうがな、人は決して万能じゃない。『Rimとキヴォトスの価値観の違いが頭に入ってなくて身長192cmある先生に胸ぐら掴まれる男』もいれば、『後輩からの呼び出しに気づかないで事件の蚊帳の外になるアビドス最強』もいる」

 

うぐっ

 

「俺もキヴォトス人と比べたら無力だし、ナダヤは純粋に頭が悪い。だから開き直った。『これできないからやってくれ。その代わり俺はこっちをやる』ってな。

ああ勿論、万能であろうとするその姿勢は素晴らしいものだ。賞賛に値する。俺だって最初はそうだったし、だからコロニーのバックアップ要員なんてしてたんだけどな。えーと、何が言いたいんだったか……ああそうだ」

 

 

古戦ヶ原はホシノを降ろし、再び視線を合わせた。

 

 

「1人で抱え込むな、他人を頼れ。『()()()()()()()()()』」

 

「……!」

 

 

その言葉がストンと、腑に落ちた。

 

 

「……なんかごっちゃになったな。今の分かったか?」

 

「うへ、しっかり分かったよ〜」

 

「そうか。どうする? もうちょい歩くか?」

 

「……ううん、もう大丈夫。───ありがとうね」

 

「おうよ」

 

 

くるりと振り返り、来た道を戻る。

 

2人の背を、アビドスの月が淡く照らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまんな三ヶ島!何往復もさせる事になって!」

 

「大丈夫だ!夜間飛行の訓練もしておきたかったしな!」

 

 

ノノミ、シロコ、セリカをアビドスまで送って戻ってきたくじら号で、ホシノを送る事にした。本当に三ヶ島と奈良山には申し訳ない。後で埋め合わせを約束した。

 

 

「じゃあホシノ!また後で!3人とアヤネにもよろしくな!」

 

「───うん!分かった!」

 

「おう!」

 

「隊長!離陸しますので離れて!」

 

 

くじら号は、もう一度夜空へと浮かび上がっていった。

 

 

「……よし。さあて、先生はどんな悩み事を持ってきたんだぁ…?」

 

 

 

 

──────

───

 

 

 

 

くじら号

 

操縦士:三ヶ島ユイ

副操縦士:奈良山ナホ

 

兵員室:小鳥遊ホシノ

 

 

「ごめんねぇ、何回も飛んでもらっちゃって」

 

「気にしないでくれ。今は回数をこなしてこの機体に慣れておきたいんだ」

 

「ええ。ホシノさんは気にせずにゆっくりなさって下さい」

 

「うへ、そうさせて貰おうかな」

 

 

三ヶ島に促されたホシノは、シートベルトを締め直して、愛銃の『Eye of Horus』を抱いたまま寝る態勢に移った。

それを見て、三ヶ島が一言。

 

 

「……大丈夫そうだな」

 

「ん? 何が?」

 

「ああいや、なんでもないさ。気にせず寝ててくれ」

 

「……」

 

ただ1人、奈良山だけが怪訝な顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして無事に、くじら号はアビドスのヘリポートへと降り立った。三ヶ島が振り返り、爆睡をこいてるホシノに声をかける。

 

 

「おぉい起きろ、着いたぞ」

 

「うへ? おお、もう着いた。ありがとうね、よっこいせっと」

 

「足元に気をつけてな」

 

 

ホシノは機体を降り、手を振りながら校舎の方へと歩いていった。

それを確認した三ヶ島も一息ついて、再び計器を確認する。

 

 

「さて、奈良山。さっさと帰って寝ようじゃないか…………奈良山? どうした?」

 

「〜〜〜っ、すいません分隊長、ちょっと待ってて下さい!」

 

「えっ、あっ、おい⁉︎ どこ行くんだ⁉︎」

 

 

奈良山がベルトを外し、ドアを開いてホシノの下へと走っていく。それほど距離も離れていなかった為、すぐに追いつく事ができた。

 

 

「ホシノさん!」

 

「うわびっくりした。どうしたのさ? 何か忘れ物でもあった?」

 

「ええ、忘れ物というか……」

 

 

慎重に言葉を選ぶ。

 

 

「ホシノさん。何か困っている事があったらなんでも言ってください。私じゃなくても、対策委員会の皆さんでもいいですし、シャーレの先生でも、隊長でも、ナダヤさんでも構いません。何でも、頼って下さい」

 

「…うへ、同じような事はお兄さんからも言われたけど。どうしたの? 急にそんな事言って」

 

「……その、言っていいかは分かりませんが」

 

 

バクバクと心臓が鳴り響く。ああクソ、嫌な鼓動だ。何か一つ間違えれば大変な事になりそうな、そんな予感を感じさせる。

 

 

「私は選抜射手です。それで、職業柄人の顔をよく観察するようにしています。その人物が今どういう感情でいるのか、どういう考えの下行動しているのかとか色々です。アリウス時代からやっているので、多少人の感情や考えが読み取れるようになりました」

 

「……それで?」

 

「今日の夕方、駐屯地に着かれた直後のホシノさんの顔も遠くから拝見しました。何かこう、とても思い詰めているような、そんな表情でした。で、さっきホシノさんを乗せた際。具体的には隊長と別れた直後から、とても、清々しい顔をしていらっしゃいます」

 

「そんな顔してた? おじさん気づかなかったな」

 

「……それで、その、大変失礼かもしれませんが、『清々しい表情』というのが───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう何も思い残す事はない』という感情に見えたんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────────」

 

「それで、その、いてもたってもいられず……」

 

 

月が動き、ホシノの顔が暗闇に隠れる。表情が読み取れない。

答えはすぐに返ってきた。

 

 

「……うへ、おじさんは、“大丈夫”だよ」

 

「そう、ですよね。大変不躾な事を言ってしまい申し訳ありませんでした。それでは、失礼します」

 

 

振り返り、ヘリの方へと歩き出す。

 

 

「ナホちゃん」

 

「はい?」

 

 

今度はホシノの方から呼び止められた。振り返る。

 

 

「……例えば、例えばの話だよ? もう何もかもが手遅れっていう段階になってから助けを求めても、先生とかお兄さんは、助けてくれるかな」

 

 

 

 

 

「……E分隊も、最悪一歩手前のところを隊長と志津さん、そしてトリニティのヒフミさんに助けていただきました。それについて改めて礼を言った時、隊長はこう仰ったんです」

 

 

奈良山、助けを求めるのに早いも遅いもねえ。子供から『助けて』って言われたら無条件で助けるのが大人って奴なんだよ。覚えとけ

 

 

「───そっか。ごめん、ありがとね。呼び止めちゃって」

 

「いえ。きっと、何かあってもみんなで助けますから」

 

「……うへ、おじさんは幸せ者だぁ」

 

 

ホシノは、心の底から幸せそうな声色でそういうと、闇の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

満遍なく記入された退部届、そしてホシノからの手紙が対策委員会の部室で見つかったのは、その翌朝の事であった。




前職を退職する直前の投稿者もそうだったんですけど、精神的に大丈夫じゃない人ほど「大丈夫?」って聞くと「大丈夫」って返しがちなんですよね。本当に大丈夫な人は「何が?」って聞き返すので。
まああくまで投稿者の感覚なので話半分で聞いてね(予防線)
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