Rimworld入植者(脱出済)のキヴォトス日記 作:運輸省
その間違いのツケは割とすぐにやって来た。
ヘルメット団の子を看病した数日後の事だ。
収穫したトウモロコシを大型冷蔵庫にぶち込む作業をしていると、何やら近づいてくるエンジン音が耳に入った。よーく耳を澄ませてみると、
キュラキュラ……とキャタピラの音もする。
慌ててタブレット*1を見やるが、特に襲撃の通知は無し。
首を傾げつつ、すぐ手に取れるところになけなしの対戦車ミサイル*2を置いて、この前作った機関銃陣地に入り周囲を警戒する。
2分ほど後だっただろうか。
遂に、音の正体が姿を見せた。
エンジンから煙を上げながらよた…よた…と動くボロボロのM4シャーマンと、
「あ!パイセン!あの人っスよあの人!前にアタシを助けてくれたの!!」
同じくボロボロのヘルメット団が複数。
その中の1人───数日前に治療した黒ヘルメットが、こちらを指差して大声を上げていた。
彼女らの名前は、だらだらヘルメット団。
なんかもう『だらだら』とかいうひらがなの名前からして弱そうだが、そもそも、退学・停学理由が『めんどくさいから学校サボる』みたいな奴らの集まりらしい。
そして実際弱いようで、こんなボロボロになっているのも、元々拠点にしていたアビドス郊外の廃墟を別のヘルメット団に奪われたのが原因らしく。
で。
拠点から追い出され、怪我人多数で疲労困憊、弾薬も心許ない。ただでさえ頼りないオンボロ中戦車はエンジンを損傷してもっと頼りなくなって。
これからどうしようと途方に暮れていた時、前に助けた黒ヘルメットが「前にアタシを助けてくれた兄ちゃんなら力になってくれるかも」と提案。
一縷の望みをかけて、砂に呑まれかけたアビドス郊外を歩いて来たとか。行動力すげえな、『だらだらヘルメット団』なんて名前の癖に。
「いや、まあ、助けるけどさぁ」
「「「「「やったーーーーーー!!!!!!」」」」
こうして、俺1人しかいなかったコロニーに、突然合計18名のヘルメット団が加わったのである。
それから何をしたかなんて決まっている。
畑の増設だ。
何せ、今まで1人しかいなかったところに突然+18人である。もうね、圧倒的に食料が足りない。
だらだらヘルメット団唯一の装甲車両、M4A2中戦車『こたつ号』を修理して、後ろに土を耕す爪みたいなのを作って取り付けたりしつつ、実に空き地の半分を畑にした。やったぜ。
全体の割合としては米4トウモロコシ3木綿3といったところ。ある程度在庫が溜まって来たら、トウモロコシか木綿を一部削ってデビルストランドかブルーキャットリリーに置換する予定だ。
「そういえばさぁ」
『こたつ号』が畑を耕すのに大活躍しているのを日陰から眺めていると、隣に座って来た『だらだらヘルメット団』リーダー、赤ヘルメット*3が話しかけて来た。
「なんだ、赤ヘルメット。お前も働いてこいよ」
「今は休憩中です〜。じゃなくて、兄貴の事なんて呼べばいい? いつまでも『兄ちゃん』とか『兄貴』って呼ぶわけにもいかないじゃん」
「あー……そうだなぁ」
名前はある。古戦ヶ原哲郎、という格好いいんだかダサいんだかよく分からない名前が。
あるのだが……ここで名乗るのも違うな、なんて考えたり。言ってしまうとかっこいい名前を名乗りたい。
「……セトラー」
「セトラー……えっと、『入植者』だっけ?」
「ああ。そう呼んでくれ。今まで通り『兄ちゃん』とか『兄貴』でもいいけどな」
「『おっさん』は?」
「泣くぞ?」
「何その脅し」
──────
───
散々話が脱線したが、これで1話冒頭の台詞に戻るわけだ。メメタァ
ちなみに飯をお代わりして来たのは黒ヘルメット共である。
「本当によく食べやがるな、成長期共め」
「ふっふーん!アタシだって“
「見てろよ!すぐに兄貴を“
「(^q^)センメツー!」
「ナイスバディーになる女は“ないすばでー”とか“のーさつ”だなんて言い方しねえんだわ」
キヴォトスに降り立ってから大体1ヶ月、だらだらヘルメット団が加わってから数えると大体1期…じゃなかった、15日。
ヘルメット団もようやくRim産の作物に慣れて畑も軌道に乗り、食料在庫も安定して来た。
Rim基準で育つ作物は、キヴォトスにとっては早すぎるのだ。*4
18人分の寝床もある程度揃えた、そして食料も安定してきた。
とすれば、次に揃えるべきは───
「武器の新調?」
早速リーダーに話を持ちかけた。
「ああ。お前らの武器を何回か直してて思ったんだが、どれも『低品質』か、ひどいやつだと『壊れかけ』だろ? 俺ぁ銃作りにはちょっと自信があるからよ、試してみねえか」
「……えっ、作るの⁉︎ 銃を⁉︎ 一から⁉︎」
数秒ほど間を置いてから滅茶苦茶驚かれた。
……あっ、そうか。銃って普通買うのか。Rimworldだと能力が高い奴が作った方が品質良かったしなぁ。
他の仕事をしていた団員が全員集まり話し合う事1時間弱。すげえ話し込むじゃん。
「とりあえず!あたしの分だけ!それで良さそうだったら全員分!」
「あっはい」
「できたぞ〜」
ちまちまと作っていたアトリエ(MOD由来)に籠る事数時間。SG551(秀品)が出来上がった。
……名品を狙っていたのだが、まあ低品質から秀品と考えれば十分だろう。
その証拠に……
「ほぁぁぁぁ……!」
リーダーはさっきからあの調子なのだから。
だらだらヘルメット団の銃器を新調する事1週間。無事に18人全員のSG551の新調が終わった。
あと、だらだらヘルメット団の武器構成が少し気になったので「全員SG551ってバランス悪くない?」と聞いてみたのだが、どうも他の銃を使うという発想すら無かったらしく。
仕方ないのでしばらくは新調したSG551を使いつつ、何か使ってみたい武器があったら俺に頼む…という形に落ち着いたらしい。
で。
その日の夜。久々にホシノが現れた。
最後に来てから一ヶ月以上経っていたのでちょっと心配していたのだが、大きな怪我もなさそうで一安心だ。
「あのヘルメット団はどういうことかな〜???」
俺が一安心ではなさそう。
〜入植者言い訳中〜
「拾ったら懐いた……って、犬猫じゃないんだからさ」
普通に呆れられた。
「んな事言われてもなぁ、成り行きだったんだよ。でもいい娘たちだぞ。表の畑あったろ? あれ8割ぐらいはだらだらヘルメット団がやったからな。あの娘らの提案で戦車も改造して」
「こ、更生してる……」
「俺が今まで何人の犯罪者を改心させてから仲間にして来たと思ってるんだ。ん、できたぞ」
「うへ〜、ありがとうねぇ」
ホシノにいつもの薬草のお茶を淹れた所で、小屋の扉が開いた。
そこに立っていたのは、ヘルメット団の制服に赤ジャージを着た、お眠の茶色のお団子髪の少女。何を隠そうリーダー(ヘルメットキャストオフの姿)である。
「んん……お兄ちゃん……一緒に寝……」
ん゛ん゛っ、かわいいなぁうちの妹達は!!!(存在しない記憶)
「(唖然とするホシノ)」
「……えっ誰ぇ⁉︎」
仕切り直し。
「ん゛ん゛っ!!アタシがだらだらヘルメット団団長、名残ユキコだ」
「いや、今から取り繕っても無理だからね」
「うるさいうるさい!!お前はこんな所に何の用なんだ小鳥遊ホシノぉ!こっちはセトラーの兄貴と一緒に平和に暮らしてるだけだぞぉ!!」
「“お兄ちゃん”じゃなくて?」
「ン殺す!!!!」
「オラ騒ぐなっ」
「えっ、いやちょっと兄貴“今”それは待っ───ミ゜ッ!!!!!!!!!!!!!」
「うわ、抱き抱えちゃった」
だらだらの団員は、何故か俺が抱き抱えると大人しくなるので、最近は喧嘩とか言い争いが勃発する度に多用している。
ちなみにだが、この技を使うたびにミ゜ッ!!!と、明らかに人間が出してはいけない怪音を出してフリーズするのは仕様だ。なんでやろなぁ。
「まあ、悪い事はしてないしこれからするつもりもない。こいつらを痛めつけるのはやめてくれな」
「うーん……それならまあいいんだけどさぁ、一つ注文というか」
「なんだ?」
「ヘルメット団って基本的に格好が同じなのは前話したでしょ?」
「言ってたな」
「見分けがつかないんだよね。今、アビドスも別のヘルメット団から襲撃を受けててピリピリしててさ。ウチの子が見かけたら問答無用で撃っちゃうかも」
「せめて撃つ前に確認ぐらいして欲しいんだけどなぁ。あー……おいリーダー、聞いてたか?」
「ほぇぁ(恍惚)……んぁ⁉︎ あ、ああ、聞いてたぞ。ユニフォームを変えるのは別に構わない。これ着てるのだって、新しく考えるの面倒くさいってだけの理由でブラックマーケットで買ったやつだから、こだわりあるわけじゃないし」
「うへ、そんな理由なの…?」
「何せこいつら『だらだらヘルメット団』だからな」
「説得力がすごい……」
「でもなぁ、私含めて18人分のユニフォームを揃えるのって結構金が要るぞ? 兄貴だってこの前言ってたじゃないか。『金どうすっかなぁ』って」
「……え、お兄さんお金ないの?」
「正しくは『キヴォトスの金』な。Rimworldの通貨なら腐るほどあるんだが、キヴォトスの金は稼ぐ機会が無くてなぁ。普通に生活する分にはほぼ自給自足で賄えるし」
「……あ、そっかぁ。衣食住は足りてるんだもんね」
「ついでに言うとな小鳥遊ホシノ。ここはネット環境こそ無いが、それ以外のアナログな娯楽なら意外と揃ってるんだ。輪投げとかポーカーとかビリヤードとか」
「もうちょい電気関係の整備が落ち着いたらアーケードゲームとかパソコンとかXbox360とか設置するけどな。あぁ、あとユニフォームは作るつもりだ」
「えっホント⁉︎ やったー!!!」
「……ちょっと待って、作る? ユニフォームを?」
「つっても、意見を聞いてからだけどな。どうする?」
「アタシは大賛成。あんなライフル見せられちゃあ期待しちゃうってもんだよな」
「あんなライフルって?」
「あ? ああ、これだよこれ。凄くない? これ兄貴が一から作ったんだぜ?」
リーダーがSG551(秀品)をホシノに渡す。
何だろうな、初対面の相手に躊躇いなく自分の銃を渡すあたりこいつも大概お人好しだよな。
「……これどこの高級品? シロコちゃんのと系譜は同じモデルなんだろうけど……」
「ふっふっふ……言ったろう? 俺が一から作ったんだよ」
「そうは言われてもねぇ……これは流石に信じられないかなって」
「そうだなぁ……今時間の余裕はあるか?」
「え? いやまあ、夜のパトロールはほぼ終わったし後は帰るだけだけど……」
「よし、こっち来てくれ。……リーダーはどうする?」
「ん……しょうがないし普通に寝る」
「悪いな。後で埋め合わせはするからさ」
「ふぁぁ……期待しとく……おやすみ〜」
リーダーはそう言うと、俺の小屋から出て行った。
そういえば言っていなかったが、だらだらヘルメット団の寝床は、この小屋とは別で建てられた大きめの小屋が割り当てられている。
「……もしかしてヘルメット団全員にあんな風に接してるの?」
「そうだが……?」
「うへぇ……気をつけなよ?」
「?」
俺のベッドが置かれている部屋の扉を開けると、いわゆる工作室───前も言ったアトリエになっている。
「何この金ピカの像」
「気にするな、こっちの事情だから」
そう言いながら、電動工作台の前までやって来た。近くの別の丸椅子を引っ張って来て、ホシノに座るよう促す。
「正直さっきのライフルが俺作だというのを証明する手段が思いつかないから、実際作るところを見てもらおうと思う。何か武器のリクエストはあるか? 複雑な奴だと数日単位で時間かかるからこの場ではできなくなるが」
「うーん……簡単かは分からないけど、これならどう?」
ホシノはそう言って、持っていた折りたたみ式の防弾シールドを一部展開すると、上部に格納されていたハンドガンを取り出した。そういえばそこにハンドガン格納してるってオフィシャルアートワークスで描いてあったな。
「これと同じ物」
「ちょっと拝借」
手垢が残らないように、白手袋を付けてハンドガンを受け取る。
「ほぉー……一番近いのはベレッタ92コンパクトかな。ちょっと待っててな」
倉庫からスチールとコンポーネントを数個取ってきて組み合わせる。
「ほいできた」
「待って待って待って待って⁉︎ 今何したの⁉︎」
「な、何って、ハンドガンを作っただけだが……?」
「
「まあ初めて見るとそうだよなぁ……ま、とりあえず見てくれよ。一応……お、よっっっっしゃ!!!『幻の一品』キタコレ!!」
俺がガッツポーズをしながら回転椅子でくるくると回っている横で、ホシノが唖然とした顔でハンドガンを触っている。
「……な、何これ。あんなこねこねしただけなのになんでこんな精巧なの……?」
「一応俺オリジナルで一部使いやすく改修を加えてみたんだがどうだ?」
「あのこねこねにオリジナルを加える過程あるの……? あ、でもなんか使いやすいかも」
──────
───
とりあえず、今回の一件で俺の腕は信じて貰えたらしい。なんで信じて貰わねばならなかったのかと聞かれても、「その場の流れだったし……」としか言えないのだが。
ともあれ、ホシノはベレッタ 92コンパクト(幻の一品)を手にして、朝日の昇る中帰って行った。
最後にもう一つ、注文を残して。
「ふぁぁ……あれ、兄貴早いね。おはよー」
ヘルメット団用の小屋から、黒ヘルメットの内1人が起きて来た。M4A2中戦車、『こたつ号』の車長をしている奴だ。
「おう、おはようさん。みんなは?」
「もう殆ど起きてる。まだ寝てたのはリーダーぐらいかな。でもムツリ*5が起こしにかかってたからもうすぐ起きると思うよ」
「そっか。うし、ちょっと頼まれごと引き受けてくんね?」
「いいけど……何?」
「いや何───“手先が器用な奴”がいたら、俺の作業部屋に連れてきて欲しいんだわ」
『アビドスが別のヘルメット団に襲われてるって話はしたでしょ? それで一つ依頼したいんだけどさ。弾薬を、作ってアビドスに届けてくれない?』
クエスト:アビドス高等学校との取引
『アビドスオジサンユメモドキ』って学名最初に考えた奴人の心ない説