Rimworld入植者(脱出済)のキヴォトス日記 作:運輸省
《前回の誤字報告者兄貴姉貴》(敬称略)
Lynn、geardoll、RPG大好き(20話)
ありがとナス!
数時間前
アビドス高等学校 対策委員会部室
「ホシノ先輩っ!!」
セリカが振り下ろした拳が、机の上で大きな音を立てる。
私たちの目の前には、『対策委員会のみんなへ』と『先生とお兄さん達へ』と題名のついた便箋の入った封筒と、対策委員会からの退部届。
手紙には、これまでの経緯の説明と、謝罪。借金は楽になるだろう、という事と、責任は最後の生徒会役員である私にあるという事。セリカ、アヤネ、ノノミ、シロコに「お願い。これからも学校を守って」と頼み込む内容が綴られていた。
そして、『先生とお兄さん達へ』と題された便箋には、このような手紙が───
──────────────────────
先生へ
実は私、大人が嫌いだった。あんまり信じてなかった。
先生があのやたら大きいリュックサックに詰められるだけの弾薬を詰めて背負って来たあの時だって、「なんかヤバい大人が来たな」って思ったぐらいだし?
でも、先生みたいな大人と出会えて、私は……いや、照れ臭い言葉はもういいよね。
先生。
最後にわがままを言って悪いんだけど、お願い。シロコちゃんは良い子だけど、横で誰かが支えてないと、どうなっちゃうか分からない子で。
悪い道に逸れちゃったりしないように、支えてあげてほしい。
先生なら、きっと大丈夫だと思うから。
お兄さんとデザートエッジのみんなへ
実は、お兄さんのことも最初は信用してなかったんだ。
宇宙からやってきた、だなんて、そんな与太話を最初から信じる人がいるわけないじゃん。
今だから言っちゃうけど、あの時貰ったお茶も口に含むふりをしただけだったんだよね。実際は毒も何もなかったから、ただ勿体無いことをしちゃっただけなんだけど。ごめんね。
でも、お兄さんは、デザートエッジのみんなは、私達の事を助けてくれた。
カタカタの一件の時も、セリカちゃんが攫われた時もそう、風紀委員会が攻めてきた時も、私達がカイザーの基地で囲まれた時も。
何度も、何度も、何度も。
きっと、大きな借りができてるよね。でも、私はもう返せそうにもないからさ、悪いけど、この借りは地獄まで持っていく事にするよ。
デザートエッジのみんなにもよろしく。
今まで、助けてくれて、ありがとう。
さようなら。
──────────────────────
「なんなの!?あれだけ偉そうに話しておいて!切羽詰まったら何でもしちゃうって自分で分かってたくせに!こんなの!受け入れられるわけないじゃない!!」
セリカが怒りの声色でそう叫ぶ。
「───助けないと。私が行く。対策委員会に迷惑がかかるし、私一人で……!」
「落ち着いてシロコ。ほら、セリカも。焦ってたら正しい判断はできないよ」
先生が、立ち上がったシロコの頭を掴んで椅子に押し戻した。
「ん」(強制着席)
「そうですよ!まずは足並みを揃えないと……!」
「で、でも先生!こんな───」
その時である。
空気を震わせるような爆発音が耳を突いた。
窓がビリビリと震える。
その方向に視線を向けると、市街地の方から黒煙が上がるのが見えた。
「そ、そんな……⁉︎ こちらに向かって多数のPMCの兵力が進攻中!同時に、市街地に無差別攻撃をしています!」
「カ、カイザーPMC⁉︎ なんでこのタイミングで……⁉︎」
戦術端末を確認したアヤネの困惑、そしてセリカが狼狽しながら立ち上がったその時、廊下から金属質な足音が響いた。
「───『
すぐさま横に立てかけていた89式小銃を手に取り、
「せ、先生?」
「ちょっと座ってて」
[対策委員会を発kぐおっ!]
カイザーの兵士が教室のドアを開けた瞬間、銃を構えるよりも早く肉薄し、その顎に銃床をぶち当て、後ろに転がった兵士の顔目掛けて指切り射撃で数発ずつ叩き込む。
5.56㎜特有の射撃音が校内に響き、銃弾をボロクソに受けた兵士は動かなくなった。
そして廊下の左右を確認、とりあえず後続の姿はない。
「よし。さて、状況を開始しようか。まずは学校内の安全確保、それから市街地で迎撃戦闘を……どうしたの、みんな?」
4人が目を見開いて固まっていた。
しばらく言葉もなく見合っていた4人だが、セリカが恐る恐ると言った様子でようやく口を開いた。
「いや、先生がキヴォトスの外で軍人だったってのは聞いてたけど……」
「ここまでとは、その、思ってませんでした」
「えぇ……?」
──────
───
オペレーターにアヤネ、前・中衛にシロコとセリカ、そして後衛にノノミと私が付き、校内を進む。
《増援です!前方の中央階段付近にオートマタが7体!》
「ん、交戦開始」
「先生はあんまり“それ”があるからって無理しないでよね!」
「善処する!」
「善処じゃなくて徹底して!」
セリカが、遮蔽につきながら私の腰に巻かれたベルト状の物品を指さして叫んできたので、元気よく叫び返す。
このベルト状の物品。名前をシールドベルトと言う…らしい。
“らしい”と推測形なのは、これをくれたホシノ自身もよく分かっていなかったからだ。受け取ったのは、時系列的にはアビドス砂漠のカイザーPMC基地へ向かう直前ぐらい。
『私は
との事。
なんでも、古戦ヶ原さんに初めて会った時に貰ったものだそうだ。
どういったものなのかは…正直よく分かっていない。ホシノは古戦ヶ原さんから『飛来物から着用者を守るシールドを張る装備』と聞いているらしいが。
まあ、貰ったものをしまっておくのも申し訳ないので、こうして着けているわけだ。
[コンタクト!]
[ブラボー2-1から本部!アビドス別館2階東廊下でアビドス生と接敵!シャーレも一緒だ!]
「ん、カイザーのオートマタ7体、交戦」
《後方のオートマタは狙撃銃を装備しているようです!注意してください!》
あっという間に、廊下の角から出てきたカイザーPMCと戦闘になった。
機転を利かせたノノミが、近くにあった掃除用具入れのロッカーを引き倒したので即席の遮蔽物とする。
これはあまり知られていない話だが、キヴォトス製のロッカーは7.62㎜フルメタルジャケット弾に抗堪する防弾性能を持つのだ。
シロコとセリカは柱の陰に入ったようだ。
カイザーPMCの持つAR-15系統の物に酷似した小銃の、恐らく5.56㎜弾がロッカーの鋼板を連続して叩く。
しかし、そう経たない内に実弾兵器が避けて通れないあの問題が起こる。弾切れだ。
[リロード!]
[カバーする!]
そこは本職故か、動きに澱みはない。
しかし、
「隙だらけなんだから!」
「お仕置きですよ〜!」
数瞬だけ、アビドスの方が早かった。
セリカのシンシアリティAR70/223、ノノミのリトルマシンガンVM134 ミニガンが放った銃弾がオートマタを撃ち倒す。
…味方がミニガン装備してるのって安心感凄いんだな、と先生は少し感心した。まあまず自衛隊では無い事だし。
「ん、クリア。次行こう」
その後も特に問題もなく校内の掃討を進めることができた。途中、後衛の先生が狙撃を受ける事態が何度かあったものの、
パシィン!!
「うおっ」
[⁉︎ シャーレは光学シールドを装備してるぞ!]
[何? クソ、ミレニアムあたりから技術供与でも受けたか!グワーッ!]
「ん、先生、気をつけて」
「ごめんごめん」
と、不意の一撃ぐらいならポラリス シールドベルトが受け止めたのでなんら問題はなかった。被弾してからエネルギーを回復するまでの時間がまあまああったので頼り切ることはできないが。
《校舎敷地内のカイザーPMC戦力は全て撃退を確認しました!》
「ん、次は市街地」
「そうだね。じゃあ、私がジープを運転するからそれで───」
「先生は今度こそ学校で指揮よ!」
そう言ってジープの方に向かおうとする先生を止めるように、セリカがズビシィ!と先生を指差した。
「えっ、いやあの私も」
「私もその方がいい、と思う」
「ここからは市街地戦になりますからね♤アヤネちゃん、先生の事頼みます!」
《はい、お任せ下さい!》
「( ´•ω•`)ソンナー」
アビドス高校襲撃と同時刻
アビドス市街地 カイザーPMC連隊本部
さて、トランスポーターを吹っ飛ばしながらアビドス市街地へ突入したカイザーPMC部隊であるが、その進軍スピードは、当初計画されていた物よりもだいぶ……数字で言うと60%ほど遅れていた。
[はいこちら連隊本部!…なんですか理事、こっちはクソ忙しいんですが。……あ゛ぁ⁉︎ 進軍をもっと早めろ⁉︎ あのねえ、アビドスの対策委員会以外に
[隊長!突出したブラッカー3-2がIEDで擱座しました!]
[ま た か !! 話聞いてなかったのか戦車部隊の連中⁉︎ 本部からブラッカー中隊!市街地の掃討は歩兵部隊が行うから下がってろって言ったろうが!これで3回目だぞこのバカちんが!……他のとこから応援で来た部隊もこんな調子でこっちの話なんて聞きゃあせんのです!もう理事もこっち来てください!アンタ一応この会社のトップでしょ⁉︎]
アビドスの住民が、それぞれの武装で進軍してきたカイザーPMC部隊に対して抵抗を始めたからである。
抵抗の中心となったのは、商店街組合、商工会議所、工業組合、観光協会、アビドス第四銀行の有志32名。
その音頭をとっているのは、アビドス中央病院院長。
ちょっと前に、古戦ヶ原から厳しめの言葉を受けた、柴犬のお爺ちゃんである。
アビドス中央病院 大会議室
アビドス住民が武器を揃え始めたのは、ほんの数週間前、古戦ヶ原が入院してから少し経った後の事だった。
調達先なんてない。
強いて言えば、戦闘跡で装備をスカベンジ…というか強奪するぐらいだ。一番装備を多く拾得できたのは、カタカタヘルメット団が拠点にしていた旧八代森地区コミュニティーセンター跡地だったりする。
爆薬は、住民からカンパを集め、ここ最近柴関ラーメンに通っていたゲヘナの生徒と交渉して買い付けた。
抵抗の仕方は、若い頃レッドウィンターの方で“ヤンチャ”していたという住民のアドバイスを受けて考えた。
有事の際の避難先は、アビドス高校ではなく、アビドス中央病院。
別にアビドスを信用していないという訳ではない。現状住民が集中している地域を考えると、アビドス高校よりも中央病院の方が近いのだ。この辺は既に対策委員会とも相談して決めた結果である。
……余談だが、最近アビドスのプール跡に新設されたヘリポート。実はアビドス住民によって建設された物である。
「……はい、はい、分かりました。ご武運を」
古い無線機の前でヘッドセットに耳を当てていた副院長が、顔を上げて院長の方を向いた。
「先生、砂尾地区の第四銀行部隊からです。戦車を3輌撃破、1輌は爆破するも撃破したかは未確認。攻撃が苛烈さを増してきた為、第一防衛エリアを放棄し、第二防衛エリアまで後退するとの事です」
「分かりました。可能な限り遅滞戦闘を心がけるよう伝えてください。他の地区は?」
「奴ら、なぜか戦車を先頭に進軍してきてるので自然とIEDで撃破できてるそうです。思ってた以上に、向こうの連携が取れていないように感じます」
「それならそれで重畳。避難の進捗はどうでしょう」
「あと4割といったところです。…今だけは、このガワだけは大きい病院に感謝ですね」
「分かりました、備蓄食料や毛布もありったけ出してください。……総員傾注!」
突然声を張った院長に、会議室に詰めていた抵抗メンバーの視線が集まる。
「……恐らく、どう事が進んでも、これがアビドスへの最後の奉公となるでしょう。ですが、我々は、最後までアビドスの住民です。自分たちの家を、街を守る事は、無駄にはなりません、きっと。さあ、気張りますよ、みなさん!」
「「「ハッ!!!」」」
古戦ヶ原が蒔いた種は、腐っていたアビドス住民の心に、確かに根付いていた。
Tips:ヘリポートを作ったのは、今は亡き建設会社『アビドス組』の元職人達。この為にキヴォトス各地から舞い戻ってきたらしい。