Rimworld入植者(脱出済)のキヴォトス日記 作:運輸省
誰が現実でカルバノグ2章みたいな事しろって言った!?
《前回の誤字報告者兄貴姉貴》(敬称略)
星野優希
ありがとナス!
アビドス某所
田中栄子
『ある連絡』を受けた先生は、話し合いをひとまず延期し、アビドス某所にあるビルへとやってきていた。
カイザー撃退時に古戦ヶ原が使用した砲弾*1の爆心地から少しだけ遠いこのビル。直接的な被害こそ無かったものの、それでも衝撃波は免れなかったようでビル前の道路には多くのガラス片が散乱している。
“……”
そのガラス片を半長靴で踏みしめながら、先生はビルの入り口を潜った。
無人のエントランスを通り抜け、なぜか動いているエレベーターに乗り最上階へ向かう。
最上階
「ククク…ようこそ、お待ちしていました」
元は社長室か何かであったろう部屋で先生を待ち構えていたのは、影がスーツを着たような、ヒト型の人外。
“あなたが黒服?”
「既にご存知でしたか。ええ、私も貴女の事は存じております。連邦生徒会長が呼び出したキヴォトス外の人間、あのオーパーツ『シッテムの箱』の主であり、連邦捜査部シャーレの先生」
そこで黒服は一息ついた。
「……まず、はっきりさせておきましょう。私たちは、貴女と敵対するつもりはありません。むしろ、協力したいと考えています。私たちの計画において、一番の障害になりうるのはあなただと考えているのです。私たちにとってアビドスなんて小さな学校は、全くもって大した問題ではありません。ですが先生、貴女の存在は決して些事とは言えない。敵対する事は避けたいのですよ」
“……あなた達については聞いてる。観察者であり、探究者であり、研究者。キヴォトスの外から来たと自称する不審者集団、と”
「……失礼ですが、それはどなたからお聞きに?」
“今来ると思うよ”
「……?」
その瞬間、部屋の扉が開け放たれた。
そこに立っていたのは、一部が赤黒く染まった戦闘服を身にまとった男性。
「ああ、貴方でしたか。古戦ヶ原さん。確かに、最近お話しした中で先生と関係を持っていたのは貴方だけでしたね」
黒服の挨拶も意に介さず、古戦ヶ原はツカツカと黒服の元へ歩み寄っていく。
「……古戦ヶ原さん?」
怪訝そうな黒服の問いかけの答えは、予備動作無しの左ストレートである。もちろん強化義肢の方で殴った為、そのPOWERは常人の1.25倍。文字にすると微妙だな……
「ブッ……ッ!?」
「お前さあ、ひどいよ。なんで俺に嘘ついちゃうの? 悲しいじゃん。そっちが仕掛けない限りこっちもゲマトリアに手は出さないつもりだったのにさあ、なのに、なんでこんな真似すんの? 嘘つかれたらお前のこと助けてやれないよ。もう殺すしかなくなっちゃったよ」
怒りと悲しさが入り混じったような、まるで俳優の鶴見○吾みてえな顔で、古戦ヶ原は椅子から転げ落ちた黒服を見つめる。
「ま、待ってください古戦ヶ原さん。何か勘違いされているようですが───」
「勘違いも何もねえよ。俺確かあの会談の時言ったよな? 『探究も研究もそっちの勝手だけど、子供に手を出したら擁護できないぞ』ってさあ」
確かに言われた。
カイザーの基地を装甲車1輌で襲撃するというとんでもない作戦の指揮を終えたのち、別れる際の事だ。
「いえ、勘違いされています。確かに私は小鳥遊ホシノの身柄を拘束しましたが、あくまで双方の合意に則った公正な契約に基づくものです。書面も確かに存在します」
「そっちが身柄を預かった瞬間カイザーの大軍勢がアビドスに侵攻して来るなんて馬鹿げた契約書、ホシノが素直にサインするとは思えないな。なんかしら裏があるだろ」
「ええ、誓って嘘は言っていませんが、いくつか伝えていない情報はあった事は確かです。カイザーとゲマトリアは協力関係にあるとは言え、究極的な話をすれば、双方が利用しあっているだけなので」
「……」
「……」
しばし、周囲を沈黙が包む。
大変めんどくさそうに、大きなため息をついた古戦ヶ原が口を開いた。
「うん、無理!あとは頼みます先生!」
\ ズコーッ /
「く、ククク、い、潔いですね……?」
“いや、もうちょっと頑張りましょうよ…”
「俺こういう手合い相手のレスバ昔っから大の苦手なんですよ。Rimじゃ言葉での交渉なんてほぼ機会ありませんでしたし。交渉(物理)ならお手のものですけど」
“はあ……とにかく、黒服、こちらのスタンスは変わらない。あなた達と協力する気は一切無いし、ホシノはまだアビドスの生徒だ。返してもらう”
先ほどまで座っていた椅子に戻った黒服が、「何を言っているのか」というふうに大げさに手を広げた。
「今の話を聞いておられませんでしたか? 小鳥遊ホシノの身柄は、正当な契約に基づくものです。対して先生、あなたの行動には正当性がない。今のあなたに一体なんの権利があって、そんな要求をされているのでしょう? 小鳥遊ホシノはもうアビドスの生徒ではありません。届け出を確認されていませんか?」
まるで勝ち誇ったように語る黒服に、思わず腰に差したガバメントを抜きそうになるが、当の先生は至って冷静である。
“まだだよ”
「……ほう?」
“「顧問」である私が、まだサインをしていない”
「……」
“だから、ホシノはまだ対策委員会の所属だし、まだアビドスの副生徒会長だし、今でも私の生徒だから”
「……なるほど。あなたが『先生』である以上、担当生徒の去就にはあなたのサインが必要……そういう事ですか」
黒服が椅子から立ち上がり、窓の外を見やる。外はすっかり暗くなったようだ。アビドス砂漠が星あかりに照らされているのが見える。
「……先生、こちらからの提案をお聞き頂きたい。アビドスから手を引いては頂けないでしょうか。小鳥遊ホシノさえ諦めて下されば、あの学校については守って差し上げましょう。カイザーPMCのことについても、私たちの方で解決致します。もちろん、古戦ヶ原さんの拠点の土地所有権問題もです」
「ガタッ」
“古戦ヶ原さん?”
「ウッス!黙ってます!」
「……とにかく、この案ならばあの子達もアビドス高等学校に通い続けることができます。そしてこれは、他ならぬホシノさんも望んでいるはず。いかがですか?」
“断る”
「……どうして? どうあっても、私たちと敵対するおつもりですか? あなたは……確かに戦う能力はあるかもしれませんが、このキヴォトスにおいては相対的に無力です。たった1発の弾丸で、それだけで死に至るというのに!」
“(大人のカードを出す)”
先生が懐から取り出したそのカードに、黒服が一瞬戸惑ったように見えた。
「……先生、確かにそれは、あなただけの武器です。しかし、私はそのリスクも薄っすらとではありますが知っています。使えば使うほど削られていくはずです、あなたの生が、時間が。そうでしょう?」
“何を今更。今この時間だって、私にとっては延長戦だ。この時間の使い方は、私が決める”
「……理解できません、先生。一体何の為にそこまでするのですか。何がそこまで貴女を駆り立てるのですか?」
“あの子達の苦しみに対して、責任を取る大人が今まで誰もいなかった”
「……何が言いたいのですか? だから、貴女が責任を取るとでも? 貴女はあの子達の保護者でも、家族でもありません。貴女は偶然アビドスに呼ばれ、偶然あの子達と会っただけの、赤の他人です。一体どうして、取る必要のない責任を負うのですか?」
心底分からないといった黒服の発言に、先生は一旦古戦ヶ原の方を向いた。
「何でって、そりゃあ───」
“ねえ? ───”
“「
「───ああ、そうですか。大人とは「責任を負う者」。そう言いたいのですか? 先生、その考えは間違っています。大人とは、望む通りに社会を改造し、法則を決めて、規則を決め、常識と非常識を決め、平凡と非凡を決める者です。権力によって、知識によって、力によって、それらを持たない者達を支配する、それが大人なのです。自分とは無関係の話、とは言わせませんよ、先生」
黒服が先生の目を見つめなおす。
「貴女はこのキヴォトスの支配者にもなり得ました。この学園都市における莫大な権力と権限、そしてこの学園都市に存在する神秘。その全てが、一時的とは言え貴女の手のひらにありました。しかし、貴女はそれを迷わず手放した」
思い出されるのは、田中栄子という人間がキヴォトスに来たあの日。
キヴォトスという学園都市の各種インフラを制御するサンクトゥムタワーの行政制御権は、確かに、一時的に彼女の手にあった。
だが、彼女はすぐそれを連邦生徒会に返還した。
「理解できません。一体その選択に、何の意味があるというのですか? 真理と秘儀、権力、お金、力……その全てを捨てるなんていう無意味な選択を、どうして!」
あの時はまだ、
“……まあ、シビリアンコントロールとか、私はそういう器じゃないとか、諸々理由はあるけど───言ってもきっと、理解できないと思うよ”
「……いいでしょう、交渉は決裂です、先生」
「(無言でガバメントを抜く)」
「待ってください古戦ヶ原さん。やり合うつもりはありませんよ」
「えっ、交渉決裂っていったらそういう流れじゃないの」
「あいにく私は武闘派ではないので。先生、ホシノは、アビドス砂漠のPMC基地、つい先日何者かに焼き討ちされかけた基地の中央にある、実験室にいます。せいぜい頑張って、生徒を助けるといいでしょう。微力ながら、健闘を祈ります」
そこまで言ったところで、先生は部屋を去った。必要な情報が手に入ったのだ、この場に長居する必要はない。去る彼女の背中に黒服は何か声をかけようとしていたが、その前に扉は閉められた。
「……古戦ヶ原さん、あなたも行かれた方がよろしいのでは?」
そう、ソファに座ったままの古戦ヶ原を置いて。
「いや、俺は俺でやる事あるからさ」
そう口にした古戦ヶ原が立ち上がり、黒服の前に立つ。
またしてもガバメントを抜くかと、黒服が身構えた。
しかし、予想に反して古戦ヶ原が机の上に差し出したのは、いくつかの数字が書かれた一枚の紙。
「これは……?」
「ウチの駐屯地に置いてる長距離通信装置の周波数。そこに合わせたらキヴォトスで流通してる衛星電話でも繋がるから」
「えっ、それはどういう仕組みで……いえ、そうではなく、なぜ? なぜ、これを私に?」
「いや、今さっきシャーレはゲマトリアと敵対するって旗色を明確にしたじゃん? それなら俺はあくまで中立ポジでいようと思ってな。いくら敵対関係とはいえ、ホットラインは必要だろ?」
「それは、そうですが……理解できませんね。貴方も先生と同じ考えなのでは?」
「んー、完全にとは言い難いな」
「……詳しくお聞かせ願えますか?」
「あ、期待されちゃあ申し訳ないから先に言っておくが、ゲマトリアと協力はしないぞ。ホシノを騙した件は個人的にぶち殺してやりたいぐらいキレてるからな。誰もそこまで望んでないだろうからやんないだけで」
「物騒ですね……それで?」
「お前さんが言った『大人』の定義に関しては概ね賛成なんだよな。何せ俺もつい最近まで武力による支配が当たり前の星にいたから。たださあ、そっからなんだよ」
「……」
「お前さんは『赤の他人を助ける理由はない』って言うけどさ、大人は子供助けてナンボだろうよ。社会支配してようがキヴォトスを支配してようがそこは変わらない筈だ。人間が社会生物である限り、その点は絶対に不変だと俺は思うね」
「……なるほど。『社会生物である限り』ですか」
「まあお前さん人間かどうかも怪しいからなぁ。分からなくて当然だろうな、むしろ分かったら怖えよ」
「……わかりました。これはありがたく頂きましょう」
「おう。ま、ホシノ助けて諸々落ち着いたらまた意見交換会でもしようや。公私の区別はつけるからよ。ただお前また生徒騙したとか言ったら今度こそ眉間に風穴空けてやるからな」
「ええ、気を付けさせていただきますとも。それでは、ご武運を」
「おうよ」
立ち上がり、扉に手をかける。
「古戦ヶ原さん」
「ん?」
「───ゲマトリアは、あなた方3人のことをずっと見ていますよ」
その言葉への返答は、中指で十分である。
数時間後
アビドス高等学校 対策委員会部室
「えー、皆さんこんにちは。第n回対策委員会定例会議の時間がやってまいりました。司会の古戦ヶ原です、どうぞよろしく」
\(どこかから沸き起こる拍手)/
「何言ってんの? ていうか今の拍手何? どこから?」
「司会、私なんですが……」
“うわあ、笑○だ。懐かしっ”
長テーブルのお誕生日席に座った古戦ヶ原がそう切り出す。
カイザーの軍勢を撃退したアビドス・DE連合軍は、怪我人の治療や設備修復を住民らに一旦託し、これからを話し合う為アビドスに集まっていた。
集まったのは、対策委員会4名、DEからはナダヤ、あと遅れて到着した先生と古戦ヶ原である。
「まあ時間もないんで茶番はこれぐらいにして。ホシノをどう助けるかなんだが」
「そもそもなんですが、ホシノ先輩はどこに連れて行かれたんでしょうか……?」
「それについては捕捉してる」
“ここ見て。前にDEのおせち号がメッタメタにしたカイザーの基地。その中央、この建物の中にホシノが捕らわれてる可能性が高い”
先生がシッテムの箱に衛星画像のような俯瞰画像を表示した。全員が近づいて食い入るように見つめる。
「確かおせち号で突っ込んだ時は、この実験棟方面は攻撃しなかったんだよね?」
「ああ、前回は各種インフラを叩くのと陽動が目的だったからな。まさか実験棟なんてのがそこにあるとはこの李白の目を持ってしても(ry」
「ふむ……じゃあ、目的地はここってわけだ」
「場所が分かれば話は早いわ!早速そこに乗り込んで…」
“待ってねセリカ。アビドス侵攻に用いられた大戦力は恐らくこの基地に再集結してるからね”
「一応反物質弾で2、3個大隊分は吹っ飛ばしたと思うんだが、それでも未だ相当数の戦力がいるだろうな。しかも、今度は向こうが防衛側だ。少数で多数を攻め落とすのは骨が折れるぞ、マジで。下手したら物理的に骨が折れる。というか腕か足がもげる」
「ぐぬぬ……」
「……デザートエッジの戦力は?」
「MBTが2輌、IFVが1輌、輸送ヘリが1機、60㎜迫撃砲が3門、車輌乗員を除いた歩兵戦力が……甘く見て2個分隊か。歩兵戦力に関してはちょっと考えがあるから場合によってはもう少し増えるかもしれんが、そんなに頼れる数じゃないぞ」
「便利屋の皆さんはどうでしょうか?」
「確かに私たちの事は助けてくれましたが……もう一度お願いしてもいいのでしょうか?」
「まあ、最悪DEの方から依頼を出せばいいしね。幸い哲郎が向こうと連絡先を交換している事だし」
「マジであの時交換しといて良かったなコレ」
“こちらでも、ゲヘナとトリニティの伝手を当たってみます。伝手と言っても最近知り合ったばかりですけど…”
「ん、戦力はなんとかなりそう?」
その時、部室の扉が開かれた。
見ると、マルチカムのセーラー服を着た生徒が2人。
「ちわーす、デザートエッジのモンですけど〜」
「こんばんは〜」
頭にぐるぐると包帯を巻いて松葉杖を突いた志津カオリと、宮崎キョウコ。
カイザーの侵攻に巻き込まれて大怪我を負った、トランスポーターの2名である。
「おお、お前らか。どうだ具合は」
「ボチボチってとこやんな。とりあえず駐屯地で手当は受けてきたさかい、お礼+兄貴とナダヤの姐さん迎えにきたって感じ」
「安静にしてた方がいいって言ったんですけど、どうしてもって聞かなくて」
「お前なあ……………」
ふと、トランスポーターの2名を見た古戦ヶ原が何かを考え始めた。
「……どうしたの?」
“古戦ヶ原さん?”
「……ちょっと思いついた事がある」
「確か2人ってヴァルキューレ出身だったよな?」
黒服との会談のシーンは、文章を変更したり一部削ったりして本編そのままってのはできる限り避けたつもりですが、もしまずかったらごめん遊ばせ!