Rimworld入植者(脱出済)のキヴォトス日記 作:運輸省
《前回の誤字報告者兄貴姉貴》(敬称略)
にぼし蔵
ありがとナス!
某日
ヴァルキューレ警察学校 公安局
尾刃カンナ
学園都市キヴォトスにおける警察機関、ヴァルキューレ警察学校。
その中でも、刑事課にあたる公安局。
そのトップの席に座っているのが、ブロンドの長い髪を携えた犬耳の生徒、尾刃カンナである。
「───以上が、先日発生した傷害事件の最終報告になります」
「……わかった。下がっていいぞ」
「ハッ」
公安局の生徒が報告書をデスクに置き、局長室から出ていく。
普段の仕事はこんな物だ。
あまりにも忙しいとか、相当な重大事件とかの場合は彼女も現場に出るが、そもそも彼女は公安局のトップ。トップが現場に出るのはあまり好ましくないのだ。
ふと、机の上の固定電話に目が行く。
この机の電話が鳴る事は少ない。大抵は警備局か生活安全局の局長クラスからか、もしくはヴァルキューレの上位部署である、連邦生徒会防衛室からの───
プルル、プルル、プルル
───電話がかかってくることは少ない筈なのだが。
「……噂をすれば、か。はい、公安局長」
《おいっす。おひさ、カンナ局長》
電話口に出たのは、普段は聞きこそしないが、彼女が個人的に忘れられない声。ハスキーっぽい訛りのある声。
どこか人懐っこい感じのする声。
そして、元同期の声。
「──────志津、か?」
《おっ、覚えててくれたん? 嬉しいなぁ》
「誰が忘れるか。同期で、訓練センターの次席で……唯一の不名誉退学者だ」
《最後だけ余計やアホ》
「まあそれはいい。まさかお前がただ電話を掛けてきただけなわけがないだろ。何かあったのか?」
《……ウチが言うのもアレなんやけどさ、ウチ、社会的には犯罪者やで? 口座も新しく作られへんし。そんな奴の言うことそんな素直に聞いてええんかいな》
「……私にだって、元同期に向ける情ぐらいあるさ」
《ほーん……まあええわ。えーとな、単刀直入に言うと企業による未成年略取が発生しとるんよ、今。アビドスで》
「───なるほど、私に電話をよこすわけだ」
《んで、2、3日後にシャーレと共同でその生徒の奪還作戦をやるんやけど》
「待て? シャーレ? 最近活動を開始した連邦捜査部が?」
《おん。マル被の生徒が、最近シャーレの先生が顧問に就任した組織の所属なんよ。てか、報告受け取らんの? つい昨日アビドス市街地にカイザーPMCの数個連隊が侵入して破壊活動しまくったんやけど。なんなら住民が避難した病院を砲撃しようとしたらしいで》
「いや、アビドス支所から報告は来ていない……志津、お前の話を聞く限りまるで現地で見たような言い振りに聞こえるんだが、お前今どこにいるんだ?」
《アビドス。今怪我して……あー、病床に就いてるって言ったらええんかな。いや、そのカイザーPMCの侵攻のド真ん前に出ちゃってもう》
「だ、大丈夫なのか?」
《えーと、なんやったっけ。複雑骨折が4〜5箇所に、筋肉の断裂がいくつか。あと両眼失明》
「重傷じゃないか!?」
《まあウチの事はええねん。───公安局は動くか?》
「……すまない、令状の発行でもたつくだろう。大企業相手だといつもそうだ」
《そうやと思った。まあ、こっちが終わってからでもええから捜査を───》
「ただ」
《おん? ただ?》
「こういう重大かつ速度を求められる案件の場合は、局長権限でSRTに応援を要請することができる」
《ほぇー……えっ、それって大丈夫なん? 今SRTって色々と危ないやろ。色々と》
「普段馬車馬みたいに働いてるんだ、たまに権限を行使してもバチは当たらんよ。それに、こういう事件こそSRTの領分だ。誰にも文句は言わせないさ」
その後いくつか言葉を交わし、電話は切れた。
友人からの頼みである。大きい事件もつい最近片付いたし、そちらに注力してもいいだろう。
「……」
ふと、デスクの一番下の引き出しを開き、書類を入れるファイルを取り出した。
そこに入っていたのは、束のような資料群と、2枚のA4書類。
【アビドス地域にて活動が確認された要注意団体『デザートエッジ』構成員に関する情報提供】
【志津カオリ警備局装備管理官の退学処分取り消しを求める嘆願書】
「……カオリ……」
口に運んだブラックコーヒーは、すっかり冷めてしまっていた。
同時刻
デザートエッジ駐屯地
「兄貴ィ!公安局の言質取ったで!」
松葉杖をついた志津が、ひょこひょこ歩きながら古戦ヶ原夫妻の部屋に飛び込んできた。思わず、飲み込もうとしていたお茶を噴き出す。
「何やってんだお前ェ!?分かったから安静にしろバカ!怪我人なんだぞ!?つーか両目に包帯してんのにどうやってきたんだよ!」
「勘や!」
「アホ!とにかく横になれ!治るもんも治らねえぞ!」
とりあえず包帯だらけの体の志津をベッドに寝かせる。
「はあ……うまくいったんだな?」
「おうよ。公安局はすぐ動かれへんけど、局長権限でSRTに出動を要請するって」
「SRTか。ようし、よくやった。よくやったけど安静にしてろバカ」
ぐりぐりと、志津の頭を撫でる。
「へへ。兄貴の方は上手くいったん?」
「今ナダヤに交渉してもらってるところだ。たぶんうまくいくとは思うんだが……」
ここで、デザートエッジの戦力再整備について触れよう。
何度か言っていたと思うが、現状、デザートエッジは人手不足である。
キヴォトスで流通しているあらゆる装甲車両を凌駕するであろう第三世代MBT、90式戦車が2輌。
カイザーPMCの秘密基地を単騎で壊滅せしめたIFV、M2 ブラッドレーが1輌。
何かと大忙しなDEの馬車馬、くじら号ことUH-1Y ヴェノムが1機。
数こそ現代の軍隊とは比べようもないが、そもそもDEはただの武装集団である。機甲戦力は十分だ。
で、何が足りないかと言うと歩兵戦力である。
機甲戦力の乗員を除けば、歩兵戦力は甘く見て2個分隊。足りない。
こちらの指揮限界……一度に指揮できる限界の数を考えても、歩兵戦力で1個小隊、だいたい30名前後は欲しい。しかし、どこぞの槌と鎌の国*1と違い、キヴォトスで人間は畑から取れない。
であれば、と策を考えた。
「哲郎、いるかい」
「おう、なんとかなったか?」
「何とかなったよ。全員首を縦に振った」
「ようし、やっぱ最後は金だな」
つい先日、カイザーPMCに雇われて駐屯地を襲撃した傭兵やらスケバンやらヘルメット団やらが36名。
それらのうち、負傷や気絶などで撤退が叶わずこちらで拘束されたのが約半数の17名。ヘルメット団は真っ先に撤退していたのか、残されたのは大体スケバンか傭兵である。
畑を一つ潰して急遽作った雑居房の中で、彼女たちにこういう提案をした。
『こちらに寝返るか否か』
これだけでは『Yes or Die』みたいな実質一択のひでえ質問にしか聞こえないが、まあ要は
『カイザーPMCが支払った額よりも多い給金で雇うのでこちら側につきませんかー。断った場合でも治療と装備品の修復は無料で行わせていただきまーす』
という提案である。
これにまずスケバンが食いつき、ついで傭兵たちも「金が欲しい」という理由で承諾した。
やったぜ。
ちなみに支払う給金は、今までブラックマーケットの武器商兼バー『B&W アンドレ』に卸した銃火器による儲けから支払う事にしている。連邦生徒会に納めた税金(銃器製造に関わるもの等)を除いても結構な額だ。何せ原材料はMines 2.0からノーコストで産出する。……だらだら組とE分隊に支払う給与の事も考えないといけないかなこれ……
まあそこは事が落ち着いてから考えるとして。
武器は元々使用していたものを修理して再配布、敵味方を識別するために何かこう、ワンポイントで身につけるものを作っておこう。
とりあえずこれで歩兵戦力については目処がついた。
「ああそうだ。ナダヤ、様子を見てスケバンか傭兵から何人か
「分かったよ。まあ、ジャベリンよりコストが軽いとはいえ、あの新しいミサイルもまあまあ掛かるからねぇ」
ナダヤが言ったように、今回は武器についても少し見直しを行った。
今までDEが所有する個人携行火器として最も猛威を振るってきたのは、対戦車ミサイルのFGM-148 ジャベリンだ。これは疑いようもない。
だが、そんなジャベリンにもいくつか欠点がある。
まず、というかこれが主な理由なのだが、生産コストが重い。ここで言う生産コストとは、消費資材と製作工程数の事だ。細かい数字は省くが、数日後にカイザー戦を控えた状態で量産するにはジャベリンは少々重い。
なので、今回雇用したスケバンと傭兵に渡す分のミサイルは別のものを採用した。
それが、NLAW。
現実世界で言うところの、スウェーデンとイギリスが共同開発した携行式対戦車ミサイルである。*2
詳しい話をするとこの話の趣旨からそれてしまうので、その辺は読者諸氏で調べてもらいたい。
ただまあ、ひとつだけ話をするのであれば、往年の名作FPS、Battle Field4に『MBT LAW』の名前で登場していたりするやつだ。*3
ひとまず、戦い前に行える改編はこれで以上である。
まだやっておきたい事は───例えば自走迫撃砲とか新しいヘリとか───あるにはあるのだが、何せ資源調達の要である採掘班が忙殺されているので今回は見送った。人と土地が欲しい。
あとは、作戦面の話だ。
「……哲郎、ついにやるのかい?」
不意に、先ほどから俺の顔を見つめていたナダヤがそんな事を口走った。
「えっ、な、何が?」
「何がって、カイザー戦だろう? 今まさに自分で口にしてたじゃないか」
「めっちゃ心の声のつもりだったんだけど」
「ガッツリ声に出てたよ」
「マジ?」
なんとも締まらない男である。
作戦当日 D-day
デザートエッジ駐屯地
デザートエッジ駐屯地の南側、ヘリポートとして使用している空き地に、だらだらヘルメット団、アリウス分校E分隊、スケバン、傭兵、他数名が集結している。
特徴を一つ挙げるとするなら、全員が左腕に黄色い腕章をつけている事だろう。何せ全員の制服に統一性もへったくれもないので、敵味方識別のために簡単なものを作ったのである。
そうこうしていると、くじら号の前に置かれた腰の高さほどの台に、完全武装の古戦ヶ原が登った。その手には、どこで買ってきたのか拡声器が握られている。
「えー、DE指揮官の古戦ヶ原だ。今回の作戦について説明する。作戦目標は、アビドス高校生徒会副会長小鳥遊ホシノの救出及びアビドス砂漠に存在するカイザーPMC戦力の排除。連邦捜査部、SRT、アビドス対策委員会と共同して任務にあたる。」
「連邦捜査部ってなんだっけ」
「アレだよ、ちょっと前にD.U.でウチらの事ボッコボコにした連邦生徒会の」
「あー……」
「はいそこうるさいよー。んで、作戦に当たって隊を2つに分ける。まずアルファ。アルファの任務は、機甲戦力を伴う大戦力をもってカイザー基地に立て篭もる主戦力を釣り出す事だ。おそらく数個大隊、下手すりゃ連隊規模を相手する事になる。気合い入れてけ。メンバーは、今回バイトに応募した者全員、田んぼ三姉妹、名残、渡辺、永末、大宮寺。現場指揮は藤田、お前に任せる」
「えっアタシ!!??」
「気づいてないかもしれないが、DEメンバーの中で一番指揮官の素質があるのお前だからな。安心しろ、機甲戦力としてみかん号、おもち号、おせち号を付ける。移動にはタンクデサントするか、パジェロと3t半を使え。集合地点は追って指示する」
「お、おおう……そこまで言われちゃあ頑張るしかないけどさ」
「よし、まあ気張れ。で、ブラボーだが、ブラボーはアビドス対策委員会、SRTと共同してくじら号でカイザー基地を強襲、アビドス対策委員会が小鳥遊ホシノの救出、SRTとブラボーが基地司令部を強襲して各種証拠やら情報書類やらを押収する。ブラボーは、E分隊4名」
「SRT……連邦生徒会の矛と共同か。熱くなるな」
「(ง `・ω・´)ง」
「あの、隊長。とすると、くじら号の乗員はどうしますか?」
奈良山の疑問ももっともである。今まではE分隊がくじら号の乗員を務めていたからな。だが、今回はそれについて妥協案を採択した。
「ああ、それは俺と」
「私が受け持とう」
メインパイロット、古戦ヶ原哲郎。ドアガンナー、古戦ヶ原ナダヤの爆誕である。
「な、ナダヤの姐御!?何そのアーマー!!??」*4
「えっ、かっけえ!!!!」*5
「ヘイラ族専用の重アーマーさ。作る時間が無くて宇宙商船で購入した物だが、防御力は保証できる」
その名を『重装型HMAA』。High Mobility Assault Armorは、ヘイラ族の技術とGlitterworld……要はめっちゃ技術の進んだ星系のテクノロジーが融合して誕生したアーマーの、最も防御力の高いモデルだ。
「まあそういうわけだ。アルファの指揮を藤田に任せるのもこの為だな。全部人手不足って奴が悪いんだ」
「えぇ……?」(困惑)
「で、駐屯地での留守番は、この場にはいないが宮崎と志津の2名。以上、質問がなければ準備に取り掛かるが……無いな? よし、では取り掛れ!……あ、藤田と石田と三ヶ島はちょっと来い」
大多数が慌ただしく準備に取り掛かる中、呼ばれた3人だけはこちらの方に駆け寄ってきた。
「どったの?」
「まず藤田、アルファの方なんだが、シャーレの方で協力を要請した援軍がいる。そいつらと協同して事に当たれ」
「援軍。そりゃあ嬉しいけど、どこの誰?」
「詳しい所属は聞いてないが、数人らしい」
「えー……まあ数人なら変わんないか。分かったよ」
「おう。んで、石田、ちょっと悪いんだがブラボーの方に回ってくれ。ブラボーの対装甲戦力がもう少し欲しい」
「わ、分かりました。よろしくお願いします、三ヶ島さん」
「ああ、よろしく頼む」
「あと三ヶ島…と石田もだな。ブラボーの方に同行者がいる」
「同行者……協力者ではなく?」
「情報協力はしてくれたが、戦力としては数えてない。とにかく、司令部を捜索し終えたらその同行者の方について行く事になるから、その時はそっちの指示に従ってくれ」
「ふむ、了解した」
DEの保有する機甲戦力・航空戦力が一斉に唸りを上げる。
90式戦車の三菱製V型10気筒ターボチャージド・ディーゼルが。
M2 ブラッドレーのカミンズ製V型8気筒液冷ターボチャージド・ディーゼルが。
3t半のいすゞ製水冷V型8気筒ディーゼルが。
そして、UH-1Y ヴェノムのゼネラル・エレクトリック製T700-GE-401C ターボシャフトエンジンが。
「作戦指揮官より全隊、出撃準備いかが」
くじら号の計器をいじりながら、無線で呼びかける。
《こちらアルファリーダー、歩兵隊及び戦車隊、出撃準備よろし!》
藤田がみかん号の砲塔上でサムズアップ。
《ブラボーリーダーより作戦指揮官、出撃準備よろし》
後ろを振り向けば、席についた三ヶ島がサムズアップ。
「よろしい。では、自らが支配者だと思い上がった企業のクソッタレ共に、砂漠の端っこから引導を渡しに行ってやろうじゃないか!」
どこからともなく歓声が湧く。
「全隊出撃!Good Luck!」
さあ、反撃の時間だ。
徳川くん、やっと次回からアビドス編ラストバトルに突入だぞ。遅くね?(自問)