Rimworld入植者(脱出済)のキヴォトス日記 作:運輸省
またネームドが増えます。
通知:
前話において、タノカミ農業高校のくだりの時系列を「3か月後」と表記していましたが、さすがにそんなに間を開けたらパヴァーヌどころかエデン条約編も終わってしまいそうな気がしてきたので「1か月後」に変更します。この投稿者はいつもこういうことするんだ。
竣工打ち上げから1週間後
D.U.
サンクトゥムタワー
キヴォトスを統治する連邦生徒会の本拠地、サンクトゥムタワー。
白を基調としたその廊下を、連邦生徒会の白い制服に身を包んだある生徒が歩いていた。
だらけた顔と服装、そんな要素に反して歩調はしっかりとしており、かなり行き届いた教育───もしくは訓練を受けてきた生徒なのだろうと、その道の者なら看破できるかもしれない。
その生徒はやがて、ある一室の前にたどり着いた。
『防衛室 室長室』
その扉には、そう刻まれた金属製のプレートが掲げられていた。
呼吸を一拍、ノックを3回。
「資料編纂室の野田ですが」
『入ってください』
「失礼しまーす」
室内に入る。
入って正面の豪奢なデスク、そしてふかふかの革製の椅子。
そこに座っていたのは、頭頂部のアホ毛、他の生徒に比べるとかなりシンプルめなヘイロー、そして、山羊の目のような横長の瞳孔が特徴の生徒。
連邦生徒会 防衛室 室長
不知火カヤ
「何かありました? 不知火室長。この前頼まれた資料でしたら河島に届けに行かせたはずですが」
「ああ、それでしたら受け取りました。その件ではなく、『資料収集』の方です」
「ああ、そちらでしたか───失礼しました。“例の件”につきましては、こちらを」
『資料収集』という単語と同時に、野田は今までのぽわんとした雰囲気を捨て去った。鈍い光を放つ刃物のような殺気が部屋全体を包む。
懐に入れていたメモ帳のある1ページを開き、冷や汗を垂らすカヤに渡した。相変わらずこの雰囲気に慣れていないらしい。
「基地を脱出後、FOX小隊に回収されカイザーグループ本社に引き渡されたカイザーPMC理事ですが、子会社のオクトパスバンクの営業に降格となったそうです。よっぽどのことがない限りはPMCに戻ってくることはないと考えます。詳しいことはいつも通りメモ帳に」
「相変わらず字が小さいんですから……ありがとうございます。それで、早速ですが次の任務です」
虫眼鏡とメモ帳をデスクにしまったカヤは、野田に向き直りそう告げた。
えっ、休みは?
「えっ、休みは?」
「心の声が出てますよ、状況が変わったので無しです」
「そんなぁ。トリニティで大人気のスイーツ買ってこないと河島に殺されるんですが」
「…取り寄せておきますよ。『デザートエッジ』、ご存知ですね?」
「ありがとうございます。ええ、先のシャーレとSRTによるカイザーPMC合同強制捜査に参画した、アビドスを拠点に活動する武装集団ですよね。だらだらヘルメット団と、所属不明の高練度の小隊、あと『
「それです。とある情報筋から、かの集団が大量破壊兵器禁止法に抵触する恐れのある未知の兵器を所有しているとのタレコミがありました」
カイザーだろうな、と表情そのままに野田は考える。
そんなタレコミ、仮に本当だとしても口にするような立場となると限られてくる。
アビドス生やアビドス住民は助けられた立場になるから言わないだろうし、ゲヘナの便利屋は……社長があの性格だ、漏らす事はないだろう。同じような理由で連邦捜査部も除外する。
デザートエッジと対立関係にあり、かつ、さきのアビドス騒乱でデザートエッジと対峙した組織。
カイザーPMCだ。
なんなら、防衛室は長年あの大企業と癒着関係にある。そういう情報が回ってきていてもおかしくはない。
……もちろん思うところはある、だが今の野田の主人は連邦生徒会だ。
「あなたには、デザートエッジに潜入、大量破壊兵器の存在を証明する証拠を確保してきて貰います」
「潜入って言ったって。情報はありますよね? 前情報無しでも別に構いませんが、少々お時間いただくことになりますよ」
「大丈夫です、こちらを」
カヤが、デスクの引き出しから1枚の書類を取り出す。
A4サイズのコピー紙。
『社員募集中』
とタイトルが振られ、その下には労働条件がつらつらと記されている。
「あー……もしかして入社しろと?」
「ええ、簡単でしょう?」
「無茶を言いなさる……お時間はいただきますが、構いませんね?」
「勿論です、準備は一任します」
「へえへえ。資料編纂室室長、野田は任務につきます」
ヴァルキューレ式の敬礼を最後に、室長室を後にする。
───えーと、河島に業務の引き継ぎして、ブラックマーケットの“あの店”に連絡して服と装備調達して、あああと身分もこさえなきゃ……あーもうこの仕事面倒くせぇ〜〜〜やりたくねえ〜〜〜!!!
心の中で仕事したくない宣言を堂々とするこの生徒。
連邦生徒会 資料編纂室々長 野田ショウコ
普段は『窓際部署筆頭』『昼行燈』『給料泥棒』と連邦生徒会内から揶揄われる窓際役人。
しかし、その正体は───元ヴァルキューレ公安局潜入捜査官、現防衛室長不知火カヤの懐刀、要はエージェントなのである。
──────
───
連邦生徒会エージェント、野田ショウコは過去最大に焦っていた。
想定外その1。
今まで懇意にしていたブラックマーケットの武器商に装備や服を調達しに行った時のことである。
……なんか店が改装されている。
前は良くて空き店舗、ひどい時は廃墟と見間違えるような有様だった。
それが今となっては、なんだこれは。
ひび割れた壁や床タイルは補修され。
1本しか灯っていなかった蛍光灯は取り払われ、壁埋め込み式の間接照明に交換され。
埃だらけだったテーブルや椅子、カウンターは塗装されてピカピカに。
ガラ空きだった壁のガンラックには、明らかに高品質と分かる多種多様な銃火器類が掛けられている。
「いらっしゃい……おお、嬢ちゃんか。久しいな」
「え、ええ。えーと、これは一体なんですか? ───
驚きを隠せない野田のその言葉に、この銃砲店兼バー『B&W アンドレ』の店主アンドレは、イタズラが成功した少年のような、得意げな顔になった。
「へへ、最近経営状況が回復してな。思い切ってリフォームしたってわけだ」
「はー、そりゃおめでとうございます。武器の一般販売も再開したんですね?」
「おう。ああ、勿論ちゃんと武器販売再開の届出は出してっからな。チクらないでくれよ?」
「まあ、その辺は信用してますがね」
元々、野田にとってこの店は色々とちょうど良かった。
立地がブラックマーケットの比較的外れにあるので人目にもつきづらく、かつ店主は、金さえ積めば銃火器から制服まで、色々と調達してくる。
こちらの事情に多少勘づいているようだが、それでもチクったり探ったりしてこない。それも都合が良かった。
……少し探りを入れてみるか。
「それにしても、一体どういうわけで武器販売の再開を決断されたんです? 『もう二度と売らない』って仰られてましたよね」
「いや何、そんな決断を吹き飛ばすような“情熱”に出会ったってだけよ。コイツ見てくれ」
アンドレはそう言ってガンラックに展示されていたライフルの内一つを手に取って渡してきた。
M4A1、オーソドックスなアサルトライフル。
手に取って、チャンバーを覗いたりしてすぐ違いに気づいた。
「……これはまた、随分精巧な作りですね」
職人の手作りと言われても信じられるような工作精度、部品一点一点に他製品との違いは見受けられないのだが、外観・感触・使い心地、全てを考えても『高級品』という評価がしっくりくる銃だ。
まさかブラックマーケットでこれほどの品に出会えるとは思っていなかった、普通に私物として欲しい。
「だろ? 新しいとこと契約してよ、そこが卸してくる銃火器が素晴らしいの一言なんだ」
「へえ、アンドレさんのお眼鏡に適うとはなかなかですね。なんて名前の会社なんですか?」
「ああ、今のとこ会社ってわけじゃねえんだが、『
ん?
───努めて冷静に、言葉を重ねる。
「───デザートエッジ、ですか。聞き覚えのない名前ですね」
「そうか? てっきりそれ関係で来たのかと思ってたが。ほれ」
そう口にするアンドレの手には、防衛室でも見た社員募集のチラシ。
───ま、まさかデザートエッジがこの店に商品を卸しているとは……いや、そこまで大きな問題じゃないか。
「ああ、あともう一つ。俺もデザートエッジの面接受けっから」
「は???」
想定外その2。
外部協力者たるアンドレがデザートエッジの面接に申し込んでいた。
──────
───
アビドス東駅から西に500m
デザートエッジ 拠点
「……」
なんか要塞みたいになってる。
お、おかしい。直近の情報じゃ空き地に建物がいくつか建ってただけだった筈なのに、なんだこれは。
厚さ2m以上はあるコンクリートの外壁に、鋼鉄製のゲート、メインゲート両サイドに設けられたヘスコ防壁でできた陣地には重機関銃が据えられている。
中に入れば、アスファルトで舗装された通行路と、両側に十分な間隔を空けて建てられた新築の建物群。
これではまるで要塞ではないか。いつの間にこんな大規模な建築を……えっ防衛室偽情報掴まされてた? こんなの数ヶ月でできるような規模じゃないんだが。
「……えぇ…?」
「じゃあ、ムツリ、えっと、赤い腕章つけた彼女についてって下さいっス」
「(^q^)オレニツヅケ!」
「あ、はい」
妙な喋り方をする構成員に連れられて要塞の中を歩く。
なんとか情報を引き出せないかと会話を試みたが、(^q^)ワカリマシタとか(^q^)イソイデハシレ!とか言われて会話にならなかった。な、なんだコイツ……
しばらく歩いていると、配送センターを兼ねた倉庫のような建物に連れてこられた。中には、同じく面接を受けに来たのであろう生徒らがいる。大体20人ぐらいだろうか。
「(^q^)ココデマテ!」
ムツリと呼ばれていた構成員はそう言ってどこかに消えていった。空いていたパイプ椅子に座って周囲を眺める。
向こうに置いてあるコンテナ、蓋が開いて中身が見えている。銃火器だろうか。おそらくここからブラックマーケットのアンドレの店に商品として運ばれているのだろう。……『ブラックマーケットに武器を卸している』だけでも強制監査が実施される大きな理由になるが、あいにくアンドレはブラックマーケットの中でも珍しい、ちゃんと営業許可を取っている店である。その線は難しいだろう。
……なんだか対戦車ミサイルらしきゴツい筒も見えるのだが、もしかして重火器も生産しているのか?
疑問に思っていると、先ほどから見えていた扉が開き、誰か出てきた。
───ヘイローのない、鹿の角を持った大人の女性。
情報通り、彼女が以前連邦生徒会内で話題になった『宇宙人』だ。
「えーと、そこから、そこまでの5人。入ってきてくれ」
指をさされた5人が立ち上がって部屋の中に入っていく。『休憩室』とプレートのかかったあの部屋で面接をしているのだろう。
そうかからないうちに、自分たちの出番になった。
立ち上がって案内されるままに部屋に向かう。
小上がりになったスペースに畳が敷いてあり、座布団が片側に1枚、もう片側に5枚敷いてあった。
その1枚の方に誰か座っている。
ヘイローのない男性。
内心驚いた。
『デザートエッジ』のトップと目される人物、古戦ヶ原哲郎がそこに座っていたのである。
「ん、来たな。そこに座ってくれ、順番はなんでもいい」
畳の上での面接は流石に経験がなかったのか、全員で一度顔を見合わせてから靴を脱いで小上がりに上がる。
…この座布団のカバー木綿か?
「はい、こんにちは。面接を担当する古戦ヶ原だ。じゃ、そっちの子から名前と所属を言ってってくれ。所属に関してはなくても構わない」
自分が座った方とは反対側のスケバンが指名され、だんだんと進み、こちらの番になった。
「
もちろん偽名&偽の所属だ。潜入先に馬鹿正直に本名と所属を言うエージェントなんていない。
「……えーと、田脇アリサ、で、元ヘルメット団でいいんだよな?」
「? はい。履歴書にもそう書いてますよね?」
「……OK、確認した。悪いな」
……なんだ? 今のやりとりは。
少しの違和感を残したまま、面接は進む。
動機などは聞かれず、聞かれたのは『得意なこと』と『これからやりたいこと』。随分アバウトだな。
「うし、これで面接は終わりだ。まあ、内定は確定なんだが一応な。んで、これからの配属先はこちらで『適性』を見た結果を反映するため希望には添えない場合がある。どうしてもあそこがいいとかあったら相談してくれ。じゃあ、今から呼ばれたものは起立の上後ろで挙手してる社員について配属場所に向かうこと。えー、佐藤、真岡は林と一緒に食堂」
「ウス、よし行くぞー」
林と呼ばれた構成員が2人を連れて、入ってきた方とは反対の扉から出ていく。
「鈴山は大宮寺と一緒に医務室」
「はい、ついてきてねー」
「山岡は立道と一緒に営業・事務・会計の方に行ってくれ」
「わかりました、行きましょうか。え? 計算なんてできない? 大丈夫ですよ、教えますから───」
そうして最後、私1人が残った。
どこに配属になるのだろうか、個人的にも任務的にも暇で休みが多そうな部署がいいのだが。
「えー、君は、三ヶ島と上辻について行ってくれ」
「? 配属場所はどこになるんです?」
「次の部屋で俺がまとめて説明する。他にもそっちになったやつがいるから、まあ親交でも深めててくれ。俺は面接終わってから行くからさ」
「は、はあ」
そうして、部屋に入ってきた構成員、三ヶ島と上辻という生徒についていく。……なぜこの2人だけ完全武装なのだろうか。銃だけなら分かるが、アーマーに、防弾バイザー付きのカットオフヘルメット、おまけにバラクラバで顔を隠している。
───バレた? いや、まさかそんな、早すぎる。
前後を囲まれ、まるで連行されているような気持ちになりながら要塞の中をしばらく歩き、比較的外壁に近い建物に着いた。看板には『警備部門詰所』と書いてある。
「ここで待て」
「壁際にあるジュースとお菓子は勝手に飲み食いしてていいからねー」
ある部屋に入ったところで、2人はその場を後にした。
部屋の中には私以外に3人の生徒。
ツノと蝙蝠の翼が生えた生徒。
白く大きな羽が生えた生徒。
メイド服を着て、先ほど話にあったお菓子を貪り食ってる生徒。
心なしか白い翼の奴と蝙蝠の翼の奴がギスギスしているように見える。
「あ、こんにちはー」
そんな空気を知ってか知らずか、チョコクッキーの空袋の山を作っていたメイド服の生徒がこちらに気づいた。
「こ、こんにちは……」
「あなたはどこの配属とかって聞いた?」
「いえ、まとめて説明するから親睦でも深めて待っててくれとしか」
「やっぱり? でも奥の2人があんな調子だからさー」
「奥の」
「*トリニティスラング*」
「*ゲヘナスラング*」
「ああ、そういう」
「ねー。私、霜立キョウカ。ミレニアム“の方”からきたんだ、あなたは?」
「田脇アリサです。百鬼夜行“の方”から来ました」
「───ふーん、アリサちゃんね!よろしく!」
「ええ、よろしく」
今のなんてことない会話の中で、田脇(野田)は内心めちゃくちゃ驚いていた。
同 業 者 !!!
ミレニアムのセミナーの情報担当だよ!
連邦生徒会長が失踪する前、ミレニアム郊外の“廃墟”に関する対応の会議でミレニアム側の席に座ってたの見たことあるもん!なんならモモトーク交換してるもん!
「───こんなとこで何やってんの野田ちゃん!?」
「話しかけないでください!あと私は田脇です!」
「いろいろ無理があるよ!?」
後ろでギスギスしてる中こちらも小声でギャーギャーわーわーともみくちゃ。
「はあ……野田ちゃんもこの組織の事探りに来たんでしょ?」
「“も”と言いますと、あなたも?」
「うん。『プラスチール』って金属の事を探るのにね」
「『プラスチール』……聞き覚えのない名前ですね、なんですそれ?」
「宇宙船の外殻にも使用されている、硬度としなやかさを兼ね備えた軽金属……ってウチのマイスターは聞いたみたいだけど。新素材開発部が解析してもさっぱりだったから」
「はえー。その辺は専門外なのでさっぱりですけど、頑張ってください。……まさかですけど、後ろの2人もそういう人間って事ないですよね」
「……」
「……マジですか」
「うん。白い羽の子がトリニティのティーパーティー、蝙蝠の翼の子がゲヘナの万魔殿諜報部だって。後ろで言い合ってるの聞こえてきた」
「えぇ……三大校揃い踏みじゃないですか」
「プラス連邦生徒会ね……やっぱりこれバレてるよね? なんでバレたのか全く分かんないんだけど」
「バレてるでしょうね。よし、脱出しましょう。こういうのは無理しないのが大事───」
「入るぞー」
「……遅かったみたいだね、腹括ろうか」
「(´°ω°)」
「うーっす、待たせたな。デザートエッジ・グループ総取締役の古戦ヶ原だ。えー、ここに集まってもらったのは他でもない。君たちには、警備部門で小隊を組んで活動してもらう。いわゆる特殊部隊というやつだな」
「ちょっとお待ちくださいませ。わたくし、得意なことは『事務作業』とお伝えしたはずですが」
「そこのトリカスと同意見だ、私だって腕っぷしはそんなにないぞ」
「あー、君らの『身分』や『能力』については大体把握してるものと考えてくれ。“ティーパーティー情報部の千代田さん”と“万魔殿諜報部の皆屋さん”」
「……だ、誰のことでしょうか」
「……」
「まあ、様子を見る限り手前2人は既に察してたっぽいが?」
「あ、あはは……」
「……質問よろしいでしょうか」
「はい、連邦生徒会資料編纂室の野田さん」
「れんぽ……!?」
「ほう、普通のやつじゃないとは思ってたが」
「帰っていいですか?」
「別に帰ってもいいけど……仕事しなくていいのか?」
「……むしろしていいんですか?」
「こちらとしても下手な探られ方して誤解されるよりはフルオープンのノーガード戦法で行こうと思ってな。希望したらいくらでも案内してやるよ」
「え、ええ……?」
「ああ、もちろん暗殺とか破壊工作とかされると困るから誰かしら案内兼監視はつけるけどな。じゃあ今のうちに聞いておくが、何を調べにきましたか? はいミレニアムサイエンススクール『セミナー』対外情報室の
「手挙げてないし私もバレてる……えっと、『プラスチール』って軽金属について探りを入れるよう言われてます……」
「プラスチールの? 前に研究用サンプル提供したはずだぞ」
「新素材開発部が解析しようとしたんですけど構造が意味不すぎて匙投げたみたいで……」
「アレそんなやばい素材だったんだ……俺も初めて知った……」
「えぇ……?」
「ま、まあ研究用サンプルだったらいくらでもやるし、もしまとまった量購入したいってんならー……どうすっかな、セミナーの会計いたろ、早瀬さん。あの人に頼んで連絡くれ」
「あっ、はい。了解です」
「で、千代田さんは? ティーパーティーだっけ」
「……わたくしはティーパーティーとは無関係ですわ」
「おっ、いいね。諜報員はそう簡単に自分の目的を口にしちゃいけないもんな。さすがトリニティだ」
「ふ、ふふん、煽てても何も喋りませんわよ」
「ふんふん、トリニティから来たのは否定しないと」
「あっ」
「んで、皆屋さんは?」
「……マコト議長から親書を預かってる」
「し、親書? それは予想外なんだけど。あっはいありがとうございます。なっっっっっっっっっっが!?」
皆屋から親書を受け取った古戦ヶ原氏が封筒を開けると、蛇腹折になった親書がダラーッと床に向かって垂れた。軽く2m近くはありそうだぞ。
「だよな……要約すると『私と一緒にキヴォトスで天下を取らないか』という内容だ。詳しくは後で読んでくれ」
「え、ええ……それだけぇ? スパイ送り込むような仕事じゃなくない? 普通に送ってきてくれたらいいのに……」
「それについてはノーコメントだ」
「あっ(察し)、君も大変なんだなぁ。んで、最後は連邦生徒会の君だが」
「……さきのアビドス騒乱において、カイザーPMCに対して大量破壊兵器を用いたとのタレコミがありました。それの裏付けの為に」
「た、大量破壊兵器? 何それ知らん……怖……」
「あくまで知らないと?」
「ああ。確かにアビドス騒乱の時に、
「……私から進言しておきますので、のちのち連邦生徒会の査察を受けてくださると助かります」
「まあそれぐらいだったら全然構わんよ。……さて、千代田さんの目的はともかく、4人中3人の目的は多少なりとも達されたわけだが。どうする? 帰るってんなら送るぞ」
ミレニアム、ゲヘナ、連邦生徒会の潜入捜査員が顔を見合わせる。
「……じゃあ、私は帰らせてもら……おいトリカス、袖を掴むな袖を」
「ふ、ふふふ、ここまできて逃すとお思いで? 道連れですわ!」
「やめろコラ!私の任務はもう完遂してんだよ!」
「うるさいですわ!わたくしの任務完遂まで一緒にいていただきます!オラッ喰らいなさい!我らが首長聖園ミカ様仕込みのヘッドロック!」
「あだだだだ!!??」
「……あの2人は残りそうだな。ミレニアムと連邦生徒会はどうする?」
ゲヘナとトリニティのいざこざを呆れた顔で眺めていた古戦ヶ原氏が、こちらの方に向き直りました。
「はい、はい、了解です。古戦ヶ原さん、私も残ります。今追加の指令が来たので」
何やら先ほどから耳に指を当てて小声でボソボソと言っていた上遠野さんもそう答えます。
「私は、一回上司に確認をとっていいですか? 上遠野さんみたいにヘッドセットとか持ってないので」
「あ、じゃあ私の使う? 防衛室の内線番号と防衛室長の携帯番号なら知ってるよ」
「……さりげなく情報インシデント暴露するのやめてくれません? 借りますけど……」
戻ったらカヤ室長に情報セキュリティの見直しを進言しなきゃなぁと思いつつ、お伺いを立てる為にイヤホン型のヘッドセットを受け取った。
──────
───
ノック分隊
警備部門特殊班に設置された4人規模の分隊である。『ノック』の由来は『NOC[Non-Official Cover]』。日本語で非公式諜報員という意味の単語。本人達からしたらひっでえ嫌味である。
分隊長
野田 ショウコ
連邦生徒会資料編纂室々長 3年生
プライマリ:M14 DMR
セカンダリ:グロック17
「な、なぜ私が分隊長に……めんどくさい……」
好きなもの:有給休暇、糖分
嫌いなもの:仕事
任務:大量破壊兵器所持の証拠確保
↓
連邦生徒会による査察終了までの監視
ワンポイント古戦ヶ原
「典型的な“実は有能な昼行燈”だな。そのグロック、ヴァルキューレで見たことあるけど、連邦生徒会の前は警官だったのか? もしそうなら志津とか宮崎あたりと仲良くしてくれたらいいなと思ってる」
分隊員
上遠野 ミミ
“セミナー”対外情報室副室長 2年生
プライマリ:LWMMG
セカンダリ:グロック34 TTI コンバットマスター
「だってチヨちゃんとミナちゃんはあんな調子だし、私は火力支援要員だしねぇ」
好きなもの:犬、統計
嫌いなもの:お小言
任務:『プラスチール』の情報入手
↓
デザートエッジがミレニアムの校益(国益と同じような意味)に適うかの精査
ワンポイント古戦ヶ原
「可愛い顔した火力厨。武器何使うのかと思ったら三脚に乗ったLWMMG持ってきてクソビビった。ウチじゃ.338ノルマ・マグナム弾なんて生産してねえぞ。弾薬費セミナーに請求できっかな」
千代田 カスミ
“ティーパーティー”情報部員 2年生
プライマリ:ステン Mk.V
セカンダリ:エンフィールド No.2 Mk.Ⅰ、自らの拳
「ゲヘッパリごときに負けるわたくしではありませんわ^〜〜!!!おくたばり遊ばせ!!!」
好きなもの:我らが大天使聖園ミカ様
嫌いなもの:ゲヘナ
任務:???
ワンポイント古戦ヶ原
「ど根性お嬢様だな。トリニティって陰湿なイメージあったんだけどコイツからはそういう雰囲気が一切しない。ゲヘナ生とエンカウントしたらノータイムで喧嘩売りに行くのはどうにかしてほしいんだがなぁ……」
皆屋 ライ
“万魔殿”諜報部員 3年生
プライマリ:Kar98k(狙撃仕様)
セカンダリ:H&K HK69
好きなもの:自由と混沌
嫌いなもの:トリニティ
「やっぱトリカスは野蛮で陰湿だな。忌憚なき意見って奴だ」
任務:『デザートエッジ・グループ』総取締役、古戦ヶ原氏へマコト議長からの親書を届ける事
ワンポイント古戦ヶ原
「ゲヘナ学園を体現したような奴だ。ボルトアクション小銃と単発式のグレネードランチャーって絶対相性悪いと思うんだけどどうなんだろうな。トリニティ生と遭遇しても千代田みたいに喧嘩売りに行かないのはありがたいが、それでも目に見えて機嫌悪くなるのどうにかならないか? ならない? そう……」
NOC小隊の紹介の書き方がなんかしっくり来たので、このテンプレートで投稿時点での登場人物紹介や設定等を纏めた備忘録を作ろうと思います。設定盛りがちな投稿者の為の備忘録(文字通り)なんだけどこれいる?(確認)
夜。
古戦ヶ原の執務室━━警備部門棟の脇に建つプレハブ小屋━━の扉をたたく人物が一人。背中……腰のあたりに純白の大きな羽を纏った彼女は、扉を開けた古戦ヶ原に促され、執務室の中へと入った。
そして徐に、懐から、赤い蝋で封された手紙を取り出し古戦ヶ原に手渡した。
それを受け取った古戦ヶ原は慎重に封を解き、中の便箋を広げる。
「ん。…………よしよし、調査の許可は出してくれたか。あーよかった」
「……ひとつ、お聞きしてもよろしくて?」
「なんだ?」
「なぜ、『あの分校』のことをご存じだったのですか? あのシスターフッドでさえ、ずいぶん昔に失伝していたことでしたのに」
「……面接のあと、あの部屋にお前らを連れてった完全武装の部隊、いたろ? あいつらがそこの出身だ」
「なっ……!? か、彼女らがですの!?」
「前にちょっとしたトラブルがきっかけで保護してな。で、話を聞いてみたら、『全ては虚しい』だなんてカルトじみた教義を押し付け、十分な食料もいきわたらないまま、軍事要素もりもりの学生とも呼べないような生活を強いられている。しかも一人の大人によって、と言うじゃないか。━━━━そんなのを聞いて、放っておけるわけがないだろ。それにな」
「そ、それに?」
「少し前に、頼まれたのさ。ティーパーティーの子に。夢の中で」
友と離れる恐怖、家族を裏切る恐怖、人を殺す恐怖、誰も信じられない恐怖───
エデン条約編で苦しめられる子らは大変よな。
投稿者、動きます。(エデン条約編をぶち壊す覚悟)