Rimworld入植者(脱出済)のキヴォトス日記 作:運輸省
M-ATVから200m
犯人が逃げ込んだ雑居ビル
ヴァルキューレ警察学校 警備局・公安局混成部隊
「あ゛あ゛ぁぁぁぁ!!!!!!」
大通りから1本入った裏通り。
そこに面した地上4階建ての雑居ビルの前で、ヴァルキューレは大変な苦戦を強いられていた。
雑居ビルの正面と入り口に、片側一車線の道路を満遍なく塞ぐような形でバリケードをこさえた犯人集団。
そしてそれを両側から包囲するヴァルキューレの警備局と公安局。
布陣だけ見ればヴァルキューレが優位に見えるが、実態はそうではない。
今し方胴体に数発被弾した警備局の機動隊員が、苦痛の叫びを上げながら同僚に後方へと引っ張られて行ったように。
あの銃撃。
どういう理屈かは知らないが───
文面に起こすとこれだけの事だが、それこそが目下最大の問題だった。
先ほどカンナ自身も被弾しかけた、というか左肩を弾が掠めたのだが、それだけでも1マガジン分フルにくらったような痛みが身体全体を駆け抜けた。今も左腕全体に力が入らず、ハンドガンを右手で撃っているほど。
血は一切出ていないのにも関わらず、だ。もしマトモに食らっていたら、と考えるとゾッとする。
ただ、打開策が全くないというわけでもない。
「尾刃からD.U.本部!装甲車の応援はまだか!」
《現在向かってます!あと10分ほどでそちらに!》
無線のマイクに向かって叫ぶ。
犯人らが使っているのは、キヴォトスではオーソドックスな5.56㎜弾。小口径高速弾に分類される中間弾薬だ。
何が言いたいかというと、対物火力が弱いのである。
それも踏まえて、警備局の装甲車が包囲当初は壁として活躍していた。
……犯人グループが持ち出してきた対戦車ロケットによって、今は現場を照らす大きな大きな焚き火になっているが。
ただ、パトカーに向かって撃ってこないあたり、対戦車ロケット自体はあれだけだったか、悪く見積もっても数が少ないのだろう。
だから応援として追加の装甲車を要請しているのだが、現場がD.U.外縁部なのが災いした。到着まではあと10分。
それまでは、警備局員が倉庫から引っ張り出してきた、古く大きくとにかく重い防弾盾数枚で頑張るしかなく。
今日は長い夜になるぞ、と覚悟を決めたその時である。
「局長!局長!さっきの装甲車です!」
側でアサルトライフルを撃ちまくっていた公安局員が突然そう叫び出した。
「言いたい事は分かるが、あの男はあくまで民間人だ!そうおいそれと救援要請は出せない!」
「へ? あっ、いやそういう事じゃないんですって!後ろ後ろ!さっきの装甲車がこっちに向かってきてるんですよ!」
「……は?」
後ろを振り向く。
確かにいた。
先ほど、カンナを含めた4人を銃撃から守ったあの巨大な装甲車が、ヘッドライトを煌々と照らしながらこちらにトロトロと近づいてきている。
そういえばヘッドセットを借りたままだった事を思い出し、そちらの方の無線を繋ぐ。
「古戦ヶ原さん!? 何やってるんですか!?」
《いやね? ここ帰り道だから通りたいなーって》
何訳のわからない事言ってんだあの男───と呆れそうに……というか呆れた時。
バカみたいに明るいヘッドライトに反応したのだろう、犯人グループがDEGの装甲車に対しても発砲した。先ほどの繰り返しのように、装甲車の前面に銃弾が着弾する。
《 うわー撃たれたぞー正当防衛のため反撃を開始するー 》*1
《演技下手くそすぎん?》
《あはは……》
やっすい芝居を皮切りに、装甲車のルーフ上に設置されていた遠隔機銃の重機関銃が火を吹いた。
ヘッドライトの逆光で見えていなかったのか、今になってようやく先ほどの装甲車だと認識したらしい犯人グループの内何人かが、ビルの中に駆け込んだ。
《んー…? あっ志津!ビルの入り口に制圧射撃だ制圧射撃!奴さん対戦車ロケット持ち出してくるぞ!》
《んなモン持っとるんかいなこいつら!?》
重機関銃の照準が変わり、ビルの入り口の窓ガラス、コンクリート壁、バリケード代わりに積み重ねられていたオフィスデスクなどなどを50口径弾が食い破っていく。
《ようし宮崎!花道は作ってやったぞ!行ってこい!》
《はいッ!》
装甲車の扉が開き、中から宮崎副隊長が降りて…………なんだアレ? なんか、やたらとシルエットが膨れ上がってるような……
──────
───
どすん、という音と共に地面に降り立った宮崎は、身体中に重量を感じながら周辺の確認を行う。
話を聞く限り、今回の事案に出動したのは警備局員と公安局員の混成部隊らしい。
「そいつの具合はどうだ宮崎。歩けないとか言ったら笑いもんだぞ」
《大丈夫です。ちょっと重いですけど、これぐらいだったら全然動けます》
「マジ? キヴォトス人ってすげー……」
宮崎が今着ている物。
言ってしまえばアーマーなのだが……その外見は実に奇妙である。
2007年からアメリカ軍で使用されているボディーアーマー、
これに、追加で白っぽい塗色のプレートがそのまま取り付けられている。
外見だけでいえば、Rimworld(MOD含まず)で最強の防御力を誇るアーマー、『マリーンアーマー』のようである。
……余談だが、この事件が終わった後あのトンチキアーマーを作った服飾・装備班に「あそこまでやるんだったらマリーンアーマーを作った方が早かったのでは?」と聞いてみた。
班長の西潟曰く、
『いや、『先進コンポーネント』って部品が無いし、あと『コンポーネント工作台』だっけ? マリーンアーマー作る作業台って。それも作ってないじゃん』
との事。
『先進コンポーネント』とはなんぞや、という者達に説明するとこんな感じになる。
──────────────────────
非常に多くを要求するアプリケーション向けに小型化、及び強化された、先進的な演算、及びエネルギー誘導装置です。*3
──────────────────────
何を言ってるか分からないって? 大丈夫、俺も分かってない。『なんか先進的な装置に使う中間素材』ぐらいの認識で全然問題ない。
……そういえばウチって今先コ*4使うような装備とか設備作ってないもんなぁ……車両の大型組立作業台*5こさえた時は普通に宇宙商船から買ったし……
ああ、話を戻そう。
あのトンチキアーマーの元になったIOTVには、脚部と腕部を防護するアーマーは含まれていない。
オプションとして装着できるソフトアーマーに、上腕部と股間部を保護するアーマー*6が含まれているぐらいだ。
これに装備班は満足しなかったのか、日本の甲冑で見られるような小具足、具体的には、肘から手先にかけてを防護する『
これらに該当するアーマーを全部ティグリシウム防弾板で作ってしまったのである。全身真っ白。
ちなみに頭部は、『せっかくだし迷彩揃えるか』と言ってUCP迷彩のACHヘルメットに、同じくティグリシウム防弾板を追加、アーマーの
試作品らしく細部とかデザインは割と雑だが、その防御は折り紙つき。
長々と説明してしまったが、言いたい事はただ一つ。
宮崎キョウコ(ジャガーノート)の爆誕、である。
──────
───
宮崎キョウコ
「重い……」
身体全体にのしかかる重さを感じながら足を進める。背後のM-ATVからは、志津が操作するRWSによる援護射撃がまだ続いている。予想しなかった援軍に沸いていたヴァルキューレ側も、行う反撃に精彩が戻ってきたようだ。
「カンナ局長!」
「……あっ、宮崎か。その、なんだそれ?」
ポカンとした顔をしていた局長が、ハッとしたように問いを投げかけてくる。
「ボディアーマーです。試作品を間違って積み込んでたのをさっき荷台で見つけて」
「ボディアーマーにしてはかなり重そうに見えるが……いや、そうじゃない!何しに来た!?ここは我々に任せて───」
「必要でしょう? 壁役」
「───っ」
今の発言が図星だったらしく、局長がグッと黙り込む。
「大丈夫です。コレの防御力はかなりの物らしいですし、あくまでお手伝いですから。あ、でも盾とかは貸して欲しいなーって……」
「……はあ」
ため息を一つついた局長がよろよろと立ち上がり、私の胸に人差し指をトスッと突きつけた。
「『逮捕・拘束はヴァルキューレで行う』、『私の命令に従う』、『無理をしない』。この3つを守れないなら現場から叩き出す。いいな?」
「もちろん!“また”お世話になりますね ♪ 」
現場時代を思い出す敬礼を局長に送り、先ほど目をつけていた“ブツ”を取りに行く。
先ほど屋台でご飯を食べていた時、局長はこう言っていた。
『いつも通りだ。予算は少ないし、その癖事件は多い』
と。
公安局の予算が少ないのに、警備局の予算は多い……なんて事は絶対にない。
そんな警備局なら、絶対に持ってきているだろうと確信していた物だ。
「これこれ。やっぱコレじゃなくちゃね」
──────
───
犯人グループの一員であるオートマタは、道路に張ったバリケードの陰で突然の事態に首を傾げた。
ヴァルキューレのガキ共、そしてあの忌まわしい装甲車の銃撃が急に止んだのだ。
こちらの攻撃に音をあげて逃げ出した……と楽観的な考えを信じるには、銃撃が止むのが急すぎる。
仲間と顔を見合わせ、そっとバリケードから頭を出して周囲を探る。パトカーはまだ撤退していない。
「人影?」
今見た光景に違和感を感じて振り返る。
ヴァルキューレのガキ共はこちらの“とっておき”に恐れをなしてパトカーの陰に篭りっきりだったではないか。じゃあ、今見えた“一切物陰に隠れていなかった人影”はなんだ?
いた。
重機関銃を撃ちまくっていた忌々しい装甲車のヘッドライトに照らされて、何か随分とずんぐりむっくりなシルエット。
まあ、姿を晒しているなら好都合。撃つだけだ。
M4A1を構え、フルオートでシルエットに5.56㎜と“とっておき”を叩き込む。
……しかして、その銃撃に対して返ってきたのは甲高い金属音。
「───ッ、アイツだ!アイツを狙え!」
すぐさま、違和感の正体を倒そうと仲間に叫んで銃撃を集中する。
金属音が増える。
ヘッドライトの逆光がうざったい。なんだかシルエットが近づいてきているような気がする。シルエットは倒れない。弾が切れる。舌打ちをしてマガジンを交換する。もちろんシルエットからは視線を逸らさない。
……故に気づいた。
あのシルエット、やたらと四角い───
「検挙ォォォ!!!!!!!!」
「ぶげっ!?」
身体正面にバカみたいな衝撃、瞬間、後ろに吹っ飛ぶ。
「な、なんだってんだクソが!」
悪態をつき、M4A1を向けようとしたオートマタの視界に映ったのは───自らの顔面に迫る、盾の縁だった。
その瞬間、犯人グループの時は止まったようだった。
何せ、明らかに防御力が高そうだと予想できるアーマーとヘルメットに身を包んだ生徒───生徒と判断できるのもヘイローが見えるからで、人相とかは一切見えない───が、分厚く大きな長方形の大盾と棒だけで突貫してきたからだ。
犯人グループ達が知っているかは定かではないが、『分厚く大きな長方形の大盾』とは、警備局で以前運用されていたチタン製の大盾。
サイズがデカい上にクソ重たいので、随分前にポリカーボネート製の丸く透明な片手盾に制式装備の座を譲っていた代物だ。
だが、基本的に予算のないヴァルキューレにおいて“制式装備でない”と“使われる事はない”というのは同義にはならない。
普段は倉庫の奥の方にしまってあるのだが、今回みたいな銃撃戦にはたびたび持ち出されてきたのだ。
それに加えて、警備局員が持ち歩く特殊合金製の伸縮式警棒。
あの見たことのない白いアーマーだけ除けば、The 機動隊員という格好。
そんな生徒が、初撃でバリケードごと吹っ飛ばされ倒れていた仲間に大盾の縁を振り下ろした。打撃による衝撃と地面に頭が叩きつけられた事で火花が飛ぶ。
仲間はそのままぐったりと動かなくなった。
死んではいないだろうが、大怪我は確実。
「───う、撃て撃て撃て!!」
半ば恐慌状態に陥った犯人グループが射撃を再開。
しかし、その銃弾は全てチタン製の大盾に防がれる。それどころか、銃撃をものともせずズンズンと進んできているではないか。
「な、なんだ!? なんなんだお前!?」
そう叫んだオートマタの構えていたM4A1が警棒によって叩き落とされ、返す刀で振り上げられた警棒に顎を強かに打たれ、昏倒。また1人無力化された。
「くそっ!」
警棒を振ったということは、大盾による防御から外れたということ。それを見逃さなかったオートマタが、無防備な身体に銃撃を加え───それも、甲高い金属音と火花と共に弾かれた。
「ああクソ!反則だろ!なんだそのアーマー!?」
そう叫んだオートマタは、ヤクザキックで地面に倒され、そこを盾の縁でやられた。
別のオートマタは、横薙ぎに振られた大盾に打たれた。
また別のオートマタは、警棒で足を思い切り打たれひっくり返された。
交戦距離が極端に短い乱戦故にマトモに狙いをつけられない犯人グループを横目に、この重アーマー野郎は被弾もなんのその、といった風に余裕の表情だ。顔見えないけど。
“とっておき”の効果が急になくなったわけじゃない、あのアーマー野郎の防御力が高すぎて弾が通っていないのだ。
そう悟った残りの犯人グループ達の判断は早かった。
「グレネード!」
そう叫び、重アーマー野郎の足元にグレネードを何個か転がす。アーマー野郎が体勢を整えて盾を構えた。
それでいい。
その隙に、ビルの中へと撤退する。
撤退する背中で感じた、グレネードの爆風。
最後にビルの中に駆け込んだ犯人グループの一員が、チラリと振り返ると。
グレネードの爆発を物ともせず、ただ立ってこちらを見ているアーマー野郎の姿。
「ハハ、バケモンかよ……」
思わず苦笑を浮かべたオートマタは、灯りのついていない雑居ビルの闇の中に消えた。
Tips:
警棒は本来木製とかアルミ合金製とかだが、ヴァルキューレのそれはオートマタ制圧も鑑みて特殊合金でできている。どんな特殊合金かって? 知らんよ、ミレニアムに聞いてくれ。
ウマ娘無料単発ガチャ2日目でグランアレグリアが出ました。嬉しいよ? 嬉しいけどその豪運をなぜオルフェガチャで発揮できなかったのか(天井)