Rimworld入植者(脱出済)のキヴォトス日記 作:運輸省
「……」
ビルの中へと逃げていく犯人グループの背中を、宮崎は呼吸を落ち着けながら見つめる。
今の1分足らずの乱闘で、犯人グループを5名無力化した。……やっぱり多少なりとも腕は鈍ってるなぁ、と思った。現役時代ならもう3人はやれたはずなのだが。
この重いアーマーのせいで、とは言わない。言い訳と停滞は成長の敵だから。
安全を確認してから大盾を地面において一息ついていると、両側のパトカーの陰からヴァルキューレ生がゾロゾロと出てきた。『逮捕・拘束はヴァルキューレで行う』というカンナ局長の言葉は嘘ではなかったようだ。昏倒したオートマタに
ふと、こちらに近づいてくる2つの人影に気づいた。
片方はカンナ局長、もう片方は───見覚えのある、警備局の制服と、時代遅れなバイザー付きヘルメットについた隊長格を表す意匠。
「隊長……!」
「久しぶり、宮崎さん」
ヴァルキューレ警察学校警備局、第四機動隊隊長、その人である。
思わず籠手を取り、隊長が差し出してきた右手を握る。
「もう一目見てすぐに分かったわ、あのクソ重い大盾をぶんぶん振り回せるのは貴女しかいないもの。でも、ちょっと鈍ったんじゃない?」
「あはは……退学してからは訓練の機会も少なくて」
頬を掻きながらそう言うと、隊長は顔を綻ばせ笑った。
「───ありがとう、助かったわ。『四機の酒呑童子』の面目躍如ね」
「───ッ、はい!助けになったなら何よりです!それで、お二方、犯人への追撃は……」
その疑問には、2人のやり取りを見ていたカンナ局長が答える。
「犯人の拘束が終わり次第部隊を再編成、それから突入だ。隙をついて逃げられないようヘリで上空監視も並行して実施する。宮崎、“突一”はお前に任せる。やってくれるか?」
「ここで帰れって言われたら1人で突入するところでしたよ?」
「尾刃局長、彼女の後ろは四機が受け持ちます。宮崎さん、貴女は前に集中してね」
「ハッ!」
公安局の生徒がやってくる。話を聞くに、犯人達の拘束が終わったらしい。
「よし、私は周辺の封鎖状況を確認して、そのまま全体指揮をとる。四機隊長、そちらは任せた」
カンナ局長はそう言うとその場を離れた。
「隊長、負傷者の後送は完了、再編成終了しました。いつでも行けます」
近づいてきた四機の隊員が隊長にそう報告をし、
「よろしい。じゃあ───」
そう言って正面に向き直る。
既に先ほどの話を聞いていたのか、背後には臨戦態勢の警備局第四機動隊。
もはや言葉すらいらないらしい。
「行きましょうか」
隊長はそう言って、ヘルメットのバイザーを下げた。
──────
───
ビル前
古戦ヶ原 哲郎
野田 ショウコ
現場周辺の包囲と監視をヴァルキューレ側に引き継いだ古戦ヶ原は、ヴァルキューレ生から救急キットを借りて“渋々”野田の治療を行っていた。
ブルーシートの上のうつ伏せになった野田のマルチカムのセーラー服はたくしあげられ、素肌そのままの背中が顕になっている。まるでクレーターのように広がる青あざが痛々しい。
先ほど“渋々”と言ったのは、「なんだかんだ命に関わるような傷じゃ無さそうだし、30過ぎの男がJKの裸なんてそうそう見ていいもんじゃないよ。本職に頼もうぜ」という理由から。
しかし
志津がこの場にいたなら鋭いツッコミを入れてくれただろうが、あいにくアイツはヴァルキューレの生活安全局員と一緒にM-ATVの車内に隠れていた子供達への聞き取り調査に参加していて一時不在だ。
「いててて……」
「まだ痛むか?」
「ええ。これ本当に骨折れてないんですよね?」
「折れてねえって。背中周りの骨逝ってたら大惨事だわ」
タブレットの画面を見ながら新しい湿布の袋を開ける。
画面には野田の健康状態を示したタブが表示されており、そこには背中側に並ぶ『銃創』の2文字。
基本、銃で撃たれた傷は『銃創』として表示される。これはキヴォトスでもRimworldでも同じだ。ただし、Rimworldにおいて銃創は出血を伴う負傷になるが、キヴォトスではその限りではない。キヴォトス人の物理ダメージへの耐性が高く、よほどのことがない限り出血を伴わないのである。
で、何が言いたいのかというと───この傷は、
「んー……なんなんだろうな?」
「なんなんでしょうねぇ……そのタブレットに私の怪我が反映されてるんですか?」
「ああ。見るか?」
野田が頷いたので、彼女の顔の前にタブレットを持っていく。
「ほえー、こんな感じなんですね。E分隊の皆さんを保護された時もこれで?」
「まあそうだな。戦闘指揮も建築の指示も全部それ一つだ。それがないと俺はただのヘイローのないクソ雑魚だな」
それを聞いた野田が信じられないものを見るような目でこちらに顔を向けてくる。
「……それなら簡単に渡しちゃマズいじゃないですか。私一応別の組織の人間ですよ?」
「あ? 何言ってんだ、ウチの社員でもあるだろ?」
「えっ、いや、そうですけど」
「じゃあ大丈夫だ。それでも裏切られたってなったら、俺に何かしらの責任があったって事だからな」
そう言い切った俺の顔を、ポカンとした顔で見つめてくる。何を考えているのかは分からないが、何かしら思考を巡らせているのはわかる。
「……」
「あっ、でも命は助けて欲しいな。シンプルに死にたくない」
当然である。(Rim生還者並感)
「───ハハ、まあ、そうですね。もしそういう状況になったら、口添えぐらいはしてあげますよ」
「いいね。あとDEGも残しておいてくれると嬉しい」
「なんだかんだ露頭に迷ってる生徒たちの駆け込み寺みたいになってますからね……DEGをもとに学校を作ろうとか考えてないんです?」
「いやあ、将来的にはそうできたらいいなぐらいには考えてるが、今はとにかく会社自体を軌道に乗せるのが最優先───」
「古戦ヶ原さん!」
振り向くと、カンナ局長がこちらに駆け寄ってきていた。
「(アッやっべ、社会的に死ぬ)」と一瞬冷や汗が流れたが、何やら様子がおかしい。
バタバタバタと、上空をヴァルキューレのヘリが忙しなく飛び回っている。
「な、何かあったのか?」
「犯人を見失いました、先ほどの“偵察衛星”をもう一度お借りしたい!」
「はあ!?」
──────
───
「ぐえぇぇ……」
ビルの一階、エントランス。
例の重ボディーアーマーを脱がされ、疲労困憊といった様子でフロアの隅っこの方の床に敷かれたブルーシートに仰向けで倒れている宮崎。
相当無理をしたのか、体表からは未だ湯気が立ち、第四機動隊の隊員や隊長らしき生徒が親身になって汗を拭いたり水を飲ませたり、団扇で仰いだりしている。
野田をヴァルキューレ生に託した俺は、カンナ局長と一緒に犯人グループが逃げ込んだはずのビルへと足を踏み入れた。
「何があったんだ?」
隣を歩くカンナ局長に、状況の説明を求める。
「宮崎を最前衛として、四機で建物の制圧と犯人の捜索を行ったのですが……1階から4階、しらみ潰しに探しましたが犯人グループは忽然と」
「どっかに隠れてるとかじゃなくてか」
「ありません。文字通り“しらみ潰しに”、数字で言うと1階から4階、加えて屋上までを5往復はしたそうです」
「あのクソ重いアーマーと大盾でそんなに階段エッホエッホしたのか……そりゃあ、ああもならぁな。周辺にいたヴァルキューレ生には……いや、見つかってないから俺に来たのか」
「おっしゃる通りです。正面、裏口、両隣の建物、加えて空からも警備局と公安局を中心とした部隊で監視を行っていましたが、発見の報告はありませんでした。主要道路の封鎖、検問、周辺区域の警戒を担当している生活安全局からも報告はありません」
「なるほどね……」
立ち上げていたタブレットの画面を見る。
各フロアのマップを切り替えながら見てみるが、それらしい者は見当たらない。念の為その辺のヴァルキューレ生も見てみたが、犯人たちが変装しているという事は無さそうだ。まあそもそもアイツらオートマタだったしな。
そう考えをまとめ、切り替えていたマップを今いるエントランスに戻し───
「……おん?」
唐突に話は変わるが、ゲームの方のRimworldには『戦場の霧』という要素がある。
言葉自体の意味や由来としては、『指揮官から見た作戦・戦闘における不確定要素』という、プロイセン王国の軍人のカールおじさん*1によって定義されたものになる。
で、これがRimworldではどう扱われているのかというと、『マップ上に存在する未探査空間を不可視にする』という扱い。
マップ生成時にちょいちょい現れる遺跡なんかは殆どの場合コレがかかっている。
入植者が遺跡のそばを通っただけで赤警報が鳴ってちょっとビビったり、コロニーも入植者の装備も整っていない状態で早急に制圧しようとしてメカノイドや虫共が突撃してきてわちゃわちゃ()になった経験のある入植者兄貴姉貴も多いのではないだろうか。*2
まあ、ゲーム目線での話はこれぐらいにして。
キヴォトスでは、これがほぼ常時発動している。
当たり前だ、他人の家の中なんてそうそう立ち入るものでもないし、よほどのことがない限り『関係者以外立ち入り禁止』みたいな空間も入ることはないのだから。
アビドスみたいに、建物が廃れすぎてボロボロのボロだと外判定になってて直接探査をしなくても中が見えたりするのだが、今いるのはキヴォトスの首都たるD.U.。そんな建物は無い。
ちなみに、さきほど野田との会話の中で言及した、E分隊を保護した際の、地下下水道でのゴタゴタでドア際からの三ヶ島の奇襲に俺の反応が一瞬遅れたのも、『戦場の霧』が原因の一つだったりする。
……さて、今まで『戦場の霧』を説明してきたわけだが、それはなぜなのかというと。
「……んー?」
「どうかしました?」
話しかけてきたカンナ局長に、画面のある地点を指さす。それは、エントランスからちょっと奥に入った受付カウンター内の、ある物。
「なあ、この奥のキャビネット、退かせるか?」
「キャビネット……なんで偵察衛星で室内まで?……え、えーと、受付のウォーターサーバーの右隣の?」
「そうそう、右隣の」
カンナ局長にそう言うと彼女はすぐに指示を出し、機動隊員が2人ほどでそのキャビネットを壁際から退かした。
そこにあるのは、周囲と同じ白い壁紙の壁───に見えるもの。
「これは……?」
カンナ局長が懐中電灯を取り出して、壁を照らしながら近づく。
やはり本職の刑事には分かるらしい。
「不自然な線がありますね……もしや、隠し扉?」
「かもな。もしそうなら、いくらビルの中を探し回っても見つからない訳だよ。これは憶測というか妄想レベルの話なんだが、キャビネットも仕掛けの一部なんじゃないか?」
「そういえばこのキャビネット、物入ってる割にやたら軽かったような……」
「……うわ、これ本物じゃないよ、中身全部偽物だ。これとか発泡スチロールでできてるもん」
「えっ、ホント? \ バキッ / あっやべっ」
……適当に言ったことが的中すると割と反応に困ること、あると思います。
驚きを隠せない機動隊員を見ながら俺は心の中でそう思った。
「しかし、ドアノブが見当たらないという事は、どこかにスイッチが……」
「んー面倒だな、アレ使うか」
「アレ?」
「なあカンナ局長、こういう時の器物損壊って緊急避難に当たると思う?」
「はい? ……いや、当たらないでしょうね。アレは『急迫な危険・危難』に対するものですから。ですが、この場合は、現場責任者である私の責任において許可を出せますが」
「おっ、良かった良かった。じゃあ全員ちょっとこのフロアから離れててくれよな。
「は、はあ……?」
何やらよくわかっていない様子のヴァルキューレ生と宮崎をフロアから出して、
「おーい、すまんがパトカー退けてくれ」
「えっ、あの、古戦ヶ原さん!? 装甲車で何を!?」
先ほど活躍したM-ATVを入り口の前に止める。
運転席から後部座席へと体を滑らせ、RWSのコンソールを起動。RWSを左90°に向ける。
「よしよし、高さも間に合ったな」
エントランス横には大きなガラス窓があり、道路からガラスを挟んで、件の隠し扉が視認できる。ガラスはところどころ割れているので防弾仕様でないのは確認済み。
「撃つぞー!」
「えっ」
カンナ局長の素っ頓狂な声とほぼ同時。
RWSに搭載されたM2HBブローニングがもう一度火を吹いた。
吐き出される12.7㎜徹甲弾が白い壁紙に次々と突き刺さる。タブレット上でも、隠し扉と思わしき部位の耐久力がどんどん減っていくのが分かる。
そして、30秒も経たない内に耐久力は0になり。
穴だらけになった隠し扉が、蝶番かレールかが撃ち抜かれ破損したのか、奥の方へとぐらりと倒れ。
唐突な大爆発と共に、外側へと吹き飛んだ。
投稿者御用達のRimthunderくんなのですが、ここ最近唐突に車両が行動不能になる現象に悩まされています。ついさっきまで普通に通過してたシャッターを通過できないどころか1マスも動けなくなったりね。おかげで迎撃に大活躍してた74式戦車くんが突然置物になってしまいました。
おくたばり遊ばせですわ^〜〜〜!!!!
-追記-
ロードしたら治りましたわ!!!なんなんですの^〜〜!!!