M.O.エルフがいるのは間違っているだろうか 作:アパオシャ
M.O.手術
それは人間に免疫寛容臓と呼ばれる臓器を移植することで他生物の遺伝子を組み込むことが可能となった人間に、ツノゼミというクッションとなる生物と個人の体質に合った生物の遺伝子を組み込むことで、人間の能力を大幅に向上させる手術である。
その効果は、組み込んだ生物が人間大となった場合の能力まで引き上げられる。
例えば、虫は自身の何倍もの重量を持つことができるが、そのまま人間大に巨大化させたところで、自重に耐えられないのだが、この手術はその問題を意にも介さず単純なスケールアップとなる。
ダンジョンとは何か。
迷宮という意味を持ち、侵入者を拒む構造や仕掛けなどを持った構造物を意味し、人工物か否かは現代においてあまり重要視されていない。某国首都の交通機関などが実際にダンジョンと呼ばれていたりする。
この二つは、特に剣と魔法のファンタジーと混ざり合うのか。少なくとも、この地球上において、現実において現実となっていない。ただ、それが実現している異世界があるかは誰にもわからない。
とある病院にて、一人の人間が死亡した。老化による新陳代謝の限界に伴う臓器の機能不全である。いわゆる老衰で、いくら医療技術が向上したとしても、人間という生物の細胞分裂回数に上限がある以上避けられないものである。
その魂が物理現象から離れた瞬間、いくつかの選択肢が思考の海の中から浮上してきた。死後の選択肢で、転生するか否か、転生するならいわゆる天国や地獄といった世界、他にも現世や異世界というべき世界にするか。
転生するなら記憶は継承するか否かなどなど。
その魂は、転生を選び、異世界で記憶を持って生まれること、他にも様々な、こまごまとしたことを決めたのち、その魂は世界の壁を超え、生まれた瞬間の受精卵に宿った。
エルフの少女が空を飛んでいる。しかし、その姿を見てエルフと断言できる人は少ないだろう。
彼女の腕が鳥の翼に変わっており、他の誰かが見たのならば、美人のハーピィと形容するだろう。
遠くにかすかに見える天を衝く塔を目印に飛ぶ彼女はリーシャ。前世の記憶を宿しこの世界に生まれた彼女は、元の世界から記憶以外にも一つ引き継いだ。
M.Oである。彼女の記憶が受精卵の遺伝子に影響を及ぼし、突然変異という形でこの臓器を作り出した。そして、本来、遺伝子の組み込みと薬がないと変態できないのであるが、彼女のエルフの血が魔法という形で彼女に力を与えた。
そんな彼女だが、前世の記憶で触れた作品からこういった能力は大人になるまで隠したほうが良いと学んでいたため、生まれ持った能力をひけらかすことなく、前世の経験も活かし大きな成功も失敗もない、物語にしてもつまらない人生を送ってきた。
そのような生活をしていると、体は育ってゆき、もはや独り立ちしても大丈夫なまでに至った。そのことを自覚した夜、彼女は旅をしたい、かつて聞いたダンジョンに行きたいと親に相談しに行った。
その結果は危ないからダメの一点張りで、幾度にも及ぶ説得も功を奏することはなかった。しかし、彼女が本気で望み、実行するに足る能力を持っていることは両親に伝わった。
伝わったからこそ、早く、無理にでも出発しないと邪魔が入り、望みが遠のくと察した彼女は最低限の水と食料、そして可能な限りの資金を持ち、封印していた能力を解禁して飛び去ったのだ。
もちろん、彼女が脱走した手段を知らない両親や周りの者は適切な捜索が取れなくなっていた。
彼女は時々町や村といった人里に立ち寄っては補給しつつ、ついに目的地、オラリオが目前となっていた。
そして彼女は手ごろな森を見つけると、その中に着陸し、変態を解いて街に入り込んだ。
新しい生活に思いをはせて。