M.O.エルフがいるのは間違っているだろうか   作:アパオシャ

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第三話

 処女雪のような髪を持つベル・クラネルは目の前の少女に目を奪われていた。彼女はフードを被り顔を隠してはいるが、その顔は美しく、耳の部分が膨らんでいることから彼の性癖のエルフであることは確実であった。

 

 見つめていたのは数秒にも満たないが、自分がぶつかりそうになってしまったのを思い出し、慌てて話しかける。

 

「す、すみません。ちょっと急いでて…」

 

 その少女はわかる程度に不満げな顔をしていたが、わずかにほほ笑んだ。

 

「かまわないよ。ところで、君は冒険者…だよね?いま、ファミリアを探しているんだけど、君のファミリアは現在団員募集中かい?」

 

 リーシャはそう聞きつつも、まず入れると確信していた。彼の武装は最低限も最低限で、これが最初のダンジョン探索といっても通じるくらいには軽装なのだ。そこそこの装備を用意している冒険者は彼個人としても、ファミリアとしても欲しい人材なのだ。

 

「あ、はい!ぜひ来てほしいです!今からでよければホームまで来てください」

 

 そう言って彼は来た道を引き返し、案内を始めた。

 

 そんな彼に、リーシャは早速かと思いつつも彼の後ろをついていく。

 

 

 数分後、彼女が連れてこられたのは、一見廃墟の教会。いくらホームレスのファミリアでも最悪構わないと覚悟を決めていたリーシャであっても、ホームという単語に期待した後でのこれでは、前世で培った社会経験を総動員しても落胆を隠しきれない。

 

「す、すみません、こんなボロボロなホームで…」

 

 まだ幼さを残した少年が申し訳なさそうにしているのに良心が痛むが、口を開けばホームに対する文句が垂れ流しになりそうなため何も言えてない。

 

 気まずい空気に耐えかねたベルがホームの扉を開けようとドアノブに手をかけると、後ろから声がかかる。

 

「あれ、どうしたんだい?ベル君。ダンジョンに行くんじゃなかったのかい?」

 

「ああ、神様。実は…」

 

 声をかけてきたのは一人の女神。ベルとの会話から察するに、彼の主神なのだろう。ベルがリーシャに視線を向け紹介しようとすると、女神がのけぞり体を震わせる。

 そのような姿にベルが不審に思い、怪訝な顔で女神を見ると、いきなり叫んだ。

 

「ベ、ベル君が女の子を持ち帰ってきた~!!」

 

 ベルが必死になだめた結果、しばらくしたのちに落ち着いた彼女は自己紹介を始めた。

 

「いやあ、ごめんね取り乱して。ボクの名前はヘスティア。ヘスティアファミリアの主神さ」

 

 続けてファミリアの状況などを大まかに説明したところで、リーシャの番に移る。

 

「私はリーシャ。ほんとはもっと長いけど、リーシャと呼んでほしい。種族はエルフで、故郷での暮らしに嫌気がさして飛び出してきた、いわゆる家出娘というやつさ」

 

 そう言ってフードを外すとエルフ特有の長い耳と整った顔があり、吹き込む隙間風によって揺れる緑の髪はどこか神秘的な雰囲気を感じさせた。

 

 ヘスティアは自己紹介を終えた彼女を連れ、別室に恩恵を刻むため連れていく。その際に、リーシャに見とれ呆然としているベルに一撃をかましKOしたのはご愛敬。

 

 リーシャの背に血を垂らし恩恵を刻んだ彼女はそのステイタスに目を通す。ステイタスの数値は基本通りI0である。唯一、魔力だけはI3であったが、これはエルフであれば稀にあることであるため特に気にすることはなかった。

 魔法は種族の血によるものか、すでに一つ発現していた。

 

人為変態:速攻魔法。自身の体を他生物の組織へと変態させる。重複可能

 

 恩恵にそこまで詳しくないヘスティアでもこの魔法には驚いた。何せ魔法には詠唱が存在し、その詠唱が恩恵に表示されるはずなのだがそれは存在せず、速攻魔法とのみ記載されている。おそらく、魔法名のみを宣言することで発動するだろうという点。

 そして変態させるという効果。変身魔法といった自身の外見を弄る魔法は他にも例はあるため知っていたが、その珍しさに瞠目したのだ。

 

 そして最後にスキル。

 

免疫寛容:自身の魔法の対象者に魔力を除くステータスの増強効果、耐異常の発展アビリティの一時的発現。自身を対象とした魔法行使に伴う消費魔力量の軽減

 

 エルフは種族特性として魔法関係のスキルをほぼ必ずと言っていいほど持っているため特に疑問は抱かず、ちょっと変わった子という評価で終わった。

 

 ステイタスの写しをヘスティアから受け取り、確認したリーシャは思わず声を上げた。

 

「おお、魔法が凄く使いやすくなってる!」

 

「どういうことだい?」

 

 不思議そうに尋ねたヘスティアに説明した内容によると、リーシャはもともと同じ効果の魔法を使うことができたが長文の詠唱が必要だったうえ、そこそこの魔力消費があったため便利ではあったものの好き勝手に使えないということが欠点だったのだが、それらが解消されたと思わず舞い上がってしまったのだ。

 

 すっかりテンションが上がったリーシャは脱いだ服を乱暴につかみ、手早く着替えると、扉を勢いよく開き、ベルの手をつかみ、外へ飛び出した。

 

 あっけにとられたヘスティアが聞いたのは「どうしたんですかああぁぁぁ…」「ダンジョンに決まってるでしょおおぉぉぉ…」と遠ざかり小さくなっていく二人の叫び声。

 

 ヘスティアはリーシャに抱いていたイメージが崩れる幻聴を聴きながら、乱暴に開けたせいで金具が変形し、閉じなくなった扉を、ただただ眺めていた。

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