__ 視界が黒に包まれている 、否。正確に言えば、暗くなりつつあるって言った方が良いだろうか。視界がボンヤリとしていた、まるでオレの視界だけに霧がかかっているように 、段々と何も見えなくなってしまう。
( ........ あれ 。)
オレはどうしてこうなったんだろう 、どうして今オレは倒れてるんだろう。どうしてオレの身体は死んだ様に動かないんだろうか。薄れゆく意識の中で、オレの頭を駆け巡るのは幾つも絶えないような疑問の嵐。
だが、その疑問はオレの背中越しに感じている、生暖かい液体の様なものによってその正体が分かってしまう。
( ... 嗚呼 、クソ ... そうか、オレは ... )
その生暖かい液体の様なモノの正体は、“血“。その血は、多分。オレの血だろう。その血は、腹部から、頭部から、脚からと流れ出ており。それらが全て、拳銃の類の物で撃ち抜かれたものなのだろうと直感させる様に 、オレの身体は血で染まっていた。
(___ ... ああ、血が止まらん ...。)
オレは、こうなる前までは 。借金取りをしていた。ヤクザの末端の末端、チンピラも良い所だ。数時間前 、オレはいつもの様にウチの所から借りた金を返さない様な債務者の所に凸っては、金を回収しようとしていた筈だ 、確か___ 、嗚呼。そうだ、その債務者はギャンブルにハマったんだっけか。母親はロクでも無い宗教に肩入れし、娘には常に暴力しか振るわなかった様な、そんな良くある落ちこぼれの中流家庭だ。
( .... 元気にしてるかな、あの娘っ子 。)
その時の集金は、単独では無く複数人で行く事になっていた。人数はオレを含めても3人と意外と少ないとは思われがちだがあまり大人数で居ると、近所からの通報も入るかもしれないのでこれぐらいで充分だ。
そして オレと残りの二人は 、その債務者の家に行き、そして彼らの家に押しかけては脅しのようなものをふっかけ、親父の方には一発二発ぶん殴ったという。幸い、その家は辺りは静かで、やたら音を騒ぎ立てない限りは近所も近付いて来ないので 親父がもし通報を吹っかけても、その犯人がオレらだと言う確証は無いため、言い逃れが出来てしまう。
その時__ 、確かオレが誰か来ないか 。リビングの外で見張りをしている時にあの娘っ子は来たんだっけか。
( 出来る事ならオレが 、 もっとマトモな所に連れてってやりたかったけどなぁ ... 。)
その娘っ子は 、親から過剰なくらいの暴力を振るわれていたんだろう。体格的にはもう中学生ぐらいの身体の大きさなのに、その眼には光が灯っていなく。完全に人間不信の一歩手前、精神が破綻する瀬戸際のような印象が見受けられた。その娘を見て、オレはなんだか昔の自分を見ているかのような感覚を掻き立てられて。苦しんで、足掻いているようなその娘に見て見ぬふりをするのは、到底無理な話だったと思う。
(___ いっぱい、遊んだよなぁ 。楽しんでくれたかなぁ 。今、どうしてるかな ... )
失血により、今すぐに命の灯火が失われそうなその時。彼女との思い出が走馬灯の様に流れて来る。遊園地に、動物園 。後は、水族館にも行ったっけ。とにかく、あの娘の親からの暴力による痛みを忘れてほしくて、オレはあの娘と遊びまくった。オレが苦手だったジェットコースターも、その娘と何度も遊園地に通い続けた事でちょっぴりだけ平気になったのを良く覚えている。そして、度々見せる様になったあの娘の笑顔も_____。
( ... まだ、まだ終わらねェんだよ ... オレは ... 。オレはまだ .... 、こんなトコでくたばっちゃいけねぇんだよォっ 。...)
死にたく無い 、と言うよりも。死ぬわけにはいかない、と言う無駄な足掻きにも近いような思いが流れてくる血と共に沸き立ってくる。だが、オレのその言葉とは裏腹に。その身体はただ力なく横たわっているだけで、 動く気配など無に等しかった。
( ...... 頼む、オレはまだ死ねない 。死ねねぇんだよォっ .... 。蘇るんなら、悪魔にでも何にだってなってやるから ... 。)
[ ___ 確認しました、悪魔種の身体を作成します。]
その瞬間、オレには聞き覚えのない様な無機質な声が聞こえて来た。
その正体はオレにすらも分からず、突然聞こえてきたものなので内心、
その声に気を取られてしまうが、確かに聞こえた声の中で“悪魔“という単語が脳に直接入れ込まれた。なんとも物騒な言葉だが、だからといって自分が悪魔となって生まれ変わる訳では無いだろう。
( ... 悪魔、か。はは .., 面白い、なんなら両腕と頭に刀みてぇなの生やしてよ ...。来るもの皆、斬り裂きまくるみたいなのも面白そうだよな...)
[_ 了 、ユニークスキル[
... キリサクモノ、か。面白そうな名前ではあるが。オレはそれだけでは
足らなかった。もっと力が欲しかった、と言うのも有るかもしれないが。せっかくなので、死に際の中で生まれ変わっても良いように。自身の中で思い浮かんでいた子供の時に想像していた。自分なりの強い姿を想像していた。
( ... そうだな、切り裂く者...だったんなら全部を斬り捨てるような。そんな 、凄いやつとかになれやしねぇかな ...。それこそ、悪魔の中でも
最強のヤロー ... とかにな。)
[ 確認しました、ユニークスキル[
... なんだが、良くわからないが。その無機質な言葉の声と共に 。オレの視界は黒く塗りつぶされたように暗くなっていってしまい、その身体に流れ出る血の暖かい感触も無くなっていく感覚に陥ってしまい、その眼も虚ろになって行ってしまうのが、酷く恐ろしく感じてしまうが。それを悔いる時間すら無かった。
( ...... じゃあな 、___ 日向ちゃん 。 君だけは、ちゃんと生きててくれ_____ よ 。)
オレは、あの時 ... 一緒に遊んだ女の子 、“ 坂口日向 “ に向けて。誰にも聞こえないような思いだけを吐き捨てて。そして、微かに残っていた
命の灯火が吹き消されたかのように__ 、オレの意識は暗闇の中にへと手放されてしまったらのだった .... 。
暗闇の微睡みの中 、命の灯火が消えかかったあの時からか。或いは最初からそうであったかのように。とある洞窟の中 、人知れず寂れてしまったかのような廃坑のようなものの中で。密かに目を醒める、“刃“の悪魔が居た____。
「 ....... あ? 」
悪魔は目を覚ました、が。悪魔の顔には眼が無く、顔面に有るのはただただパイプが走ったかの様な縦に走る血管のようなものを包むような漆黒の肌、だが悪魔自身の視界では完全に目の前の光景が見えており、第三者視点では見えぬ様なモノであるとしても。悪魔は確かに見ていたのだ。そしてその事実は 、悪魔の脳みそを混乱させる。
「 オレ__ 、何してたんだっけか 。 」
悪魔は呟いた 。それは誰にも聞こえぬ様な独り言、そしてその廃坑の様なところには人っ子一人の気配すら感じ取れず。悪魔の周りに近づこうとする者も居ないだろう。悪魔は取り敢えず、何も考えずにその足を一歩踏み出し 、歩き始めた。廃坑の土が妙に湿っているのか、その土が妙に靴に絡まるが。それに不快感を感じる事は無く、悪魔はただ歩いていた。
「 ..... つ~か 、此処何処だよ 。こんな、土臭い牢屋になんざぶち込まれた覚えはねェ___ 。 」
悪魔は 、そう言いかけると 目の前の光景に唖然とした。自身が数分ぐらい歩いてきた時。丁度、突き当たりに当たった時だろう。そこを曲がって見れば、悪魔の目の前に広がるのは正しく死屍累々、地獄絵図のような光景であり。真正面の地面には巨大な血の魔法陣が敷かれており、その周りにはおよそ数十人とも認識出来るような数の死体が散乱している光景を見てしまったのだ。
「 __ ウっ 、... 血の匂いがキツいな 。 」
悪魔はそう言いながら 、自身の手を使い嗅覚を司る鼻部分に当たる所を摘もうとする。しかし_____、 悪魔の視界に入って来たのは、自身の生々しい腕の間に裂けた大振りの刃のようなものであり、それが両腕にもご丁寧に生えている。そしてその刃は黒いトレンチコートの上にも生えている様で ...... 。
「 ... オイオイ 、なんだ“ これ “ は ... いよいよ人体改造でもされちまったか? 」
悪魔は自身の両腕を見ながら、そう呟きながら。その光景に驚きもせずにまた歩き出した。悪魔の鼻腔に擽る血の匂い、濃厚な鉄分の集合体が鼻腔を劈いている。加えて人間の死体から放たれる様な腐卵臭もその血の匂いに混ざり、匂いとして空気の中に漂っているので、淀んだような空気が悪魔の身体を粘りつく様に纏われている。
「 血で、文字書くなんざイカれてるだろコイツら 。大殺戮にでも遭遇しちまったか ? 」
悪魔はその人間の死体らを見下ろしながら、その様子に不快感を示した。死体らは皆、その身体に大きな生々しい刀の斬撃を浴びせられたかのような物が目立っており。それが右肩から左腹部に渡って刻まれている事から、浅く広い袈裟斬りによって殺された事が指し示されている。
だが悪魔は 、その殺されてしまった人間たちの死因が揃いも揃って同じ斬撃による同じ傷による事に違和感を覚える。普通なら、これほどまでの死体を作り上げるのにはなりふり構っていられない事は当たり前だ。抗争でも起きていたとしたならば、其処ら中に乱闘の跡が残っていてもおかしくは無い。だが、悪魔の周りにはその様なモノが無い為。
この死体の山が、乱闘によって作り上げられたモノでは無い事が分かる。
「 ... [
名前ぐらいだ。それと、復活せよ、と言う部分も若干引っかかるが、悪魔は気にせずに再び廃坑を踏み締める事にした。
「 にしても、湿ってんな此処。早く外の空気が吸いたいぜクソが....。
タバコ吸いてぇ、タバコ .... 。 」
悪魔は腕に生えた大振りの刃を眺めながら、暗い大地を歩く。閉鎖的な空間に閉じ込められた現状で、死体の山が積み上げられた様な光景に悪魔自身は酷く落ち着いており、なんなら不快感を示す事無く。ただただ
悪魔は外の空気を吸いたい事しか考えておらず、客観的に見れば異常な感性をしているのだろうが、悪魔はそれに気付いてはおらず。自然な体勢で受け入れていた。
「 ___ .... ... おっ? 、外が見えて来たな。 」
暫く進んで行くと、悪魔から見て真正面の方向に陽光の光が差している
古ぼけたような扉を発見した。そこからは微かに風が吹いているのを感じており、これといって危険な要素も無さそうなので悪魔からすると正に、僥倖。希望の光だった。
「 早速 、開けて___。って、この手でどうやって開けんだよ。 」
扉に近付き、いつもする動きの様にその手を出してみると。その手には
大振りの刃が生えており、それを生やしながら。この扉を開けるには、悪魔にとっては少しだけ無理が有る。と言うモノだった。
「 .... しょうがねぇな 、足で蹴飛ばすしかねぇか 。 」
そう言うと、悪魔は3歩ぐらい背後に下がり扉との距離を取った。そしてその後に 、右脚をスッと上げれば その扉に向かって、勢い良くその脚を突き出せば___。
「 オっらァっ !!!!!! 」
前蹴り 、単純な本人の膂力にその威力が依存する基礎的な体術の一つであり。悪魔自身はその蹴りによって扉が少しだけ開ければ良いと考えており、悪魔は“全力“の蹴りをその扉に向けて放ったのだが ..... 。
バ"ッ“ゴ"ォ"ン"!!!!!
その瞬間、悪魔が全力の蹴りを放つと、その蹴りに入れられた扉は大破し、後ろに凄まじい轟音と共に大きくぶっ飛んだ。その扉は一瞬の内に粉々となり、悪魔が居た廃坑の中がその蹴りの余波によって全体が少しだけ地震のように大きく揺れたのだった。
「 ___ .... おぉ 、すげぇな ... 此奴は ... 。 」
悪魔はその轟音に唖然としながらも、自身の高い膂力に関心を浮かべながら、外の世界に一歩踏み出した__ 。外の世界には眩しいほどの陽光が差し込んでおり、悪魔は直に来るその太陽の光に、無いはずの瞳を覆い隠すかのように刃が生えた手を頭に添えながらまた歩み出した。
「 眩っ ..... 、けど 外の空気が美味いな ... 。 」
悪魔は 、至る所に有る木々に包まれながら。廃坑にあった湿ったような空気とは違う様な、新鮮な外の空気をふんだんに身体に吸い込みながら、その口に笑みを浮かばせる。辺りを見回してみると、そこには自身の体躯を軽く超えてしまう様な木々の数々が視界に映り込み、悪魔の視界いっぱいに森の光景が映り込んでいる。微かにざわめいている様な感じがしなくも無いが、きっと気のせいだろう。
「 _これから、どうすっかな .... タバコでも吸いてェけど 、こんなトコじゃ、有るはずもねェしなぁ 。 」
悪魔はそう言いながら適当に森を散策する事にしてみた、しかし何処まで行っても、木だけが辺り一面を支配しており。大森林、と言った印象が強いだろう、そして悪魔が其処から適当に人が居るところを目指して歩いてみよう、と思い立った矢先の事だった_____。
「 ....... あ? 」
悪魔の視界に突如、“青色の球体“ の様なモノが近付いて来た。それは
ズリッ、ズリッ、と地面を這う様に此方に向かって来ており。その様を見ると、悪魔の脳裏には“スライム“の様な印象が見受けられる。そして
そのスライムの様なモノが十二分にまで、悪魔の元まで距離を詰めて来たと思えば___。
『 ..... プルプル 、僕 。悪いスライムじゃないよ !』
なんと、そのスライムは喋ったのだ。喋った ... 、と言うよりかは直接
悪魔の中に語りかけた様な。思念をそのまま伝達して来たかのような、
そんな表現が正しいだろう。その言葉を聴いて、悪魔は思い出したかのように口を開く。
「 __ はッ 、メタルだったら血眼になってぶっ倒してたんだがな。
どうやら... アンタは違うみてぇだな。 」
これが、刃の悪魔___、
居合(一撃必殺)とかしてみてぇよなぁ〜俺もなぁ〜。