2025年は三日坊主を無くしたいです。
黒髪の大鬼族が倒れ伏し、辺りには静寂が訪れる。
後ろ姿だけを見せていた悪魔もやがて大鬼族を捉えようと前を向く。黒髪の大鬼族と赤髪の大鬼族がノックアウトされて頭数が減り、次に前に出たのは白髪の老大鬼族と紫髪の女大鬼族だった。
「随分と虐めてくれましたな。 」
老大鬼族は悪魔に対して声色一つ変えることなく言葉を溢した。一方で紫髪の大鬼族は怒髪天を衝くといった様子で怒りと憎しみを露わにしながら凍刺す様な視線で悪魔を見据えていた。
「安心しろよジジイ。お前の大事な仲間は気絶してるだけさ。まあ赤いのは少々虐めすぎた気はするが。 」
悪魔は自身の左に居た木に寄りかかって気絶している赤髪の大鬼族の方へと視線を映す。反撃に蹴りを一発入れたは良いものの威力の加減をミスったのかそのまま気絶してしまってる大鬼族を見て、悪魔は少しだけ申し訳無さそうにしながらも毅然とした態度は崩さずに老大鬼族の方を見た。
「 ...よくも 、よくもっ ... 私たちの同胞を蹂躙し尽くしてくれたな!!!! 」
「 だから、その話は知らねぇっての ... 。 」
老大鬼族の横で悪魔に対して明らかに怒りの感情を剥き出しにしている紫髪の大鬼族は話を聞いてくれそうにない。と言うより此処にいる全ての大鬼族が悪魔の事を確実に何らかの仇として認定しているらしく悪魔は誤解を解こうと交戦をしていたのだがどうやらそれが裏目に出たらしい。
「 ほっほっほ...この場でもあくまでシラを切るおつもりですかな? 」
「...チッ、耄碌したジジイとバカを相手にすんのかよクソが 」
悪魔は老大鬼族の眼が完全に敵として見ている時の眼だと気付き、この人もまた話を聞いてくれなさそうにない様子だ。
「 最早、問答する
「 ...それもそうじゃな。 」
老大鬼族は悪魔を映していたその視線を自身の右隣に居た青髪の大鬼族へと映した。すると視線を送られた青髪の大鬼族はこくりと頷いて俊敏な動きで一瞬の内に桃色髪の大鬼族の元へと駆け付けたのだった。
「来るなら来いよ。
未だ誤解が解けぬ彼らを見て、悪魔は一旦無力化まで追い込まないと話は聞いてすれなさそうにないなと判断した。そして悪魔は両腕の刃を構えて相手の出方を伺う様に自身の得物を構えた。先程の悪魔の反撃が攻めの型としての役割を果たしているのならば今のは悪魔の守りの型とも呼べる構え方だろう。
静寂が辺りを支配する。両者が寡黙を貫いて辺りには葉が囀る音しか聞こえなくなる。その静寂が纏う盤上にはもう既にランガや他のゴブリン達の姿は消えてしまっており、悪魔と大鬼族しかそこにはいなかった。
「───では、お言葉に甘えて此方から参るとしましょうぞ。 」
第二ラウンド開幕のゴングに老大鬼族の仕込み杖の中にある白刃の刀がギラリと太陽から放たれる光を反射して悪魔を捉える。そして老大鬼族が悪魔に向けて鞘の中からその刃を見せたその刹那。
悪魔の目の前から老大鬼族が消えた─────。
「なっ...? 」
悪魔は流石にそれは想定外だったのか目の前から大鬼族が消え去ったのを確認すると急いで老大鬼族を捉えようと周囲を見渡す。だが辺りを見回せどそこにあるのはただの虚構しか無く.......。
その瞬間、悪魔の全身に刃が放つ冷気と剣気を感じ取り、悪魔の
「 上かッ───!!!! 」
悪魔は自身の身体から感じ取った剣気から老大鬼族の位置を特定して面を勢い良く上げる。するとそこには白樺の仕込み杖から抜いた刀を両手で対象を突き刺す様に握り締めている老大鬼族の姿があった。
ギィイイイイン!!!!!!
烈しく鳴り合う金属と金属のぶつかり合い。悪魔は頭から生えている刀で老大鬼族の刀を受け止める。老大鬼族もまた空中に居るのにも関わらずにその老骨からは想像出来ぬほどの膂力で悪魔の刀を押し込もうとしていた。
「 不気味なモン使いやがッて!!!!!!! 」
「ほっほっほ...それはお互い様と言う奴であろう? 」
鍔迫り合いの中で悪魔が悪態を吐くと老大鬼族が不敵に笑いながらそれを安易に受け流した。その光景はまるで孫と爺を想起させる様なものであったがそれも長くは続かず───。
ドゴォオッ!!
「あァ!? 」
悪魔と老大鬼族の横から何かが割り込んで来た音が聞こえる。それはまるで地面が割れそうなほどの踏み込みをしたかの様な地割れの音だった。そして悪魔は横に居る存在を確かめようと老大鬼族に割いている意識を少しだけそこに向けると...。
「 ハァアアアアアッッ!!!! 」
刹那の鍔迫り合いの中で悪魔が老大鬼族に意識を割いているこの瞬間を好機と見た紫髪の大鬼族が自身の得物である柄付きの棘鉄球を持って左側から急接近して悪魔の横腹にそれをぶち込もうとしていた。
「雑魚がァッ!! 」
だが悪魔はそれを視認するなり、頭の刃で応戦していた老大鬼族との鍔迫り合いを頭を思いっきり前へと押し出して巨大な火花を散らしながら老大鬼族を後ろへと押し負かそうとする。
ガキィンッ!!!!!
すると老大鬼族は押し合いには勝てないと判断したのか悪魔が頭を振り下ろし切る前に仕込み杖を悪魔の刃から離して自らが後ろへと下がったのである。
「くッ...此奴、頭だけで... 」
悪魔は老大鬼族の言葉も聞かずに、頭をそのまま振り下ろし切った。そして悪魔は頭を振ったその勢いのままに身体を連動させる様に半身の筋肉を全て使って捩らせて半身を紫髪の大鬼族の方へと向ける。
そしてそのまま、悪魔は後ろに置いていた右腕を遠心力を使いながら思いっきり紫髪の大鬼族の棘鉄球の方へと差し向け────。
ギィイイイイン...!!!!!!
旋風を斬る音と共に悪魔の棘鉄球は悪魔の刀に難なく受け止められてしまったのだった。
「 ぐッ...!!! 」
紫髪の大鬼族は苦悶の表情を浮かべながら悪魔の刀を受け止める。遠心力が合わさった悪魔の刀は止める目的で使われてはいたものの、悪魔本来の膂力が累乗してそこに放たれた。よって紫髪の大鬼族が受け止めた悪魔の刀は重く鋭く、そして何よりもその刀には圧倒的な
「バカにはこうして分からせねェとなぁッ!! 」
その瞬間──悪魔の左腕が振り翳される。紫髪の大鬼族はそれに気付いて其方に意識を向けようとするが悪魔の押し込みが予想以上に強力過ぎた為に大鬼族は目線すら逸らさずにただその刃を受け止めてるだけで精一杯だったのだ。
悪魔は眼のないドス黒い色をした顔で大鬼族をしっかりと見つめながら左腕を上空へと振り上げる。そして紫髪の大鬼族はそれを避け切らないものだと判断したのかせめて致命傷だけは避けようと身体を少しだけ捩らせて刃が肉を抉ぐる面積を少しでも少なくしようとしたのだった──。
「そうは問屋が卸さんぞ。 」
───だがそれは、後方から迫り来た老大鬼族の剣気によって紫髪の大鬼族のその行為は無駄に終わったのだった。
「...クソジジイとバカどもが 」
悪魔がそう言葉を吐くのも許さぬ様に老大鬼族から引き抜かれた白刃の刀が既に悪魔の背中を刺し貫かんと迫って来ており、紫髪の大鬼族を峰打ちで気絶させる手筈で振り上げた左腕が下ろされる間には必ず老大鬼族の刀が悪魔の背中を貫くだろう。
だが悪魔はそんな状況でも焦燥の一つも顔に表す事は無かった。
「俺に喧嘩売ったらどうなるか教えてやるよ 」
そう言うと悪魔は迫り来る老大鬼族の刀の中で膝を大きく曲げる。それを見た老大鬼族と紫髪の大鬼族はその行為に何の意味があるのかが理解出来ずにそのまま老大鬼族は悪魔の背中に向かって放った突きをやり遂げようとしたが───。
ドゴォオオッッッッッ!!!!!
──その刹那、悪魔の脚からは紫髪の大鬼族の踏み込みとは比べものにならない程の小さなクレーターとも呼べる様な規模の地割れを轟音と共に瞬時にそこに生み出した。
「なッ.....!?!? 」
「!?!?─── 」
老大鬼族と紫髪の大鬼族は悪魔が生み出した地割れに仰天する様な表情を浮かばせており、刹那の時だったと言えどもその顔は悪魔とは対照的に見えるかの様に冷や汗や焦燥の感情が浮き彫りになっていた。
そして老大鬼族と紫髪の大鬼族は悪魔が生み出すその地割れの衝撃で若干ではあるが二人の体がよろめいた。両者は鍛錬を積んでいる身だと想起させる様な立ち振る舞いで完全に体幹が崩されたというのはなかなか無いがそれでも彼らは確実によろめいたのだ。老大鬼族の正確無比なる刀の突きはその軌道が逸れて紫髪の大鬼族の棘鉄球は悪魔の刀に一点集中させていた力の流れを乱されてその重さに持ってかれる様に前へと僅かに崩れた。
言うまでも無く悪魔がその地割れの衝撃でよろめいた事によって生じた彼らの隙を見逃す筈も無く悪魔は───。
ドォオオンッッッ!!!!!
「はッ...!?!?!? 」
「彼奴ッ...消えおったわい.. 」
老大鬼族と紫髪の大鬼族が悪魔が消えたのを見るとその顔を驚愕に染め上げながらも早急に悪魔の姿を捉えようと周囲を素早く見渡す。しかし見渡したところで彼らの眼中には悪魔の姿は見えずに居て、それはまるで悪魔が何処かに消えてしまった様に彼らには
「此処だよジジイどもォッ!!!!!! 」
その上空から聞こえる
キィイイイインッッッ!!!!!!
一閃───悪魔の刀による斬撃の反響が空間に響き渡る。両腕の刀を思いっきり地面に振り下ろした事で一閃の後に悪魔の刀とその躯が地へと着いたことで先程地割れを起こした地に着地してそこでも軽く音を立てながら悪魔の足元の地面に少しだけ罅割れが生じた。
そして肝心の大鬼族達はと言うと......。
「はァ....はァッッッ...... 」
「ぐッ... 」
老大鬼族と紫髪の大鬼族は悪魔のその渾身の振り下ろしを事前に察知出来ていたのか彼らは悪魔の刀が地面に振り下ろされる前に生物に備えられた脊椎反射と彼ら本来の身体能力と大鬼族の中に保有されているスキルをフル活用してようやく悪魔の攻撃を間一髪で回避に成功したのだった。
(...なんじゃ、今のはっ...)
老大鬼族は冷や汗が大量に噴き出る自身の顔に血が滲むのを感じた。悪魔の攻撃の残穢が彼の頬に傷を付けたのだ。だがその痛みを感じる暇すらなく老大鬼族はただ目の前にいる脅威の存在に身を震わしていたのだった。
(儂の行動を真似...その上で倍以上の攻撃力の一撃を繰り出す...。並みの魔物では出来る事では無ければ...やはり此奴が───。)
悪魔は地面に突き刺さった両腕の刀を引き抜いて再び老大鬼族の方へと向き直した。悪魔の攻撃を回避する際に彼らはバラバラになって散る様に回避していた為に結果的に悪魔は紫髪の大鬼族と老大鬼族に包囲される様な形となった。
「───なァ。 」
だが悪魔は刀を再び彼らにこれ以上振るう事は無く、刀を構えるどころか両腕を上げて頭の方へと上げる事で降参の意とも取れる様な姿勢を取った。老大鬼族たちは悪魔が突如取ったその行動に理解出来なかったのか己の武器を握り締める力はまだ収まらなかった。
「俺は本当にアンタらが思ってる様な仇じゃねぇんだわ。だから俺もこれ以上アンタらと闘うのは不本意なんだ。 」
悪魔は不気味な見た目をしながらもその話し方はとても理性的だった。まるで悪魔が人間として話している様な先程の死闘から出された荒っぽい口調ではなくて対話を試みる人間の様な穏やかな口調で悪魔は大鬼族たちは語りかけた。それは降参では無く、大鬼族たちに交渉を持ちかけてる様な印象を与えた。
「巫山戯るな!!!!!! 此処まで力を見せといて未だ自分は違うと言うか!!! 」
───だが悪魔の言葉を信じる者は此処に誰一人といないと言わんばかりに紫髪の大鬼族が声を荒らしながらそう言う。確かにこの戦いの中で悪魔は圧倒的な力を彼らに見せてきたが、それは単に大鬼族たちを殺そうとして悪魔がその戦いに応じた事では無かった。
「だがお前らも俺たちの仲間を傷つけた。それはそれに対する落とし前でやったもんなんだよ分かるだろ? 」
そう。悪魔やリムルの仲間であるゴブリンを傷つけて無力化したのは紛れもなく大鬼族の仕業だった。リムルならこの場を毅然とした態度で収められたのであろうが
悪魔にとって仲間を傷付けられる事は何よりも許し難い事であり、理性だけで抑えつけられるものでは無かったのだ。
だからこその落とし前───。この戦いは悪魔だけに非があるわけではない。
「お前らのお仲間が倒された様に、俺の仲間も倒された。これで立場は平等の筈だ。だからこそお前らにはなぜアイツらを襲ったのかを俺は聞きたいだけなんだよ」
悪魔は続けて語る。その言葉に大鬼族達は沈黙を貫いた。自らに非がある事を承知していたのかそれともはたまた悪魔が本当に仇じゃないという考えが生まれて来た故の沈黙なのかは定かでは無いが、今この瞬間で大鬼族達の中にあった考えが変わったのだけは事実としてそこに残った。
「...ずっと疑問に思っていました。」
悪魔が語り終えると今度は青髪の大鬼族の背後に護られていた桃色髪の大鬼族が悪魔に向けて語り始めた。その表情は寡黙の中に冷静さを欠いた様などうしようもない程の悲しみが詰まっている様で
「何故、貴方が此処までの力を持っていて私達の故郷を襲わなかったのか...。ここまでの力を手に入れているのなら貴方一人で充分だと、そう思っていましたがやはり...そうでしたか... 」
桃色髪の大鬼族は最初から悪魔の事を仇として見て良いのかと疑念を抱いていた。赤髪の大鬼族を蹴り飛ばしたあの時から彼女には悪魔のことを絶対強者の類として見ていた故に生まれた疑念だったのだ。
そして悪魔がその桃色髪の大鬼族の話を聞き終えた時、もう戦闘継続はしなくても良いと判断したのか侍の形態から擬態のスキルを使い人間の姿にまた戻った。
「...後でリムルも交えて、その話は詳しく聞かせてもらおうか。んでそのリムルっつうウチの大将が回復薬持ってるから赤髪の奴にはそいつを掛けてくれ。多分さっきので肋骨5、6本はやってるからな....誤解を解く為とはいえソイツはすまなかったな... 」
悪魔は誤解を解く為という目的の中で明らかにやり過ぎた力の振るい方をしてしまったと己で自覚してるのか大鬼族達に謝罪を述べた。そしてそのタイミングで彼ら大鬼族もまた桃色髪の大鬼族の話を聞いて、悪魔が仇じゃないと分かったのか各々の得物を手放したのだった。
「───さて、そうとなりゃさっさとソイツらを運ぶぞ。俺は赤髪の兄ちゃんを運ぶからお前らは黒髪のそいつを運んでくれ。 」
悪魔がそういうと大鬼族達はすんなりとその言葉に従ってくれた。そして悪魔もまた自分が言った言葉の通りに赤髪の大鬼族の方へと近付いて行った。
(こんな一悶着があったら、リムルは絶対キレるだろうな...)
悪魔は頭の中でキレてるリムルの姿を不意に想像してしまった。美少年の様な顔立ちの中にこめかみに青筋を立てながら笑顔でピキピキと怒りのオーラを漂わせるリムルの姿が浮かび上がった。
「は、はは...アイツが来る前にとっととおさらばするか... 」
何故だろう。悪魔の身体となって圧倒的な力を手に入れた筈の悪魔──ジャスは怒り気味に笑うリムルの姿を浮かべてしまうと妙な恐怖心に精神が苛まれてしまう感覚をそこで覚えるだろう。ジャスは急いでそのイメージを払拭しながら早く赤髪の大鬼族を村に連れ込んでおこうと画策した。
リムルはこういう荒事が一番嫌いな性格だ。この場にリムルが居たのならば彼はきっと巧みな話術を駆使して場を収めたのかもしれないが...彼の知らないところでこんなどんちゃん騒ぎがあったら確実に問い詰めに来るだろうとジャスはリムルの性格を把握した上での最悪の事態を想定していた。
(よし、あいつの姿は見えない...なら急いでさっさと────。)
ジャスは急いで大鬼族の身体を抱き抱えようと接近する。赤髪の大鬼族はジャスよりも幾分かその背丈は高く肉体は筋骨隆々の筋肉を鎧で覆っているので途轍も無く重いかもしれないがジャスは悪魔として途方も無い力を手にしているのでこれを使えばジャスが彼を持ち上げることは容易だろう。
───そして、彼がその大鬼族を抱き上げようと手を伸ばすと...
ガシッ
「 え。 」
何者かに肩を掴まれた。掴まれた時の感触は大鬼族よりかは小さくて子供にしてはやや大きい...そんな青年を彷彿とさせる様な手の大きさが身体越しに伝わって来ていたが...何故だろうジャスはその場から一歩たりとも動く事は出来なかった。
そしてジャスが恐る恐る、首をギギギと錆びついた歯車の様な音を出しながら後方へ振り向くとそこには───。
黄金色の瞳を持った水色髪の美少年がそこに居た
「ア"─────。 」
その美少年は恐らくジャスが最も会いたく無い相手であった。向日葵が咲いた様な笑顔だが肩の骨を握り潰さんと言わんばかりにギリギリとジャスの肩を握り締める純白の素肌の手...その風貌は正に...。
「ア〞ァ〞ァ〞ア〞ア〞!?!?!?!?!? 」
ジャスの相棒にしてスライムである
口調悪くなった後に優しくなるとかDV彼氏かな?