鈍色の正義   作:クロウト

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7刃 : 別れ道

 

 

イフリートとの死闘から1週間後___、リムルがイフリートを喰った事によって、その身が焔に蝕まれることは無くなったシズであったが

彼女がそこから目が覚める事は無く。リムルとジャスは未だ天幕のベッドの中で未だに眠り続けているシズに不安の気持ちを抱いていた。

 

「 ...何で目を覚まさないんだ、シズさん... 」

 

リムルのその不安そうな声色に同調するかの様に、悪魔もまた。イフリートの支配から解放された少女が何故こうも目覚めの時が来ないのか。それが、不安と言うよりかは純粋な疑問点として頭に残り続けていた。

 

「 ...イフリートとの同化が、此奴の寿命を先延ばしにしてたとか無いよな。 」

 

悪魔は思い付く限りで最悪の理由を呟く__。もし、リムルと悪魔が彼女の為に成して来た事が、全て彼女にとって先延ばしにしていた生命を絶やすことになってしまう事になってしまったのなら。それはリムルと悪魔にとっては彼女が死ぬ事を早めてしまったのと同義であり、彼女を喪う事は彼等にとっては本意では無い。寧ろ、死んでほしく無いが為に必死にイフリートと闘って来たのだ。良かれと思ってやった事が、彼女にとって呪いは打ち払えたが、その呪いによって生かされたと言うなんとも言えない様な皮肉話を作り上げただけだとしたら、そう思うと必然的に彼女の目覚め無い時の時間が妙に遅く感じてしまう。

 

「 __...どうやら、ジャスの予想は的中したらしいな。 」

 

リムルは重い溜息を吐き、そう言い放った。 リムルの保有しているスキルである《大賢者》によれば、本来ならばもうこの時代には生きていない筈のシズが、どうしてこの時代まで__、英雄と謳われた50年を経ても少女のままで要られたか。それは全て、イフリートの同化による延命によるモノが起因していた。だが、イフリートを制御する事により

彼女の気力は日に日に擦り減っていたらしく。このまま彼女が抑え込めていたとしても。軈て彼女は今度こそ正気が保たれ無くなっていただろう、そしてそれはシズ自身が望んでいる事では無い事であり。リムルとジャスがやった事は正しかったと言う_____。

 

「 マジ....かよ__。 」

 

言葉が出なかった 、自分が想像した最悪のシナリオ。それが見事に的中してしまった事に嬉しさなど一片も有る筈が無く。ただそうするしか無かったと割り切れたとしても。その事実は、悪魔に罪悪感を湧き上がらせるのには充分過ぎた事実で合った。そして、二人が重苦しいような

雰囲気の中。シズのその目覚めをただひたすらに座して待っていると_____。

 

「 __ スライムさん ...? 」

 

掠れた声、今にも掻き消えてしまいそうな声。だがその声は閑静な天幕の中、確かにリムルと悪魔の耳に入った。リムルと悪魔は少しだけ項垂れていた頭を振り上げると、其処には。閉ざしていた眼から黒真珠のような双眸を持ったシズが目覚めていた_____。

 

「 シズさん!?? 、気がついたのかっ......。 」

 

リムルは張り詰めた空気を優しく解くようにその身体から安堵するかのように固まったスライムボディが途端に柔らかくなっていく。悪魔もいつ目覚めるかどうか解らない状況がやっと解放されたのを感じれば、肩の力をフっと落として行く。

 

「 ...お侍さんと二人でずっと傍に居てくれたの? 」

 

「 __あぁ、良かった...もう目を覚まさないんじゃないかと思った... 」

 

シズの言うお侍さん__、それはきっとジャスの事を指し示すのだろう。確かに生えている両刀は大振りの斬馬刀のような形をしているものの、渾名でそう言われたのはジャスにとっても人生で初めての経験だったので少しだけその頬を緩ませてしまう。

 

「 ...オレの事を侍さんだなんて呼んだのはお前が初めてだよ。 」

 

「 __そっか ...、でも君のその姿を見てみると、なんとなくお侍さんみたいだなって....出会った時からそう思っちゃったんだ。 」

 

シズのその言葉にジャスは何も言わなかった_。シズの消え入りそうな声、彼女の命は正しく風前の灯とも言えるような状況だろう。そんな中、彼女との軽い与太話に笑みを浮かべられるほど。ジャスは、まだ器用では無かった。

 

「 .....待ってろ、今水をっ___。 」

 

「___良いよ.... 必要無いから ...... 」

 

リムルが急いで目覚めたシズに水を飲ませようとそのスライムの身体を動かそうとする。だが、その行動は。シズの言葉によって柔らかに静止される事になる。彼女の言葉には、最早。生きる足掻きすらも感じさせず、まるで自分の死を受け入れているかの様なそんな死期を悟った時を彷彿とさせるような物静かな言葉だった。

 

「 もう何十年も前にこっちに来て、辛い事も沢山あったけど、...良い人たちとも沢山出会えて_____、最期にはこんな奇跡みたいな出会いがあった ....。 」

 

シズは分かっていた。己の死期を、己がいつかイフリートの焔に焼かれてしまう事を。その身を持って既に知っていたのだ。だからこそ、彼女の命が今、風前の灯であったとしても。彼女が死を恐れずに淡白とその死を受け入れられるのは、今までずっと自身がそうなる事を覚悟していたからだったのかもしれない。

 

「 ...心残りがあるわけじゃないけど、私はもう充分生きたから。 」

 

その言葉は10代の見た目をした少女が発して良い言葉では無かった。然し、彼女はその姿を変えずとも何十年とも英雄として語り継がれた者であり、紅蓮の呪いから解放された彼女はこれ以上の生は要らない。と

自ら、この爆炎の支配者としての人生に終止符を打とうとしていた。

 

「 シズさん.....、オレ達に何か、出来る事は無いか?心残りがあるなら、言ってくれ.。 」

 

シズの言葉に、リムルは自分たちが最大限出来る限りの事をしようと彼女に最期の提案を託した。リムルとジャスにとってシズの思い残した事、その願いを聞けずにこの後を生きて行くのはとてもでは無いが了解出来るモノでは無かった。助からないのなら、せめて思い残す事無く逝って欲しいという二人の思いは一緒だった。

 

 

「 頼めないよ......君達の人生の重荷になってしまうもの。 」

 

 

シズはリムルの提案にやんわりと断りを入れた。その眼は酷く優しげなモノであり、リムルとジャスが彼女の心残りを背負い込みたいと言う気持ちなのならば、彼女はきっと自身に降りかかった重すぎる荷を彼等に預ける訳には行かない、と彼女の優しさ故の思いが其処にはあった。

 

「__オレが、オレ達が背負い込みたいんだ。言って...くれないか? 」

 

リムルは 、シズの言葉を一蹴するかの様にそう返答を返す。ジャスも、リムルのその言葉に口には出さなかったものの。同調するかのように静かに頷いた。そしてシズは、朦朧とした意識の中。その言葉にリムル達の覚悟が伝わったのかその口を静かに開いた_____。

 

 


 

 

「 __シズさん、大丈夫かなあ。 」

 

イフリートの襲撃により、大きな被害を被ってしまった魔物の街。その道を歩く3人組の冒険者の一人__、エレンがそう呟く。エレンはカバル達と共に自身の元仲間で有るシズの暴走を見届け、それを止めようとした者の一人であり。最終的にリムルとジャスの活躍によりイフリートの猛攻は止められはしたものの。矢張り、不安が残る部分は有るようだ。

 

「 心配いらねーって、リムルの旦那とジャスさんが着いてんだからよ。 」

 

「 そうでやすよ、旦那がくれた回復薬。すげー効き目良かったじゃないっすか。 」

 

一方で、カバルとギドはエレンが心に不安を募らせるのに対して。どちらかと言えば楽天的な考えの中、その道を共に歩いていた。3人がこれかれ行くのは、シズさんが今眠っていると言う天幕の中であり。三人が

足並みを揃えて歩いていけば、燃やし尽くされた廃材に囲まれるようにして一つだけ立派な天幕が見えてくる。恐らくあれがシズの眠っている天幕なのだろう。

 

「 おや、これは御三方お揃いで。 」

 

カバル達がその天幕の前に辿り着けば、その背後から追ってくる様にしてゴブリンロードのリグルドがその手に着替えを抱えながら歩いて来る。カバル達はその声に反応する様に、其方の方へと振り向けば軽い挨拶を交わしていく。

 

「 皆さんも、お見舞いですかな? 」

 

「 ええ、リグルドさんもっすか? 」

 

「 はい、たった今シズさんの着替えをお待ちしたところです 。 」

 

どうやらカバル達が立っているこの場所に、シズが眠っていると言うのは合って居たらしい。そして、リグルドが着替えを抱えていない方の空手でその扉を軽く数回ノックし、そのドアノブに手をかければゆっくりとその扉を開いていく。

 

「 リムル様、ジャス様...失礼します___......。 」

 

__ リグルドの言葉はそこで途切れる。そして背後から付いて来たカバル達も、その目の前で広がっている光景を見れば。その顔を驚愕に染め上げながらその光景を見るだろう。何故ならば、彼等が今見据えている方には、“水色の長髪をした裸の女の子のような者“がそこに佇んで居たのだったから。

 

「 え....何!? 裸の女の子!? 」

 

「 えっ、誰!?!? 」

 

「 え!? 」

 

 

カバル達はその者を見れば、各々が弾けたように声を張り上げるだろう。それもその筈、彼等の記憶にはこんな少女のような見た目をした者は何処にも存在し得ず、彼らにとってその少女は初めて会う者だったからだ。だが__、その少女を見たリグルドは困惑したようにその者に向かって言葉を紡いで行く。

 

「 "リムル様"__、その姿はっ....。 」

 

リグルドのその言葉にカバルは驚愕の余りに声を出す。そしてそれに続いてギドとエレンも同じ様に声を張り上げるだろう。リグルドだけは唯一、驚きよりも困惑が強かったのか。或いは同じ魔物間で有る故に、その擬態を見破れたのか。その理由は定かでは無いが、彼等と同様に驚く事は無かった。然し、カバル一行はその顔は驚きの表情が消える事は無く_____。

 

 

 

「 ....この子が、リムルの旦那ぁっ!?!? 」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

時間は進み__、時刻は夕刻を迎えていた。辺りを照らしていた陽光は空の彼方へと姿を消しつつ有りながらも。陽炎が陽射しの代わりとなって淡いオレンジ色の空を描き出している。そして、そんな空の中__、カバル達一行はシズが眠っていた天幕の中で、人と化したリムルが彼女に何が合ったのかを、そしてシズは何処へ行ったのかをリムルはジャスと共に今までの経緯を説明していた。

 

「 そうか ... シズさん、逝っちまったのか。... 」

 

カバルは、リムルからシズの訃報を知らされ。その肩を心なしか少しだけ竦めながら。その事実を重く受け止めて居る事が一目で解る様に、その言葉はいつもの様な明るく溌剌とした声で発せられているモノでは無かった。

 

「 ...と言うか、アンタ ...。本当にリムルの旦那なんでやすか?どうにもその___...、なんかちっこいシズさんっぽいっつーか...。 」

 

カバルに続き、ギドが目の前のリムルの姿に訝しみを覚える様に言葉を発する。確かに、リムルの人の姿は蒼い長髪とシズと比べれば若干面劣る様な身長差以外を考慮しなければ、淡麗な顔の作りなどは生前のシズを彷彿とさせるようなモノが有るだろう。

 

「 ...本当だよ、ホレ 。 」

 

ギドの心に湧き上がった疑問を解消する様に、リムルは自身の右腕を獣の毛皮で作られた毛布から抜き出し、宙に掲げてみる。さすれば、リムルの腕は瞬く間に見覚えが有るようなドロドロとした青い液体のようなモノに変化していき、そしてその青色の液体が全身を包んだ時。彼等が良く見るようなスライムボディの彼がそこに立っている事だろう。その光景を見たカバルとギドはそれぞれ感嘆の声を上げるのだが、ただ一人___、エレンだけはその表情は未だ曇ったままだった。

 

「 ...シズさんを食べたの? 、“イフリートを食べた時“みたいにっ... 」

 

エレンの眼には僅かな涙が溜まっていた。顔はその涙が溢れ出さんように口をキュッと結び、険しくその顔を顰めながらリムルに問いを投げ掛けた。エレンは、短い旅の期間の内では有るが。あの3人組の中では、一番シズと共に過ごした時間が長い者だ。それゆえに、彼女が魔物を喰らうのと同じ括りで捕食されたのが、如何して心の何処かに許せないような感情が湧き上がっているのだろう。

 

「 ...それが、オレに出来る。唯一の葬送だったからね 」

 

リムルは、ジャスと共にシズの緩やかな最期をただ見守る様にしてその傍に居た。その中で__、漆黒の長髪が老人のように白く透き通る様な色になってしまった彼女が。死に際に、リムルに自身の死に場所について掠れそうな声で頼み込んで居た。

 

『 ...あなたの見せてくれた懐かしい故郷の景色の中で眠りたい_____。』

 

リムルが、今彼女にしてあげられる事は彼女のその願いを聞き遂げる事しか出来なかった。死人になりかけた者が突如、その息を吹き返すコトなどリムルやジャスには出来る芸当では無く。緩やかに、だが確かに二人に突きつけられた彼女の"死"に対して。せめて自分たちの手でその死を優しく送り返してあげるのが、リムルにとっての精一杯だった。そして彼女の約束通り_、リムルはシズを自身の保有する『捕食者』によってシズを、その心残りごと全て喰らい。その結果、リムルは人間の身体を会得したのが経緯で有る。

 

 

「 仲間のお前達に相談も無く、悪かったな。 」

 

「 いや...それがシズさんの望みだったのなら仕方無いさ。 」

 

突然の仲間の死、それが彼女にとっては前々から予期していた逃れられないような死であっても。カバル達にとっては唐突に降りかかった理不尽な事実だ。その事情を知っているリムルやジャスならある程度の覚悟は出来ていたのかもしれないが、彼等にとっては割り切れない部分も有る。カバルのその言葉は軽い言葉では無いだろうと感じさせる様なモノがあった。

 

「 すまんな、エレン ... 割り切れない部分も有るだろうが ...。 」

 

 

「___ ... 最期ぐらい、お別れの挨拶くらい言いたかったな... 」

 

リムルは、シズのその訃報にその場にいる誰よりも感情を露わにしていたエレンに声を掛けるが、彼女の顔にはもう既に涙は溜まっておらず。

その顔には仄かな笑みだけが浮かべられて居た。エレンも、カバルと同じく。そのリムルの行動に理解を示し。そして彼女もシズの死を受け入れた。それだけで重苦しい事実が突きつけられている筈なのに、彼等の顔には清々しい程に悔やんでいる様な表情が感じられ無かった。

 

「 ...シズさんは、最後の旅でお前達と仲間になれて楽しかったって言ってたよ。 ......ちょっと危なっかしいとも言ってたけどな。 」

 

リムルがそう言うと、ギドとエレンの視線が一気にカバルの方へと向けられて行く。カバルはその視線に思わず声を張り上げてしまうが、彼らは以前としてその生ぬるい様な視線をカバルから外さずに何かを察したかの様な顔を浮かべれば__。

 

「お前だってこの前、落とし穴にハマってたじゃねぇーか!!盗賊(シーフ)の癖にッ !! シズさん呆れてたぞ!! 」

 

「 あ、あれは姉さんが急に押すからでやす! 」

 

「 ちょっとぉ、私のせいにしないでよぅ!あの時は突然蜘蛛から落ちて来て___....。 」

 

 

カバル達の喧騒が先程まで静かだったその天幕の中に響き渡る。その下らないようないざこざは重苦しい静寂の帳を壊すようにと周りのしんみりとした雰囲気が一気に緩やかに溶かされて行く。その喧騒はまるでシズが居た時と変わらない様な、何も変わらないような景色の様だった。

 

「 __....まぁ、しんみりするよりかは。ああ言う、ボヤ騒ぎの方が

 アイツらとは思うけどな。 」

 

ジャスはその喧騒を見れば、リムルの隣で言葉をポツリと呟く。その何気ない日常から切り取ったかのような責任の擦り付け合いが何故か、誇らしいともジャスは思ってしまった。その隣にシズが居なくても彼等はこうしてまたいつもと変わらない様に前へと歩いて行ける。その精神はきっと他人には真似できぬ才能に近いのかもしれない。と悪魔は考えたからだ。

 

「 ...まぁ、ちょっとシズさんに頼りっぱなしな所も有るけどな...。でも、アイツららしいよ、本当に。 」

 

リムルのその言葉にジャスは軽く笑いながら、同調した。悪魔の表面の顔では判断し辛いが、彼の口角は僅かに上がっており。その喧騒を見るのが、まるで楽しく感じるかのように。

そして彼等の騒がしい追悼は夜が耽るまで続いたのであった_____。

 


 

 

「 __さてと、そろそろお暇するかね。 」

 

天幕の中から降り注ぐ陽光が鮮やかな白を映し出し、騒がしかったこの中も軈て時が経つに連れて、その静けさは徐々にその喧騒を上書きして行く。カバル達はシズの死を悼みつつも、彼等の顔に曇りは無く。また前に歩き出そうとしていた。

 

「 帰るのか? 」

 

「 あぁ、ギルマスにこの森の調査報告と....それにシズさんの事も報告しなきゃならんからな。 」

 

カバル曰く 、ギルマス__、ギルドマスターが運営する自由組合はほとんどの冒険者が所属しているらしく。彼等がその森の調査にシズと共に訪れていたのも、自由組合からの派遣だったと言う。カバル達はリムルやジャス、それにこの街の事は悪く無い様に報告してくれるらしく。いずれはギルドを状況次第によって頼る事も出来るかも知れない。そう言う意味でも、彼等との出会いは実りがあるモノだっただろう。

 

 

「 ...あっ、最後にもう一つ__。 」

 

立ち去ろうとしていた、カバルが何かを思い出したかのようにリムルの方へと振り向く。そしてカバルがリムルの元へと軽く一歩を踏み出せば___。

 

「 なあ旦那 、もう一度 ...人の姿になって貰えねぇかな。 」

 

カバルがやや神妙な顔持ちでそう頼み込んで来た。その頼み自体はリムルにとっては単純明快な頼みであり。そう難しいようなモノでも無かった。リムルはその頼みを軽々と承諾し、スライムボディからまた再び人型の姿にへと変化する。リムルはカバル達の意図が解らず、それを見ていたジャスもまたリムルと同じ考えだった。

 

「 ...一体なんだって__。 」

 

 

 

「 「 「 シズさん!ありがとうございました !!! 」 」 」

 

 

リムルが人型に化けた瞬間__、カバル達三人の声が響き渡り。それと同時に彼等はリムルに向かって感謝の言葉と共に頭を下げていた。何がどうなっているかが分からなかったジャスだが、カバル達がその感謝の言葉の後に、続くその送別の言葉によって段々と理解を示していくのだった。

 

「 オレ、あなたに心配されないようなリーダーになります!!! 」

 

「 あなたと冒険出来たこと、生涯の宝にしやす!! 」

 

カバルとギドの言葉が響く。その言葉はどれも、今は亡きシズに宛てた

惜別の言葉。そしてそれに続く様にして、エレンが辛抱堪らなくなったのか。リムルの身体に勢い良く抱き付いて行き...。

 

「 ありがとう....お姉ちゃんみたいって思ってました...っ!! 」

 

エレンの瞳に再び涙が貯まる。それは今まで一緒に旅をして来た仲間が改めて自分達の元に帰ってくる事は無いという事実を確かめたのだからだろう。その姿を見たリムルは、その顔に微笑を浮かべながら。今にも泣き出してしまいそうな彼女の頭をそっと撫でる。それを見たジャスは

シズがどれ程、仲間に恵まれていたのかを改めて思い知る事になった。

 

「 ...ったく、少しだけ妬けちまうなこりゃ...。 」

 

 

本当に__、彼女の最期の旅の仲間が彼等で良かったと心の底から思わせてくれる様な人達に巡り会えた事。そして、何も悔いなく今度こそその呪縛から解き放たれた事全てが幸運の連続だと思わせてくれた。井沢静江は、回帰と言う道を選び。リムルとジャスは共に切り開く道を選んだ。両者の道は別れの道のように其処で互いにその姿をもう見る事は無く。 されど、その幸せを願いながら。リムルの中で眠る彼女はきっと、その幸せを享受出来たのだろう。ならば今度は、切り開く者達がその幸せを掴み取る番だ。リムルとジャスはこの彼女との出会いをキッカケにこの魔物の街を護ることを硬く誓った。

 

 

 

 

そして__、この刻からもう既に激動の時代が直ぐそこまで迫って来ているのを、彼等はまだ知る由すらも無かった。

 

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