どうしてR18世界で凌辱されないんですか?(現場猫)   作:よくメガネを無くす海月のーれん

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お久しぶりです……


山籠もり一日目 大体の生き物は後頭部を殴られると死ぬ

えっさほいさとテンポよく獲物を探す。ヒーヒェッヒェッヒェッヒェッヒェと山姥笑いも忘れない。こういうのは続けるのがキモだ。私は山に棲むババア…丸々太った豚を求めて彷徨うババアだ。キモイって言ったやつは今日の晩飯決定である。

 

「いっのしし、いっのしし…ん?」

 

魔導書に導かれるままに道あり道なき獣道々を進んでいく。テンション上がってこん棒振り回しながら歌っているとふとぴりつく感触があった。

 

ぞわっと腕に鳥肌が立つ。すぐにこん棒を握りなおして周辺を警戒、誰もいない。いや居なさすぎる。おかしいことに小動物の羽ばたきや葉っぱの擦れる音といったものが全く聞こえなくなった。山の音がしない、何かがおかしい。もっと耳を澄ます。

 

「気配が変わった…?」

 

まるで唐突にボス戦エリアに入ったような静けさだ。少し進んだら地面から魔法陣が出てきてヌッとボスが出てきてもあーなるほどね?で済ます自信がある。それくらいに山が変わった。雨が降るのか?それにしては湿気の匂いがしない。雨特有の匂いはしておらず快晴のままだった。

 

「……念には念をね。魔導書、433ページ」

 

私は狩りの続きを綴った。信導の章は索敵や継続的な戦闘において非常に優位な魔法が揃っている。…が、欠点として咄嗟に発動できない事前使用が前提の魔法である。なので、なにかおかしいと思ったらすぐに使うようにしているのだ。

 

『血塗れの偶像。祀られる祖、復讐の連鎖、止まらぬ怨念、殺し殺された犠牲者は嘆く、いつまでこの教えは続くのか。誰も答えない

 

 

教えと化した狩りは長きに渡りその役目を全うした。しかし、獲物はしぶとく力をつけ復讐者となり、殺し殺される関係となった。死者が留まることを知らず、誰もが疲れ切っていた。信者は嘆くも終わらない。教えは不変なものであった

 

 

信導の章、第二編、不壊の教示』

 

 

「『怨嗟の信仰』」

 

ガバァッ!と勢いよく魔導書から闇がまろび出る。その闇に頭から飲まれていき、グッと伸びをすると闇は魔導書からちぎれた。これは先の『血の導き』発動時に殺した相手…ゴブリンと猪…に対し、特攻を得るという魔法だ。まぁこの黒いのはその殺したゴブリンや猪の怨霊的なものらしい。相手の怨霊纏うとか軽く呪い殺されそうだが、これで戦うとある程度のダメージはこの怨霊が肩代わりしてくれるし、ぶん殴るときに補正が入るというか…まぁ明らかに対象を呪ってる感じのことをしているのだ。えぐいしつよい。

 

さて…発動してみたが…何も起きない。数分…十数分待機するも何も起きなかったのでとりあえず動くことにした。もうすぐ二つ目のゴブリングループと接敵するはず…距離的に間違いないだろう。

 

はたから見ると真っ黒い人型の影が蠢いているという軽くホラーなのだが、ここらへんに私以外の冒険者はいないし、ちゃんと木々の影に紛れるように動いているからもーまんたい。

 

そのままスニーキングよろしくゴブリングループに接敵していくのだった。

 

戦闘はカット…するわけねぇ!ヒャッハァ戦闘ダァ!~♪(自前戦闘BGM)

 

ガサゴソと草むらに潜み、ひょっこり顔を出すと見えるはゴブリンが4体にイノシシ2体…あのイノシシ二体を倒せばイノシシの依頼達成だ。やはり、おせっせ中らしく一体はゴブリンが後ろから覆いかぶさっている。もう一体のイノシシはゴブリンに対して威嚇や頭を振り回し抵抗しているらしい。ほほう…?チャンスだ。改めてこん棒を握りしめる。今宵…じゃない、今は昼だ。今…今……今昼のこん棒は血に飢えておるわ…。

 

魔導書は…今回は使わなくていい。節約節約。というか『怨嗟の信仰』で十分だと思う。ぬーっと近づき背後を取る。気づかない…アホで助かったぜ。

 

とりあえず、狙うは腰振ってるアホだ。ソイツを撲殺したら次は威嚇されているゴブA、Bをぶん殴りつつ、三つ巴の状況を少し観察して弱ってる方をぶちのめす方針でいこう。残ってるゴブCがイノシシにぶちのめされてたら御の字だ。

 

ステンバーイステンバーイと機を伺う。肝がスーッと冷えていく感触と、妙に冷静になった思考が目の前の光景を鮮明に映してくれる。いやクソだわ。なんだって真面目にゴブ×イノの異種格闘技(意味深)見なくちゃいけねぇんだよ。ただの変質者じゃねぇか。

 

「うぉらしねぇい!!」

 

我慢しきれず草むらからダイナミックエントリーッ!!!するは全身まっくろくろすけな人型物体。手元にこん棒を持ち、高々と振り上げたそれを腰振ってるゴブリン後頭部に叩き込む!すかさず怯むゴブリンを後ろ手に引き倒して、顔面に二撃、ワンツー!そこで腰振られていたイノシシが後ろ脚で蹴りを入れてきたので、すかさずゴブリンガード!!!

 

華麗な即死コンボを決めてひしゃげたゴブリンを捨て置いて腰振られてご立腹のイノシシと相対する。ブモーッ!ブモーッ!と息を荒く頭を振るイノシシの瞳は激怒と殺意に塗れ後ろ足で土を掻いた。ゴブリンになんてことを…許せん!(擦り付け)

 

義憤を燃やした私に突撃するイノシシ!野生に育てられた分厚く蓄えた皮下脂肪とその体躯を支える強靭な足腰から繰り出される突撃は容易く人をぶち殺せるだろうという威力だ!

運動エネルギーはその物体が持つ質量と速さに比例する。そして、野生で暮らす生き物にとって肉を蓄えることは、冬であったり獲物にありつけない時を耐えるためというのもあるが、それ以上に蓄えた肉が筋力に直結するからだ。人間は無駄に贅肉をぶら下げたりしているし、私の胸もよく受付嬢の皆々様から舌打ちをもらうくらいだが、野生ではそんなん無駄の塊で、そんなんぶら下げるくらいなら足腰に筋肉つけろとボディビルダーみたいなことを言うだろう。野生で贅肉をぶら下げる余裕なんてない。常に生きるか死ぬかの状況で、そんなんぶら下げるくらいなら全身をマッスルにした方がいいのだ。

 

つまり目の前のこのイノシシは野生の流儀にのっとってひたすら肉体をいじめ続けてきた生粋のマッスラー…!またヤツは四足歩行。二足で歩く人間様よりも加速を乗せやすく安定しているのだ。

 

だがしかぁし!その突撃が仇となったなぁ!

 

私はギリギリのところまで引き付けてすんでのところで、真横に小さく避ける。その時すかさず走りくるイノシシが踏み込んだ瞬間を狙って、片方前足を掬い上げるようにしてこん棒を当てる。狙うは関節下、ちょうど膝の皿を拳一つ分下がったところを全力で強打した。

 

強打されたイノシシは前足がガクンと曲がる。そう、強制的に膝を曲げさせたのだ。前方向に走っているなら、下側に対して重量と力が加わっているから足にたたきつけたりしてもそこまでダメージは与えられないだろう。

 

だから膝の下を狙って強打した。ほらよくないか?階段とか登ろうとしたりちょっとした段差を登ろうとして目測誤って靴がつっかえてガクンってなるやつ。あれだ。体躯を支える膝には多大な負荷が掛かっているが、後ろからだったり曲げやすいように力を加えるとたやすく曲がってしまう。足の前側で膝カックンしたといえばわかりやすいか。

 

前のめりにつんのめったイノシシの背中を追い打ちと言わんばかりに強打し、地面にたたきつける!勢いがまだ残っていたのかズザザァと地面を捲りあげて地に伏す姿を後目に周りを見やる。

 

見えるはゴブAとゴブBが乱入してきた私に困惑の目を浮かべ、その隙を逃さずイノシシがゴブリンに突進する姿。その奥で巡回でもしていたのか離れていたゴブCがこちらにやってくる。

 

やるなら孤立気味のゴブC…!ダッと駆け出し、こん棒を振り上げる。勢いそのまま振り下ろそうとするが、こちらに急接近する黒い人影に慌てながらも手に持っている石の剣でガードする…だが残念ブラフだよ…!

 

振り下ろす姿勢そのまま、足を突き出す。ちょうど上側に石剣でガードしていたから空いた腹に蹴りを叩き込む。ヤクザキックだ。つま先がゴブCの腹にめり込みくの字になる。ガードが空いたな…?

 

ゴブCにめり込ませた足に力を入れて地面に引き倒す。ズダンと地面にたたきつけ、乙女の体重をかけて動けないようにする。乙女の体重は触れ得ざる神秘の力によって体重計に乗るとリンゴ3個分とかになるが、こうして力を発揮したい時だけ重量を増すのだ。オイゴラ、じゃあ太ってるじゃんとか、重い女とか言ったやつ。てめぇ乙女の体重は可変式なんだよ。

 

おっと引き倒したゴブCがもがいているが、ぐりぐりとつま先をねじってやりながら、頭めがけてこん棒を振り下ろす。振り下ろす。振り下ろす。気分は雛見沢の奴ね?ぶっころしてやる!!!あ、それは違うか。

 

ぐしゃりとなったゴブCを捨て置いて、残るゴブABとイノシシを見るがぁ~…

 

おぉーっと!!!ここでイノシシさん!迫真の突撃でゴブAをぶちのめしています!!その威力に恐れをなしたのか尻もちをついてヘタれるゴブB。無残な死体と化したゴブAと目が合います!だんだんと目に光が失われていく様と、だらんと力なく垂れ下がった舌がもう、息はないことを表している!!!それを見て絶望の表情を浮かべるも、すぐさま自分は此処に居てはいけないと抜けてしまった腰で這う這うとなりながら逃げる姿は、無様さと悲しさがありますねぇ…。解説の穂ちゃんさん、どう思いますか?

 

えぇ、これは恐怖におびえながらも生存本能に則ってこの場を離れようとしているのでしょう。しかし、力が入らない足のせいで腕の力だけで逃げていますね。だんだんと近づいてくるイノシシを何度も振り返りながら、必死に逃げていますね。ただ武器である石の斧は握りしめています。いざという時は決死の一撃を与えることも視野に入れてるでしょう。

 

なるほど、ありがとうございます。おーっと!?ここでゴブB!最悪な行動に出る!手に持っていた粗末な石斧をパニックのあまりイノシシに投げたぁーっ!ガツンと当たって怯むも余計に怒りを増したのか、荒い息を出しながらどしどしとゴブBに迫る…!

 

そのまま体を浮かせての~…スタンピング~!!!!これは痛い!!!イノシシの全体重が載った前足による振り下ろしはまさしく鉄槌!二つの槌が振り下ろされ、裁判終了~~~判決死刑!となりました。いや~異種族格闘技戦、終わってみてどう思いますか解説の穂ちゃんさん。

 

えぇそうですね。数の有利という面でゴブリンたちが優勢だったのが、穂ちゃんの奇襲により瓦解、それによって形勢が逆転し、こうしてゴブリンの敗退となったので、勝負は時の運、いかに運を味方につけるかというのが今回の印象でしょう。しかし、技術面、精神面でもまだまだ発展する余地はあります。ゴブリンは攻められたときのマインドがダメでしたね。弱気になってました。あれはいけない。イノシシもイノシシで攻撃が突進とワンパターンなんですねぇ。ストンピングや後ろ蹴りなんかもやっていましたが、結局は突撃に落ち着くところがあります。もう少し技にバリエーションを増やせれば…と思いますね。

 

そうですか。解説の穂ちゃんさん、本日はありがとうございました。

 

いえいえ

 

それでは皆さん、次回の異種族格闘技戦でお会いしましょう!さよなら!

 

さよなら!

 

と某サッカー実況解説風のあれやこれやをしていたら、生き残ってYOU WINの余韻に浸っていたイノシシがこちらにずんずんと進んでくる。敵意はない。おぉん…?

 

どうやら私ではなく私が打ち倒したイノシシの方に行こうとしている。だがそんなことはさせないぜベイベー…私は眼前に立ちはだかり、割と満身創痍のイノシシにこん棒を振り上げる。

 

この世は弱肉強食、どれだけ強くとも弱ってる姿をさらせば食われるが道理…君はゴブリンに犯されてないからおいしく食べれるね…!ならば…!!!!

 

「しねぇい!!!猪豚風情!!!」

 

ボコンッと大きくも小気味良い音を立て、脳天に振り下ろされたこん棒、その威力は女の軽腕からは想像もできないほど強く、それは『怨嗟の信仰』による呪いの効果だった。同族を呪い殺す怨霊を生み出すというえぐ目の魔法はたとえ術者がスラム街の非力でやせ細った子供でさえ、大人よりも強い力を発揮できる。それは偏にぶち殺したヤツ等が自分たちの仲間になれと誘っているからであり、道連れを増やそうと手を貸すのだ。

 

生きているものが妬ましい。自分も生きたかった。だから、お前も私と同じになれ。『怨嗟の信仰』の本質はこれらにある。こんなおぞましいものを考える生き物は根絶しなければいけない。絶やさなければいけない。そういう理念が『怨嗟の信仰』には込められているのだ。

 

そしてただの教えはソレそのものが力を持つようになった。殺した相手と同じ種族を呪う怨霊を生み出すという形でもって。

 

信導の章は信仰と根絶が密接に結びついたものが多い。信じるべき教えと異端者の根絶、それに端を発する呪いと祝福。どこまでも悍ましく、どこまでも敬虔に紡がれた教えは、どこまでも残酷だ。

 

すなわち、狩りは終わらない。根絶するまで、その血濡れた所業は終わることない。

 

イノシシ二体、ゴブリン四体、殺しつくしたはずなのに、『怨嗟の信仰』が解ける気配がない。つまり、他に獲物がいるということだ。周囲に居るゴブリンとイノシシの同族すべてを殺すまでこの魔法が解けることはない。根絶の魔法は、逃げ延びた幼子さえ見逃すことを許さない。

 

身体から熱を吐き出すように荒く息を吐き、こん棒を握りなおす。魔導書は静かに手元に現れていた。コイツが後頭部にぶつからないってことは、そうとうってことだ。

 

身体を一切動かさず、息を殺す。途端に周囲は静かになり、いやに響く心臓の音が耳にこびりつく。その鼓動に紛れて、ガサリ、ガサリと小さく何かがこちらに近づいてくるような、葉が擦れる音がする。

 

そちらに目を向け、音の主を待つ。位置はバレている。血の匂いがこびりついてるからだ。隠れたところですぐに見つかるだろう。できることをするしかない。

 

ゴブリンの死体のそばに落ちていた石剣や石斧を拾っていく。ぼろく、叩きつけたら壊れそうだが牽制用にちょうどいい。それらを一本を除いてすべて魔導書にぶち込み、残した石剣を刀身をつかんで、後ろ手に構える。刃なんてない叩きつけるだけの石剣だからできることだ。素人の私が刃のあるナイフなんて投げようものなら、投げる前に手がボロボロになる。

 

そのまま、一つ、二つ、息を吸って吐いて、その時は訪れた。

 

ガサガサと鳴る草木が開き、その音の主を表す。私よりも大きな体躯、ヤマアラシのような棘の毛が全身を覆い、先が黒く鈍く光っている。下顎から伸びる湾曲した牙は私の胴体と同じくらいの太さで容易く串刺しになるだろう。息は荒く、こちらを見つめる目は殺意にひた濡れている。大木と見間違うほどの足を一歩、踏み出して、草木から姿を現したソレ、山の主だと確信を持って言える程の巨大なイノシシがそこに現れたのだった。

 

狩りが始まる。




ちょびっとずつ更新していきます。

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