どうしてR18世界で凌辱されないんですか?(現場猫) 作:よくメガネを無くす海月のーれん
救助に来た冒険者らに、ゴブリン皆殺し宣言を聞かれつつ、青い顔してヒョッコリ現れた冒険者に血とチソチソの残骸で塗れた石を持った女性が一斉に視線を向けた。
冒険者は気絶した。まぁ…怖いわな。私も言われたら思うよ。
後ろからそれなりに場数を踏んだであろう先達冒険者が震わせた声をもって呼びかけてきた。
「お、おーい。き、救助しに来た…あー…その…女性冒険者に任すから…指示に従って用意した馬車に乗ってくれ。俺達は視界に入らないように後始末と護衛をし、しておくから…」
紳士的な冒険者だ。たまにヒャッハーした世紀末冒険者だっているのだからえらい違いである。お言葉に甘えて、後ろからついてきた女性冒険者の案内の元、女性達を馬車へと案内する。女性冒険者も顔が引きつっていたが、私達はゴブリンを皆殺しするために活動するという旨を発現すると、即座に表情が代わり、かまわん、やれ。協力は惜しまん。というゴルゴみたいな顔で言われたので、こちらも感謝する、とゴルゴ顔で応対する。やはりゴブリンは敵…殺さなきゃ…!
ここで少し弊害が起きていたとのこと。後始末をしていた冒険者がその後一時休業したのだ。理由として、皆一様にチソチソが潰れていたのが怖かったらしい。確かに、ゴブリンに復讐するときは大体刃でめった刺しとかそういうことをするらしいが、チソチソのみを潰していて、かつここまでの数となると気が滅入ってしまったらしい。まぁ私は私に興奮しないチソチソをぶっ叩いててそれが伝播しただけなんだがね…。男には刺激が強かったようで…。
まぁそんな弊害を生み出しつつ、私を含めた女性たちは街へと帰還した。街の人々は、ゴブリンに襲われた女性を憐れみとあぁはならないようにねという一種の戒めの感情で見るのが普通だが、今回ばかりは女性達の溢れ出る復讐オーラが伝わったのか一様に目線を反らし、関わらないようにしようという動きをしていた。
彼女等はこの後、修道院に入り、傷の療養やゴブリンの子の堕胎等を行い、精神ケアを重ねた上で今後どうするのかを話していくらしい。彼女たちには、ゴブリンを皆殺しにするには体力が必要なので、修道院で基礎体力をつけてほしいと話した。具体的には走り込みや腕立て等である。剣の素振りや訓練はまだ早いし傷や体力もまだ万全ではないから軽いモノから始めることを厳命した。リーダーは夜街の女性である。頼むぞ…!
固く握手して別れる。
私が向かうのは冒険者ギルドだ。依頼の報告とゴブリン皆殺しギルドを設立することを伝えなければいけない。義憤を燃やし、ズンズンと肩を怒らせ歩いていく。数分後、ギルドに着いた。
「よォ―!馬鹿共ォー!私が帰ったぞォ―!」
デケェ声上げながら、近くにいる冒険者をぶっ叩く。オラッ!オラッ!私のお帰りだ!歓迎しろ!
「いってぇ!アァッ!?あ?おぉーッ!お嬢のお帰りだァー!」
「ゴブリン退治から帰還しやがったぜーオイ!賭けは俺の勝ちだぜ!」
「クッソ!お嬢ー!!!明日に帰って来てくれよ~!お嬢が今日帰ってくるか明日帰ってくるかで賭けてたのによォ―!」
「うるせぇ馬鹿共!そこの賭けは私が没収だ没収!」
賭け金を奪われた冒険者はそりゃあないぜーと愚痴るが、頭をはたいてやると、グヘヘと笑う。ヤクザか世紀末かってよ…!ホント馬鹿共だぜ…!
一連の流れは私なりの挨拶だ。冒険者になるとき、女だからとナメられたら負けと思った私は挨拶の時にカマすことにしたのである。一種のマウンティングだ。ちなみに、初回の時は大乱闘になったが、魔法で応戦してなんとか勝ちをもぎ取った。しこたまギルド職員に起こられたものの、私は一目置かれるようになったのである。ノリがヤクザの長の娘であるが、打ち解けると気のいいヤツ等なのでこれはこれでいいかと思っている。ちなみに、こんなことやるのは私が初めてらしい。マジかよ…。
ズカズカと受付まで歩いていき、依頼報告をする。今回の場合、救助弾が打たれた時点で伝令役が報告してくれているだろう。証明依頼は何もいらない。楽でいいねェ!
「アイちゃんアイちゃん!」依頼完了してきた!報酬はいつもの口座に入れといて!後ギルド作ることにした!」
「スイさんですね。はい、ゴブリンの巣からの救助依頼達成受領しました。お疲れ様です。ギルドというのは…貴女が?」
受付の子。緑髪でショートのクールな女の子は受付嬢のアイちゃんだ。大体私の担当をしてもらっている。冒険者は依頼をこなしていくと、固定の受付嬢に担当してもらうようになる。そうすれば、自分の適正にあった依頼を紹介してもらえるからだ。
依頼達成の処理をしてもらいつつ、今回のギルド設立経緯を話す。ゴブリン、許せんよなァ!
「なるほど…ゴブリン討伐を専門にしたギルドですか…。報酬額が少なくうまみも少ないゴブリン討伐は放置されやすい傾向ですから、専門のギルドというのは需要があると思います。……個人的な恨みもあります…。分かりました、設立の手続は進めておきます。規模や活動範囲はまだ決まってないですよね?」
「うん、そこらへんは追々かな。まずは設立費用を集めていく感じにする。あーあと、女性ばかりになると思うから後ろ盾が欲しい。アテないかな…?」
「そうですね…確実にあると思います。直接話に行く必要はありますが、ゴブリンのせいで奥さんを失ったり酷い目に遭ったという話は枚挙がありません。商人でも…もしかしたら貴族の後ろ盾が手に入るかもしれません…ただ」
「ただ…?」
「ゴブリンはすぐに増えます。いままでもいくつかの専門ギルドが設立されましたが、その多くが討伐数が繁殖数に追いつかず立ち消えています。報酬も少なく…ほぼボランティアとなるでしょう。それでも…やりますか?」
「やるよ…アイちゃん。やると決めたんだ。私達がやるのは討伐だけじゃない。根絶するための対策だ。ゴブリンに襲われない防衛機構、薬剤の開発、魔法の発明、なんだってやって、ゴブリンを皆殺しにする」
「…わかりました。準備を進めておきます。…一先ず、お疲れ様でした。英気を養い、また次の依頼に力を注いでください」
「あいよー、あんがとね」
私の覚悟と想いをぶつけて結構な無茶を通してもらった。割と無茶なことを言ったから止められてもおかしくないと思っていたのだ。それでも認めてくれたのはゴブリンが相手だからだ。ゴブリン許すまじ…!
馬鹿共の所に戻ると心配そうな声をかけられた。
「お嬢―…やっぱりやめといたほうよかったんじゃないか?」
「お嬢がゴブリン救助に行くって話聞いた時にゃまだ早いって思ったのは当たりだったか…」
「確かに奴等の被害に怒るのもわかるが…ゴブリンの根絶なんてそれこそ蟲を一匹残らず殺し尽くすようなモンだ。人生掛けても足りねぇぞ」
ヒャッハーな見た目だがその割に心配性だ。ゴブリンと出会う女性は少なからずダメージを負う。女性冒険者もそうだ。私?怒り爆発だが?
私は発破をかけた。
「なんだぁ!ヘタレやがって馬鹿共め!そこは私がやるつったら俺もやるって気概の良いこと言うのがお前らだろ!私はこんなこと言うヤツを冒険者とは…!男とは思わねぇぞ!」
「言いやがったなお嬢がよォ…!やってやろうじゃねぇか!」
「安い挑発だなァお嬢!乗ってやんよォ!」
「ヒャッハー!お嬢に男が廃れるって言われちまったら引き下がれねぇぜー!」
「よォ―し!それこそ冒険者やってる馬鹿共だァ!恋人や奥さん、酒場の看板娘をゴブリンに取られたくなけりゃあ私の話に乗るこったァ!」
「「「「うぉーッッッ!!!!!」」」」
「その話…僕も乗らせてもらっていいかな?」
「その声は…!」
私がゴブリン根絶の演説をかましていると、ギルド入口から声をかけられる。今は夕方、入口から差し込む夕日がヤツの後光となって、シルエットのみを映し出す。
徐々に徐々に姿を現していく。
肥満体型…贅肉が付き丸っこい姿だ。汗っかきなのか、服はぴっちりと張り付いている。怪しい見た目。
頭が光る…禿げているのだ。薄い毛髪だけが頼りなく揺れている。妖しい見た目。
手には杖を持っている。短杖、魔法使いであることを示していた。確実に凌辱世界のモブおじみたいなその人は…!
名前はサイミ・セノウ 苗字があることから貴族であり、この街有数の魔法使い…!
そう、その姿、その名前からは絶対に催眠洗脳を仕掛けてくるとしか思えないこの脂ぎった男が私の話に乗るのだった。
ちなみにこの街最高峰の紳士である。
シリアスコメディシリコメ(トゲナシトゲアリトゲトゲ感)
2024/05/14
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