どうしてR18世界で凌辱されないんですか?(現場猫) 作:よくメガネを無くす海月のーれん
サイミ・セノウ。
彼は卓逸した魔法使いであり、貴族をやりながら冒険者としても活動する奇特な人であり、私がこまごまと使う現代魔法の御師匠様である。その見た目から絶対に竿役だろっ!と思っていた自分をとても恥じるほどに清く正しい人間だ。まだ冒険者になり立ての魔導書バイブルコーナークラッシュ(魔導書の本の角による殴打)で敵を凌いできた私に魔法を授けてくれた人なのだ。
あれは大体…1か月…いや3か月前だわ。3か月前のこと…。
ホワンホワンホワンと回想シーンだ。
私はこの世界に落とされたのはなんかよくわかんねぇ時だった。たぶんグリッチ技で抜けたんじゃないかと思う。その時遊んでいたR18禁エロゲのプレイ中、ゲーミングチェアに前のめりで座り過ぎてバランスを崩し、手に持っていたマグカップを上下にシェイクしつつ、右ひじからキーボードに突っ込んだ時のことだ。訪れるはずだった痛みがなくそのままキーボードや机ごと身体が貫通し、そのままあらゆるものを透過して落下していったのだ。マジのグリッチ抜けみたいなことをして気付けばこの世界にいた。幸い、キルゾーンはなかったようだ。惜別は必要ないらしい。
辺りを見回せば森の中、近くに川のせせらぎが聞こえる。上を見ればきれいな空。
にっちもさっちもわからぬ状況。とりあえず近くに何故か落ちていた本を拾い上げつつ、人里に下りようと川まで歩き、そこから川を下っていったのである。こういうときは川を下ると大体人里に着くってばっちゃが言ってた。幸いにも道中魔物に襲われることはなかった。運がよかったぜ…。
そんでもって街に着き、なんやかんやあって日銭を稼ぐために冒険者となった。なんやかんやってなんだよって?なんやかんやだよ。こまごまとした冒険者登録とかファイトクラブ開催とかいろいろだ。この世界に適用するのは結構かかったがなんとか生活できるようにまで頑張ったのだ。そんでとある依頼をこなしていた時、運悪くゴブリン1体に遭遇した。初めての魔物接敵だった。今までは即座に逃げていたが逃げれる状況じゃなかったのだ。私はバイブルコーナークラッシュ(魔導書の角による殴打)でもって応戦しているところをこの人に助けてもらったのである。衝撃の一言と共に…!
『それ、魔導書だけど魔法は使わないのかい?』
衝撃だった。いやなんかこれ異世界転移だなァとか現実逃避気味に思っていたけど、ここでまさかの持っていた本が魔導書であるということに、実感を伴った現実を叩きつけられた気分になったのだ。そこでまぁ、サイミさんに魔法使えない旨を伝えたところ、女性が抵抗手段もなしに冒険者をやるのは危ないということで魔法の指南をしてもらうことになったのだ。
激烈に良い人である。
ある時、催眠魔法、洗脳魔法が使えると聞いた時、どうして私欲のために使わないかと聞いてみた時がある。そのときにこう言われたのだ。
『いいかい。人というのはとても繊細で脆い生き物だ。心という形のない者なら猶更で、それに手を加えようとするのは人を殺すのと同じで、催眠魔法、洗脳魔法に限らずすべての魔法は人殺しの道具となりうる。でも、道具は使いようだ。毒は薬にもなる。僕はね。この魔法たちを覚えた理由は人を守る為なんだ。心は脆く儚い。だからこそ、一度罅が入ってしまったら治すことはとても難しい。でも、この魔法たちは治すための時間を作ってくれるんだ。嫌な記憶辛い記憶を封印し、前へと視線を向けてくれるようにする。それは正常な人からしたら、人に前しか向けさせない非人道的行為だろう。けどね、人はそんなに強くない。立ち直るにも時間がいる。その時間が作れるというのなら、私はこの魔法を覚えるべきと思うんだ』
『確かに、この魔法たちで悪い事をする人間はいる。この魔法は免許制でもし不法使用がバレれば処刑されてもおかしくない。危険な魔法だ。それでも…』
『誰かを救えるのならば、覚えておいて損はない。僕はそう思っているよ』
私は恥じた。心底に自分を軽蔑した。マジで心が汚れていた…!催眠洗脳、エッチなことしか考えられなかった…!それらは一種の暗示のようなもので、この凌辱溢れる世界において、心の傷というのはとてもありふれているものなんだ。たとえそれが善意の押し付けだとしても、記憶を戻されて再び絶望するかもしれなくても、一人でも助けられるならという献身で、レッテル貼りされてもかまわないという覚悟を持って覚えたのだ。なんて高潔さだ…!
彼に石を投げらえる人がいるなら、ソイツは催眠魔法洗脳魔法でえっちな事をする妄想をしたことないヤツだけだ。たぶんこの世界にはいないと思う。
人間性で負けた私はそれから、深い懺悔と尊敬の念をもってサイミさんあるいは御師匠と呼ぶようになったのである。
ホワンホワンホワン、回想終わり!
「やぁ、今戻ってきたんだ」
にちゃあと笑うサイミさん。なんかあくどいこと考えてそうな笑みだが別にそんなことはなくおおらかに笑ってるだけである。見た目で誤解されやすい人なのだこの人は。妻子持ちで美人な奥さんと可愛い二人の子供がいる家族一筋の御方で、孤児院に寄付をしたり、自ら率先して魔物を狩ったりするこの世界で聖人レベルの人間である。
「御師匠!依頼から帰ってきたところですか!お疲れ様です!」
斜め45度意識したお辞儀でもって迎える。ノリが完璧にヤクザのソレだ。でもこれ楽しいんだよね。やってる方もやられる方も楽しいと思う。いや私の主観だけどさ。
「いいよいいよ。気にしないで。スイさん、先の話は本当かい?ゴブリン専門のギルドを作るというのは。それなら一枚噛ましてほしいんだ」
「というと…サイミさんも何か被害が…?家族親縁が…」
「いやそういうわけではない。ありがたいことに家族親縁皆無事だ」
「実はね…。今回の依頼のついでに、いくつかの街を見てきた。どこもゴブリンの繁殖が目につくほどになってきている。それに合わせて…ルーキーの被害もね」
目を瞑り、何かに堪えるようにこぶしを握り締めるサイミさん。
「私は…これ以上、ルーキーの被害を看過できない。冒険者はただでさえ危険な仕事だ。それでも、ロマンのある仕事だと思っている。一攫千金を果たした冒険者、ドラゴンを倒し英雄となった冒険者、そのどれもが世間に夢を与えているんだ。そんな夢を見て、ギルドの門を叩く者がいる。英雄を目指す少年少女がいる。未来の英雄がゴブリンに散らされるなんてこと、あってはならない」
「手伝わせてくれるかい?」
「サイミさん…!」
カーッ!なんて聖人なんだこの人はっ!世のチソチソに脳みそがある男共見習えッ!これが人間が目指すべきありかただぞ!!
「ありがとうございます!こちらからもぜひお願いします!」
今度は90度誠心誠意のお辞儀をする。やったぁ!仲間が増えたぞォ!
うっきうきのままこれからの展望を話して別れる。とりあえずは修道院にいる彼女たちが男性恐怖症を患っていないか同化を確認せねばなるまい。サイミさんは魔法の教授を担当してくれるというが、彼女たちが怖がってしまえば元も子もない。それに魔法は少なからず素質がいるらしく、適性を見極めなければならない。大変だ。
目下の目標はお金を稼ぐことだ。ギルドの設立はお金がいる。冒険者たちがその場限りでも長期間でもどちらでもいいがパーティーを組むのとは違って、ギルドというのは一つの組織だ。冒険者ギルドというおっきな組織の傘下組織…子会社みたいな扱いを受ける。設立するにはお金も必要だし、信頼できる人からのお墨付きとかもないといけない。ようはケツモチだ。そこらに関しては、アイちゃんが取り計らってくれるというので、めぼしい人物が見つかったら、署名と後ろ盾お願いします!と言えばいい。
問題はお金だ。
ギルドの設立は金貨が10枚必要だ。まず冒険者ギルドに設立費用を払うのに3枚。運営費用に3枚。ギルドの建物代金に1枚。ギルドの活動拠点をしていく街に1枚だ。もし建物を良いものしたいならもっとかかる。最低金額が金貨10枚というわけである。私は今後の保険も考えて、15枚…20枚はほしいと考えている。今の私の貯金残高が、今回の依頼報酬も入れて金貨1枚と銀貨銅貨がこまごま…。全然足りない。
誰かから出資してもらうにしてもある程度の資金は自前で稼いだ方がいい。明日から頑張らなくちゃ…!
私は寝泊まりしている宿屋に戻って速攻で飯食って水浴びして明日に備えて寝た。
スヤァ
ほのぼの(?)です。
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