今回 オレの前に突然現れた全身拡張体の大男―
その大男から鉄郎というガキの保護を依頼されたわけだが超巨大企業べリューレンの放った追手によってガキを奪われちまったオレとしたことがしくじっちまったぜ全く
ザァァァァーーと水が大量に流れる音が響き渡る。
そこに拡張者の声が響いている。
『……て…ュウゾウ』
『起きてイヌイジュウゾウ』
その声と共に銃頭の拡張者が意識を取り戻し起き上がった。
「ゲハッゲホッゲホッ」
咳き込んだあと頭からボタボタと水が垂れていた。十三は慌てながら頭部のシリンダーを外し回転させて水を飛ばした。
「うおおおっ何だこりゃぁッはっ早く乾かさねーと!!!」
「錆びる錆びる錆びる」
隣から拡張者の悲鳴が聞こえた。
『ひぃぃぃぃっ』「へ?」
間の抜けた声を出した十三が横を向くとそこには頭部の一部が欠けた拡張者がいた。
『あっあっあっ頭が…くるくる……』
十三も拡張者も驚き声を上げた
『うわぁあ!!!』【カラカラカラカラカラ】「うおおっ!!?」
十三は拡張者の体を見た初めて邂逅した時に比べて凄まじい程に損傷していた。
「その体…あんたオレを庇ってくれたのか」
拡張者は答える
『…気にする必要はないこうなる前から「この体」はもう長くなかった』
十三は疑問を浮かべながらシリンダーを戻し拡張者に聞いた。
「…………そろそろ聞かせてくれねーかあのジャジャ馬シスターがなんで鉄郎ってガキを追ってたのか…それに…どうしてあんたがそんな傷でまだ生きてるのかってことをよぉ」
拡張者は話し始めた。
『…僕はある「施設」に収容されていたんだ。あのシスターはそこの職員の一人だよ勿論本物のシスターじゃないけどねあの施設は孤児院を装っていたけれど本当の目的は孤児の救済なんかじゃないあそこは集めた孤児達をべリューレン社へ拡張体開発の実験材料として提供する為の施設だったんだ僕はそこで実験体として拡張体遠隔操作装置通称「ハルモニエ」を埋設された…ハルモニエは任意の対象の拡張体を外部から強制的に操る装置で僕はその力でまだ誰も入っていなかったこの拡張体を操って逃げ出すことが出来たんだ』
十三は凄く驚いた様子で喋った。
「ちょっ…ちょっと待て!!!拡張体の遠隔操作…だと!!?」
拡張者は言葉を続ける
『…この体はあの子供……鉄郎の体から操っているただの人形……つまり今ここで話している僕が―鉄郎だこれがこんな体でまだ動けている理由だよ』
十三は絶句していた しかし何とか現実に戻った
「……… それが本当ならEX法違反どころの話じゃねーぞ
…そういうことか…」
拡張者は話を続ける
『そうだからこそシスター達は必死に僕を追っていたんだ僕はべリューレン社のアキレス腱になりかねない存在だからね』
十三は言葉を返した。
「そんな話すぐには信じられねぇなぁ…と言いてぇところだがあんたのその中身の無ぇ頭を見せられちゃあなぁ信じざるを得ねぇよなぁ」
拡張者は疑問に満ちた声で聞いた
『……その頭銃は水に濡れるぐらいでは機能に影響はないはず…なぜあれほど濡れることを恐れていたんだ?』
その疑問に十三は
「…………お前なら「大丈夫なはず」って言われて不発弾抱いて寝られるか?オレは自分の目で真実を確かめるまで他人の言い分なんざ信じねぇ性分なんだよ。何にせよ自分の頭が錆びるかどうか試すつもりはねぇがな」
十三はキッパリと言い切った。その返しに拡張者は笑いながら答えた。
『…フフっフフフフその性格あの人から聞いた通りだ』
十三は拡張者に問いかけた
「…今、本体がどこにいるかはわからないのか?」
拡張者は答えた
『何かの乗り物に乗せられているような振動を感じるけどハルモニエを起動している間は本体の感覚器からの信号はほとんど遮断されるから…』
拡張者は体を震わせながら話した
『どちらにせよもうこの体がハルモニエの負荷に耐えられそうにない僕はまたあの人達の道具に逆戻りだ…やっぱりべリューレンから逃げるなんて無理だったんだ他人の拡張体を操るハルモニエの能力を最大限引き出す為には体を動かすことへの強い欲求が必要になる‥‥そのために僕は声帯を奪われ手足の筋を切断されて…それでもやっとの思いで逃げ出して来たのに…』
限界を迎えつつある拡張者は自分の想いを告げた
『僕はただ自分の意志で自由に歩きたかっただけなのに…
街の人達どころか警備局の人達も…僕の話に耳を傾けてはくれなかった。けれど…イヌイジュウゾウあなただけは僕の話を聞いてくれたこんな結果になったのは残念だけど…でも最後にあなたに会えて…良かっ…』
その言葉を最期に拡張者は息絶えた。十三は彼亡骸を見たあと振り向き水に濡れた煙草の箱を取り出したが煙草は吸える状態ではなかった。しかし鉄郎の想いを聞いた十三は少し飽きれながら出口に向かった。
「…全くこれだから湿気とガキは嫌いなんだ」
地下水道で鉄郎を奪還した修道女は地下水道を後にして専用の駅からべリューレン社の装甲列車に乗っていた。
そこには複数人の研究者も搭乗していた。
「投薬完了被検体の意識及び肉体の活動レベル低下」
「ハルモニエの機能施錠完了しました。」
修道女は残酷に告げる。
「施設に戻ったらハルモニエの移設を始めるわよすぐ作業に移れるように準備を急いで」
囚われて拘束されている鉄郎意識は無いに等しい状態だった
しかしよく見ると彼の右耳には小型の発信機が入れられていた十三が地下水道に入る前あらかじめ埋めていた物だった。
【ピッピッピッ】
発信機の音が小さく鳴っている。装甲列車の走るレールの前方に十三はいた。発信機の音は装甲列車が近づくたびに大きくなる。
十三は右手の甲についているシリンダーを回しそのまま固定し装甲列車の先頭車両に捻りを加えた拳を叩き込んだ。
【ヒュンケ・ファウスト】
その一撃により装甲列車は脱線し止めることに成功した。装甲列車の内部では脱線の衝撃が搭乗者を襲い内部ではモニターから火花散っていた。
修道女は困惑しながら状況を確認した。
「なっ何が起きたの!?」
彼女の疑問にオペレーターが応える
「
オペレーターからの報告を聞いた彼女は困惑していた。
「……なんですって??」
装甲列車からべリューレンの一般兵士が降りてくる彼らはアサルトライフルの発射体勢を取り十三に向けて一斉に発砲した。
【バギギギギギギッ】
しかし発砲された瞬間十三は彼らの上方向に飛び上がり着地した瞬間に二人の兵士を無力化した。十三は残りの兵士と相対しながら喋った。
「お前ら
兵士達の返答はアサルトライフルを構えてからの一斉射撃だった。
【ジャキッ ドガガガッ】
列車内部では修道女が驚愕していた。奇跡的に無事だったオペレーターが彼女に具申していた。
「本社に応援要請を―」
修道女はヒステリックになりながらオペレーターに言葉を返した
「そんな恥さらしな真似出来る訳無いでしょう!?」
オペレーターは焦りながらも彼女に具申した。その時列車の扉に衝撃音が響き扉が無理矢理抉じ開けられる音が響き渡った。
【ボゴォン メリメリメリッメギョッ】
そこから現れたのは地下水道に落下していった乾十三であった。抉じ開けた扉から入り右手の甲のシリンダーを排出し右腕を少し上げ使い切った空薬莢を落としながら修道女に告げた。
「また会ったな シスター」
修道女は驚きながら彼を見て言った。
「本当に来るなんて…驚きました」
十三は彼女に返した。
「少しばかり腹に据えかねることがあってな。預けてあったガキ引き取らせてもらいに来たぜ」
修道女は聖母のような笑みを向け拒否の意志を見せながらリボルバーを構えた。
「ご足労頂いたのに申し訳ないのですけれどお預かりしたお子様を無事施設に届けるのが私の仕事ですので お断り致しますわ」
そう言ったあと即座にツインリボルバーを発砲した。放たれた銃弾は特別仕様の物だったらしく彼女は勝利を確信しながら告げた。
「この弾丸は対拡張者用に貫通力を高めた特別仕様!!補助脳でなくても頭部に直撃すればただでは済まない―」
放たれた銃弾は十三の頭部に直撃した‥しかし十三の頭部にダメージは無く彼女は困惑した。
「…………え??」
十三は表情は分からないが鉄郎に対し憤りと怒りを含めながら叫んだ。
「オレはなぁガキは嫌いだが物分かりが良すぎるガキはもっと嫌いなんだよ鉄郎オオオオォッお前オレに言ったよなぁ「自分は道具じゃない自分の想いを果たす前に捕まるわけにはいかない」ってなそれが「あなたに会えて良かった」だぁ!!?笑わせんじゃねぇぜ大人しく諦められるくれぇのもんなのかよてめぇの想いってやつはよぉガキはガキらしく駄々の一つもこねてみやがれ!!!」
十三の叫びに鉄郎の意識が戻り計測していたオペレーターが驚愕に染まりながら修道女に報告した。
「!!!被検体の意識レベル上昇!!ハルモニエ起動します!!!」
その報告と同時に列車内部にノイズ音が響き渡った
『イイイイイイ』
近くにいたオペレーターは頭を抑え悲鳴を上げた
「ギャッ」
修道女は振り向きながら驚きの声を上げた。
「ハルモニエがっ!!!」
オペレーターは言葉にならない声を上げ続けた。
「ああっアガガガガガッ」
次の瞬間読み取り音の後鉄郎の声が響き渡る。
「……………キュルルルキュルルル…願いジュウゾウ…僕をッ助けて…!!!」
修道女は一瞬呆気に取られていた。
「?何??」
その隙を縫って十三は修道女に肉薄していた。
「よく行ったぜガキはそうでなくちゃあなぁ」
その言葉のあと修道女は至近距離でツインリボルバーを発砲し勝利を確信した
「この至近距離なら………!!!」
しかしその銃弾は十三の右手首に着弾し十三は叫んだ。
「「
次の瞬間オペレーターの意識が切れると同時に修道女の首に手刀が落とされ意識を絶たれる。
「ガハッ」
気絶させた彼女に対して十三は告げる。
「仕事のしすぎは体に毒だぜ?シスター当分休みでもとるこったな」
鉄郎の体を固定していた。拘束具を破壊しそのまま告げる。
「約束通り依頼は果たしたぜ鉄郎さんよぉ」
鉄道路線から降りた十三は市街地の煙草店ヘ向かったなぜなら地下水道に落ちた時煙草は吸える状態ではなかったからだ。店の婆さんに煙草があるのか聞いていた。
「「種ヶ島」は置いてねぇのか仕方ねぇならそっちの奴一箱とマッチ頼むよ …いや金は払うって婆さん…………」
手に入れた煙草にマッチで火を付け右手を上下させマッチの火を消しながら煙を吐き出す。そしてさっきの戦闘のことを思い出す
「痛覚遮断レベル上げすぎて体が上手く動かねぇぜ格好つける為とはいえちと撃たれ過ぎたか助けたはいいものの身寄りもねぇガキをこれからどうしたもんかねぇ」
その時街頭テレビでニュースが流れ始めた。
[―次のニュースです本日未明べリューレン社の私設車輌の脱線事故が起きました同社の発表では事故原因は反拡張技術派団体「スピッツベルゲン」によるテロである可能性が有力とのことで―]
ニュースを聞きながら十三は察した。
「べリューレンの奴ら早速揉み消しやがったか。よほどこいつの存在を隠してぇようだな」
歩き出そうとした時ニュースキャスターがとんでもない情報を伝えた。
[スピッツベルゲンはべリューレン社CEO荒吐総一朗《あらはばきそういちろう》氏の長男鉄郎さんの失踪への関与も疑われており鉄郎さんは一年前の突然の失踪以来行方がつかめておらず復興庁はべリューレン社の協力のもと捜査を進めていく方針で―…]
ニュースを見た十三は汗を垂らしながら言った。
「…まさか……な」