ぼくのかんがえたLEGENDSキュレム   作:己道丸

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大分前に思いついたポケモンLEGENDSシリーズの二次創作を形にしています。
オリジナル地方・キャラ・設定で進行するのでご注意ください。


ぼくのかんがえたLEGENDSキュレム 後編

「さて、アイスマン」

 

 呼ばれた少年は背筋を伸ばす。

 符号にすぎない名前だが、今の自分が持ちえる数少ないものの一つであった。

 それを名付けた者たちが口にする。

 

「貴方にあの峠へ行ってもらったのは理由があります」

「貴様に任せる仕事が決まった。その試験だった」

「オレの仕事」

 

 復唱すると着席する三人は頷いた。

 

 ゲイル団代表、ベルガモット。

 プラズマ団代表、アネモネとフラシータ。

 この街を取り仕切る中心人物たちだ。

 柔らかな少女の面立ちをしたアネモネに対し、ベルガモットは巌のような顔で目を光らせる。

 

「これまで貴様の回復や扱いをめぐる調整で保留にしていたが、この街は仕事を果たさぬ者を養う余裕がない。準備が整ったのなら働いてもらう」

 

 男が言うことは苛烈だが同時に実直だ。

 この街が難民の集まりであり、全員で補い合わなければ立ち行かないことを、代表として正確に認知している。

 だからこそアイスマンは大きく頷く。

 

「分かった。オレは何をすればいい」

「貴方にお願いしたいことはね、この土地の探索よ」

 

 答えたのはアネモネだった。

 表情は変わらず穏やかだ。だが眉尻を下げた顔には、どこか慚愧の念があるようにも見えた。

 なにかを呑み下したように固い声色がその印象を強める。

 

「正確には探索先遣隊だ。本隊に先駆けて未開地を調査し、安全と経路を確保する」

 

 アイスマンでも分かることを、隣に座る妹が分からないはずがない。フラシータはアネモネの言葉を継ぎ、こちらへ説明を続けた。

 

「私たちプラズマ団はアシュ地方開拓のため、ゲイル団と共同で探索することを決定した。お前にはその先遣隊を率いてもらう」

「プラズマ団とゲイル団が協力するのか?」

 

 思わず目が丸くなった。

 アイスマンが知っていることは多くない。それでも今日にいたるまで見知ったことはいくつかある。

 二つの組織が反発しあっていることはその一つだ。

 

「我々も元は同じイッシュ難民だ。折り合いがつくところはある」

「合意を得るまで大変でしたけどね」

 

 当人たちも思うところがあるのだろう。ベルガモットは鼻を鳴らし、アネモネは肩を落としていた。

 そしてフラシータはいかにも急所を突かれたという顔で、気を取り直すように咳払いをする。

 

「以前も説明したが、イッシュ大火でこのアシュ地方に逃げ延びた私たちは、その後の方針をめぐって二つの組織に分かれた」

「アシュ地方の豊富な資源を元手に、イッシュ地方への帰還を目指す私たちプラズマ団と」

「この地を新天地として開拓し、移住を目指す我々ゲイル団にな」

「そうだ。貴方たちは同じ街に住むが目的が違うので反目しあっていると、そう思っていた」

 

 それが率直な感想だ。

 実際それは事実なのだろう、言われた言葉を代表たちは否定しない。それどころかフラシータは腕を組み、苦虫を噛むような顔で肯定した。

 

「当然だ。故郷を捨てて未開の土地に移り住もうとする庶民とは相容れない」

 

 しかめられた少女の目はベルガモットを見る。

 視線にこもる感情がどんなものか、アイスマンにも分かる。だからベルガモットも嘲るように頬を釣り上げ、

 

「大した性根だ。既得権益を諦められない元王侯貴族そのものだな」

「元ではない、今もそうだ! 対等のつもりか、成り上がり者め!」

 

 椅子を蹴って立ち上がるフラシータ。

 烈火そのものの彼女に、しかし隣のアネモネは冷静な言葉を投げかけた。

 

「フラシータちゃん、そこまで」

「でも……っ」

「そういういざこざは脇に置きましょう、ということでまとまったはずよ」

「……はい」

 

 水を差され、フラシータはくすぶるように着席する。

 ベルガモットも自らの言動を恥じたのか、襟元を正して席に座り直した。二人を見てから、アネモネは申し訳なさそうな笑みをにじませて、

 

「ごめんなさいね、アイスマン。足並みがまだ揃わなくて」

「いやいい、気にしないでくれ」

 

 むしろ知りえる知識と帳尻が合い、腑に落ちた。

 反発しあうのは今も変わらないが、しかし大きな目的を達成するため両組織は一応の合意をとった状態にあるのだ。

 

「ともあれ、だ」

 

 切り替えるようにベルガモットが言う。

 

「我々が探索先遣隊のリーダーを貴様に任せる意味、分かるな?」

「……ああ」

 

 代表たちの意図は察している。

 表情を引き締め、感情を瞳に込めて答えた。

 

「難民の生活に貢献し、かつ、自分自身の素性を解き明かせということだな。アシュ地方奥地の氷の中から見つかった、記憶のないオレの素性を」

 

 それこそアイスマンが置かれた状況。

 信じがたい状況から人々の前に現れ、しかし自らの過去を名前も知らず、この街に馴染むこともできない少年の現状であった。

 だが過去はなくとも今を生きるなら義務からは避けられない。

 

「落ち延びる中、私たちはこの地の人間が“灰白の陥穽”と呼ぶ地域を通り、貴方を保護しました」

「以来あの土地は氷雪の厳しさが増し、近づくこともできない。野生のポケモンたちも凶暴さを増すばかりだ。……そう思っていた」

「違うのか?」

「厳しくなったのではなく、貴様を連れている間だけ土地もポケモンも和らいだのかもしれん、ということだ。そうだな、ミズ・ヒメジョオン」

「……ああ」

 

 ここに至り、隣の少女ははじめて口を開いた。

 褐色の肌に文様を染め出した衣装をまとう小柄な少女。案内役としてアイスマンと行動をともにしていた、ヒメジョオンである。

 朴訥で幼くも見える彼女は、けれど代表たちに物怖じすることなく言葉を続ける。

 

「お前たち“灰白の陥穽”を抜け街建てるまで、どうしてかアシュ地方全部穏やかなった。それ、この地の皆感じてた」

 

 だが、

 

「お前たち、この地に入った時何も変わらなった。変わったは“灰白の陥穽”抜けてから。そこでお前たち、何か得たから全て変わった」

「オレを連れ出したから地方全体が静まった、と?」

「眉唾だ」

 

 ベルガモットは鼻を鳴らした。だが、

 

「無くて元々。本当なら都合が良い」

「どのみち貴方に任せる仕事が必要でした。なら適正がある方がいいでしょう?」

「それに、あながち根拠がないわけでもないんだ」

「どういうことだ?」

 

 アイスマンはフラシータをまじまじと見つめた。彼女の発言に虚をつかれたからだ。

 

「まさ、自然やポケモン全体を左右する存在がいるのか?」

「いる。いるよ、アイスマン。まさにお前見つかった“灰白の陥穽”にな」

 

 そう言ったヒメジョオンは肩を小さくする。

 代表たちを前にしても怖じない少女は、その童顔を青くして唇を固く結んでいた。

 続けた言葉に、強い畏怖があるからだ。

 

「――アッシュ」

 

 その名前を畏れたからだ。

 

「アッシュ?」

「アシュ地方の由来。冷気を操る、灰色のドラゴンポケモン」

 

 ヒメジョオンは気を整えるように息をつく。

 

「野生のポケモン、より強いポケモンに従う。それオヤブンやその上のキングたちだけど、アッシュはさらに上。この地すべての王者」

「……冷気を操るアッシュが手を緩めたから自然は穏やかになり、睨みを利かせたから野生のポケモンたちは手を引いた。そう言いたいのか?」

「その可能性がある、ということだ」

 

 ベルガモットは顔をぬぐい、口ひげを撫でた。アネモネも机に腕を置いて両手の指を組み、

 

「アッシュが貴方に目をかける理由が分かりません。でも、素性次第ではありえるのかもしれない」

「だからお前は自らの素性を解き明かさなければならない。探索先遣隊の任務を通じてな」

「……なるほど」

 

 応じて、視線が集まるのを感じる。

 代表たちは当然として、隣のヒメジョオンも案じるような目でこちらをうかがっていた。

 当然だ。推測に憶測を重ねてひねり出した楽観論を命綱に、命の危険もある未開地探索の先陣を切れと言われているのだから。

 結局のところ、誰も負いたがらない危険な任務を一番のよそ者に押しつけただけなのかもしれない。

 

「……でも」

 

 現状は閉塞するばかりだ。

 だから、

 

「やるよ。オレがアシュ地方を調べ、そして自分が何なのかを見つけ出してみせる」

 

 危険を担うことで居場所が作れるなら、自分が何者なのか分かるというのなら。

 それは意気をもってこなすべき使命だ。

 

「ありがとう、アイスマン」

 

 総意を示すようにアネモネは頭を下げた。

 

「……でも気をつけてください。たとえ今の話が本当だとしても、この地の自然と野生のポケモンは十分強烈です」

「それを体験させるために峠へ行かせたんだろう?」

「そうだ。我々が失ったものを見せる意味もあったがな」

 

 肯定するベルガモットは懐中時計を取り出し、時間を確かめた。

 ふむ、と小さくつぶやいた男は視線を戻して、

 

「大分時間を使った。決めるべきことを決めよう。貴様の部下となる先遣隊の隊員だが、すでにミズ・ヒメジョオンがつくことになっている」

 

 言われ、目を丸くしたアイスマンは振り向いた。

 

「……そうなのか?」

「そうだ。よろしく、隊長」

 

 少女の顔に、さきほどまでの青ざめた様子はなかった。いつも通りの無表情で、こざっぱりとした挨拶を返してくる。

 

「ゲイル団とプラズマ団からも出すことになっている。我々からは……」

「それならオレはロータスがいい」

「なに?」

 

 思案するベルガモットに希望を述べた。

 アイスマンにとって、ロータスは物知りで抜け目ない才覚のある人物だ。単身で街を抜け出し、自分たちを先回りした行動力も信頼できる。

 ベルガモットは顎に手を当てて、

 

「……いいだろう。奴はストロベリ博士の助手であり、ゲイル団でいくつもの案件を動かす実業家だ。能力はあるし、本件を通じて資産や実績を積ませるのも悪くない」

「ありがとう、ベルガモット代表」

「我々の都合だ。感謝は必要ない」

 

 厳かな居住まいの脳裏では、今もきっと目まぐるしく算段がつけられているのだろう。

 ゲイル団は商人や実業家が中心となって立ち上げた組織だ。その頂点であるこの男は、常に最大の利益を実現させることに余念がない。

 そうしてベルガモットが口を閉ざすと、今度はアネモネがいかにもにこやかな笑顔を隣に向けて、

 

「というわけで、よろしくねフラシータちゃん!」

「え!? 私ですか!!?」

 

 唐突に水を向けられ、少女はすっとんきょうな声を上げた。

 言った方は頬に手を添えて、

 

「だってアイスマンくんと一緒に峠まで行ってきたでしょう? 適任よ」

「あれは監視でついていっただけです! そもそも私には姉さんを支えるという仕事が……!」

「大丈夫。皆がいるし、それに代表格が現地にいると指揮権が分かりやすいでしょう? これはね、フラシータちゃんにしかできない仕事よ」

「ぬぬぬ……!」

 

 フラシータの歯軋りはここまで聞こえんばかりだ。

 だがアネモネはダメ押しとばかりに、ことさら悲し気な顔で小首をかしげ、

 

「……だめ?」

「ぐ……! 分かりましたっ、私がやりますよっ!」

「ありがとう! だから大好きよ」

「ううううう~~~~っ」

 

 花のように笑う姉に対し、妹は石をすり合わせたような唸り声で天井を仰ぎ見たのだった。

 

「ははは……」

 

 ともあれ、峠までの道をともにした者たちが再び集まることとなり、アイスマンはひそかに胸をなで下ろしていた。

 街にも組織にもなじめない自分にとって、能力が伴う身近な人物が来てくれることに嬉しさが募る。

 だが、

 

「――懸念がある」

 

 ヒメジョオンが進み出た。

 

「知ってる思うが、“灰白の陥穽”はこの地の者の禁足地。しかも今はわざと入ろうとしてる。知らないで通り抜けた前のようにはいかない」

 

 何より、

 

「ここから彼の地へは三つの地を抜ける。それ、絶対止められる」

「……衝突は避けられないということですね」

「この街、お前たちに協力する私たち、少ない。嫌ってる者の方がずっと多い」

「強硬派の主導で来るということだな、お前たちの組織は」

「そうだ」

 

 肯定に、代表たちは沈痛な面持ちを浮かべた。

 自然。

 野生のポケモン。

 それに加わる第三の障害が明確になったからだ。

 

「――ダイチ団。アシュ地方先住民による組織、か」

 

 フラシータはその名を口にした。

 アイスマンは多くを知らない。分かることは、アシュ地方の先住民がこの街に対抗するため集まってできた組織ということ。

 そしてヒメジョオンは、街に協力する数少ない穏健派であるということだった。

 

 

 

〇 〇 ○

 

 

 

「街の者が伝えてきた。奴らが“灰白の陥穽”へ向かう、と」

 

 夜空の下、数人の男たちが焚火を囲んでいる。

 中年から老人まで様々であったが、誰もが浅黒い肌に複雑な文様を刻んだ衣装をまとい、険しいまなざしを浮かべていた。

 誰もが拳を握り、次々と憤慨を口にする。

 

「よそ者め、一度見逃してやればつけ上がりおって」

「やはり奴らが居つくのを許したのは間違いだったのだ」

「アッシュの怒りに触れればどうなるか、まるで分かっておらぬ」

 

 憤懣やるかたない男たちであったが、やがて沈黙を保つ男の姿に気付く。

 

「……バレイショ団長、いかがする」

 

 それはまるで大樹のような男だった。

 骨ばった面長の顔は唇を固く結び、沈痛にしかめられた目元はじっと焚火を睨みつけている。

 呼ばれても男は沈黙と続けていた。

 だが思案するように目を伏せ、息を吐き、大きな肩をゆっくりと落とし、ひび割れた唇を開く。

 

「――“灰白の陥穽”に立ち入らせるわけにはいかぬ」

 

 思慮深い黒色の瞳は、今も焚火を見つめていた。

 

「かの者たちの街から“灰白の陥穽”へは、三つの地を越えねばならぬ。いずれもキングたちが統べる地だ」

「然り」

「では……」

「やらねばなるまい。この地の者であるが故に」

 

 膝に手をついたバレイショが立ち上がると、それこそ大樹がそびえ立つようだ。

 

「シガー、カカオ、ロベリアに報せを。キャプテンからキングたちへ、お力添えを願うのだ」

「分かった」

「団長はどちらへ」

「……ビクティニにお伺いを立てる」

「山キングに!」

 

 挙げられた名に男たちも腰を浮かせた。

 それはバレイショが仕えるキング、広い縄張りを持つ強大な野生のポケモンの名前であったからだ。

 しかもそのキングは、他のキングたちにはない特別な力を持っている。

 

「なるほど、あの力が加われば」

「そうだ、この地のあらゆるポケモンが奴らを阻むに違いない」

「必勝の火勢、カチドキ状態か」

「うむ」

 

 頷き、バレイショは遠くを見た。

 真夜中とは思えないほどの星明りの下、生えそろった牙のように並ぶ山並みを見つめる。まるでそこに住むポケモンすべてを見通すような、遠くを見つめる瞳であった。

 

「ビクティニがもたらす勝機の力、それを得たポケモンの力は並みならぬ。ましてキングたちが得れば太刀打ちすることはできないだろう」

 

 男の黒い瞳には悲しみがあった。

 それが意図して暴力を人に差し向けることか、人間のいさかいをポケモンたちの中に持ち込むことか、あるいはもっと多くの悔恨ゆえなのか。

 バレイショ以外がそれを知ることはできない。

 彼自身がそれを呑み込んだから。

 

「行こう。――我々ダイチ団は禁足地“灰白の陥穽”を守るため、探索先遣隊なる企てを阻止する」

 

 

 

 

 

 

「皆、準備はできたか」

 

 朝日が差す正門を前にアイスマンは振り向いた。

 その先には探索先遣隊の部下として配された仲間たちがあり、また見送るために来た街の住人たちが遠巻きに集まっていた。

 代表たちに隊長を任されてから数日。隊の設立が正式に公布され、準備を繰り返して今日にいたる。

 アイスマンは仲間たちへ目を向けていく。

 

「ロータス」

「ああ、部隊の庶務はこっちでやる。俺たちの後から来るほかの隊員が基地を作り、安全が確保されたら本隊が来る。そこらへんも調整しとくよ」

 

 リュックを背負う少年は、控えていた隊員へ書類を渡してから答えた。

 

「フラシータ」

「私は街との連絡役だ。姉さんやゲイル団代表と情報を共有し、指示や補給の段取りとつける」

「ありがとう」

「……お前の行動や素性について分かったことは逐一報告するからな。私が見張りだと忘れるなよ」

「分かった。頼む」

 

 そして、

 

「“灰白の陥穽”までの道は任せろ」

 

 名を呼ぶ前にヒメジョオンは答えた。

 

「本当にいいのか」

「言ったはずだ、私はお前たちに賭けている。伝承を守り外を知らない私たちに、新しいもの見せると」

 

 少女はこちらをまっすぐ見返し、それから地平線へと目を向けた。おそらく目的の場所がある方角へと。

 

「アッシュ、誰もが知る。でも会った者はそういない。その正体を知り、何得られるか、私は知りたい」

「何が起きるか分からないぞ」

「それいつものこと。今回は大きな決断があるだけ」

「……分かった」

 

 ヒメジョオンの決意は固い。

 記憶のない自分が持ちえない、自らの人生に対する自負や確信のようなものを見た気がして、アイスマンは羨む気持ちを禁じ得ない。

 

「これからの道筋を教えてくれ」

「ああ。この街から“灰白の陥穽”まで、三つの地越えねばならぬ。“紫雲の平野”、“常緑の大河”、“黄泉の渓谷”。どれもキングたちとキャプテンがいる土地」

「キャプテンとは、ダイチ団の構成員だな」

「そうだ。キングたちのお世話するため選ばれた者」

 

 そこで一旦言葉を切り、案じるような目とともに声をひそめた。

 

「気をつけた方がいい。ダイチ団代表バレイショ、きっとキャプテンたちに邪魔させるよう言ってる」

「探索先遣隊のことはすでに知られているんだな」

「私たちも一枚岩じゃない。それにバレイショたちとは望みが違っても同じ集まり。街に住む者も、知ったことをあちらへ話す者、いる」

 

 まして今回の目的は禁足地への侵入だ。

 伝統を重んじる先住民としては、タブーを侵すよそ者の行動に警鐘を鳴らす者がいてもおかしくない。

 

「更にこの地の強い自然とポケモンたちが行く手を阻む、か」

「無理を通すんだ、戦力は要るぜ。……先生からの選別だ、渡しとく」

 

 ロータスが取り出したのはいくつかの球体と書類だった。紙には絵図や文章が記されており、ところどころには注意書きも描きつけられていた。

 

「モンスターボールとその設計図だ。材料は現地調達して、自分の手で補給しろってことだな」

「従うポケモンを増やしていけ、ということか」

「そういうこと。ほら、ヒメジョオンとフラシータの分もあるぞ」

「おおっ、これがそうかっ」

「まず私に渡せ、お前は」

 

 嬉々としたヒメジョオンに対し、フラシータは唇をとがらせ不満気味だった。

 一同に渡し終えたロータスは全員に向き直り、指を立てて言葉を続ける。

 

「モンスターボールで捕まえるには相手と戦い、弱らせる必要がある。そのためのポケモンは皆連れてるよな」

「ああ」

「もちろんだ」

「ストロベリ博士がくれたポケモンだな」

「そうだ。大事にしろよ、貴重な研究対象だったんだから。そいつの力がお前の身を守るんだぞ」

「そうするよ」

 

 それからいくつかの情報を共有して、四人はついに正門の真下に並び立つ。

 あと一歩だ。

 もう一歩進めば街の外、自然とポケモンたちが抜け目なく襲ってくる過酷な外界となる。

 しかも今回目指すのは峠のような近隣ではない。はるか遠く、曇天と氷雪に閉ざされた禁足地の踏破だ。

 生半可な旅にはなるまい。

 気が付くと拳が固く握りしめられていた。

 

「……この旅で、オレの何かが分かるんだろうか」

「勘違いするなよ」

 

 呟きが聞こえたらしい、隣のフラシータが睨む。

 

「お前が素性を解き明かすことも任務の内だ。できるか、ではなく、やり遂げるのだ。そして私たちと暮らしていける者だと証明しろ」

「フラシータ……」

「見届けてやる。せめて良い者であれよ、アイスマン」

「――そうだな、オレもそう願っている」

 

 気が付くと、ヒメジョオンやロータスもこちらを見ていた。その目に不安や猜疑はなく、信頼するような光がある。

 そうだ。

 何も分からない身の上だが、それでもこうして並んでくれる人たちがいる。こちらを守るために戦ってくれるポケモンたちがいる。

 勇気と自信が湧く。

 何が待つか、自分がどういうものでこの先どうなるか。何も分からないとしても今を支えるものはある。

 だから進める。

 踏み出せる。

 大丈夫だ。

 

「――行こう」

 

 アイスマンは門の外へと歩き出した。

 

「アシュ探索先遣隊の出発だ」

 




こんな感じです。この先のことはほぼノープラン。
キング・クイーンはリージョンフォームを考えてるんですが、いくら二次創作とはいえオリジナルのリージョンフォームを登場させるのはいかがなものか……という感も。
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