女神の望んだお助けヒーロー 作:カニ
「とある世界の魔法少女を救ってくれませんか?」
と、それはそれは美しい女神に頼まれた。
美しいと言うより、可愛らしい?
「いやぁ、そんな〜」
あ、照れた。可愛い。
「こ、こほん! とにかく、貴方には魔法少女を救ってほしいんです!」
「何で俺が?」
「ん〜と。説明が難しいんだけど…………まず、この世界には因果と言う物があって、それは個々人に存在する糸のようなもの。因果の数は影響を与えられる人の数で、それはつまり世界を大きく変える力でもあるの。逆に言えば人一人が行える世界への影響は最初から決まって居て……あ、もちろん行動によって変化するよ? でもタルトちゃんも変化したとはいえ元々国を救うだけの因果があって、宿敵が世界規模に影響を与える為に後天的に因果が────」
「──つまり世界を変える力=因果で、私達魔法少女は相応の因果を持っているの。もちろん因果の数=魔法少女の資質じゃないんだけどね。クレオパトラさんなんか、王様っていう莫大な因果を持ってたのに魔法少女じゃないし。あ、クレオパトラさんといえばね、エボニーさんみたいに魔法少女に自分の都合の良い願いを叶えさせた結果因果も増えて、結果として最後のファラオとして名前を残すだけのはずが色々あって世界三大美女とか言われるようになったり──」
「ZZZ…………」
「──それで、無地の器。つまり世界に何の因果もない魂は逆説的に無制限に因果を得ることが出来るの。つまり世界を変える力を手に入れやすいということなの。そんな貴方に、魔法少女達の運命を変えてほしいの!」
「んがっ!? あ、ああ聞いてる聞いてる………なるほど。で、タルトケーキがなんだって?」
「………………………」
ジロリと睨まれた。
「とにかく、貴方が世界を救おうとすればそれだけで世界が救われる可能性があるの」
「せんせーい。でも俺が魔法少女を救おうとしなければ世界は何も変わらないのでは?」
「………………………あ」
「そもそもどうして俺?」
「ええっと、外世界から引き摺り込めそうな、自我崩壊を起こしてない死んだばかりの魂だったから…………つい」
死んだのか、俺。だが仕方ないか。じいちゃんの形見の孫の手を秘蔵記録媒体を自販機下に落としたエージェントに貸したのが運の尽き。
孫の手持ったままの走り出したエージェントを追いかけ、何故か某国の大企業のフリをした死の商人達と戦い、相棒を失いながらも新兵器のデータを基地諸共爆破したからな。
「………すごい、人生だよね」
「ふっ。たった一日、相棒が出来た一夏の思い出さ」
「それで済ませて良いのかなあ」
「まあ言いたいことは解った。『本当の意味で死にたくねえならさっさと魔法少女を救えクズが』ってことだな?」
「全然違うよ!?」
怒った顔もかわいい。あ、また赤くなった。そういやさっきから心を読んでたな……………………。ふむ。
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「カニパ〜ンチ!」
「ナゼカニ!?」
女神様がカニのハサミをもしたグローブで殴ってきた。
「え、えっちぃのはいけないと思います!」
「何故、カニ…………」
「え? あ…………何これ、何でカニ? 怖い!」
と、女神様はカニグローブを投げ捨てた。
「ところで、仮に俺が魔法少女を救おうと思っても世界の延命機能とかインキュベーターに邪魔されるんじゃねえの?」
「それは…………え、まって? 話ちゃんと聞いてたの?」
「聞いてるって言っただろ?」
「ええ…………あー、えっと。そうだね、邪魔されるかも。だから、えっと……転生特典をあげるね!」
ちゃんと勉強したもん、と平坦な胸を張る女神様。
「まどカリバー!!」
「まどカリバー!?」
今度は身の丈ほどもある剣をえい、と振るう女神様。
「…………何なの、この剣………」
「俺が知りてえよ」
「教えてあげようか」
「「!?」」
いま一瞬、女神様の声に似たような、ダミ声のような物が聞こえた気が………。しかし周りを見渡しても、誰も居ない。
「と、とにかく私は貴方に力を与えます」
「え、貰い物の力とか信用できないからやだ」
「やだ!?」
「そのインキュベーターとか言う奴らの扱い力………結局は技術なんだろ? それ学ばせろ」
「じゃあ知識を頭に送るね」
「学ばせろつってんだよ!?」
「えっと、でも………千年ぐらいかかるかも」
「俺をそこらの人間と同じ頭と思ってなめてんな? 5千年だ」
「増えた!?」
ソレカラドシタノ。
「おまたせ〜」
悪魔に力の一部を盗まれたりなんとか取り戻したりと女神が頑張っていたのを横目に勉強を続け、無事インキュベーターの力を理解、解明、習得、改良を行った少年は再び女神のもとに訪れる。
「本当に5千年も…………」
「だがこれでどんな世界でもそう簡単にしなねえ」
「う〜ん。まあ、そうだね」
「ところで魔法少女救って、俺に何の褒美があるんだ?」
魔法少女を救いたいのは女神であって、少年ではない。女神の願いをかなえるというなら、女神からなにか報酬を出すべきだ。
「う〜ん。私は因果関係と宇宙のエネルギー法則の女神だからなあ…………何か、欲しい?」
「……………女神のキス」
「ええ!?」
「冗談だ。今のところ望むものはねえよ。
「!!……………うん、またね!!」
女神は嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ転生させるね。えっと、この因果をずらして……あれ、つまった? エイ!」
何かを叩き込むような音と共に、少年の足元が輝き、少年はその場から姿を消した。
「とまあ、そんなこんなで俺はこの世界に来たのさ」
「「頭、大丈夫?」」
同じ言葉だが片方は馬鹿にするように、片方は心配するように少年こと
「お前達が過去を話せと言ったんだろ」
「えっと、私としてはご両親の話とか聞きたかったかなあ」
「ああ、前世では父親が浮気して離婚したあとあの人に似てると母親に顔を焼かれて施設に預けられた」
「「…………………え」」
「そのへんの傷も直してくれる女神様には感謝だぜ。次あったら足にキスしよ」
他にも火傷を理由に怪物だ何だと施設のガキにいじめられ職員も無視どころか加担し散々な目にあったが、まあ目の前の2人よりマシな人生だろうと、あえて語らない。
「てか、あんた魔法少女救う使命があるんじゃないの?」
「頼まれこそしたが、俺の知ったことじゃない。俺は俺が救いたいやつを救うだけさ、ここ最近魔女呼んで被害出してるカラス共は、何を願ったか知らねえが取り敢えず死ねって思ってる」
魔法少女とは願いを叶えた者達だ。その対価として、末期が定められている。なるほど、それを明かされず可愛そうだ………だが、願いを叶えたうえで救済を求めるのは止めないが、普通の人間なら一生訪れない奇跡を叶えて置きながら上から目線に魔法少女は選ばれたとか語り他者を犠牲にする黒尽くめ共は気に入らない。
「帆奈や瀬奈みたいに願うだけの相応の理由があるならともかく、テストで良い点だの好きな人と付き合うだの人の心を操るだのしといてまだ足りねえ魔法少女は、死ねばいいのに」
と、不意に樹の携帯がなる。メールだ。
「なんのメール?」
「ヒコ坊が彼女とのデートで来ていく服を選んでほしいって」
「へ〜、じゃあ『寿司』とでも書かれたTシャツ着させようよ」
「駄目だよ帆奈ちゃん、そんなことしたら………」
携帯を奪って勝手に文字を入力しようとする帆奈とそれを止めようとする瀬奈。樹は帆奈からスマホを取り返すとポケットに入れ、キッチンに向かい歩く。
「飯を作る。大人しく待ってろ」
「あ、手伝います」