見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
「それでこの二人が担当になるのは分かりましたが、何故ここに?」
俺の純粋な疑問に短髪の方……リーゼアリアがやたらフレンドリーに肩に手を置いて来た。
「そりゃあ可愛い姪っ子がいるから久しぶりに逢いたくてさ。かれこれ一年位会ってなかったもんだからねー」
つまりこの姉妹の私情かよ。
てっきり金髪捕縛のために手伝ってとか頼まれるのかと思ってた。だとしたら別に構わないけどな。
「あ、そうだ! ロッテお姉ちゃん、アリアお姉ちゃん。ちょっとママの説得を手伝って? ママは戦っちゃダメ! って言ってるけど、ひなもなのちゃん達を手伝いたいよ」
「「ダメ!」」
「っ!?」
いきなりの剣幕に怯むひなちゃん。猫姉妹の方もしまったと言った顔で少々罰を悪くしながらも続ける。
「悪いけど私も羽鳥に賛成なんだよ。羽鳥のときのような思いはもうしたくないの」ギロ
「え、……あ、あの………………」
リーゼロッテは現闇の書の主であるはやてを一度睨みつけるが、ヤマトが彼女を守るように彼女の前に立つ。
そんなヤマトの様子にロッテは「取って食いやしないよ」と手をパタパタと横に振った。
「それに蒐集されて傷ついた人達をひなには癒してほしい。癒すことも戦いだよ」
「……はーい」
不貞腐れてしまったひなちゃん。
なるほど既に管理局を退職した羽鳥さんの都合でだけで戦場に出さないだなんて可能なのかと思ったが、そもそもグレアム家が後ろ盾になっていたと言うわけか。
ひなちゃんを出すのは俺も反対だ、リーゼ姉妹の味方をするか。
「それにひなちゃんが回復に回ってくれればどうなると思う?」
「どうなるの?」
「俺が事件が終わった後に翠屋のケーキをご馳走します」
「え、ほんと!? ならひな回復頑張る!!」
……おいみんな、なんだその目は? 餌付けだって立派な戦略だぞ。だからコイツマジか……と言った風な顔で俺を見るな!! あ、ケーキと言えばフェイトちゃんとアリシアちゃんのケーキ食べてしまったから、事件終わったら二人にも奢って返さないとな(現実逃避)
何はともあれひなちゃんが陥落した事に胸を撫で下ろしたリーゼ姉妹は俺に一言ありがとと言うと
「申し訳ないけどひなを借りて行っても良いかしら?」
「任務前だしひな成分を存分に補給したくてねー」
などと言って来た。なんと言うマイペース。
まぁ金髪を相手にするとなると精神的負担はかなりのものだろうし、ひなちゃんの親戚ならば間違いはないだろう。
つーか親族相手に保護者面はできない。
「ひなちゃんがうんと言えば良いですよ」
「え、ほんと? ひなー、あっちで久しぶりにお姉ちゃん達と遊ぼー?」
「うん!」
「それじゃあこの子借りて行くわ。すぐに返すから」
ひなちゃんは猫姉妹と一緒に遊びに行った。
兄貴分としては少し心配ではあるが、本局からは出ないだろうし、何かあったら羽鳥さんが飛んで来るだろうから問題はないだろう。
フェニックスウイングでリンカーコアが完全に回復した羽鳥さんはハッキリ言って化け物、下手したらプレシアよりも高位の大魔導師だ。
「なぁレオ」
「はいはいレオですよ」
「あの二人……なんではやてを睨んでたんだ?」
「あれ、教えてなかったっけ?」
「えっとな、羽鳥さんは「私が説明するわ。ひなちゃんのお母さん……羽鳥って闇の書の被害者なのよ」り、リンディさん」
はやてを遮って発したリンディさんのその言葉に、羽鳥さんから過去を聞いたことのある俺となのはちゃんとはやて以外のメンツが驚愕の表情を浮かべる。
「羽鳥は11年前に闇の書に魔力を蒐集されてしまったの。その結果、魔法が使えなくなった羽鳥は何も言わずに管理局を辞めて地球に戻った。だから羽鳥の親族である……いえ、リーゼロッテやアリアにとっては羽鳥はお姉さんね。あの二人は闇の書にいい感情を持っていないのよ」
リンディさんの言葉にアリサちゃん達は気まずそうな表情を浮かべる。
そう言えばハラオウン一家も闇の書を見るときの目が険しいものがある。何か因縁があるのかも知れないな。
「一つ気になってたんですか。リンディさん達も闇の書を見るときの顔が怖いときがありますよね? やはりひなのお母さんの件ですか?」
思ったことを容赦なく聞けるヤマト、そこに痺れる憧れるぅ!!
だがせめてはやてのいない所で聞けよバカ!
「それもあるけど……はやてさんの前ではこれ以上言えないわ。ただ一つ言えるのは、はやてさんの事は恨んではいないわ。私は闇の書のせいで苦しむ人をもう見たくないだけ」
なんだが複雑な事情を抱えてるっぽいけど上手いこと躱した!!
羽鳥さんの件を言いづらそうにしていたはやてに対して、代わりに説明したり流石はリンディさんだな。
「だからはやてさんは気にしないでね?」
「……ありがとうございます。ですがいつか聞かせてください。闇の書の主として聞く義務がありますから」
取り敢えず今日のところはこれでお開きとなった。
医者曰くシャマルさんとザフィーラの兄貴も明日には目を覚ますだろうと言っていたので、また明日みんなでお見舞いに来る事にした。
◇
「あれ、れお君どこ行くの〜?」
「ちょっと家にね。今回の一件で仮面共に狙われるリスクが増えたから、寝泊まりだけ本局でやるのも危ないんだよ。だから荷物まとめてしばらくは本局で生活する事になった」
「そうなんだ。それじゃあ学校は?」
「しばらくの間休学する事になるね」
「そんなー! ひなつまんないよ」
「ごめんねー。事件が終わったらすぐ復学するつもりだから……」
「う、うん。つらいのはれお君も一緒だよね。分かった、気をつけて行って来てね!」
「はいよー」
「「…………」」
「ねぇひな。私たち急用思い出しちゃった」
「急用? なら急いで済ませないとね。もう夕方だしひなもお家に帰るねー」
「ごめんね〜。また今度ゆっくり遊ぼうね」
「うん、バイバーイ」
◇
さーてリンディさんとクロノ君に話を通して帰宅したわけだけど、もしかしたら今家にいるのも把握されてるかも知れないから手早く荷物を纏めてしまおう。
まずは衣服だけど本局でも洗濯はするけど一応五日分くらい……
直後下の階でガラスが割れる音がした。
「マジかよ。結界も使わないなんてもうなりふり構ってられなかってか。アスカ時空間てん––」
時空間転移を行使しようとした瞬間、俺の部屋のガラスも割れる。それとほぼ同時に俺の胸から腕が生えて来た。
……しまった。一階の襲撃はブラフだったか。
「アスカ、転移を頼む……」
『無理です、リンカーコアが摘出されてしまい魔力の行使が……!』
激しい痛みに耐えながらアスカに時空間転移を使わせようとするが、リンカーコアが抜かれたこの状態では魔法は使えないようだ。
直後一階から入って来たであろう闇の書を持った男がドアから部屋に入って来た。
守護騎士は……連れていないようだな。蒐集くらいなら仮面の男達でも出来るみたいだし、守護騎士は必要ないってか。
「随分と引っ掻き回してくれたものだが……次はお前の番だ」
男はそう言うと闇の書に俺の魔力を蒐集し始めた。
舐めやがって……だがなぁ、蒐集されそうな時の対策はしてんだよ…………。
「ふん!」
「うぐっ!? 貴様、何を……!」
俺は背後から俺の身体に手を突っ込んでいた男に肘打ちをして怯ませると、すぐさま男の握っていた自分のリンカーコアを右手で鷲掴みにする。
「うがぁあああああ!!」
「な!?」
……い、痛い。でも我慢だ! もっと力を込めろ!!
「ぁああああああああああああああ!!!!」
パキィ
「こ、コイツまさか……自分のリンカーコアを………………」
「握りつぶした…………」
や、やばい視界が歪む。……でも最後まで蒐集はさせなかったぞ、ザマァみやがれ。
「おい、何ページ埋まった!?」
「まだ5ページ……クソ、やられた!!」
「……クク、襲撃は失敗だな。5ページも多いっちゃ多いが…………100ページよりは……マジだろ?」
「ぐ……だが戦線復帰はさせん! 悪いが闇の書の蒐集が終わるまでは拘束させてもらうぞ!!」
「は? 拘束? 何寝ぼけた事言っちゃってんのお前ら?」
「カハッ」
直後腹部の灼けるような痛みと口内に鉄の味。視界が霞んでよく見えないがこの感覚には覚えがある。……半年前の金髪の不意打ちだ。
「き、貴様、何故ここに!?」
「……お前には内緒で来たと言うのに!!」
「踏み台の家を張ってたに決まってんだろぉ? もうこの踏み台は許さねぇって決めたんだからなぁ」
次回『踏み台その2、死す』(嘘)