見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
さて龍帝院は消すと決めたは良いものの、まずは俺がヘマした分の後処理をしなくては……。
俺は貧血で辛い身体を引きずりながら必死に本局を移動する。
「れお君動いちゃダメだよ!」
「いや、今は動かないとダメなんだよ……。下手したら管理局が崩壊してしまう」
ひなちゃんに肩を貸してもらいながらしばらく歩いていると、途中ミゼット婆ちゃんと鉢合わせた。丁度良い彼女にも用があったのだ。
「あぁレオ君!! あなた殺されかけて家も燃やされたって聞きましたよ。大丈夫なんですか!?」
「平気です、この子が怪我は完璧に治してくれました。全く自慢の幼馴染ですよ」
「え、えっとあの……桃崎ひなです……」
「ひなさんって言うのね。ありがとね、孫を助けてくれて」
「誰が孫ですか誰が?」
私とあなた、血は繋がってないじゃろがい。それに確かにこの世界の俺の両親にあたる人たちは、殉職した管理局員らしいけどミゼット婆ちゃんと関わりがないでしょうが。
「孫みたいなものですよ」と宣うミゼット婆ちゃんに俺は詰め寄る。
「ミゼット婆ちゃん、俺がヘマしたせいで陸の方々海に対してブチギレてたりしないよね!?」
「……正直良い状況とは言えないわね。丁度今レジアス中将が本局の最高裁判官を務めるアルフレッドにすごい剣幕で詰め寄っていてね」
「え、どうして怒ってるの?」
それはねひなちゃん。あのクソ野郎が龍帝院のレアスキルと魔力量を見て釈放したからだよ。
もし裁判官が龍帝院を魔力を大幅に封印した上で刑務所に入れて仕舞えば、そもそもここまで事態が大きくはならなかったんだからね。
そして彼は海よりの思想であり陸の締め付けにも加担しているとレジアスのおっちゃんは愚痴を吐いていた。つまりおっちゃんにとってはヘイトが溜まっているのだ。
「それに自画自賛するようでなんだけど、バッテリーデバイスを作ってしまったせいで陸からの評価は高いんだよ俺。だから今回のヘマが導火線に火をつけたとなると……海と陸の亀裂はマリアナ海溝より深くなってしまうってわけ」
「ほぇー、よく分かんない」
「……ひなちゃんはそれで良いよ」
ドロドロした大人の事情なんて知らない方が健やかに育てるんだからね。
「と言うわけでおっちゃんを宥めに行きたいんだけど、今どこにいます?」
「この廊下の突き当たりにある部屋よ。関係者以外は立ち入り禁止だけど……私が一緒ならば問題ないでしょう」
「流石はミゼット婆ちゃん。よろしく頼みます」
ミゼット婆ちゃんを同行者につけた俺たちはレジアスのおっちゃんがいる部屋へと向かう。
まだ扉を開けていないのにおっちゃんの怒鳴り声が聞こえる。うわぁ、すごい怒ってるよ。
「だから儂はいつも言っていたではないか! 実力があるからと誰彼構わず管理局に入れたら取り返しのつかない事になると!!」
「だが龍帝院を釈放した事で陸も多少は任務が楽になったろう!? 問題を起こしたときだけ私を責めるな!!」
「楽になんてなっておらん! 貴様ら海が問題児を押し付けてくれたおかげで、我々は後始末に追われたんだぞ!! そして年末に関しては防衛費の削減……良い加減にしろ!! 地上本部を潰す気が貴様ら!!」
「このおじちゃん怖い…………」
あー、よしよしひなちゃん。確かにひなちゃんからすれば、おっちゃんは怖い大人に入るもんね。取り敢えずミゼット婆ちゃんの後ろに隠れておこうか。
「年末の防衛費の削減は夏の犯罪の発生率が少なかった事と、少なかったにも関わらず無様な動きをした陸の責任だろう」
最高裁判官の横にいた本局の中将がそう吐き捨てる。いや普通動きが悪いなら防衛費を増やすなりするべきだろうが。コイツら大丈夫か?
だがその言葉にレジアスさんはバァンと机を殴りつけた。
「だからそれは龍帝院をお前らが押し付けたからだろう!! ……もう我慢ならん! 貴様らが防衛費を渡すつもりがないなら我々で確保する!!」
「何をしようとしているレジアス!!」
「もう貴様らなんぞ信用出来るか! 今日を持って地上部隊は独立させていた「はい、ストォップ!!」なレオか!!」
あっぶねぇ!! 少しでも遅れてたら、少しでも目を覚ますのが遅かったら管理局二つに割れてたよ!! 激動の時代になってたよ!!
「誰だお前は! ここは関係者以外立ち入り禁止、即刻立ち去れ!!」
「私が許可しましたよ」
「み、ミゼット統幕議長!?」
いやー、やっぱ持つべきものはコネだよな。ほら見ろ、奴さん目に見えて驚いてやがる。
俺は無言でレジアスのおっちゃんの元へ行く。
「一旦落ち着いておっちゃん。独立するって言ったって、資金面で無理があるでしょ? それともミッドから税金取り立てる? それこそ本局と戦争になって、治安は悪くなる一方だよ?」
「む、むぅうう……。だがバッテリーデバイスを用いれば、資金面も数割削減できる! 使える人員も……」
「おっちゃん。あれは戦争をさせるために渡したんじゃないんだよ?」
「む……す、すまん。頭に血が上り過ぎていたようだ」
素直に謝ってくれた。おっちゃんの行動原理はミッドの平和。故に戦争を引き合いに出せば潔く引いてくれる。それにバッテリーデバイスをどう言う使い方をしようが構わないが、戦争させるために管理局に渡したわけでは無いのは本心だ。プレシアの件で司法取引をするために渡したのだ。
よし次は……海の中将と最高裁判官だね。
「ねぇアンタらが龍帝院を釈放したって本当? そして陸に面倒ごとを押し付けたって」
「ひ、人聞きの悪い事を言うな! 彼の力は管理局に貢献してくれるものだった! それに彼の能力は地上の平和を守るのに最適な能力だ!!」
「まぁそれが原因で地上本部の仕事が増えたわけだけど、それは百歩譲って良いとしますね? でもあなたら龍帝院が問題を起こしても、レジアス中将の責任にしてたって聞きましたよ?」
「それは龍帝院を御しきれないレジアスが悪い! レジアスの責任だ!!」
「そうですか……なら、今回の龍帝院がやった俺に対する殺人未遂や現住建造物等放火罪については全部アンタらに責任追及しますわ」
俺の言葉に二人は何言ってんだコイツと言った表情を浮かべる。
でもそれがお前らの言った理論だ。
今回海が龍帝院を御しきれなかったから、俺は怪我したし家も無くなった。またはやても家族を操られる羽目になったし、闇の書の被害者の方々はひなちゃんのおかげで後遺症は残らなかったものの、心に傷を負った。
さぁ、全部責任を取れ。
「ふざけるな責任の所在は龍帝院にあるだろう!?」
「え、レジアスのおっちゃんに責任被せてたアンタらがそれを言う? 呆れた……おっちゃんのこと危険思想とか言ってるけど、アンタらの方がよっぽどの危険思想じゃんか。それに龍帝院の不始末を理由に陸の防衛費を削減しようとしてるけど、そんな事したら犯罪件数が増えるって分からないのかね?」
「ふざけるなレジアスの犬がぁ!!」
「そうだ! 陸の犯罪と海の犯罪は違う!! 陸の防衛費を海に回さなければ海の凶悪犯罪は無くならん!!」
「バランスが大事だと思いますけどねぇ……。そもそもミッドチルダ……いや管理世界に住む人を守るのは陸軍が担当してるんでしょ? そんな事して管理世界の人が黙っているとは思えませんがね?」
「ふん! 管理局あっての管理世界だ!! 海が事前に凶悪犯罪を捕縛できれば、奴らも文句は言うまい! 管理外世界出身のお前には分からないだろうけどなぁ!!」
「……さいでっか。確かに管理外世界の俺には分かりませんわ。……だから
俺はそう言うとボイスレコーダー型デバイスを取り出して、今の会話をもう一度流してやる。
ガキだからって舐めやがって、こっちは録音してたんだよ馬鹿野郎。
あとはこれをミッドのマスコミに売りつければ、ミッドの連中も黙ってはいまい。
「さぁ、行くよひなちゃん」
「え、うん」
俺は待てと言っている海の中将たちを無視して外に出た。
そして俺の後に続いて出てきたレジアスのおっちゃんに、デバイスを渡す。
「どう使うかは任せます」
「……流石だなレオ。なぁ、やっぱりウチで働かんか? 頑張れば儂の右腕……いや、儂の後継者にも」
「いえ、俺は研究者ですんで」
よし海と陸の亀裂がさらに深くなったけど、なんとか管理局が崩壊する事態は避けることが出来た。
それにレジアスのおっちゃんに海の弱みも渡したし、これで当分は海もデカい顔が出来ないだろう。いや、おっちゃんの事だからこの証拠を元に徹底的な責任追求とかに乗り出しそうだけど……
もうそこから先はおっちゃんらでやってくれ。俺は闇の書……龍帝院に専念させてもらいますよ。