見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
「シグナム、ヴィータ! 良かった……良かったよぉ!!」
「主はやて……ご心配をおかけしました」
「う"ぁああああん!! はやてぇえええええ!!」
その後猫姉妹を連れて本局に戻った俺たちは、この二匹を拘束してからひなちゃんにシグナムさんとヴィータちゃんを回復させた。
「……ごめんね。ひな、今日はもうお家に帰る」
「……うん、ひなちゃんまた明日ね?」
ひなちゃんは二人の治療を済ませるとさっさと帰ってしまった。
そりゃそうだ、追っていた仮面の連中が仲の良い親戚だったのだ。ひなちゃんも内心穏やかではないだろう。
そして猫姉妹の方もクロノ君に取り調べを頼む。
本当はクロノ君について行って我が家のガラスを割って襲撃したことや結果的に家を焼かれた件について徹底的に問い詰めたかったが、流石に犯人がひなちゃんの親戚だと聞いて衝撃が隠せないのだ。情けない話だけどな。
そして猫姉妹の主人であり黒幕候補のギル・グレアムについてだが、リンディさん曰く、彼の元に管理局員を向かわせたらしいのだが、そこにギル・グレアムはいなかったらしい。闇の書をなんとしてでも完成させる気満々の様だ。
「ヤマト、なのは、それに他のみんなも。我々を助けてくれたこと……心から感謝する」
「気にしないでくれ。友達なら助けるのは当たり前だ」
ヤマトは自然体でそんなカッコいいセリフを言うと、本題に入った。
「それで……お前らに何があったんだ? どうして洗脳なんてされた?」
「……はやてちゃんの定期検診の日まで遡るんだけどね……」
初めて襲撃された日に守護騎士達が話した通り、はやての身体は闇の書の呪いに侵されてじきに死ぬ。
守護騎士達がはやての命が危ないと知ったのは、病院での定期検査の日。はやての主治医の先生に麻痺が深刻でこのままだと命に関わるとシグナムさんとシャマルさんが説明を受けたからだった様だ。
「何故……何故気づかなかった!!」
「ごめん……ごめんなさい…………私!!」
「お前にじゃない! 自分に言っている!!」
「二人ともどうしたん? ……ってシャマル! 泣いてどないしたん!? シグナムが泣かせたんか!?」
「……大丈夫よはやてちゃん! ちょっとシグナムから泣ける話を聞いてただけだから…………」
「そうなん、シャマルがこんなに泣くなんで珍しいな。ちょっと私にも聞かせて?」
「ダメですよはやてちゃん。はやてちゃんにはまだ早いです」
「ぶー、大人はすぐそう言うこと言うん。もーええもん、子供らしくヴィータと遊ぶわ」
その夜はやてには守護騎士で用事があると言って、夜の海辺で集まりはやての状態をヴィータちゃんとザフィーラの兄貴に共有した。
「……助けなきゃ、はやてを助けなきゃ!! シャマル、シャマルは治療系得意なんだろ!? そんな病気くらい治してよぉ!!」
「……ごめんなさい。私の力じゃどうにも…………」
「なんでだ……。なんでなんだよぉ!!」
特に闇の書の蒐集に疲れ切っていて、蒐集という使命から解放してくれたはやてと仲が良かったヴィータちゃんはすごく悲しんだらしい。
はやての身体を蝕んでいるのは闇の書の呪い。故に闇の書を完成させて仕舞えばはやては呪いから解放されるだけでなく、足も動かせる様になると踏み、守護騎士達は闇の書を完成させる決意をしたそうだ。
「でも待って! 羽鳥さんは私達に魔導師人生を奪われたのよ。蒐集したら羽鳥さんみたいな人をまたたくさん産むことになるんじゃ……」
「だったらはやては死んでも良いっていうのかよ!!」
「そうは言ってない! まずはヤマト君やなのはちゃん達に連絡して、説明した上でリンカーコアを蒐集させてもらいましょう」
「そ、そっか。そうだよ、アリサ達だったらきっと分かってくれる! 説明すればリンカーコアを蒐集させてくれる!! 一気に400ページくらい埋まるよ!!」
「そうか。400ページを一気に集めて仕舞えば、後は管理外世界の原生生物から蒐集すれば間に合う。管理局に捕捉されることはないだろう」
という事で、まずは俺たちに事情を説明して魔力募金を頼みに行こうとしていたようだ。
だが……
「待って!!」
それを止めたのはなんとはやてだったそうだ。
内緒でコソコソ何かをしようとすると、嬉々として突撃をかましてくるのが車椅子レーサーだ。今回も守護騎士が何か内緒事があると感じてこっそり跡をつけていたのだと言う。
「え、はやてちゃん!? な、なんで……」
「うちに隠し事をしようだなんて、10年早いんや! あかんよ、蒐集だけは絶対にあかん。ヤマト君達と同意の上でやるって言ったって、ヤマト君達が魔法を使えなくなってしまうリスクはあるんやろ? それに残りの266ページも、別の生き物に迷惑をかけてしまうならやっぱりダメや」
「で、でもはやての命が……!!」
「大丈夫。まずはレオくんの所に行ってみよ? レオくんはデバイスのお医者さんなんやろ? 闇の書の呪いも解いてくれるかもしれん」
「で、ですがそれでダメなら……」
「そのときはすっぱり諦める。死ぬのはちょっと怖いけど……空の向こうのお父さんとお母さんの元へ行ける。それにみんなが見送ってくれるなら私は満足や。蒐集のお休みがこんなに早く終わってしまうのは申し訳ないんやけどな……?」
「……なんだよそれ。なんだよ……、そんな簡単に諦めるなよ!! はやてのバカヤロー!!」
「あ、ヴィータ!!」
はやてのことが大好きなヴィータちゃんは、はやての決断に納得いかず走ってアリサちゃんの家に向かおうとしたらしい。
彼女達にさえ話して仕舞えばはやてを説得してくれると思って……。
「おい何俺が失敗する前提で話してんだコラ? 成功させるに決まってんだろ? それに無理なら無理で、闇の書から守護騎士システムだけを切り離して、闇の書だけを破壊するなりなんなりしたぞ俺は?」
「す、すまん。闇の書は太古の遺産、それを主と同い年のお前が修理できる訳ないと思い込んでしまった……」
「ま、まぁまぁ。レオがデバイス界に革命を起こした超人だってこの人知らないんでしょ? しょうがないよ」
「まぁレオの事は放っておいて、それで向かってる途中に洗脳を受けたと?」
「……うん」
ヴィータちゃんにそのときの事を詳しく聞く。
ヴィータちゃんは走ってバニングス邸に向かっていたが、バニングス邸はそこそこ離れている。本当ならばわりかし家の近い俺やひなちゃん、ヤマトになのはちゃんの家に行けば良かったのだが、余裕の無くしたヴィータちゃんには一番仲の良いアリサちゃんに助けを求めることしか頭になかったらしい。
その途中で金髪とあったらしい。
「だ、誰だよお前……? そこどけよアタシは急いでんだ!」
「俺の顔を見て。はやてを助けたいんだろ? 力を貸してやるよ」
「……ぁ」
そしてその後のことは覚えていないと言う。
「それで残りの守護騎士はどうして洗脳を……?」
「主には家で待っててもらって、私達で手分けしてヴィータを探していたんだが……」
「そのときに洗脳を受けちゃったの」
「我らとしたことが、情けない」
「アタシが悪いんだ。アタシがもう少し考えて行動しておけば……!」
「コラ」
自分を責めて泣きじゃくるヴィータちゃんの頭にアリサちゃんが軽く拳を押し当てる。
「アンタが悪いんじゃない。かと言ってはやても悪くはない。……まぁはやては諦めて死のうとした件について後でお話しするけど」
「え、いや私はレオ君に全てを託そうとしただけで、生きるのを諦めた訳じゃ……」
何か言おうとしていたはやてを無視してアリサちゃんは続ける。
「全部アンタを操った龍帝院と、あのクソ猫どもが悪いのよ」
「そうだよ。それに仮面の親玉……ギル・グレアムさんから闇の書を取り返せばレオ君がなんとかして……レオ君?」
……おっといけない、ぼーっとしていた。
ダメだな。やっぱ猫姉妹とかギル・グレアムとか聞くとひなちゃんの事を考えてしまう。
今のを聞いた以上闇の書が先決だって言うのに……。
「ひなちゃんの事が心配なんやな?」
「……すまんね。はやてにとって守護騎士を傷つけた加害者の孫娘なんて見たくもないったぁああああ!?」
直後、俺の脛に凄い速さでタイヤがぶつかる。
犯人は怒った表情のはやて。
「私を舐めないでもらってええか!? 確かにグレアムおじさんについて思うところはある! でもそれとひなちゃんは関係ない!! ひなちゃんがどんなに罪悪感を持ってても、私はひなちゃんを恨む気はないで!!」
「……流石は車椅子レーサー。器が違うや」
俺なら大切な人をここまでされたなら、親類縁者子々孫々まで憎悪の対象に入ってるものだが……。
だからこそはやてはひなちゃんを恨んでると思い、今はひなちゃんの話題は出したくなかったのだが、はやてがいいと言うならお言葉に甘えさせてもらうとしよう!!
「ごめん。闇の書が先決なのは分かるんだけど、まずはひなちゃんの所に行ってもいい? 兄貴分として励ましてくる!!」
「行ってらっしゃい。ついでに励まし終わったらウチの所に連れてきて! 話したい事があるんや!!」
はやてに背中を押される形で俺は本局を出て、ひなちゃんの家に向かうのだった。
次回、落ち込んでいるひなちゃんを励まそうの回です。