見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
ピンポーン
閉店時刻を既に過ぎシャッターが閉まったモモザキベーカリー。シャッターの隣の階段を登り、桃崎家のインターフォンを鳴らすと羽鳥さんが出てきた。
「……レオ君。こんな夜遅くに一人で来るなんて危ないわよ。上がってちょうだい」
出てきた羽鳥さんに中に入れてもらう。
いつもの様な優しい雰囲気ではなく、とても深刻そうな顔をして悲しそうな雰囲気だった。
「…………ごめんなさい。私の父の件、なんてお詫びしたらいいのかな。レオ君の家を燃やした龍帝院と父さんが手を組んでるなんて…………」
「いえ、俺の家焼いたのは龍帝院の独断ですし、リーゼ姉妹は寧ろ命の恩人ですよ。……ひなちゃんはいますか?」
「えぇ、部屋で泣いてる。母親として情けないんだけど、私も動揺しててどう励ませばいいか分からないの。頼める義理じゃ無いのは分かってるけど……お願いしてもいいかな?」
「はい。ひなちゃんが心配だったから来たんで」
ひなちゃんは部屋にいるのか。それじゃあ早速行かせてもらおう。
「……あの二人は命の恩人じゃないわ。ロッテとアリアがレオ君を蒐集さえしなければこんな事には……」
ドアの前で猫モードのリニスがドアを見続けていた。主人が出てくるのを待っているのだろう。
「やっほリニス。どいてもらっていい?」
「レオさん。……一人にした方がいいと思ってましたが、レオさんなら大丈夫ですね。主人のこと、よろしくお願いします」
そう言って、リニスはリビングの方へ向かった。随分と信用してくださってることで、ありがたい限りですよ。
ドアを数回ノックして、10秒程度待ってからドアを開ける。
……あれ? ひなちゃんいない……あ、布団にくるまってくる。
「ひなちゃん、起きてる?」
「……れお君?」
布団から出てきたひなちゃんは泣き過ぎたのか目が腫れてしまっている。
もぉ、可愛い顔が台無しだ。
「…………」
「…………」
……やっべ、励ますぞー! って息巻いて来たってのになんて言えばいいか全然思いつかん。ヤマトだったらヒロインを惚れさせるクサイセリフなんて100通りくらい浮かぶはずなのに。
「れお君、これ返す」
ひなちゃんはそういうとロイヤルホープを俺に手渡して来た。
「……やっぱり弓は使いづらかった?弓が難しいなら、剣モードと槍モードもあるんだけど……」
どうしてロイヤルホープを返したのかは何となく察しがついたが、ひなちゃんの口から聞きたかったので今回は敢えて見当違いな返答をする。
ひなちゃんは首をフルフルと振ると続ける。
「ひなにこれを使う資格なんてないもん。れお君のお家燃やした悪い人のひなに……」
「燃やしたのはひなちゃんじゃないでしょ?」
「ひなだよ。だってロッテお姉ちゃんとアリアお姉ちゃんがいる所で、ひながどこ行くか聞いちゃったから二人はれお君のリンカーコアを奪いに行ったんでしょ? だからひなも加害者だよ」
違うよ。どっちしろひなちゃんを見かけた時点でどこに行くかは勝手に言ってたはずだから。
クソ、あの二匹も盛大にやらかしやがって。百歩譲って蒐集するにしても、本局とかに乗り込んで蒐集さえすればひなちゃんもこんな思いをしなくて済んだのに。
命を助けてもらった借りはあれどこれは許せねえな。あのクソ猫二匹どうしてやろうか。
「それにお姉ちゃん達やお爺ちゃん達がみんなのリンカーコアを蒐集しても、孫のひなが癒したらお爺ちゃん達に疑いの目は向かなくなる。ひながみんなを癒したりなんかしたから、今までお爺ちゃん達は捕まらなかったんだよ。こう言うのをマッチポンプって言うんだよね?」
「それは考えすぎだよ。例えひなちゃんがいい隠れ蓑になっていなかったとしても、あの人達は巧妙に隠れてやっていたはず」
「でも隠れ蓑になってたのは事実だもん。ひなもお爺ちゃん達やリュウヤ君と同じ、仮面の人達の一味だったんだよ」
……ダメだ。よく考えたら俺って落ち込んだヒロインを元気付ける能力皆無なんだった。だって近くにいるヤマトにそう言う能力吸われてんだもん!! (冤罪)
と俺が内心くだらないことを考えていると、ひなちゃんはポロポロと涙を流しながら続ける。
「だからもうひなは魔法なんて使わない! はーちゃんにも……はやてちゃんにも会わない! れお君の作ってくれたロイヤルホープは欲しがっていたアリサちゃんにでもあげて。アリサちゃんならこの子もちゃんと使ってくれるはずだから……」
あ、これはもう俺が何を言っても立ち直ってくれないパターンだ。
……よし。
俺は無言でロイヤルホープを突っ返すと立ち上がる。
「ひなちゃん、ちょっと俺に付き合って」
「ふえ? ……で、でも」
「でももいやも無し。今日のひなちゃんには拒否権は無し。ほら行くよ……あ、ミラクルホープとロイヤルホープは持って来てね」
ひなちゃんの手を引いて彼女の家を出ようとする。
……あ、夜間外出になっちゃうし、羽鳥さんには報告しておくか。
(羽鳥さん。ひなちゃん借りていきますね。……もしかしたら怪我させるかもしれないんで先に謝っておきます。ごめんなさい)
(……そう、本当ならぶっ飛ばしてるところだけど今回だけは許すわ。ただし、そこまでするからには絶対にひなを立ち直らせてね)
(必ず)
◇
ひなちゃんの手を引いて、海辺まで移動するとアスカを展開して結界を張る。これは俺が使えるかなり高位の結界だ、フルパワーで魔法を撃っても壊れないほどのな。
「れ、れお君?」
「さ、ひなちゃん。……喧嘩しよっか」
「え、ケンカ?」
俺はヤマトみたいにカッコいいセリフなんて言えない。例え言った所でそれは本心では無いから反ってひなちゃんを傷つけてしまう。だから押してもダメなら引いてみろ、伝えたいことは喧嘩を通して伝える事にしたのだ。それに身体を動かして汗を流せば、ネガティブな気持ちも吹っ飛んでくれるはずだ。
「ごめんなカリバー。
『構いません。マスターは全力を持ってあの子に伝えるのでしょう? ならば私もそれに応えるまでです』
「ありがとよ。行くぞアスカ、
「え、れお君。その姿…………」
アスカを展開した際のバリアジャケットであるロングコートを脱いで、カリバーを展開するとロングコートを脱いだ上から銀色の胸当てと脛当て、肩アーマーにアーセナルの籠手を装備した姿。
ユナイトフォーム。ロイヤルホープに組み込んでいるパワードシステムを適用させたカリバーを使った現在の俺の最強モードだ。
そしてカリバーの真の姿であるフォースカリバー。まぁ言ってしまえば炎熱、氷結、暴風、電気の全ての属性を込めた剣である。だが四属性の力を込めた分破壊力は絶大だ。
「ひなちゃんもセットアップして。戦うよ」
「え、でも……」
「ひなちゃんはもう魔法は使わないって言ってたね。はっきり言うけどそれは逃げだ。ひなちゃんが自分の事を加害者だって言うなら、家を燃やされた被害者の俺と本気で戦う義務がある。セラフィムウイングでもロイヤルホープでも何でも使って全力で戦ってもらうよ?」
アリサちゃんもびっくりな暴論だ。おそらく今の発言をなのはちゃん達に聞かれたなら絶対にドン引きするだろう。
でもひなちゃんを戦わせるためには、これくらい言わないとダメだ。
それに俺が卑怯な手を使わず正々堂々戦えば実力も拮抗している。俺が一方的に殴る様な展開にはならないだろう。
「そうだね。ひなは悪い仮面の一味なんだからやっつけられないとダメだよね……。ミラクルホープ、ロイヤルホープ。セットアップ!」
ひなちゃんも現在の最強形態であるプリンセスフォームに変身した。
ご丁寧にセラフィムウイングも展開して、準備万端の様だ。
「やっつけられようなんて考えるな、俺を殺す気で来い。行くよひなちゃん。全力で戦わないと許さないから!」
「……どうなっても知らないから。覚悟してね、れお君!」
「「だりゃあああああああああ!!」」
俺とひなちゃんは一瞬で距離を詰めると、剣モードのミラクルホープとフォースカリバーをぶつけ合った。
次回、レオ君VSひなちゃん。
因みに結界内に羽鳥さんがスタンバイしており、いつでも仮面ジジイや金髪などの乱入者をぶっ飛ばせる様にしています。