見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
「昨日は急に帰っちゃってごめんなさい」
「別にええよー。グレアムおじさんに思うところはあるけど、ひなちゃんは何も悪く無い。私が保証する、だから落ち込まないで?」
「うん。ありがとね、はーちゃん」
ひなちゃんとの喧嘩から翌日、ひなちゃんは自分の意思で本局まで行き、はやてに謝罪をした。
そんな彼女をはやては笑いながら許した事で、二人は無事に和解したのだった。いやー、良かった良かった。
「ところでタンコブ出来てるけど、治さへんの?」
「うん、これは自然に治るのを待つよ」
「……そのタンコブ、近くで正座してるレオ君と関係あるん?」
……俺は現在、『僕はひなちゃんに無茶をさせました』というプレートを首にかけられて正座させられている。羽鳥さんから「元気付ける為だとしてもいくらなんでも、娘に無茶をさせすぎよ!」とお説教を受けて、現在反省中なのだ。
「うん、レオ君と昨日ケンカしちゃったんだ。このタンコブはそのときに出来たの」
「何してんねんこの銀髪ヤクザ」
「でもでも、そのときにひなは悪くないって言ってくれたの! あのケンカがあったからひなは立ち直れたんだよ!!」
「ひな達が良くても私たちは心配したんだからね? 分かってるのかねこの二人は……」
「「ご、ごめんなさい……」」
ジト目のアリシアちゃんに詰め寄られて謝罪する。この子は昨日からずっとこんな感じだ。アリシアちゃんも俺を好きって言ってたし、恋敵であるひなちゃんとも仲がいい。多分一番心配したのはアリシアちゃんなんだろうなぁ。
「……ひな気にしてないから正座なんてさせなくてもいいのに、早くママ戻ってこないかなぁ」
「ただいまー」
ひなちゃんの呟きが邪神に届いたのか、丁度いいタイミングで羽鳥さんが帰還した。
彼女は先端に血のついた薙刀型のデバイスを凄くいい笑顔で持っており……
「ひなちゃん虐めてほんとすみませんでした。後生ですのでどうか……どうか命だけは………………!」
「ま、ママ! ダメだよ、れお君殺しちゃダメー!!」
土下座して命乞いをする俺と、俺を庇うように母親の前に立つひなちゃん。だが羽鳥さんは困惑したような表情を浮かべると、薙刀を見て「あぁ」と一人で納得して、デバイスを納めた。
「これでレオ君を殺したりはしないわよ。ちょっとウチの娘と娘の友達二人を悲しませた猫二匹に落とし前をつけに行ってただけだから……」
い、命を持って償わせやがったぞこの人!?
だが詳しく聞くと痛めつけただけで、殺したりまではしてないようだ。この事件が終わったら保健所に連れて行こうかと呟いていたのは聞かなかったことにしておく。
「やりすぎよ羽鳥。いくらひなさんがいるからってあそこまでやる必要無いじゃない」
アースラから帰還したリンディさんが呆れた様子で部屋に入ってきた。
彼女に続いてクロノ君やエイミィさん達も入室する。おやおや管理局の皆さんお揃いで。
「あら何言ってるのリンディ。マッチポンプをする奴ら相手にひなに癒しの力なんて使わせるわけないじゃないの」
「……え。でもあれ全治数ヶ月よ?」
「ひなも使わない! ロッテお姉ちゃんとアリアお姉ちゃんにははんせーして貰います!」
ドンマイ猫姉妹、テメェらがやり過ぎたからだ。闇の書が復讐相手なのは分かるけどもう少しやり方を考えるんだったな。
「あ、そうだわ。拷問中にロッテがこれ渡すから許して……って言ってこれを渡して来たんだけど、これデバイスよね?」
「僕がマタタビを使っても一切の情報も吐かないで黙秘し続けてたのに、羽鳥さんが来た瞬間に情報を吐いて命乞いまでしたんだ。……どんだけ羽鳥さんが怖かったんだ?」
そりゃ羽鳥さんは猫姉妹の姉のようなものって言ってたし、されたら嫌な事とか把握してたか、とっくに恐怖を植え付けていたんでしょ。知らんけど。
何はともあれ羽鳥さんが手渡して来たペンダント型のデバイスを受け取る。
武器じゃないって事は特殊なデバイスなんだろうけど……どんなデバイスなんだ? ちょいと確認…………。
「……あー、これだ。これだよ」
「これとはなんだ?」
「急に強くなるもんだからおかしいなとは思ってたけど、コイツでドーピングしてたんだ」
デバイスを覗いてみると各種強化魔法のプログラムが入っており、魔力を流せば自動で強化魔法をしてくれる代物だった。
しかもかなり高位の強化魔法だからこれ一つでだいぶ強化される代物。
「あぁ、これならウチの子達も持ってたわ」
「ばっかはやて!! 何故それを早く言わない!?」
「言ったよ! そして管理局に押収してもらったよ!!」
「仕事しろよ管理局ぅうううううう!!」
おいおい、いくら何でもそれは笑えねえよ!
普通こう言うのは真っ先に解析に回すのが普通だろうが何やってんだよおい!!
俺がそう叫び散らすと、言いづらそうなエイミィさんがこっちに来た。
「あ、あのねレオ君? これとっくに解析に回してるの」
「ダニィ!?」
「でもマリーが言うにはプログラムを開く為のセキュリティが厳重過ぎて、解析できないって言ってたの、それで今はセキュリティを突破するために試行錯誤してたみたいなんだけど…………」
「え、あんなガバガバセキュリティ三秒で突破できますよね?」
「え?」
直後空気が凍る。
あー見れば分かる。俺なんかやっちゃいました系だな。まさか自分がやる事になるなんて……
「……ま、まぁレオのデバイス知識は世界一ィ!! って事にしておいて凄いデバイスなんだね。何で普及してないんだろ?」
「それはねアリシアちゃん。これが致命的な欠陥があるからだよ」
「欠陥?」
「これ安全性に一切考慮してないから、無茶した分は後で身体に来るんだよ」
だからドーピングなんだ。身体に尋常じゃない負荷がかかって使った後に苦しむ事になる。
多分猫姉妹もギル・グレアムも相当な負担を強いられてたはずだ。
……因みにこの危険な代物を使っていた守護騎士はプログラム体だからかは知らないが、洗脳から解けた後はみんなピンピンしてる。
「……安全面に対しては徹底的に配慮するタイプのマッドサイエンティストの俺からしたら、こう言うのは許せねえなぁ」
俺はそう言いながら、このデバイスを弄り回す。
……やっぱ俺でも負担をゼロには出来ないな。でも強化の出力はそのままで負担を減らす事は可能だ。
「……よし。使ったら翌日に筋肉痛になる程度にまでは、副作用を抑えられた。エイミィさん、これマリエルさんのところに持って行って人数分量産してくれません?」
「な、何と言うか流石だね。マリーに一瞬でセキュリティ解除した上に、数秒でこのデバイスの副作用を弱められたって言ったらあの子泣くよ?」