見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
「と言うわけで、仮面共の使ってるドーピングアイテムを色々と手を加えたものを複製してもらいました」
数日後、管理局の方で複製してもらったドーピングネックレスをさらに手を加えて、ヤマトやなのはちゃん一人一人に最適化させた代物をみんなに渡す。
受け取りに行った際にマリエルさんが「一から勉強し直します」と泣いていたが、いやチートもらった俺と比べちゃいけませんぜ。
「守護騎士のみんなが強化されてたのもコレのせいなんだよね? コレがあればギル・グレアムさんとも対等に戦えるの?」
「対等? そんなわけ無いじゃん。相手さんよりも優位に立ち回れるよ。最終決戦直前に渡してしまったのは情けないけどね。あ、ズルイとかは言うなよ? 相手もドーピングでズルしてたからこっちがやっても誰も文句は言わねえよ」(ゲス顔)
「文句なんてないわ。はやても倒れてもう時間がないから、絶対に次で闇の書を取り返さないとまずいもの。ズルでもなんでもしなきゃ……」
え、はやて倒れたの?
詳しく聞くと闇の書の呪いの影響が内臓に届きかけているようで、管理局の医者の見立てではどんなに手を尽くしても新年を迎える事は出来ないと言う。
守護騎士達は現在はやての元に付き添っているが、みんな尋常じゃない悲しみ様だったと言う。
「……ヤバくね?」
「ああ、はっきり言ってヤバすぎる。なぁレオ、お前なら闇の書とはやての魔力リンクを直接いじって何とかできるんじゃ……」
「それが出来たらとっくにやってるよ」
はやてのリンカーコアは現在闇の書と同化してしまっているから手の施しようがない。
そもそも俺はデバイス技師であり医者でないのだから、修理するべき闇の書がないなら何も出来ないのだ。
俺の返答に「そうか、無理言って悪い」と言ったヤマトは今度はクロノ君の方は向き直る。
「なぁクロノ。お前はギル・グレアムが何をやろうとしてるのかリーゼ姉妹から聞いてるんだろ? 何をしようとしているんだ?」
「……闇の書の永久封印だ」
闇の書を完成させると闇の書は主と同化して周囲に破壊を撒き散らすようだ。そして最終的に闇の書の主ごと世界を滅ぼして次の世界へ行く。
だがひなちゃんのじいちゃんは闇の書が主と同化したタイミングで氷結魔法で冷凍保存して次元の隙間にはやてごと封印する事で、闇の書を永遠に封印しようとしているそうだ。
「何よそれ! そんな事したらはやてちゃんはどうなるの!」
「間違ってる。こんなの絶対に間違ってるの!!」
「はーちゃんは悪い事してないのに何で…………ママの仇を討つつもりなの!? でもママは気にしてないって言ってる。何でそんな酷いことを!!」
無論それを聞いたはやてのお友達のみんなの怒りは凄まじい。
側に俺だって内心ブチギレている。ひなちゃんのじいちゃんじゃなければ龍帝院もろとも消し飛びしたのに……。
「羽鳥さんの分だけじゃなく、僕の父の仇を討つつもりみたいなんだ」
「え、クロノのお父さん?」
「えっとクライドさんだよね? 11年前に事件で死んだってリンディさんが……11年前?」
アリシアちゃんのヒントのおかげで大体察しがついた。クロノ君のお父さんも闇の書の被害者だったのか。
クロノ君曰く、11年前に闇の書の主を捕まえる事に成功した管理局。しかし移送中に闇の書が暴走してクライドさんの乗った艦船の制御を乗っ取ったようだ。
最終的にアルカンシェルというクソヤバ兵器により艦船ごと闇の書を消し飛ばすことで闇の書を破壊した様だが、その際にアルカンシェルを撃ったのがクライドさんの上司であったギル・グレアムだった様だ。
「なーるほど。ひなちゃんの爺ちゃんにとって、闇の書は娘である羽鳥さんの魔導師人生を奪っただけじゃなくて、部下だったクライドさんの命まで奪った存在だったと。そりゃあ恨みもしますわな」
「……でもやっぱり間違ってるよ」
「あぁ、正直僕も父さんの命を奪った闇の書が憎くないわけじゃない。だがだからと言って、罪のないはやての人生を奪っていい理由にはならないんだ」
「……クロノは大人だな」
「僕は14歳だぞ。もうとっくに大人だ」
「「「「「「えぇえええええええ!?」」」」」」
直後驚き出すテスタロッサ姉妹以外の一同。
お前14歳だったのかよ!? てっきり俺らと同い年かと思ってたわ!!
「……く、クロノ君って14歳だったんだ」
「私たちと背が同じだからてっきり私たちと同い年だとばかり思ってたわ……」
「せ、成長がゆっくりだったんだね」
「クロ君っていつも言っちゃってたけど、失礼だったんじゃ……」
「あれか、任務で夜更かしすることが多いから成長が阻害されたのか。……俺も徹夜するのは控えよ」
「コレからも年齢間違えられるだろうけど……まぁ、頑張れ!」
「失礼だな君達は!!」
「あはは私達も最初は驚いたよ」
「クロノは年齢詐欺だよねー」
あと俺らの世界では14歳もまだまだ子供だし、俺は前世含めて40年位生きてるから人生経験は俺の方が上だから!! 年齢マウントはとらせないからな!?
そんなくだらないことを考えていると、ヤマトがわざとらしく咳を一つ。
「だがまぁギル・グレアムの狙いは分かった。それならはやてが死ぬ前になんとしても闇の書の完成を急ぐはず。おそらく魔力量の多い俺たちを狙うつもりなんじゃないか?」
「なら蒐集されてないひなが囮になる! ひなを餌にしてお爺ちゃんを誘い出すからみんなで戦お?」
「何言ってるのひな! そんな事したらひなが危ないわ!!」
「もうひなの責任だって言わないよ。でもやっぱりお爺ちゃんが悪い事してるなら、ひなが止めたいの!」
ひなちゃんの目はまっすぐ。
それに自分も悪い事に加担していたから責任を取りたいと言う自己犠牲なわけではなく、身内だからこそ自分の手でケリをつけたいっと言った表情だ。
ならば俺から言う事はない。
「ならひなちゃんに囮をお願いしよっか。……悪いけどひなちゃんの爺ちゃんを叩くのはみんなに頼んでいい? 俺はやる事があるから」
「……龍帝院か」
「そっか。レオ君がトドメを刺す前に逃げちゃったからね」
「うん。リュウヤ君のことだからきっと邪魔しに来るの」
「私達はもう殴ったし文句はないわ。ボコボコにしてやりなさい」
アイツには半年前に背中刺されたし、この間腹刺された上に何回も斬りつけられた。それに俺の家を焼きやがった事は許せる事ではない。
守護騎士の皆様も龍帝院に関しては大分腹を立てていたが、俺に任せると言ってくれたし、俺の全てを持ってやつを殲滅する。
「分かった。でも殺すなよ? 殺したら彼に罪を償わせられないからな」
「……今度こそ罪を償わせられるんだろうなァ?」ギロッ
「「「「「「ヒィ!?」」」」」」
最大限の殺気を込めてクロノ君を見つめると、なのはちゃん達は怖かったのか俺から距離をとった。なんかごめんね。
今回の事件がややこしくなったのは、龍帝院の転生特典に目がくらんで管理局が釈放してしまったのが原因の一つだ。逮捕したところでまた釈放しやがったら草も生えない。だがクロノ君は真っ直ぐな目で告げる。
「母さんとレジアス中将、そしてミゼット統幕議長が龍帝院を庇った上層部を徹底的に追求している。それに一度は罪を許した上で再び罪を犯したんだ。いくら才能があろうが、もう許される事はない。半年前の一件を含めて彼は終身刑……もしくは死刑だろう」
「信じるからな?」
「命に賭けて」
いやいやクロノ君。こんな事で命を賭けるべきではないですよ。でもそこまで言うなら9割殺しで我慢しよう。
それによく考えたらわざわざ俺が殺人するよりもヤマトの言霊で転生特典を全部奪えば無問題じゃねえか。
それに事件が終わったことを考えたら生かしたほうが利用できるかもしれん。
俺が手を顎に抑えてそんなことを考えていると、クロノ君は思い出したような表情をした後に口を開く。
「そして稀代のデバイスマイスターである君にもう一つ頼みがある」
「……デバイス関係ね。どうした?」
「龍帝院が利用していると言うデュランダルと言う闇の書に対抗する為のデバイス。複製する事は出来ないか? 万が一闇の書が暴走した場合の保険が欲しいんだ」
「く、クロノ!? それってはやてを封印するって事じゃ……」
アリシアちゃんの言葉にギロリと睨む俺を含めた一同。だがクロノ君は首を振った。
「違う……まぁ氷漬けにするのは変わらないが。だが氷漬けにして暴走を止める事ができたなら、その間にレオかヤマトが闇の書の暴走を鎮める事が出来るだろう?」
直後、みんなの納得した様な表情。信頼されてるなぁ。
だが、暴走してしまったならプログラムはメチャクチャに動くだろうから、流石の俺でも暴走は止められないだろう。
そうなるとヤマト頼りになるが……まぁ大丈夫だろ。オリ主だし。
「オッケ。パッと見ストレージデバイスだから再現するのは簡単だ。でも新規作成だから一週間はかかるが大丈夫か?」
「大丈夫だ」
と言うわけで、決行は二代目デュランダルが完成する一週間後のクリスマス。
ひなちゃんを囮にしてグレアムを誘い出して、俺以外の全員で叩く。もし龍帝院が現れたなら、俺がひなちゃんと喧嘩したときのあの姿で9割殺しにする。
はやてが一週間持ってくれるか分からないし、今すぐ作業に取り掛かろう。