見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ?   作:蒼天 極

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闇の書被害者の会?ここで出てくんな!!

 クリスマスの夜、ひなちゃんは結界も張らずに一人海鳴市のビルの屋上で佇んでいた。まるでいつでも襲って下さいと言っている様に。

 俺たちはアルカンシェルを積んだアースラでひなちゃんの様子を確認し続けている。グレアムが来たらいつでも救援に行ける様にしているのだ。

 あからさまな罠であるが、まだ闇の書を完成させていないのを見るに絶対食いつく。そう確信している。

 

『……ひな』

 

『……おじいちゃん』

 

「あ、来たよ。グレアムさんだ!!」

 

 アリシアちゃんがモニターを指差すとそこには、ゆっくりと歩いてくる大柄な男性。彼がひなちゃんの爺ちゃんのギル・グレアムか。

 

「待っててねはやてちゃん。闇の書を取り返してくるから!」

 

「主はやて。我々も出撃します」

 

「やられっぱなしって言うのも性に合わないからな! 待っててはやて、あのおっさんぶっ飛ばして闇の書取り返すから!!」

 

「うん、みんな行ってらっしゃい。怪我せん様にな」

 

 闇の書の主であるはやては本局からアースラに移っていた。だいぶ麻痺が進行してかなり危険な状態ではあるがせめて最後くらい見届けたいと言う我儘だ。

 それに闇の書を取り返してすぐさま修理をした場合にはやての容態を見れば、修理が成功したと分かりやすいためでもある。

 

 既に出撃しているひなちゃんも含めた海鳴魔導師組8人と使い魔が3人、守護騎士4人、そしてアースラから二代目デュランダルを装備したクロノ君の計16人。羽鳥さんが途中で乱入してくる可能性を考慮したら17人に対して相手は1人。かなりの過剰戦略だ。

 と言うかコレではただの虐めだ。

 

 俺たちはすぐさま転送ポートに入りひなちゃんの元へ向かった。

 

 

 ◇

 

 

「……やはりひなは囮か」

 

「よう。よくもアタシらを洗脳してコキ使ってくれたな!! ぶっ飛ばして闇の書を「ヴィータ、待て!」……シグナム」

 

 攻撃をしようとするヴィータちゃんをシグナムさんが止めた。グレアムも闇の書の被害者、彼女にも思うところがあるのだろう。

 クロノ君はシグナムを一瞥して軽く頷くとグレアムにゆっくりと歩み寄る。クロノ君にとって彼は恩師みたいな者らしいから話す時間くらいあげてもいいだろう。

 誰かが乱入してきたら対応任せろ。

 

「……11年前の闇の書事件以降、提督は独自に闇の書の転生先を探していましたね。そして発見した。闇の書の在処と現在の闇の書の主、八神はやてを…………」

 

「……偶然だった。私の娘から魔導師人生を奪い、クライドの命をも奪った闇の書を見つけたのは。闇の書の捜索に難航し、半ば諦めかけていたあの日、娘と孫の様子を見に行ったあの日偶然見つけたんだ」

 

 グレアムは続ける。

 ようやく見つけた娘と部下の仇である闇の書。だが見つけた場所が良くなかった。何故ならばここにはグレアムの娘と孫がいる。しかも孫は娘よりも魔導師としての才能に溢れていた。

 グレアムは憤った。闇の書は娘だけでなく孫の魔力まで奪いに来たのかと、自分から大切な孫まで奪うつもりなのかと。

 

「私は決意した。どんな手を使ってでも闇の書を永久に封印して、二度とクライド君や羽鳥のような者を生まないと」

 

「……ですが完成前の闇の書と主を抑えてもあまり意味がない。主を捕らえようと、闇の書を破壊しようと、すぐに転生してしまうから。だから監視をしながら闇の書の完成を待った。闇の書の完成から暴走までの数分間のうちに、氷結魔法で凍結して、次元の裂け目か氷結世界に封印するために」

 

「あの2人から聞いたのか」

 

「羽鳥さん、あなたの娘が聞き出しました」

 

「そうか。羽鳥は怒らせると怖いからな」

 

 グレアムは軽く微笑んだが、すぐに真剣な表情に戻る。

 

「両親に死なれ身体を悪くしたあの子を見て心が痛んだが、運命だと思った。孤独であればそれだけ悲しむ人は少なくなる」

 

「それは違うよおじいちゃん!! はーちゃんは確かに家族がいなくてひとりぼっちだった。でもひな達がいたもん!! はーちゃんがいなくなったらひな達は悲しいもん!!」

 

「……そうだな。ほんの少し目を離した隙に、あの子にはたくさんの友達が出来てしまっていた。ひなを含めたたくさんの友達が」

 

 グレアムはひなちゃんと目を合わせず、地面を見る。

 いや、そんな顔するくらいなら初めから蒐集すんな。

 

「あの子の父の友人を騙って、生活の援助をしていたのも提督ですね」

 

「永遠の眠りにつく前くらい、せめて幸せにしてやりたかった」

 

 グレアムのその言葉にヤマトが反応する。

 

「……どう言う事だ? はやての幸せを望んでいたって、闇の書の主のはやてが憎くなかったのか?」

 

「憎いものか。あの子はただの被害者さ、闇の書と私のな」

 

「なら……! なんで龍帝院と組んでまで守護騎士を洗脳なんてしたんだ!! その際で家族と一緒で幸せだったはやてがどれだけ悲しんだと……!!」

 

 あ、それは思った。グレアムの企みはただ闇の書の完成を待っていれば良かった。なのに何故わざわざ守護騎士を操るなんてハイリスクな事をしたんだ……?

 

「……あの子と守護騎士が羽鳥と会ってしまったからだ。闇の書の被害者である羽鳥の話を聞いたあの子は、闇の書の完成を望まなくなった。そして羽鳥に闇の書の蒐集は絶対にしないと誓ってしまった」

 

 なるほど。そもそも闇の書を完成させる役割を担う守護騎士がはやてに蒐集を禁じられた。

 蒐集する者がいなければ闇の書は完成せず、はやては闇の書の呪いで死んで、別の転生先へと移動する。長年かけてやっと見つけた闇の書は再び姿を眩ませて、振り出しに戻ってしまう。

 そう言うわけだな。

 

「だから洗脳したんだ。守護騎士は四人がかりで私の娘に重傷を負わせリンカーコアを奪った張本人。罪悪感は湧かなかったのでね」

 

「……全ては自業自得か」

 

 シグナムさんは重苦しそうに呟くが、悪いのは先代の闇の書の主なんだからそんなに気に病まなくていいと思うがね。

 それにグレアムの言い分も理解できる。そりゃあ大切な人を傷つけた怨敵なら罪悪感も湧かないわな。

 

「つまりは守護騎士を洗脳した件は、私のせいだって言いたいのね」

 

 グレアムの背後から薙刀型デバイスを持った羽鳥さんがやって来た。

 彼女の目は父に向けるものとは思えない程に冷たい。

 

「父さん、はっきり言うわ。父さんのしている事は先代の……11年前の闇の書の主と何も変わらないわ。自らの欲望の為だけに関係のない第三者を巻き込んで……そしてひなを、あなたにとっての孫を悪事の隠れ蓑に使った。父さんの行動で、はやてちゃんもひなも、そして家を燃やされたレオ君もどれだけ悲しんだか分かっているの!?」

 

 え、このメンバーに俺も入るの!? いや、まぁ家燃やされたのは事実だけど! この事件終わったらグレアムに損害賠償請求しないとなって思ってはいるけど!! でもやったの龍帝院じゃん、少なくともグレアムは恨んでないぞ俺!?

 最初は殺してやろうか仮面共ォ! とか考えてたけど、理由聞いてまぁ分からんでもないから、グレアムに対する感情なんて今は復讐したいのは分かるけどもう少しやり方考えて。くらいしかないぞ!?

 だが龍帝院テメェはダメだ。これ以上娑婆に出しているといい事ないし、今度こそ豚箱にぶち込んでやる。

 

「……そうだな。私のせいでせめて闇の書の完成までは幸せにと考えたはやても、大切な孫のひなも、そしてなんの関係もないレオ君も傷つけた。……レオ君、家の件本当に申し訳なかった」

 

「あ、いえ。弁償していただけるなら俺は文句ないです……! ……グレアムさん。闇の書を俺に預けてみませんか? こう見えてデバイスに強いんでワンチャン修理……もしそれが無理でも、はやてを生存させたまま破壊する事は出来るかもしれません」

 

「知っているとも。バッテリーデバイスを創った天才デバイスマイスターである君の事は。……だがダメだ。君は闇の書の歴史を知っているかい?」

 

 知っている。ユーノ君が調べてくれたし、調べてもらったタイミングでようやく思い出した。

 かつて夜天の魔導書と呼ばれたものが歴代の主によって改悪されたものが闇の書だと。夜天の魔導書時代はその時代の魔法を記録するものであったが、改悪された事で破壊を撒き散らし、異常なまでの再生能力と転生機能によって完全破壊も封印もできない厄介な代物であると。

 なるほどどんなに天才なデバイスマイスターであろうと、少しでも改悪して状況が悪化してしまう可能性が孕んでいるなら看過できない。そう言いたいんだな。

 

「まぁ流石の俺も古代の叡智である闇の書をそう簡単には修理できるとは思ってないですしね。でもだからと言ってあなたを逃すと、はやてが犠牲になってしまう。それにデュランダルはあなたが裏切った龍帝院が持っている。凍結するすべはもう……」

 

 俺がそう言うと、グレアムは白いカード型デバイスを取り出して展開する。……間違いないあれはデュランダルだ。

 

「龍帝院から取り返したんですか?」

 

「いや、リーゼロッテとリーゼアリアが捕まってから一から作り直させた。急ピッチで完成させたが、闇の書の暴走を止められるだけの氷結魔法は込められている」

 

 悲報、どうやら二代目デュランダルは三代目であったようだ。

 直後クロノ君が俺の方を見る。本題に入るから話すのはその辺でと言ったような表情で。

 はいはい。俺は龍帝院が来るまで傍観させていただきますよ。

 

「本題に入ります。闇の書をこちらに渡してください。法以外にもあなたのやり方には問題がある」

 

「……断る、残りはあと数ページ。蒐集していない君達の誰かから蒐集をさせて貰えば完成する」

 

「この人数差で出来るとでも?」

 

「一人ではないさ」

 

 直後、複数の魔力反応。

 無言で360度にシールドを張って攻撃に備えるが何も来ない。だが周りを見渡して見ると……大体30人くらいの魔導士がいた。

 

「提督。こ、この人達は管理局の……!!」

 

「彼らは11年前に闇の書の被害にあった者達。私の考えに賛同してくれて今まで裏で手伝ってもらっていた」

 

 被害者の会ができとるやんけ!! どんだけ大暴れしたんだよ11年前の闇の書の主ィ!!

 つかこのタイミングで出て来んなよ! コレから最終決戦なんだぞ!?

 だが周りの魔導師達も悲しそうな表情、まるで俺たちと戦うのは本意ではないように。

 

「一度だけ聞こう。誰か一人、素直に蒐集されて欲しい。リンカーコアのダメージは申し訳ないがひなに癒して貰いたいのだ」

 

『断る!!』

 

 全員同時に断ってやった。無論既に蒐集された俺も言ってやったぜスカッとした!!

 そしてそれを聞いたグレアムは無言でデュランダルを構える。

 

「仕方がない。無理矢理にでも蒐集させてもらうぞ」

 

「分かりました。そちらがその気なら仕方がない。ギル・グレアム、次元法違反で逮捕させていただきます!!」

 

「行くよおじいちゃん! ひな負けないからね!!」

 

「貴様を討って闇の書を奪還する!」

 

「ああ、闇の書さえあればはやては助かるんだ。お前らが11年前の被害者だとしても絶対負けねえ!!」

 

「あ、それじゃあ俺傍観させてもらうね」

 

 俺はそう言うとその場を離脱して離れたところに行く。

 これだけ待って龍帝院が来ないとなると、多分あいつは漁夫の利を狙っているのかもしれない。決着がついたタイミングで不意打ちを仕掛けてくる可能性が高いから今のうちから備えておこう。

 

「…………」

 

「あ、すいません。自分、龍帝院要員なんで戦う気ないですし、既に蒐集されてるんで襲っても無駄です。別の方狙ってください」

 

「そ、そうか。分かった」

 

 被害者の会員Aが俺の方に来たが、素直にお引き取り願ったのだった。




 原作で闇の書に恨みを持っているのは、きっとギル・グレアムだけじゃ無いと思うんですよ。
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