見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
近くの高いビルの屋上に腰掛けて、戦況を確認する。
被害者の会の人数は俺らの二倍。数では圧倒的な敗北だ。だがそれならなのはちゃんやヤマトら一人が二人を倒せば良いだけの話なのだ。
「な、何故だ……! 我々は力を底上げしていると言うのに……」
「残念だったな。こちらも条件は揃えてきたんだ《ルインズスマッシャー》!」
「ぐぁあああああああ!!」
被害者の会の皆様は一つ重大な勘違いをしていた。ドーピングデバイスによる代償の伴う強化で自分らが優位に立てると思っていたようだが、こちらは解析して複製と改良をしてんだ。
アンタらの強みは数だけなんだよ。まぁこれだけ力の差があるなら、あってないような物だけどな。
「すずか! 氷と炎の二重奏行くわよ!!」
「うん。ヴィヴラート音を響かせる感じでアイスバインド……《氷の歌》!」
すずかちゃんを中心に周囲の魔導師達が凍って動けなくなる。
周りにアリサちゃん以外の誰もいないのを考慮するに無差別攻撃っぽいな。
「そしてすずかの演奏に乗せてフレイムウィップ……届けぇぇぇっ!!」
「「「うぉああああああ!!」」」
アリサちゃんとすずかちゃんの連携で一気に数人が倒れた! いつの間にコンビネーションを作ったんだろう?
「《ディバインバスター》!」
「《ハーケンセイバー》!」
「《ハリセーンスマーッシュ》!!」
「ぶっ飛べえ! 《ラケーテンハンマー》!!」
被害者の会とかが出るからどんなもんだろうって思ってたけど、所詮はただの数合わせということか。
なかなかタフな奴もいるが殆どが一撃二撃で倒されてしまう。
「ば、バカな!? 彼らは私の開発した次世代の強化ユニットを使っているのだぞ!? ……も、もしかして私の研究成果が使われた? アレには厳重なセキュリティを組み込んでいるんだぞ!? いくら管理局でも解けるわけが……」
俺の近くでブツブツ言ってる白衣のバリアジャケットの男性。ああ、アンタかあのペンダント作ったのね。ならば俺は一介のデバイスマイスターとして彼に言ってやらなければならない。
「あのセキュリティは俺が解除したよ。あれ作ったのはアンタなの?」
「み、宮坂麗央、貴様だったのか……! だ、だがバッテリーデバイスを作った貴様でも我が研究成果は脱帽しただろう!?」
守護騎士に製作途中のデバイスを破壊されてから10年の時を費やしてようやく完成させたのだ。と胸を張る男。取り敢えず全部終わったらシグナムさん達は正座をさせよう。人が頑張って作っているものを壊すのはいただけない。
「うん。外から強化するって言う発想自体は面白かったよ」
「そうだろうそうだろう「でも」な、なんだ?」
俺は流れるように彼の顎を打ち抜いた。
「負担が大きすぎんじゃボケェ! 少しはユーザーの配慮くらいしろや!!」
「ごぶぇえええええん!!」
男は3回くらい宙を綺麗に回転するとビルの屋上に落下、ピクピクと痙攣して動かなくなった。
手は出さないと決めていたが一人くらいいいだろう。安心安全がモットーの俺としては彼の強化ユニットは許せる物ではない。
だがそうかあのドーピングデバイス……強化ユニットは彼の研究成果だったのか。研究成果を奪うのは良く無いし、シグナムさん達を説教する前に管理局の強化ユニットのデータとか消させないとな。
「《紫電一閃》!」
「《鋼の軛》!」
「《アレスターチェーン》!」
「《ライトニングフォール》!」
「《プラズマセイバー》!」
『ぐぁああああああ』
そして俺が研究者風の顎パンしている間に被害者の会の皆様は殆どが撃墜されてしまっていた。復讐したいと言う気持ちは分かるため何というか地味に罪悪感がある。
あなた方はとにかく運が悪かったんだよ。闇の書が腹黒くて性格が悪いが性根が心優しい女の子の元に行ってしまった事が運の尽きだったんだ。
あとアルフよ、数十メートルからのバックドロップはやめておけ。流石に死ぬぞ? 相手が。
そして最後に残ったのはギル・グレアム。
彼はひなちゃんが戦っていた。どうやらクロノ君に代わってもらったようだな。
「《アイスバインド》!」
「あ!」
ひなちゃんは氷の拘束魔法で足を固められてしまった。
戦いを見ていたが、彼は攻撃するところでは攻撃をして、守るところでは守り一切の隙がない。クロノ君が歴戦の勇士と言っていたのは嘘ではないようだ。
「ひな、お前から蒐集はしたくない。アースラに戻っていなさい。全てが終わったら私は全てを償うと約束するから」
「戻らないもん! 戻ったらはーちゃんを見殺しにしちゃう!! そしたらひな一生後悔しちゃうもん!」
ひなちゃんはそう言いながらセラフィムフレアを使い氷を解く。
そしてミラクルホープに取り付けていたハート型のエンブレムを取り外した。
「ロイヤルホープ! セットアップ!!」
ひなちゃんのバリアジャケットがお姫様風に変わりミラクルホープも弓形に変化させると、距離をとって弓を引き絞る。
「させるか! 《エターナルコフィ「私もいるって忘れてないかしら?」し、しま!?」
背後に回っていた羽鳥さんが、二代目デュランダルを持っていたグレアムの右手を押さえつけて関節を決めると、それとほぼ同時にクロノ君がバインドでグレアムをその体勢のまま固定した。
これならグレアムは魔法を行使することもできない。
「ありがとママ、クロ君! さあ受けてみなさいおじいちゃん! 《サンシャイニングアロー》!!」
グレアムにひなちゃんの必殺技が炸裂。
煙が晴れるとグレアムは地に倒れており、ひなちゃんは祖父の元へ駆け寄る。どうやらひなちゃん達の勝利のようだ。
……さて、そろそろ来るかな?
「おじいちゃん、お願いだから闇の書をはーちゃんに返してあげて。ひなははーちゃんの命を諦めたくないの!! れお君なら何とかできるかもしれないの。れお君を信じてよ!!」
ひなちゃんの必死な訴えにグレアムはしばらく目を瞑る。
「……ここまで負けてしまったら、もう私にチャンスはないだろう。闇の書は君たちに任せる」
グレアムはそう言うと闇の書をひなちゃんに手渡そうと……はいここ。
「どうせここらへんで来ると思った!!」
「何!?」
シールドを足場にして鍛えられた脚力でひなちゃん達の元へ移動すると、素早くカリバーを展開して、グレアムの背中に迫っていた剣を弾く。犯人はやはり龍帝院。
「くそ、踏み台の分際でオリ主の俺の邪魔者ばかりしやがってえ!!」
「クロノ君。闇の書を持ってアースラに……いや11年前の件を考慮すると危険か。悪いけど闇の書を龍帝院に奪われないようにして」
「分かった」
闇の書の護送中に制御を奪われた11年前の一件を考慮したら、闇の書はこの場で修理したほうがいい。でもほんの少しだけ待っていてもらおう。
俺は静かに龍帝院のほうを向く。
「守護騎士を洗脳した件。そして人の家を燃やした件についてなんか言うことはあるか?」
「はぁ? やりすぎた踏み台を成敗して何が悪い? それに守護騎士の件も俺がお前の洗脳から解放してやったんだ。感謝こそされど恨まれる筋合いはない」
そうかそうか安心したよ。少しでもやりすぎたとか反省していたらやりずらいからな。だがこいつは洗脳の件も俺を半殺しにした件も、家焼いた件も何も罪悪感がないと。
『やりましょうマスター。私はこの日が来るのを楽しみにしていました』
「そうだな。これなら地獄に落としても罪悪感は湧かない」
ひなちゃん達は前回龍帝院をボコボコにした。だから次は俺の番だ。守護騎士にも誰にも邪魔させない、みんないる前で、拘束された被害者の会もいる中で、公開処刑だ。
「地獄に行くのはてめぇだ踏み台!! 闇の書前にお前を殺して嫁達の洗脳を解く。そして全員でナハトヴァールを倒して大団円だ!!」
龍帝院は剣を飛ばしてくるが回避して、そのままやつの懐に潜り込む。
「レオキック」
「ごぶぅう!?」
そのまま流れるようにつま先をやつの鳩尾にめり込ませて怯ませてから距離をとって、剣のエンブレムを空に掲げる。
「フォースカリバー、セットアップ!!」
『行きます!』
ひなちゃんと喧嘩した姿であるユナイトフォームに変身すると、そのままリンカーコアに力を込める。直後膨大な銀色の魔力が俺の身体から放出される。
「す、すごい魔力量だ……気を抜いたら吹き飛ばされそうな……!」
「れ、れお君本気モードだ……」
そりゃあ本気出してますもの。魔力ランク5Sの銀色の魔力を全身に満たすと、フォースカリバーを龍帝院に向ける。
「は! そんなこけおどしがどうした!! 魔力SSSの俺様を舐めるんじゃねえ!!」
「最後だ龍帝院。お前の言う通り、やりすぎた踏み台その1は踏み台その2が成敗してやる」
五体満足で済むと思うなよ?
長らく大変お待たせしました。次回、金髪
作者もさっさと金髪をお死おきしたいのでグレアムと被害者の会は瞬殺させていただきました(笑)