見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ?   作:蒼天 極

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さて、責任の所在についてだが……

 それから三日後、闇の書を天に還す儀式を行う事になった。

 特殊な魔法陣の中に置かれた闇の書。そしてその隣には心を失い抜け殻になったリインフォース。

 闇の書を天に還す儀式は守護騎士四人と俺以外の海鳴魔導師組が行った。

 本当は俺も参加したかった所ではあるのだが、身体のダルさが全然取れないので欠席させていただいたのだった。

 儀式は呆気なく終わり、闇の書は天に還った。そして闇の書とリインフォースの抜け殻があった場所には、魔導師となったはやてが持っていた杖の先端の模様のエンブレムが落ちていた。

 それを拾い上げたはやては静かに胸ポケットに入れていたメモリに話しかける。

 

「……終わったなリインフォース。あとはリインフォースの身体をレオ君に作ってもらうだけや」

 

『そうですね。まさか本当に夜天の書から私の人格プログラムだけを抜き取ってしまうとは……主やご友人があそこまで彼を信用していたのも納得できます』

 

「そうやね。それに私が寂しくないようにって念話でお話しできるようにしてくれたのも流石や」

 

 俺が闇の書の全員を生かすために取った手段は、リインフォースの人格プログラム……言って仕舞えばリインフォースの記憶と心をこのメモリにカットアンドペーストすることだ。

 そしてメモリに入ったリインフォースの記憶と心については、新規でユニゾンデバイスを作ってそれに移植するのだ。

 

「新規ユニゾンデバイスについてだけど、ユニゾンデバイスってかなり作るのに時間がかかるんだけどいい?」

 

「ええよ。ありがとうな」

 

 その後みんなでアースラに帰還。本当はもう年末の為、闇の書を天に還した時点でこの事件を解決にしたい所ではあったが、まだ一つ面倒臭い一件が残っているのだ。

 

 

 ◇

 

 

「今回の事件の主犯であったギル・グレアム提督についてなんだけどね。管理局でかなり意見が割れてしまっているの」

 

「と言うと?」

 

 リンディさんは深刻そうな顔で砂糖入りのお茶を啜る。

 なんでもグレアムは闇の書を永久封印する為に今回の犯行を行ったのだから罪を軽くするべきと言う意見と、闇の書を完成させようとしたのには歴代の闇の書の主と変わらないのだから重罪だと言う意見で綺麗に分かれてしまったとのこと。

 

「レオ君としてはしっかり裁いて欲しいでしょうけど、このままじゃ罪が軽くなってしまうかもしれないわ……」

 

「俺としては罪が軽ければいいんですけどね」

 

「え?」

 

 リンディさんは何故と言った表情。

 グレアムが重罪になった場合、管理局の目はひなちゃんと羽鳥さんに向くだろう。龍帝院を管理局で働かせていたことを考慮したら、ひなちゃんと羽鳥さんも親の責任を取れと言われて管理局に入局させられるリスクは極めて高い。

 

「ひなちゃんの兄貴分の俺としては。あの子にはこの世界で心身健やかに育って貰って、しっかりと自分で物事を選べる様になってから入局するかを決めて欲しいんですよ」

 

「そ、そうなのね。……まるで親みたいね。本当に同い年なの?」

 

 同い年ですよ、肉体年齢だけは。

 それに海と陸の勢力バランスの観点からもグレアムの件はよくない。タダでさえ龍帝院の件で海や次元航空部隊は、地上部隊から睨まれてしまっているのだ。

 それにグレアムの不祥事なんてなったらいよいよ、管理局のパワーバランスは大きく陸に傾いてしまう。

 そのことをリンディさんに伝えると彼女は驚いた様な顔をする。

 

「あれ? レオ君ってどちらかと言うと地上本部の人達と仲が良かったわよね?」

 

「まぁそうですね。でも俺はバランスが大事だと思ってる派なんで、海か陸かのどちらか両極端に傾かせたくないんですよ」

 

「そう……」

 

 海は重大事件を追うことで管理世界の人への被害を未然に防いでおり、陸は軽犯罪の他にも海が取り逃した重大事件を追ったりもしている。

 どちらとも管理局にとって重要な要素なのだ。

 

「リンディさん的にはどうなんですか? グレアム提督の件について、身内贔屓で構いませんのでしっかり裁くべきか温情をかけるべきか意見お願いします」

 

 リンディさんはしばらくお茶を啜ると、やがて静かに話し出す。

 

「私としては……そうねぇ。やっぱり温情をかけて欲しい所ではあるわ。はやてさんや今回の被害者の方には申し訳ないのだけど、やっぱりあの人はクロノの恩師でもあるし、管理局に貢献してきた歴戦の勇士。下手に裁いて戦力がダウンするよりも、今回犯した罪の分は働いて償って欲しい所だわ」

 

 なるほどなるほど……。

 俺はひなちゃんの件と勢力図のバランスからグレアムに温情をかけるべき。

 リンディさんは管理局の戦力の低下のからグレアムに温情をかけるべき。

 理由は違えど俺とリンディさんの意見は一致する。

 

「手を組みましょうか。グレアム提督や被害者の会を無罪にするいい方法があるんですけど……」

 

「聞きましょう」

 

 

 ◇

 

 

 その数時間後、アースラの独房に入れられているグレアムと面会を入れる。

 俺がグレアムと手を組んでいた龍帝院に家燃やされた被害者であるからなのか、あっさりと面会が許可されたのには驚いた。

 

「君も面会に来るなんてな」

 

「どうも。君もと言うと本日は他にも?」

 

「ああ。ひなとはやてだ」

 

 あの二人はグレアムにとってかなり気まずい相手だ。

 相当居心地が悪かった事だろう。

 

「それであの二人はなんと?」

 

「ひなには今回の件を怒られてしまったよ。許せないのは分かるけどやり方を考えてよ! お爺ちゃんなんて嫌い!! って言われてしまった……」

 

 ひなちゃんの事だから泣きながらそれを言ったんだろうし、グレアムに良心があるならかなり心に来るだろうな。

 それではやての方はなんと?

 

「はやてからは、闇の書を破壊した事の報告と、今回の一件を私は許しますと」

 

 え、今回はやてが一番の被害者だったけど許したのか。

 詳しく聞くと、どんな理由があろうと生活の援助をしてくれたのはおじさんだし、今回の闇の書事件はそもそも闇の書が恨みを買い過ぎたのが発端の為、私はあなたを恨む事は出来ないと言われたらしい。

 恨んでいた闇の書の主に許されるだなんて、グレアムからしたら器の違いを見せつけられる事になっただろうな。

 

「それで君も私に用があってきたのだろう?」

 

「あ、そうだった。あなたには二つ頼みを聞いてもらいます。拒否権はありません」

 

「……勿論だとも、私は君の家を燃やしてしまった。生活するのに苦労している事だろう。私に出来る事ならなんでもさせてくれ」

 

 生活に関しては大丈夫です。今はアースラに寝泊まりさせて貰ってるし、アースラが本局に帰還した後は当分は、お宅の娘さんの家でお世話になりますんで。

 

「一つ目の頼みは我が家を弁償して欲しい事。まぁこれは当たり前ですね」

 

「ああ、蓄えはある。慰謝料もつけて弁償させていただく」

 

 我が家の損害賠償だけで良いです。慰謝料はこれからのはやての生活費の足しにでもして下さい。あくまでケジメをつけて欲しいだけでお金が目的ではないのだ。

 

「二つ目、リンディさんと結託して()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ので口裏を合わせて下さい」

 

「ああ。……え、今なんて言ったのかね?」

 

「グレアムさんの罪を全部龍帝院に被せる事にしたんで口裏合わせをお願いします」

 

 グレアムさんはあり得ないと言った表情で俺を見る。

 龍帝院にニコポナデポがあったので、ザフィーラの兄貴の様にその力でグレアムも洗脳して傀儡として操っていたという風に持っていきたいのだ。

 そして猫姉妹が捕まった際の仲間割れは、猫姉妹が正気に戻って龍帝院を止めようとした事。闇の書が暴走したときに龍帝院がグレアムを刺そうとした事も、使い物にならなくなったから始末しようとしたとすれば辻褄も合うだろう。

 

「な、何故だ!?」

 

「何故って、ひなちゃんがあなたの罪に巻き込まれない様にする為ですよ」

 

「ひ、ひなが……」

 

「このままだとひなちゃんは加害者の孫というレッテルを貼られてしまう。でもグレアムさんも被害者だったと言う体にすれば、ひなちゃんは被害者の孫という事で悪い様にはされないでしょうが。勿論はやてにも話は通しました」

 

 本局にいたはやてと守護騎士にも事情を話したら承諾してくださったのだ。

 今回の事件で死亡者はいなかった。そして今回蒐集された人の中で一番被害が大きかったのは俺だ。ならば一番の被害者であるはやてが承諾したのならばもう問題はない。

 

「グレアムさん。あなたにはこれからも管理局で頑張って頂きますよ? 自分の犯した罪に少しでも責任を感じるならば、働いて償ってください。はやてに生活費の援助をして償って下さい。そしてひなちゃんにもちゃんと謝って下さい。もう一度言います、拒否権はありません」

 

 俺はグレアムさんに軽く会釈をすると面会室を後にしたのだった。




読者の皆様にとって、この結末は納得いかないものでしょう。しかし作者はこういう展開にすると初めから決めていたのでご了承下さい。
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