見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
今日は12月30日。俺達はアリサちゃんの家に集まっていた。と言うのも時間が解決したためみんなでゆっくりお茶会をしようと誘われたのだ。
明日は大晦日で、居候先である桃崎家の大掃除を手伝う予定だし今日くらいはゆっくりとお茶を楽しもう。
「それにしても驚いたわよ。まさかはやても嘱託魔導師になるなんてね」
「はやては本当に良かったの?」
「うん。せっかく大いなる力を手に入れたんやから使わないと損やし、夜天の書の最後の主として、夜天の書の悪評を少しでも払拭してあげたいんや」
守護騎士も今回被害者ではあったのだが、だからと言って今まで蒐集してきた罪までは消えない。
そこで管理局で数年間の無償奉仕をすることになったらしいが、はやても守護騎士たちに乗っかって嘱託魔導師になる決意をしたらしい。
「でも今のはやてちゃんにはデバイスがないでしょ? どうするつもりなの? レオ君に作ってもらう?」
「ううん。これを使うんや」
首にかけた闇の書の欠片であるエンブレム。これを素体にして二代目の夜天の書を作ろうと企んでいるようだ。別にリインフォースのついでに作っても良いのだが、本人は自力で作る気満々のようだし、すずかちゃんと一緒にデバイスの作り方でも教えてやるとしよう。
「出来ればリインフォースは二代目夜天の書の管制融合機にしたいんやけど……」
「はやてには悪いけど、リインフォースは管制融合機にするべきではないな」
リインフォースの人格プログラムは即興でメモリに写したこともあり自動防衛プログラムが微弱ながらに入ってしまっているのだ。そんな彼女を夜天の書に入れてしまっては二代目の闇の書ができる可能性が極めて高いのだ。
「え、ナハトヴァールがリインフォースに入ってるん!?」
「れ、レオ。そ、それ危険なんじゃ……」
フェイトちゃんが青い顔で俺を見るが、俺は首を横に張る。
「メモリに生体部品は一切使ってないから問題はないよ」
自動防衛プログラムは生体部品に悪影響を与えるプログラムなので、生体部品を使っていないメモリの中では増殖もできない。それにリインフォースを新しい身体に写すときに、自動防衛プログラムはちゃんと除去するつもりだからリインフォースの身体については心配すんな。
でも自動防衛プログラムが入ってる時点で夜天の書への利用はアウト。安全のためにもリインフォースは夜天の書とは違うユニゾンデバイスにしなければならないのだ。
「そっか。うまくはいかないもんやね。……でもまあリインフォースに妹ができると思えば別にええか」
『妹……私よりもヴィータの方が喜びそうですね』
「そうやね」
せっかくだから俺がリインフォースの身体を作るときにユニゾンデバイスの作成方法を教えてやるとしよう。
「でもはやてだけじゃ無くて皆んなも嘱託になるなんてビックリしたなー」
アリシアちゃんはポッキーを口に含みながら呟く。
そう。俺らも嘱託魔導師として働くことになってしまったのだ。
「みんなが嘱託になった理由は何だったっけ?」
アリシアちゃんの問いにヤマトが答える。
「小遣い稼ぎ。親戚から毎月援助貰ってるけど、今のうちに働いておけば大人になった頃にはかなりの貯蓄になってると思うからそれでタワマンでも買って不労所得で暮らしても良いかもしれない」
「「「「「タワマン……」」」」」
その言葉にヤマトラバーズの五人が反応する。
俺が聞き耳を立ててみると、最上階はヤマトとみんなが使えば丁度良いよねとか、今のうちにお金貯めてそのときにみんなで出し合おうかとか、そんな物騒な会話をしていた。
「うーん。相変わらずフェイトもヤマトにお熱ですなぁ。将来はヤマトが私の弟になるのかな?」
「て事は俺がハーレムエンドに到達したらヤマトは兄弟になるのか……」
「待って、ハーレムエンド以外に私がレオと結ばれるシナリオはないの?」
その後しばらくはワイワイととても小学生がするようでは無い会話に花を咲かせ、ついていけないひなちゃんは呑気にクッキーを頬張って居たのだった。
数分後にようやく話は戻り、嘱託になった理由の説明は今度はなのはちゃんだ。
「私にしか出来ない事をしたいって思ったんだ。私は魔法以外は取り柄がないからね」
まぁなのはちゃんは未来へのビジョンがいまいち浮かんでなかったし、魔法に触れたのがいい刺激になったんだろうな。
「何言ってんのよ。私よりも数学得意なくせに!」
「ひなより頭いいくせにー!」
「おぉ、よく伸びる」
「や、やめへよ〜!」
「アリサ、ひなもなのはの頬を引っ張っちゃダメだよ! ヤマトも眺めてないで止めて!!」
そしてアリサちゃんとひなちゃんに頬を摘まれたなのはちゃんであった。ほんとなのはちゃんの頰ってよく伸びるよな。実はゴムゴムの実食べてないよね?
一通りなのはちゃんの頬を引っ張ると満足したのか次はアリサちゃんが答える。
「私もせっかく魔法が使えるようになったから使いたいと思ってね。学業を疎かにはしないことと、大学まではキチンといくことをパパと約束して嘱託になることを許してもらったわ」
「私も同じ約束をお姉ちゃんとしたよ」
「え”」
悲報、アリサちゃんもすずかちゃんも魔法のことをばらしてしまっていた件について。
いや俺の首が飛ぶから止めてって言ったじゃん!! 俺まだ死にたくないんだけど!?
アリシアちゃんに変な性癖植え付けた件だって、プレシアに絞られて死にかけたのにこれ以上の追い打ちは勘弁してよお!!
だが詳しく聞くと、闇の書が暴走した日に戦ってる様子を忍さんとアリサちゃん家の執事の鮫島さんに見られてしまいそこからバレたのだという。
「にゃはは、実はなのはもそのときにお兄ちゃんにバレちゃったりして……」
「なのちゃんのお兄ちゃんとすずちゃんのお姉ちゃん仲良しだからねぇ」
あー、デート中に目撃したパターンか。
「まあ大丈夫よ。レオのことはうまく誤魔化して説明したし」
「私もだよ」
「……だったらいいけどさ」
とりあえず数日のうちに呼び出されないことを切に祈っておこう。俺にできるのはそれくらいだ。
「それじゃあアリサもすずかも管理局に勤めるの?」
「うーん。私はパパの会社継ぎたいしあくまで学業のついでって感じかしら? 習い事の一環みたいな感じ」
「私もアリサちゃんほどはしっかり決まってないんだけど、デバイスマイスターとかに興味あるからそっちの勉強もしてみたいなぁ」
なるほどアリサちゃんとすずかちゃんは嘱託魔導師にはなったけど、それに専念するわけではないって感じなのか。
アリサちゃんやすずかちゃんの理由を聞いたはやては今度はひなの方を向く。
「ひなちゃんが嘱託になった理由は何なん? グレアムさんの罪滅ぼしなんて言ったら怒るで~?」
はやてが冗談めかしていうとひなちゃんはブンブンと首を振ってから答える。
「ひなはみんなが嘱託魔導師になったからだよ。ママもみんなが一緒だったらやっていいよ。って言ってくれたの」
ひなちゃんの今の説明は語弊がある。正確には猛反対する羽鳥さんをひなちゃんが泣き落としで無理やり説得してしまったのだ。
その後羽鳥さんは俺に「悪意のある大人から守って頂戴!!」って頼んでいたよ。
「レオ君はひなちゃんがいるからよね?」
「いいや。ひなちゃんが理由じゃないよ」
「れお君はね、ひなのおじいちゃんを庇っちゃったから管理局に入らないといけなくなっちゃったんだ」
リンディさんと一緒に龍帝院を陥れたのはいいが、海をよく思っていない地上本部の人が追及してくるかもしれないと思い、レジアスのおっちゃんに事情を話して追求させないようにして欲しいって頭を下げに行ったのだ。
「その時に賄賂としてパワードシステムの設計図持って行ったんだけど受け取ってもらえなくてさ、設計図はキチンとお金で取引するから10年でいいから嘱託として働いて欲しい! って頼まれちゃったんだよ」
おっちゃんの事だから10年間で俺を後継者に仕立て上げる気なんだろうなぁ。
管理局の権力者になったら生活には困らないだろうし、そういう意味では良いかもしれない。
それに嘱託になってもあくまで魔導師として管理局に勤めるだけだから、俺の開発しているものを管理局に渡さなくてもいいらしい。それにデバイスマイスターの仕事は今まで通りフリーランスでしていいらしいし、学業優先とデバイス製作を優先でもいいとも言っていた。
普通にホワイトな条件だ。ホワイト過ぎて逆に不安になってしまう。
「お、おま……龍帝院をあれだけボコボコにしておいて、さらに罪まで被せるのか……」
「いくらなんでもやり過ぎなの」
「龍帝院の判決どっちにしても終身刑か死刑かは避けられないらしいから、これ以上罪が重くなる事もないし別に良くね?」
俺自身もあそこまでやってようやくスッキリしたよ。
龍帝院、もう許してやるから残りの余生は牢屋の中で反省して生きていけばいい。大丈夫、反省していい子で過ごしていればいつかは仮釈放される日も来るかもしれない。ニチャア
「や、やっぱりオッドアイは怖い……」ブルブル
「落ち着いてフェイト、リュウヤはやり過ぎただけだよ! 普段のレオを思い出して!」
「ほら、レオのせいでフェイトのオッドアイアレルギーが再発しちゃったじゃないの」
「フェイトちゃんに謝るの!!」
「納得いかねえ!?」
そして俺があまりの鬼畜戦法を取ってしまったからか、フェイトちゃんはオッドアイアレルギーを再発させてしまったのだった。
良い加減治さないとな、オッドアイアレルギー。確か原作の方でオッドアイのキャラがいたはずだからこのままではその人と触れ合えなくなってしまう。
「ぷ、クク……あっはっはっは!」
どう克服させてやろうかと企んでいると、はやては心底愉快そうに笑い出した。
そしてしばらく笑い続けてむせて咳き込むと、笑い過ぎて涙を流しながら口を開く。
「いやー。やっぱりみんなといると楽しいわ。それにウチの子を酷い目に合わせたリュウヤ君もレオ君がやり過ぎレベルでケジメつけてくれたし言う事なしや!」
はやてはそう言ってしばらく笑い続けていた。どうやら俺が龍帝院にやった制裁は、はやて的には爆笑ものだったらしい。彼女の感性が俺には分からない。
「こほん。何はともあれ、私はみんなの後輩さんやね。これからご指導ご鞭撻、よろしくお願いね」
はやてはそう言うと楽しそうに微笑んだ。
流石に原作や劇場版のように一気に2年も6年も時間を経過させるわけにはいかないので、A's(Another story)編は一旦今回で終了とさせて頂きます。