見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
「ふぅ、良い湯だった……」
身体や腕、首を捻りボキボキと骨を鳴らす。
最近授業とか究極デバイスの制作で座りっぱなしだったから身体中が凝り固まってるな。
小学生で整体行く羽目になっても嫌だし、ストレッチとかを風呂上がりにしてみるか……。
あ、そういえば……
「風呂上がりに飲もうと思って、牛乳とコーヒー牛乳買ってきてるけど飲みたい人は手をあげてー?」
「「「「「はーい!」」」」」
満場一致ね。
ここに来てからこっそり冷蔵庫に入れておき、キンッキンに冷やした飲み物をテーブルの上に並べる。
「各々好きなの取って」
それぞれ六本ずつ買って来てるし足りなくて喧嘩になることは無いはずだ。……誰かが二本も飲むなんて馬鹿なことをしなければな。
「ん、ん、……あーおいしい! やっぱり風呂の後はコーヒー牛乳よね!」
「牛乳の方がおいしいの」
「私も牛乳派かな」
空気が凍った。
え、喧嘩すんの? 喧嘩すんの?
牛乳かコーヒー牛乳か、そんなくだらない案件で喧嘩すんの?
「え、コーヒー牛乳の方がいいでしょ。ちょっぴり苦味もあって大人の味よね?」
そのコーヒー牛乳、子供でも飲めるように甘く作られたやつなんだけど。
「でもコーヒーはカフェイン入ってるから夜眠れなくなっちゃうよ?」
「それに牛乳はカルシウム豊富だから成長にいいの」
コーヒー牛乳にも牛乳入ってるから変わらないと思うぞ。知らんけど!
このままじゃ埒が開かないと悟ったアリサちゃんは俺たち転生者組の方を向く。
「ヤマト達はもちろんコーヒー牛乳の方が好きよね?」
まぁ確かに俺はコーヒー牛乳派だな。個人的な味の好みの問題だから牛乳派を批判するような事はしないけど。
とりあえず今回俺はアリサちゃん側へつくことにする。
というか何気にアリサちゃんと気が合うんだよな。殿堂入りのひなちゃん除いたら、多分このメンツの中では一番仲良いまであるぞ。
「な……! 裏切るの、レオ君? 見損なったよ!」
「コーヒー牛乳の方がいいなんて頭おかしいの!!」
なぜコーヒー牛乳選んだだけでそこまで言われにゃならんのだろうか。
とりあえず頭おかしいなんて失礼なこと言うなのはちゃんには、ニコポナデポの餌食となってもらおう。
「ニコ」ナデナデ
「ひ、ゾクッとしたの!? セ、セクハラだよレオ君!!」
「そう言う君はモラハラなんだよ。なのはちゃん?」
金髪に同じことされてるから、やつを思い出して怖かろう。頭おかしいと言ったことを後悔するんだなウハハハハハ! ……ぐすん。
とりあえず俺はコーヒー牛乳派確定だ。
アリサちゃんは勝ち誇った顔でひなちゃんとヤマトの方を見る。
「れお君もう一本飲んでいーい? 次牛乳飲みたい!」
「お腹冷やすからダメ。牛乳は明日の朝ごはんで出してあげるから今日はもうおしまいです」
「ちぇー」
「……ひなちゃんは両方派だね」
「そうね。この子はこの醜い争いに参加させるべきでは無いわ」
我が道を突き進むひなちゃんはとりあえず中立!
どうせどっちが好き? って聞いたらどっちも好き! って言うのは目に見えてるし。
だとしたら……。
「だとしたらどちらの主張が正しいかはヤマト君に委ねられたみたいなの。ヤマト君、どっちなの!?」
「もちろんコーヒー牛乳よね!?」
「牛乳だよね!?」
三人娘に詰め寄られたヤマト君。その瞬間バァンと机を叩く。ビクンと飛び跳ねる我々一同。
あまりにくだらない争いにとうとうヤマトもキレたと言うのか!?
「おい、レオ……」
「な、なんだよ……?」
ゴゴゴゴゴゴゴ……。
「なんでフルーツ牛乳がねぇんだよ! 風呂上がりって言ったら普通フルーツ牛乳だろう!!」
「テメ、人が気を使って買って来てやったってのに、その言い草万死に値する。今日のお前の態度はマジで目に余るしここで始末してやるわオリ主ィ!」
「アリサちゃん、レオ君、決着は後にしよ。さきにヤマト君をやっつけるの」
「そうね、ここは手を組むとしましょ。いいわよね、すずか?」
「もちろんだよアリサちゃん」
その後力を合わせて共通の敵を討ち倒した事で、仲直りしてお開きとなった。
その後寝る時間になったので、布団を三枚並べて敷いてそのど真ん中に気絶したヤマトを寝かせる。三枚を六人で使うということで二人一枚使って寝るのだが、ここで一つ問題が出来た。
誰がヤマトと一緒に寝るかだ。
「ひなはれお君と寝るから、なのちゃん達がヤマト君と寝ていいよー」
「俺、端っこでいいわ。ヤマトの両隣りになる権利は三人で奪い合ってクレメンス」
「普通なら抜け駆けしちゃった私が譲るべきだよね。アリサちゃんとなのはちゃんが隣で寝ていいよ」
「ダメだよすずかちゃん! すずかちゃんは反撃を受けたでしょ? ここは公平に行くべきだよ!」
「じゃんけんで決めましょ、勝っても負けても恨みっこなしで」
うーん、素晴らしき友情なり。せっかくだから三人ともヤマトの隣で寝させてあげたいけど……。
その瞬間、天啓が舞い降りた。
「三人がヤマトの近くで寝られるいい方法思いついたんだけど……聞くかい?」
「「「聞く!」」」
「横が空いてないなら、彼の上に乗ればいいじゃない!」
「「「…………」」」
あ、あれダメだった? あいつ身体は丈夫だから上に乗るくらいならどうって事ないだろうし。
あ、上で寝る人は寝づらいのか。全員が寝られるように考えすぎて眠り心地のこと全然考えてなかった。
「レオ、アンタ……天才じゃない」
「およ?」
「そうだよ上で寝ればいいんだよ。なんで気がつかなかったんだろ私たち……?」
「でも問題があるの。上で寝る人が一番密着するから枠が一つになっちゃったの」
「それこそじゃんけんで決めればいいじゃない。あたり二枠外れ一枠が大あたり一枠あたり二枠になっただけでも最高よ」
そう言って三人娘達はじゃんけんを始めた。
「ひなちゃん寝るよー」
「あーい」
誰が上に乗るかなんてどうでも良かったので、俺は先に休ませてもらうことにした。……ひなちゃん引っ付きすぎでは?
「………………ん?」
すぐ近くで小さな呻き声が聞こえて目が覚める、掛け布団をめくって腕の方を見てみると、ひなちゃんがうなされていた。
「……ごめ、なさい。……やめ、……なぐらないで……」
……そういえばこの子、前世では虐待されてたんだっけ?
普段底抜けに明るいから気づかなかったけど、トラウマとして残ってしまったんだろう。
ひなちゃんを起こさないように、優しく頭を撫でてやる。
普段はニコポナデポがあるから絶対に頭は撫でないのだが、今日は特別だ。
「少なくとも今は、お前を傷つける奴はいないから。……安心して眠りな?」
しばらく撫でてやると、安らかな表情となる。どうやら悪夢からは抜け出したようだ。
……まだ夜中だから眠い。早く寝よ。
〜翌日〜
「くぁあああ……よく寝た」
体内時計により五時頃に目が覚めた俺は、腕に引っ付いていたひなちゃんを優しく剥がして、彼女の隣で寝ていたすずかちゃんにひっつけてから、朝食の準備をするために布団を脱出する。
「お、おいレオ……」
「あ、ヤマト起きたんだ。もう少し寝てていいぞ、朝飯用意してくるわ」
「た、助けてくれ……」
ヤマトの左隣にはアリサちゃん。右隣にはすずかちゃん。上にはなのはちゃんが乗っかって寝ていた。
これでは逃げられないだろう。女の子に囲まれておっさん君が羨ましいよ。
「お前なぁ、こんな美味しい思いしてんのに助けてはないだろ。みんなが起きるまでこの状況を思う存分堪能しなって」
「れ、レオ。待ってくれ……!」
なんか言うヤマトは放っておいて台所へ向かった。
こうして波瀾万丈なお泊まり会は終了したのだった。
意外と楽しかったからまた機会があれば誘って欲しいもんだ。