見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
「…………」
俺はただ無心にプログラムを打ち込んでいく。
長い社畜生活で鍛えられたタイピングスキルにより、どんどんとプログラムが書かれていくが、俺はこの作業を六時間前から続けている。このことから、どれだけ大掛かりなシステムを作っているかは容易に想像つくだろう。
だがそれもこれで終わり。最後はエンターキーに相当するキーを打てば……。
「……ど、どうだ、アスカ? 異常とかおかしなところとかないか?」
『いいえ、どこにも異常は見られません。また追加したプログラムを一通り実行してみましたが、どれも異常なく実行できました』
「ということは……」
『完成ですね。お疲れ様でした』
「……!」
デスクの近くにある試験管の中から一本の豪華な装飾の杖を取り出す。
「やっと、やっとやっとやっと完成した! 長かった、ここまでくるのにほんと長い時間かけた!!」
『学校や遊びに時間を使わなければ、もっと早く完成していたはずなんですがね』
なんてことを言うんだアスカ! 子供たるもの遊んでなんぼやろがい!
こちとら以前は複雑な子供時代を過ごしてたんだから、今回くらい好き放題やらせてくれ。
豪華な装飾の杖を触り、眺めて一通り堪能したのち待機状態にする。
星型のエンブレムに姿の変わったそれを、胸ポケットに入れた。
『ですがこれでようやく、私も戦えるわけです。せっかく創造主に作り出されたのだからそれに見合うデバイスになりたかった。ですがマスターは見事その悲願を果たしてくれましたね』
「まぁ、お前はあくまで切り札で基本は今まで通り複数のデバイスでの手数の多さを売りにさせて貰うけどな」
と言うことで、究極のデバイスを獲得するために、組み立てを開始してから一年半。白銀の星杖、アスカロンが遂に完成しました。
機体自体は一年で完成したんだが、システム面も良いものにしたくてミッドチルダのデバイスの最新技術や、近代ベルカのシステム、さらには古代ベルカのレアスキル保持者で有名な人たちのところにまでわざわざ取材に行ったり。だがプログラムは盛れば良いと言うものではないため、削ぎ落とせるところは削ぎ落として、肝心な部分は破損した際の保険のプログラムなんかも書き込んだりをしてるうちに半年が過ぎていたのだ。
「作っといて言うのもなんだけどさ、これ使うことあるかな? ぶっちゃけNロッドと四属性デバイスで事足りると思うんだけど」
『いや、使って下さいよ。オーバーキルで相手を叩き潰せば良いじゃないですか』
「……まぁ、最悪金髪に使えば良いか」
そんなことを考えたのがいけなかったのだろうか?
家の外でなんだか騒ぎ声が聞こえる。
同年代の子達がふざけて暴れてるとかじゃなくて、かなり緊迫した感じの騒ぎ声だ。
「放してよ!! 私今日はれお君のところに行くから、リュウヤ君とは遊べないよ!!」
「はは、何言ってんだよひな。あんな踏み台よりも俺と遊んだ方が楽しいって! ほら新作ゲーム買ったから早く行こうぜ!」
「はーなーしーてー! リュウヤ君と一緒は嫌だよ!!」
「なんでそんなこと言うんだよ! ツンデレにしても限度があるだろ!? 来い、言葉遣いについて俺がちゃんと一から教えてやるよ!」
「うんぁああああん!!」
…………。
「アスカロン。セットアップ」
『了解しました。あの踏み台その一を叩き潰しましょう』
ひなに夢中になって俺の存在に気がつかない金髪に背後に回ると俺はいつも通りあの一撃を放つ。
「等活地獄!!」
「おごぉおおおおおお!!??!!? ……あ、……踏み台ィ、いつもいつも良いところで股間蹴ってくるのは……お前だったか!」
いつもより少々手加減したからか金髪は意識を保っていた。
ひなちゃんが俺の後ろに隠れたのを確認しつつ、金髪にアスカロンを向ける。
「死んだらあの神さんによろしくな。《ストーミング・スフィアーズ》!!」
「な、魔法使うなんて卑怯だぎゃぁああああああああああああ!!」
魔法使うなんて卑怯だって言ってるけどお前、いつも喧嘩するとき無限の剣製使ってくるじゃねえか。おまいうとはまさにこの事だ。
魔力変換資質風により発生させた竜巻と、風に流されて渦を描く無数のスフィアに襲われた金髪は、遥か空の向こうへと旅だったのだった。
「ええええええぇん! うわぁああああああん!」
「あー、ほらひな。泣き止んで」
「あー! レオ君がひなちゃん泣かせてるの!」
「げ、このタイミングで……」
なのはちゃんが……て言うか原作仲良し三人娘がいた。
なんでもひなちゃんの泣き声が聞こえたから駆けつけたとのこと。
「レオ、ひなに謝りなさいよ!」
「え、いや、泣かしたの俺じゃなくて……」
「加害者は誰もがそう言うのよ! 良いから謝れー!」
「お、俺は悪くねぇ! 俺は悪くねぇ!」
「……何やってんだよお前ら」
その後、遅れてやってきたヤマトがうまく仲裁してくれたおかげで事なきを経た。
「そういえばレオ君今変わった服着てるね。コスプレ?」
「あ"、……コ、コスプレダヨ。カッコイイデショ?」
し、しまった。俺今バリアジャケット姿じゃん!
しどろもどろで誤魔化そうとする俺を見た三人娘は呆れたように口を開く。
「誤魔化さなくても良いわよ。これがアンタの魔導師としての姿なんでしょ」
「心配しなくても内緒にしておくの」
「そ、そうしてくれると助かります……」
いくら金髪を懲らしめるためでも、魔法使う必要はなかった。普通にステゴロでも十分勝てる相手なのだから。
でもアスカを完成させた事で早く性能を試したいと心の奥底では考えてしまっていたのだろう。
猛省しなければ。
知らない人が来る前にさっさと変身を解くと、泣き止んだひなちゃんに尋ねる。
「それでひなちゃんはどうしたの?」
「猫ちゃん拾ってウチで飼って良いよって言われたから、れお君に見せようと思って呼びに来たの」
詳しく聞くと昨日の雨の中。
翠屋にお使いに行った帰りに道端で弱った猫を見つけたようだ。
自宅がパン屋と言うこともあり、飼えないと言われるのは目に見えているため、こっそり連れて帰ったようだがものの数秒で見つかったとのこと。
ただ、奇跡的に飼って良いと言われたのでみんなに自慢したくて声をかけて回ってたのだと言う。
ああ、だからここにみんないるのね。お兄さん納得。
「こらこらひなちゃん、猫も生き物なんだよ? 元気なときならともかく弱ってるときに知らない人が見に来たら怖いはずだよ? それに具合が悪いなら一緒にいてあげなきゃ」
「ごめんなしゃい。でもねでもね、ギュッてしたらもう元気になったんだよ!」
手をバタバタさせてそんなことを言うひなちゃん。
なにを抱きしめたくらいで元気になる訳……あぁ、ひなちゃんの転生特典が働いたのか。
「ね、ね、だから見においでよ!」
「うーん、でもみんなでゾロゾロと行ったら猫ちゃんも困っちゃうんじゃ……。あ、ごめん! 行く、行くからまた泣かないでよ!!」
と言うことで猫を見に行く事になりました。