見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
「ちょっとあなた、誰よその女! 私だけを愛してるって言ったくせに!!」
「こ、これは違うんだ!」
「ダーリン!? ま、まさか私とは遊びだったんか……? ひ、ひどいわ。私はダーリンのために全てを捧げて来たって言うのに……」
ノリノリで役を演じるアリサちゃんとヤマトとはやて。そして意外にもヤマトも乗り気である。
考えてみたら昔なのはちゃんとひなちゃんと俺とでおままごとしたときも、割とノリノリで演じていたからなぁ。
シチュエーションとしては通い妻であるなのはちゃんらヒロインが、偶然にも同時に来てしまったと言う浮気者には最悪すぎる展開である。
そして俺も現在ネグリジェのため通い妻を演じさせていただいている。
「え、えっと……えっと……ど、どうしてなの? 私じゃ何か足りなかった……?」
「えーと……酷いよ。私はあなたの事が大好きだったのに」
半ば棒読み口調で演じるなのはちゃんとフェイトちゃん。始める前からあまり乗り気では無かったため、複雑そうな顔をしてるな。
「そんな……嘘……うそ……だよね?」
そして乗り気では無かったはずなのに割とノリノリで演じているすずかちゃん。
おそらく遊びでも面白がってでもなく、本気で最悪な展開を想定したシチュエーションをしているんだろうなぁ。
「わ、私だけじゃなくて、可愛い妹まで毒牙にかけてたなんて……。この人でなし。人でなしぃ!」
「このりこんとどけにサインしなさーい!」
「ひな。それはまだ早すぎるわ」
「あれ?」
リアルおままごと感覚で演じるひなちゃん。だが明らかに離婚届は早すぎるため、アリサちゃんに指摘されてしまった。
そしてみんなが俺の方を向く。何にもやる気は起きなかったが、こういう面白そうなことは別だ。
疲弊してしまっている精神が面倒臭いと言ってはいるが、無理やりにでもやる気を絞り出して役を全うしよう。
女の子になりきって……なりきって……。
「や、ヤマト君……私、信じていたのにこんなの……こんなのひどすぎます!」
敬語キャラがいないので、敬語キャラでいかせてもらおう。
俺は仕草や口調、そして声もできる限り悲劇のヒロインっといった感じで演じてみる。なかなか様になっているのではないだろうか?
「違うんだ。俺は……そう、みんなを愛してるんだよ!!」
ヤマトは浮気男が言う定番のセリフを言う。事前にはやてとどんな内容で進めるかを打ち合わせして居たっぽいし、このセリフははやてが考えたんだろうな。
「みんなを愛してるぅ? それじゃあダーリンは誰が一番なんや!?」
「もちろん私よね!?」
「いいえ私ですっ!」
アリサちゃんと一緒にヤマトに詰め寄るとヤマトから念話が来る。
(ちょ、いくら何でも寄りすぎだ!!)
(だってさアリサちゃん)
(レオに言ったんだよ! 少し離れろ!!)
アリサちゃんと同じくらいの距離詰め寄ったというのに、なぜ俺だけ引き離したのか? やはり女装男子はヤマト的にアウトなのかもな。
「私は先週は5回も会ったし、一緒にお昼ご飯も食べたのよ!?」
「甘いで私は先週6回も晩御飯を作りに行ったんや!!」
「回数なんかどうでもいいでしょこの泥棒猫!!」
「最初に数を言ったのはそっちや! そして私は狸やから!!」
(これや、これをやりたかったんや)
(ふふふ、たまにはいいわね)
それからお互いを激しく罵りだしたアリサちゃんとはやて。だがあくまで演技であり、二人とも念話では笑ってるため止める必要はないだろう。
「あわわわわ……アリサちゃんとはやてちゃん怖いの」ガタガタ
「う、うん。……早く終わって………………」ガタガタ
一方なのはちゃんとフェイトちゃんだが……アリサちゃんとはやてのドロドロしたヤマトの奪い合いを見て、お互いを抱きしめあって震えてる。
この二人にはまだまだ修羅場は早すぎたようだ。だったらひなちゃんやアリシアちゃんもまだこの展開は早い筈なんだけど……
「ねえシアちゃん。りこんとどけっていつ出せばいいのかな?」
「うーん、もう少し後……浮気でヤマトの好感度が下りに下がったタイミングじゃない?」
「ひなよく分かんないよ」
「私も。ちょっと様子見よっか?」
「うん」
ふと心配になり、ひなちゃんとアリシアちゃんの方を見てみると、離婚届を出すタイミングを測っていらっしゃった。
ヤマトに気がない彼女らは、アリサちゃんやはやてのように奪い合いを演じるのではなく、普通に離婚する気満々のようだ。
アリサちゃんははやて。なのはちゃんはフェイトちゃん。ひなちゃんとアリシアちゃん。この流れだと余り物の俺とすずかちゃんでどう口論するかだけど……
「ヤマト君は私のだよ。誰のものでもない私だけのもの。あなたのものじゃないんだよ」(ごめんね、ちょっと相手をして欲しいな)
すずかちゃんはヤンデレと化して俺の方に詰め寄って来ている。念話で謝ってきてる辺り演技なんだろうけど、確かにすずかちゃんはこう言うキャラが似合いそうではある。
「な、なんですかあなたは!? ヤマト君は……私の…………」
俺はすずかちゃんの気迫に押されて、後ろに下がり壁に追い詰められる。……ように振る舞う。
(ヤンデレなんてよく知ってたね)
(たまにお姉ちゃんが恭也さんに対してこうなるの。……そうだ、本で読んだ展開をやってみたいからいい?)
(いいよ〜)
忍さんはヤンデレキャラだった件について。
そんな事をぼーっと考えていると、すずかちゃんは(おもちゃだから安心してね)と念話で前振りをすると、ナイフを取り出す。いや、一体どこから出したし。
「ひっ……な、何をするつもりですか……!?」
「ヤマト君のは私のなの。私だけのもの……。誰にも邪魔はさせないし、邪魔者は許さない。……だから…………邪魔する悪い猫ちゃんは……死んじゃえ」
「いやぁああああああ!!」
すずかちゃんが俺の元へ飛び込み、優しくおもちゃのナイフを俺の腹に当てる。
「あぐ……。う、うう…………やま……と……くん」パタリ
そして俺は死んだふりである。
まさかの刺される展開とは、一体すずかちゃんは普段どんな本を読んでいるのだろうか?
すずかちゃんは狂気的に笑いながら、次はひなちゃんとアリシアちゃんにターゲットを向けて、襲いかかるフリをする。
「ぐわ〜!」パタリ
「や〜ら〜れ〜た〜」パタリ
二人ともわざとらしい演技で倒れる。ちゃっかり俺の上に覆い被さったアリシアちゃんは流石だと言っておこう。
その後言い争いをしていたアリサちゃんとはやても刺されて、「あーれー」「きゃー」と言って床に寝転がる。
「レオ君もひなちゃんもお姉ちゃんも死んじゃった……こ、来ないで!」
「やめて、すずかちゃん! やめてー!」
「えい♪」
俺が取り出したカンペを読みながら、だんだん楽しくなってきたらしいすずかちゃんの持つナイフの錆となった。まぁごっこだから誰も死んでないし健全も健全だ。
そしてナイフの血を掬い上げ舐めとる仕草をしながら、恍惚な表情でヤマトに問いかけるすずかちゃん。
「これで一緒にいられるねヤマト君。これからもずっと……ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと!!」(ハァ、ハァ、ずっとって言い続けるの疲れちゃった……)
「な、なんて馬鹿な事を……い、嫌だ。来るな、来ないでくれー!!」(お疲れすずか)
ヤマトは逃げる動作をしながら、念話ですずかちゃんを労う。
すずかちゃんは「えっとこう言うときは……」と一度、自身の家から持ってきていた本を開いてカンニングをするともう一度演技を再開。
「なんで逃げるのヤマト君? なんで、ねえなんで? 私じゃダメなの? 私じゃあなたを手に入れることは出来ないの!? ……もういい。なら、ヤマト君も殺して私も死ぬ!!」
「ぐぁああ!?」
「〜♪〜♪」(某スクールなデイズの処刑用BGM)
「ブフッ!! ちょ、レオ! このタイミングでその歌を口ずさむなwww」
膝をついてこれから倒れると言ったタイミングで吹き出して笑い出した、ネタを知ってるヤマト。
そしてすずかちゃんはハテナマークを浮かべながら、自身の首におもちゃのナイフを当てて、床に寝転がる。
最後に俺が余計な事をしたせいで締まらない形になってしまったが、このおままごとは最悪のバッドエンドで終わってしまったな。まるでハーレムルートのバッドエンドに辿り着いた時のような……。
アリサちゃんが「はい終わり!」と手をパンパンと叩き、みんな起き上がる。
そしてしばらく静寂が続いたが、フェイトちゃんが一言。
「修羅場よりもみんな仲良しの方がいいや」
「「「「「「「「同感」」」」」」」」
禁止事項に違反しているとご指摘を頂いたので大急ぎで訂正しました。
申し訳ありません。そしてご指摘ありがとうございます(土下座)