見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
「動くな! 動いたらこの人質がどうなる分かるよなぁ!?」
とある銀行の中で、女の人にナイフを突きつける人相の悪い男と対峙する俺。俺は余裕な表情で一歩一歩歩み寄っていく。
「お、おい。俺は本気だぞ!!」
「やったらどうなるか分かるよね? やったら人質はいなくなって、人質を殺されちゃった俺は機嫌が悪くなってお前をバラバラにする。人質にした事の数万倍でお前に返してあげる。どっちにしろお前は捕まるんだから痛い目に遭って豚箱に入れられるよりもここで素直に投降したほうが楽だよー?」
「が、ガキのくせに舐めやがって!! 俺がどれだけ本気かみせてや「遅えよ」ぐぶぅぇ!?」
奴が人質の女性の首筋にナイフを突き立てるよりも早く、奴との距離を潰してナイフを抑えてから顎を撃ち抜く。
その際にナイフを持った手をしっかりと握りしめて指をへし折っておくことも忘れない。
「さーて、人質に手を出す悪いおじさんはお仕置きしないとね」ニチャア
「ひ、ひぃ!? あがっ! ぐべっ!!」
顎を打ち抜かれて仰向けに倒れた銀行強盗に馬乗りになって、奴の意識が飛ぶまで殴り続けるのだった。
〜数十分後〜
「やりすぎです!」
現在クイントさんに正座をさせられてお説教を受けている俺氏。
本日は嘱託としての仕事の日で、丁度銀行立てこもり事件があったから手伝いに行ったんだが、流石にハッスルしすぎたようだ。
いやー。いつも凶悪犯が目の前にいるとついついやりすぎてしまうなぁ。龍帝院を思い出してしまうのだろうか?
「でも相手は人殺そうとしたんだから、これくらいはされても文句言えないと思います」
「いやまぁそうなんだけど! 確かにレオ君の過激な捕まえ方がいい見せしめになって、他の犯罪の件数が減ってるのも事実なんだけど! でも犯人指が複雑骨折からの顔面ボコンボコンに凹んでるじゃん!」
「はは、ザマァないですね」
「反省しなさーい!!」
その後こってり叱られ続けて数十分、ようやくお説教が終わった。
まぁ確かに事件を解決してるからこそ説教程度で済んでるけど、あんまりやりたい放題やってるとレジアスのおっちゃんにも迷惑かけてしまうからなぁ。少しは自制しなければ。
ただでさえ最近では敵に対しては容赦が無さすぎる。陸の
雌獅子って何だよ、俺は男だ。
「まぁ海鳴市在住だから別に日常生活に支障がないからいいんだけど。それでは帰ります、お疲れ様でした」
「あ、ごめんちょっと待ってくれないレオ君?」
クイントさんに呼び止められる。あれ、今日のお仕事はもうおしまいなはずだけど何かやり残しがあったのだろうか?
「いやー、お説教しちゃった後で気が引けるんだけど、頼みたい事があるんだ」
「今回は俺に非がありますし気にしてないですよ。どうしました?」
「私これから数日かかる別の任務が入ってるんだけど、夫も急な呼び出しで数日別の管理世界に行く事になっちゃって、娘を見てくれる人がいないんだ」
クイントさんは続ける。本当はベビーシッターにお願いするのが一番良いのだが、ギンガちゃんとスバルちゃんは深くは言えないけど生まれが特殊なせいで、悪い人に攫われやすいのだと言う。
故に戦える子守りを探しているのだとか。
「ギンガもスバルもまだ小さいから数日もお留守番をさせるわけにはいかないの。だからお願い! 三日間、うちのギンガとスバルを預かってくれないかしら!!」
「いいですよ。料理得意ですし。ですが大丈夫です? 俺はミッドで生活してるわけではないんで、娘二人は管理外世界に連れて行く事になりますけど……」
「レオ君の住んでる世界って、第97管理外世界……地球でしょ? なら大丈夫! 本当に困ってたんだ。メガーヌもルーちゃん一人でいっぱいいっぱいみたいだし、頼める人がいなくって……」
何でもクイントさんの夫のゲンヤさんの先祖が地球出身らしく、ならば大丈夫と言う判断なんだとか。おいおいそれで良いのかよ?
それに考えてみれば海鳴市ならテスタロッサ・ハラオウン一家も住んでるし、何かあれば局員の彼女らを頼れば良いわけだしな。問題はないだろう。
まぁ何はともあれ、ナカジマ夫妻の愛娘二人を三日間預かる事になったのだった。
〜ナカジマ宅〜
クイントさんに連れられてナカジマ宅へ行くと、クイントさんに瓜二つの娘さん二人を紹介される。
「スバル、ギンガ! この人はレオ君。私の知り合いで三日間面倒を見てもらう事になったの。ちゃんと言う事聞くのよ?」
「分かったよお母さん。……あ、あの、お久しぶりです! 前は助けていただいてありがとうございました!」
「えっと……あー! 龍帝院に絡まれていた子だね。いやいや気にしないで。ぶっちゃけあのときは友達助けるついでだったんだし!」
ナカジマ姉妹のお姉さんのギンガちゃんは、以前龍帝院にちょっかいをかけられていたところを助けていたため割とすんなり受け入れられた。
問題は……
「ジー……」
クイントさんの後ろで口でジーっと言いながら睨んでくるボーイッシュな妹ちゃんのほう。確かスバルちゃんだったっけ?
「ごめんねレオ君。この子はあの金髪のクソ野郎に絡まれてから、家族以外を怖がるようになっちゃって……」
「そうですかー。スバルちゃん、俺はレオだよ〜。三日間一緒だから仲良くしてくれると嬉しいな〜」
「……お姉さん悪い人?」
クイントさんの背後に隠れながら、そんな失礼な事を尋ねる妹。
「こら、なんて事言うのスバル! レオさんに謝りなさい!」
「だってギン姉! お姉さんの目の色違うもん! 目の色違う人は悪い人なんだもん!!」
「……ごめんね娘が」
「別に良いですよ。諸悪の根源は別にいますし」
この子もフェイトちゃん同様、オッドアイ=悪人と言う前提が出来てしまっているようだ。
ほんと死刑になって良かったよ、あの踏み台は。
と言うか姉には認められてるけど妹に怖がられてるって、なんだかテスタロッサ姉妹を思い出すなぁ。
アリシアちゃんとフェイトちゃんを思い出しながら、スバルちゃんに歩み寄って視線を合わせる。
「俺は悪い人じゃないよ。だから安心してね?」
「嘘だ! 悪い人は自分の事を悪い人じゃないって言うって、テレビで見たもん!!」
「もうスバル!!」
…………。
「……ぐへへへへ〜、バレちまっちゃあしょうがねえ! そうさ、俺様は悪人なのさ! 食ってやるぞ〜?」
「きゃー!!」
スバルちゃんを驚かせてやると、彼女はギンガちゃんの後ろに隠れてしまった。
楽しい。
だがあんまり遊びすぎるとギャン泣きするだろうし、これ以上スバルちゃんが怖がらないように左目は閉じておくか。
「本当にごめんね。この子食べるのが大好きだから、ご飯で釣ってあげれば悪い人じゃないって分かってくれる筈だから」
「分かりました。料理は得意なんでクイントさんの言う通り、俺の料理なしじゃ生きていけない身体にしてやりますよ」
「いや、そこまでしろって言ってないからね?」
料理で釣れるならば、今夜は子供ならみんな大好きなアレを作ってやるか。クイントさん曰く二人とも大食いらしいので大量に。
「それじゃあ行こっか」
「分かりました。三日間よろしくお願いします」
「いや! 私お母さんと一緒にいる!!」
「スバル、お母さんは今からお仕事だからダメだよ。三日だけだし、その間お姉ちゃんが一緒にいるから。ね?」
「嫌だ嫌だ! お母さん、良い子にするから捨てないでー!!」
悲痛な声で泣き叫ぶスバルちゃん。いやそんなに嫌がられたら流石に傷つくんですが?
なんだか悲しい気持ちになりながらもナカジマ姉妹を連れて時空間転移で海鳴市へ帰還したのだった。