見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
自宅へ帰還したはいいが、未だメソメソ泣いているスバルちゃん。
幼いがゆえにお母さんと一緒が良かったか、オッドアイの俺と生活するのが嫌なのか、はたまたその両方か。何はともあれ食事で釣るとしようか。
「ギンガちゃん。今から晩御飯作るから、スバルちゃんのことお願い」
「分かりました」
よし、やるか。
そう思って冷蔵庫を開けると、キャベツとにんじんくらいしか食材が無かった。
そうだ。今日仕事終わったらスーパーで買い物しようと思ってたんだった。今から買いに行くか? いや、流石に二人を置いて行くわけには……。
だからと言って二人を連れてスーパーに行くにしても、二人とも知らない世界で不安だろうし……よし。
(ヤマトー。ちょっとそこのスーパーで鶏もも肉10パックとしょうがとニンニクとその他もろもろ買ってこいよ)
(いやお前の家の食材くらい自分で買いに行けよ)
(実はカクカクシカジカでな)
(カクカクシカジカで通じると思ってんなら、それは間違いであると知れ)
ここは空気読んでカクカクシカジカで察してくれよ小説的に。小説的に!!
まぁこれ以上ふざけると呆れられて、念話を切られる可能性が高いし理由を話してしまおう。
(地上本部の知り合いの娘さん預かったんだけど、二人はよく食べる子っぽくてね。だからご飯作りたいんだけど、今冷蔵庫にキャベツとにんじんくらいしかないんだよ)
(なるほど、二人を留守番させるわけには行かないってわけか)
(そゆこと。今度翠屋のシュークリーム奢るからマジで頼む!)
(仕方ない。シュークリーム3個だからな?)
(助かる)
その数十分後、俺の頼んだ品を買ってきてくれたヤマト。
普段はお礼に飯にでも誘うのだが、流石にこの世界に来てすぐに知らない人に合わせるのは、スバルちゃんにもギンガちゃんにも悪いだろうし、今日は帰ってもらった。
さて、改めて作るか!
〜二時間後〜
「よし出来た。スバルちゃんギンガちゃん。ご飯食べよっか?」
泣き止んだようだが未だに不安そうな顔のスバルちゃんと、そんな妹をつきっきりで慰めていたギンガちゃんを食卓に連れて行き、ご飯と味噌汁と野菜炒めを出してやる。そしてメインディッシュに大皿にこれでもかとつまれた唐揚げを真ん中にドンと置いてやると、途端にスバルちゃんとギンガちゃんは目を輝かせた。
「ご飯も味噌汁も野菜炒めもおかわりはあるからね。さあお上がりよ」
「「いただきます!」」
「「おかわり!!」」
「早!? よく噛んで食べてる?」
あっという間にご飯茶碗に盛り盛られたご飯を食べてしまった二人が空になったご飯茶碗を差し出してきた。
二人とも子供とは思えない凄まじい食欲だ。
「まぁこんな事もあろうかと大量に炊いてるから問題ないんだがな! ほら特盛どうぞ!」
「「おかわり!!」」
『ま、マスター。見ましたか? この二人、凄い早さでもぐもぐしてましたよ』
「ああ。改めて観察したけど、きちんと噛んで食べてるな」
俺はもう一度ご飯を特盛で出してやる。少し早いがそろそろ我が家の唐揚げで必ず用意するとっておきを出してやるか。
「はい特盛! 唐揚げの味変したいなら甘辛タレも用意してるからお好みでどうぞ」
唐揚げとかは一度にたくさん作り、数日にかけて食べるため飽きがきたときのために甘辛タレを作るんだ。
少しピリってくるけどご飯が進むのだ。
「ギン姉これ美味しいね! おかわり!!」
「そうね。レオさんの料理お母さんより美味しいかも! 私もおかわりお願いします!!」
『あ、あの小さな体のどこにあれだけの食事が入っているのでしょうか?』
「さあ? でもあんなに喜びながら食べてくれるなんて、作った甲斐があったってもんだよ。はいおかわりねー。育ち盛りなんだからたくさん食べな〜」
『若い子にたくさん食べさせたがる。おっさんあるあるの行動ですね』
そうですよおっさんですよ。丹精込めて作ったご飯を美味しい美味しい言ってたくさん食べてくれるのは、普通に嬉しい事なんだよ。
結局その後ご飯も味噌汁も野菜炒めも、あれだけあった唐揚げも全部食い尽くされたのだった。
あれー? 明日の朝の分まで作ってたつもりだったんだけどあれー?
「「ごちそうさまでした!」」
「お粗末さまでした」
明日も少し朝早くに起きて料理たくさん拵えておかないとな。
そんな事を考えているとギンガちゃんがすっかりご機嫌になったスバルちゃんをさとし始める。
「ねぇスバル。こんな美味しいご飯作ってくれる人が、まだ悪い人に見える?」
「……ううん」
「それじゃあレオさんに言うことあるよね? ちゃんと言えるかな?」
スバルちゃんはこっちに来ると、ペコリと頭を下げる。
「悪い人って言ってごめんなさい」
「いいよいいよー。謝れて偉いねぇ」
クイントさんの言う通り本当にご飯で釣ったら、あっさり和解できた件について。
現金ですなぁ。ま、子供なんてそんなもんか。
「ねえ、レオ姉って呼んでもいい?」
俺は盛大にズッコケた。そういえば俺のことお姉さんって言ってたしもしかして俺の性別を勘違いしてしまってるパターンだな?
「えっとねスバル? レオさんは男性だよ?」
「だってレオ姉髪長いよ? 料理上手だよ?」
「だからね、レオさんは髪が長くて料理上手な男の人なんだよ?」
「ギン姉の嘘つき! レオ姉は女の子だよ!!」
あー、これは多分俺が男だって言っても信じてくれないパターンだな。
考えてみたらあのパジャマパーティー以降着心地良くて夜にネグリジェ愛用するようになってるくらいだし、誤解を解くのは至難の業かもしれない。男だと分からせる手っ取り早い方法は見せることだけど、流石に人様の娘にセクハラしたくないしなぁ。
ギンガちゃんを呼んで耳打ちする。
「もういいよ。気づくまでは放っておこう」
「いいんですか?」
「うん。多分スバルちゃんは頑固っぽいし今誤解を解くのは大変でしょ? ……それに勘違いされるのはもう慣れたよ」(遠い目)
「く、苦労したんですね」
昔は勘違いされなかったのに、なんだって最近は勘違いされるようになったんだろうか?
『ニコポナデポがなくなったせいだと思いますよ。あれは異性にしか効果を発揮しないので、龍帝院のニコポナデポを受けた人は似た雰囲気からマスターが男だと気づくことができたんでしょう』
「……」
ニコポナデポを消した弊害だったのかよ!
その後姉妹を風呂に入れて(もちろん一緒には入ってない)、二階の空き部屋に布団を敷いてそこに寝かせてその翌日……
「レオ姉おっきろー!!」
「ぐぇ!?」
スバルちゃんのダイブで強制的に起こされた俺。
「おはようレオ姉! おなか減った!!」
昨日だけでスバルちゃんにずいぶんとなつかれてしまったようだ。