見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
さて、前回のカチコミから一週間後。
マッドサイエンティスト共は全員逮捕。そしてその翌日には金で繋がっていたグラサンの所属する犯罪組織にもカチコミをかけて無事壊滅させた。
今回逮捕した奴らはなんだか全員、「ピンクを見せないでくれぇ!」とか「と、鳥を俺に近づけるなぁ!!」とか「もう燃やさないでぇ!!」とか「寒いもっと暖房つけてくれぇ……」とか「雷怖い……」とか「チェーンソーはらめぇ!!」とかブツブツ言っていたらしい。
トラウマになってんじゃねえか。まぁ自業自得だわな。
そしてあれ以来すっかり違法研究者から狙われることが無くなったナカジマ姉妹にたまに海鳴市に遊びに来るねと宣言されてしまったことと、自宅のデバイス制作用のPCにファイブと名乗る人物からときどき父親や姉妹に対する愚痴の連絡が来る様になったの以外はいつも通りの日常に戻った。
そして今日は始業式、俺も四年生に進級しました。
「やっほ〜。私が来たで〜」
「あ、はやてちゃん。今年は全員同じクラスだね」
今年から四年生に上がったわけだけど、毎度の如く誰一人欠ける事なく俺らは同じクラス。
普通は双子とかは別のクラスに分けられるんだけど……そう言えば忍さんの圧力が学校にかかってるんだっけ?
まぁ何はともあれ、足の麻痺も完全に回復したはやてもこれからはクラスメイトだ。
「学校行きたいな〜と願って早三年、ようやく願いを叶える事ができたわ」
「良かったねはやて」
念願の学校生活にニッコニッコなはやて。
今まで自宅で勉強こそしていたっぽいが、みんなで授業を受けたり体育したり遠足行ったりしたかったんだと。
俺らって遊ぶ約束は基本学校とかで立てるからどうしてもはやては蚊帳の外になりがちだったけど、その問題も今年からは解消されたわけだ。
せっかくだしまた遊ぶ約束でも立てるか? と考えていると少し遅れてひなちゃんも教室に入ってきた。これで全員揃ったな。
「おはよぉ。ねぇねぇ昨日公園で砂のお城作りに行ったんだけど、桜が満開だったんだー。今日午前中で学校終わるしみんなでお花見行こうよ」
桜満開だったって事は、お花見してる人がいたんじゃないの?
その中で一人砂のお城作ってるだなんて、君はどれだけ図太いんだひなちゃん?
「良かったのかなひな〜? レオとだけ約束してたら私を差し置いてお花見デート出来たのに〜?」
「あ……。まぁいいや、レオ君と二人きりも楽しいけどみんなの方がもっと楽しいもんね」
「……どうしてだろう? マウント取りたいのにひな相手だと悉くいなされる上に私が汚れてる様に感じちゃう」
アリシアちゃんは遠い目でそう呟いた。
いやひなちゃんは自慢とかしても「良かったねぇ」くらいしか言わないし、失敗を指摘しても「教えてくれてありがとう」っていうタイプの子だからそもそもマウント取りに行く事自体無謀なのだよ。
「にゃはは。でもお花見かぁ、お花見って言ったらお弁当とかも用意しないといけないし、急にお母さんたちに頼むのは悪いよね」
「それに今日は月曜だから次に花見に行けるのは土曜日だな。それまでの間桜が散らなければいいが……」
「桜は満開から一週間で散り始めるし、ギリギリいけると思うわよ」
「なら土曜にでもお花見しよか?」
「えっとそれなんだけどね……」
フェイトちゃんがおずおずと手を挙げる。
「リンディさんが事件の解決祝いに今日にでもお花見しない? って言ってたんだ。お弁当とかは母さんと二人で作ってくるって」
そういう大事な事は早く言え!
……え? リンディさんが計画立てたのは今朝な上に、誘う前にひなちゃんがお花見の提案をしたからタイミングを逃した? ああそう。
「リンディさん事件の後始末で大変そうにしてたのに大丈夫なの?」
「羽鳥さんとか桃子さんにも手伝ってもらうんだって」
「えー! お母さんそんなこと言ってなかったの!!」
「ママもだよ! 言ってくれれば良かったのに!!」
と言うかこの分だと、月村家のメイドのノエルさんとかも一緒に準備してるパターンじゃ?
……多分事前から打ち合わせ立てて準備してたんだろうなぁ。料理できるから言ってくれれば手伝ったのに。
「と言うか私、リンディさんから何にも聞かされてない件について」
「アリシアはうっかりしてるし、伝え忘れると思われたんじゃない?」
「信用されてないんやなぁ」
「日頃の行いって大事だよねぇ」
日頃の行いかぁ、確かに重要だよなぁ。
俺もタチの悪い犯罪者とかは基本大怪我させて捕まえるスタンスを取ってるせいで、この間の研究所制圧作戦のときに危うく研究員を殺したと勘違いされかけたんだから。
殺ったのチンクなのに。
『マスターの自業自得ですね。これに懲りたらもう少し優しく捕まえ……やっぱ今の無しで。調子乗ってる馬鹿どもが恐怖に歪む様は快感なんでもっとやっちゃってください』
『もうアスカロン? 彼女はこう言ってますがマスターの周りからの評価に影響するので、その悪癖はキチンと直す事を推奨させていただきます』
カリバーの言う通りこのスタンスだけはキチンと直さないとなぁ。
「そろそろ始業式が始まる時間ね。体育館に行きましょ」
時計を見るとあと10分で開始時刻。確かにそろそろ並んでた方がいいかね。
◇
(校長先生の話しってどうしていつもいつも長いのかしらね)
(風習だろうな)
校長の話しを睡眠導入音声代わりにウトウト夢の中へ旅立とうとしていると、急にアリサちゃんから念話が来て意識が覚醒した。
ヤマトがアリサちゃんの会話に入り、そこからアリシアちゃんとはやても参加して話し出してしまった。
念話を悪用してお喋りすんなよ。と言うか普通は参加しそうなひなちゃんは今日参加してないけど一体……
チラリとひなちゃんの方を見てみると……。
「スピー……。スピー……」
「ちょっとひなちゃん起きて? 先生に怒られちゃうよ?」
俺と同じ様に校長の話しを子守唄代わりにひと足先に夢の世界に旅立っていた。
後ろの子がそんなひなちゃんを起こそうとしているが、この子起こしたら機嫌悪くなるからこれ以上彼女の睡眠を妨げるべきではないよ。
(もうみんな。いくらバレないからって念話で話しちゃダメだよ。ちゃんと先生のお話聞こうよ)
(すずかちゃんの言う通りなの。校長先生大切なこと言ってるよ?)
日常生活では常識人かつツッコミ役のすずかちゃんとなのはちゃんがみんなを注意する。
(えー、いいじゃないの。校長先生昔の武勇伝しか言ってないし)
(そうだそうだー。校長先生のお話し長すぎて退屈なんだもん!)
(そもそも俺はいつもレオと喋るなりイメージトレーニングするなりしてたし)
(それにこうやってコソコソお話しするのも学校生活の醍醐味や)
念話は確実にバレないから学校生活の醍醐味ではないとだけ言っておこう。
(もう4人とも? 静かにしてるひなちゃんとフェイトちゃんを見習うの!)
(え? なのはごめん私の名前呼んだ? イメージトレーニングしてて気が付かなかった)
(もうフェイトちゃーん!!)
意外にも不真面目なテスタロッサ妹なのであった。
(それにしても今日はレオも黙ってるよな。どうしたんだ?)
(いや、寝ようとしてたけどアンタらの念話で睡眠妨害されてるんよ。とりま念話切るからお休みー)
(えー、お話ししよー)
アリシアちゃんがなんか言ってたがそれを無視して、念話を切るとすぐさま夢の世界にダイブしようと……。
『では私の話しはこれで終わります』
「…………」
『寝れませんでしたね』
「ちくせう」
俺は潔く今回は寝るのを諦めて、ぼーっと始業式が終わるのを待つ事にした。
その後寝ていたひなちゃんや会話に夢中になるみんなは、閉会の言葉での起立の言葉を聞き流してみんな仲良く怒られたのだった。